レイ・ハリーハウゼン(Ray Harryhausen、1920年6月29日 - )は、アメリカの特撮映画の特撮監督・特殊効果スタッフで、ストップモーション・アニメーターである。映画史上、20世紀の映画の特撮技術の歴史を作ってきたといわれる人物。1950年代から1960年代に活躍した。
業績
映画『キング・コング』(1933年)のウィリス・オブライエンの仕事に影響され、ストップモーション・アニメーションの仕事を始める。
内部にアーマチュア(可動式骨格)を仕込んだ人形を一コマづつ撮影するモデルアニメーションの分野で評価されている。特に評価が高いのは、「ダイナメーション」と呼ばれる手法で、これは俳優の演技をスクリーン・プロセスでコマ送りで投影しながらそれに合わせて人形を動かすもの。これにより人形と人間の同時演技(例えばミニチュアと人間の格闘シーン)が光学合成なしで可能となった。
彼の映画は、ジョージ・ルーカスなど、後の特撮映画の巨匠達に多くの影響を与えた。 ピクサーが製作した『モンスターズ・インク』には、「ハリーハウゼン」という名前の寿司屋が出てくる。
兵役時代には、陸軍の映画撮影班に属し、映画技術の基礎を習得した。ストップモーション・アニメーションの技術を用いた、戦場での架橋工程を示した軍用教育映画など当時の作品が残っている。
本格的なデビュー作となったのは『原子怪獣現わる』(1953年)である。SF作家・レイ・ブラッドベリ(ハリーハウゼンとは高校時代からの親友であった)の短編『霧笛』を原作としている。水爆実験でよみがえった怪獣がニューヨークを破壊するという本作品は、日本の特撮映画『ゴジラ』(1954年)にも大きな影響を与えた。
『水爆と深海の怪物』(1955年)はゴールデン・ゲート・ブリッジを巨大な蛸が破壊するというストーリーであったが、橋の強度に対して不安感を与えるとの理由からロサンゼルス市当局の撮影許可がおりず、ゲリラ的な撮影を敢行した。予算不足から巨大蛸の足は6本のみであった。
『空飛ぶ円盤地球を襲撃す』(1956年)ではモンスターでなくUFOの特撮に挑戦している。この映画では崩れ落ちるビルの瓦礫までもモデルアニメで処理しているが、実は予算の関係でミニチュア爆破のような大規模な特撮が出来なかった結果こうなった。ティム・バートンの『マーズ・アタック』(1996年)に登場するUFOはこの作品のパロディである。
『地球へ2千万マイル』 (1957年)では初めてヨーロッパロケを行っている。本作品では古代ローマの遺跡コロッセオで金星竜の「イミーア(Ymir)」が暴れまわる。人間によって地球につれてこられ、モンスターとして人間によって殺されてしまうイミーアは『キング・コング』へのオマージュでもある。
『シンドバッド七回目の冒険』(1958年、公開当時の題名は「シンバッド7回目の航海」)は、彼の初のカラー作品となった。一つ目巨人(サイクロプス)や、双頭のワシなど様々な怪物が登場する。中でも骸骨戦士との剣戟シーンは有名である。
『アルゴ探検隊の大冒険』(1963年)では、7人の骸骨戦士との剣戟や、重厚な動きを見せる青銅の巨人タロスなど、さらに磨きがかかった特撮技術が見られる。特に、7つの首を持つ怪物ヒドラの登場シーンでは、それぞれの首が自然で滑らかな動作をしているように見せるため大変な苦労をしたと、後にハリーハウゼンは語っている。
15年ぶりの続編『シンドバッド黄金の航海』(1973年)では六本腕のカーリー像のダンスとシンドバッド達との剣戟が有名。このカーリ像をハリーハウゼン作品のベストに挙げる人も少なくない。
最後の作品となった『タイタンの戦い』(1981年)では円熟した特撮技術が見られる。実際の馬の綿密な観察に基づき造形された天馬ペガサスはリアルな動きを見せてくれる。また、独自の解釈による魔女メデューサの造形はハリーハウゼンの創造したモンスターのなかでも高い評価を得ている。
永年の功績により1992年にアカデミー賞特別賞を受賞した。授賞式では、高校時代からの盟友であるレイ・ブラッドベリの手からオスカー像が手渡された。現在は妻と共にロンドンに在住。
おもな映画作品
『猿人ジョー・ヤング』(Mighty Joe Young、1949年)
『原子怪獣現わる』(The Beast from 20,000 Fathoms、1953年)
『水爆と深海の怪物』(It Came from Beneath the Sea、1955年)
『空飛ぶ円盤地球を襲撃す』(Earth vs. the Flying Saucers、1956年)
『地球へ2千万マイル』 (20 Million Miles to Earth、1957年)
『シンドバッド七回目の冒険』(The 7th Voyage of Sinbad、1958年)
『SF巨大生物の島』(Mysterious Island、1961年)
『アルゴ探検隊の大冒険』(Jason and the Argonauts、1963年)
『H・G・ウェルズのSF月世界探検』(First Men in the Moon、1964年)
『恐竜100万年』(One Million Years B.C.、1966年)
『恐竜グワンジ』(The Valley of Gwangi、1969年)
『シンドバッド黄金の航海』(The Golden Voyage of Sinbad、1973年)
『シンドバッド虎の目大冒険』(Sinbad and the Eye of the Tiger、1977年)
『タイタンの戦い』(Clash of the Titans、1981年)
僕たちの子供の頃の「洋画」の特撮と言えば、ハリーハウンゼンだった。1コマずつ人形等を動かして撮影するのは気の遠くなる様な作業である。でも、「スター・ウォーズ」以降、CGがどんどん進化し、どんなシチュエーションのシーンでも撮影できる様になったが、CGと分かっているので、感動も自然に薄れてきた。映像面のみ進化しても、脚本がダメでは映画やドラマは成り立たない。今、ハリウッドで脚本家連盟がストライキに入っており、大きな影響がテレビドラマにも映画にも出ているが当然の事だと思う。



