岩手県奥州市の黒石(こくせき)寺で繰り広げられる伝統行事、蘇民祭(そみんさい)の観光ポスターを市が駅構内に掲示しようとしたところ、JR東日本から待ったがかかった。「男性の裸に不快感を覚える客が多い」というのが理由だ。数十年作製しているポスターの掲示拒否は初めてで、市は枚数を200枚減らして1400枚とし、駅で張れない分は市内や首都圏で張るという。
祭りは、市内水沢区黒石の寺で裸の男衆が蘇民袋の争奪戦を繰り広げる。疫病よけや五穀豊穣(ほうじょう)などを願い1000年以上続くとされる。今年は2月13日夜~14日未明を予定している。
ポスターは写真3枚を組み合わせ、ひげ面で胸毛の男性がアップに、奥に下帯姿の男性たちを配している。
昨年11月30日に市がJR東日本盛岡支社に許可を求めた。JR側は本社の判断を仰ぎ、12月3日に図柄を変えない限り掲示できないと通知した。市は下帯など一部修正をしたものの、版下がほぼ完成しJRが求める図柄の全面変更は困難だった。
JR東日本盛岡支社の佐藤英喜・販売促進課副課長は「セクハラが問題になる中、公共の場でのポスター掲示の基準は厳しくなっている」と説明する。そのうえで「単純に裸がダメというわけではないが、胸毛などに特に女性が不快に感じる図柄で、見たくないものを見せるのはセクハラ」と判断したという。
奥州市水沢総合支所の佐々木禅(ゆずる)商工観光課長は「市と業者とで図柄を決めた後(の掲示拒否)で、日程的にも変更はできなかった」としたうえで「観光客が減るかもしれないが、市内に集中的に張ったり、首都圏の観光施設に掲示をお願いしたりして祭りを盛り上げたい」と話している。
(毎日新聞紙面より引用)
裸祭り(はだかまつり)とは、参加者がふんどしのみ、又はふんどしと半天(半纏、袢纏、法被)等、最低限の衣服を着て(極稀に全裸で)参加する祭りのことである。
概要
裸祭とは一般的にはその年の豊作と繁栄を願う祭として成人男性が裸、又は最低限の衣服で争い合う祭である。 これは行動範囲が限定されていた日本の農耕社会において、五穀豊穣を願うことを名目に成人男女の出会いの場を提供するものが裸祭の本来の目的であった。 農機具などが機械化がされていなかった日本の農耕社会においては、強い働き手となる逞しい男性の存在が農家に最も求めらる最重要課題であった。 家督の維持、子孫の繁栄には強く逞しい男性の存在が欠かせず、裸祭を通じて、男性達は鍛えられた肉体を村の長老や女性に披露することで、相手となる嫁や自家への入婿を探す男女の出会いの場として、裸祭は村の行事では最重要の位置付けとされていた。特に、家督を継げない次男、三男にとっては入り婿先を探す重要な機会であるだけに、自己の逞しさを演出する唯一の場であった。また、男手を失った後家にとっても再婚相手を探す場でもあった。 裸祭に神木の取り合い等の闘争が多いのも、闘争能力の高さが男性の強さや生殖能力を象徴し、農家でより強い働き手であることを示すものでもあるだけに、伝統的には裸祭の参加は成人男性に限定されていた。
おおむね、休耕となる真冬に、禊(水行)の後、お堂の内外で神木、玉、等、その祭りの象徴を奪い合う祭と、真夏に、神輿等を担ぐ祭に分類できる。これらの多くは成人男性のみが参加可能で、褌を締めた様子は非常に勇猛で精悍な印象を演出している。中には少年(極稀に少女も)が参加可能な祭もあるが、これは農耕社会から近代工業化社会への移行で発生、又は変化した祭であり、本来の裸祭の趣旨とは大きく乖離したものであるものと考えられ、昔であれば、その存在は否定される可能性が高いものである。なお、神社によっては岡山県の鏡野町(旧上齋原村)の上齋原村神社などは裸祭りを廃止し、女相撲に変えるなどしているところもある。
