北緯31度11分。開聞岳を望むJR日本最南端の駅が西大山駅。裾野を広げる「薩摩富士」が美しい。
咲き誇る菜の花の黄色いじゅうたん、降り注ぐ春の陽光、周辺は季節を先取りしている。
起点を示す「0キロポスト」を1番ホームの車止め脇に見つけた。ここから指宿枕崎線の旅が始まる。
鹿児島中央08:38発の山川行は、アイボリーにブルーのラインが引かれた年季の入ったキハ40系気動車だ。
キハ40系は、左手に桜島や大隅半島を見ながら錦江湾沿いを南下する。喜入までは県都鹿児島のベッドタウン、
なんと50往復もの列車が走っている。その先は本数がぐっと少なくなるが、引き換えに明媚な車窓が展開する。
「東洋のハワイ」指宿温泉は砂蒸し風呂で有名。高度経済成長期にはハネムーンのメッカだった。
沿線の中心駅指宿、駅前広場には菜の花に飾られた足湯がある。次の列車の時間までまったりと足を浸す。
人気の観光特急 "指宿のたまてばこ" の到着を待って、たった1駅を走る短距離ランナー山川行が動き出す。
小さな港町山川からは、鹿児島湾を横断して大隅半島の根占とを結ぶフェリーが出航している。
大型車2台、乗用車6台を積載する小さなカーフェリーは、強風によって欠航になっていた。
山川から先は日に6往復の超ローカル線、2つ目が最南端駅の西大山、列車は記念撮影のために2分間の停車する。
駅前には「幸せを届ける黄色いポスト」と「幸せの鐘」があって、若い女性グループで華やいでいる。
開聞岳の裾野をなぞってキハ40は西へと転じる。車窓の東シナ海は凪いでいた鹿児島湾と対照的に白波が立つ。
シラス大地の畑中を1時間ほど揺られると終点の枕崎、かつお漁は350年の歴史を持ち、鰹節生産量は日本一だ。
市内の「だいとく」を訪ねる。“枕崎鰹船人めし” は、船乗りが食べていた料理を現代風にアレンジしたもの。
鰹の切り身と鰹節たっぷりのトッピング、熱いだし汁を注いだら、茶漬け風丼にしていただく。旨い。
半分食べたら、お好みで追い鰹と鰹のごまマヨあえを加える、これがまた旨い。満足の丼なのだ。
旅の締めくくりに薩摩酒造明治蔵を訪ねる。銀ねずみの和瓦、白い漆喰壁、太い梁や桁、石の床がそのまま残る。
「ちょい水で、香りはひらく」って、米倉涼子さんのCMでおなじみ “さつま白波” の蔵元なのだ。
年季の入ったかめ壺や木桶を拝見してから利き酒を愉しむ。どんぶり仕込みの「明治の正中」骨太な味が一押しだ。
指宿枕崎線 鹿児島中央~枕崎 87.8km 完乗
おんな港町 / 八代亜紀 1977