ちなみに、祭りにおいては、褌は下着ではなく晴れ着であり、巫女、稚児、手古舞、踊り子等の衣装と同等である、という考え方がある。参加者が全裸で登場する祭りは、局所を露出することで生殖能力の高さを象徴するもので、猥褻なものではないと地元では認知されているが、最近では混乱を防ぐためとして一部の主催者は全裸での参加を禁じる方向に向かっている。なお、2008年、JR東日本が奥州市の蘇民祭ポスター掲示自粛など、セクハラとみる考えも出てきている。
裸祭りに出場する少年
主に西日本では成人の裸祭りとは別に少年(極稀に少女も)の裸祭りも並行して行う所がある(どやどや、会陽、山笠、等)。これらの主催者の中には少年たちに郷土の歴史と伝統文化への理解を持たせる名目で主催されている。東日本、中部では成人中心の裸祭りに少年が混じる場合(親子で、褌で参加、等)が比較的多い。
これらの祭りはアマチュアカメラマンの間で非常に人気が高い。アマチュアカメラマンの中には成人の裸がぶつかり合う勇壮な様子を撮りたい、という人もいれば、成人は撮りたくないが少年は成人より美しくて可愛いから撮りたい、という人もおり、様々である。少年には可憐、脆弱のイメージがあり、そのような少年が勇猛に立ち向かう様子は最初から勇猛のイメージがある成人男性とは又違う魅力があるという。
インターネットの発達で少年が参加する裸祭情報が簡単に得られるようになり、少年が参加する裸祭は希少な分、マニアが押しかけるようになった。ごく一部のマニアが少年に付きまとい、執拗に撮影を行って、ネット等に画像を投稿するようになり、主催者もこのような迷惑行為を憂慮して、少年の裸体の撮影に制限を加える(事を検討する)裸祭も出てきた。
サブカルチャーにおいても人気が高く、萌えの対象とされ、裸祭りに登場する少年や、裸祭りの扮装をした少女を題材にした同人誌等が人気を集めるという。
全国の裸祭り
自治体名の後は褌等の種類(種類はふんどしを参照)。※は少年も褌等で参加(それ以外は通常、成人男性のみ参加可能)、奉納相撲、和太鼓も参照
北海道
1月15日:木古内町寒中みそぎ祭り(木古内町、締め込み)
7月第一土曜日:江差かもめ島まつり(江差町、六尺)
7月中旬:芦別健夏山笠(芦別市、締め込み)※
7月中旬:あかびら火まつり(赤平市、六尺)※
東北
元旦:常盤八幡宮年縄(としな)奉納裸参り(藤崎町、廻し)※
1月7日:七日堂裸まいり(柳津町、六尺)
1月成人の日:やや祭り(庄内町、晒一反+ケンダイという腰蓑)※
1月15日:裸参り@盛岡八幡宮(盛岡市、晒一反+腰蓑)※
1月中旬:大綱引き(会津坂下町、締め込み)
旧暦1月7日:蘇民祭@黒石寺(奥州市、全裸、六尺)
(蘇民祭は複数存在し、全裸が許されるのは黒石寺の蘇民祭のみだったが2006年以降は全裸禁止になった)
2月3日:裸樽神輿(栗原市、晒一反)
関東
1月20日早朝:湯かけ祭り(長野原町、越中)
3月15日:裸参り@熊野神社(四街道市、上半身のみ)
5月中旬:神田祭@神田神社(千代田区、中央区、六尺)※(大祭は2年に1度、次回は2009年)
5月中旬:三社祭@浅草神社(台東区、六尺)※
7月中旬:江ノ島天王祭(藤沢市・鎌倉市、六尺)
7月下旬:はだか神輿@大和田氷川神社(新座市、晒一反)
7月25日:甘酒まつり(秩父市、六尺、晒一反)
8月中旬:例大祭@深川神明宮(江東区、六尺)※(大祭は3年に1度、次回は2009年)
9月13日:十二社はだか祭り@玉前神社(一宮町、上半身のみ)
9月23~24日:大原はだか祭り(いすみ市、上半身のみ)
11月19日:盤台行事@有氏神社(神川町、六尺、晒一反)
北陸・甲信
1月17日:はだか胴上げ(糸魚川市、六尺)
1月下旬:寒中みそぎ(輪島市、晒一反)
2月17日:赤谷どんづきまつり(新発田市、晒一反)
3月3日:浦佐毘沙門堂裸押合大祭@普光寺(南魚沼市、上半身のみ)
6月下旬:堀米(島立)の裸祭り(松本市、六尺)※
東海
元旦:上野間の裸まいり(美浜町、全裸)
1月1~3日:お太鼓祭り(由比町、晒一反)
旧暦1月13日:国府宮はだか祭り(稲沢市、晒一反)
3月上旬:中田裸祭り(豊田市、晒一反)
12月第2土曜日:池ノ上みそぎ祭(岐阜市、越中)※
関西
1月上旬:どやどや@四天王寺(大阪市天王寺区、締め込み)
1月14日:裸踊り@法界寺(京都市伏見区、越中)※
5月第4日曜:嵯峨祭(還幸祭)@野宮神社・愛宕神社(京都市右京区、廻し)
8月上旬:矢取り神事@下鴨神社(京都市左京区、六尺)(年によっては褌でない場合がある)
10月中旬:灘のけんか祭り@松原八幡神社(姫路市、廻し)※
10月22日:鞍馬の火祭@由岐神社(京都市左京区、廻し)
中国
2月第1日曜日:松林寺子供会陽(岡山市宮浦、締め込み)※
2月第1土曜日:金山寺会陽(岡山市金山、締め込み)
2月第2土曜日:安養寺会陽(美作市、締め込み)※
2月第2土曜日:岩倉寺会陽(西粟倉村、締め込み)
2月第3土曜日:御福開祭はだか祭@久井稲生神社(三原市、締め込み)
2月第3土曜日:西大寺会陽(岡山市西大寺、締め込み)※(公式HP)
2月下旬:道通宮子供会陽@沖田神社(岡山市沖元、締め込み)※
10月上旬:大原の秋祭り(美作市、締め込み(一部のみ))※
11月下旬:防府天満宮御神幸祭(裸坊祭)(防府市、上半身のみ)(公式HP)
四国
2月下旬:善通寺会陽(善通寺市、締め込み)
九州
1月3日:玉せせり@筥崎宮(福岡市東区、晒一反(少年は六尺(九尺?)))※
1月7日:鬼夜@大善寺玉垂宮(久留米市、晒一反)※
1月15日:竹崎の円座祭(太良町、晒一反)
6月1~2日:へこかき祭り@高良大社(久留米市、六尺、越中)※
7月上旬:博多祇園山笠(福岡市博多区、締め込み)※
7月中旬:かごしま夏祭り(鹿児島市、締め込み)
旧暦8月15日:十五夜ソラヨイ(南九州市、締め込み(中福良)、トランクス(山下))※
11月上旬:若宮八幡秋季大祭(豊後高田市、晒一反)(公式HP)
11月下旬:さいすくい(中津市、六尺(前垂れ))※
不定期:鳥刺し踊り(雲仙市、九尺、特殊な締め方)
僕の個人的な見解だが、「爽快」「不快」は主観的な事。「女性」に不快・・・という見解は、実際に「女性」が見てそう思い、クレームを付けたのか、「JR東日本」の「自主規制」なのか、誰がポスター掲出を取り止めにしたか、責任者・判断を下した人がちゃんと「納得のいく説明」をして欲しい。それが無くなって来ている世の中なのだから、余計に。