長岡から2つめの駅を過ぎると列車の窓には信濃川の流れが存在感を増してくる。
堤のあちらこちらで桜が満開になっている。山際のこの辺りはさすがに桜の盛も遅いようだ。
右手に高の井酒造の蔵が見えたら、普通列車は徐々に速度を落として小千谷駅に滑り込む。
闘牛、小千谷縮、にしき鯉、小千谷の町を形容する産物は結構多い。美人の町かも知れないなぁ。
吞み人からしたら、是非とも「小千谷そばの町」を推したい。
駅前通りを緩やかに500~600m下って行くと、目の前に長い橋が現れる。
この長い橋の下を流れるのは信濃川、少し上流で魚野川さえ抱え込んで水量も多く滔々と流れて行く。
対岸の河岸段丘を上って行くと小千谷の市街地、めざす「元祖小千谷そば角屋」がある。
季節柄 "ふきのとう天ぷら" が出ていたので蕎麦前のアテに択ぶ。苦みに春を感じる。
"蔵人の盗み酒" とは、ふな口からの一滴一滴の新酒は、蔵人が人目を盗んでも口にしたい感動の酒、
と云う意味だそうだ。フレッシュかつ濃厚な味わいの無ろ過吟醸原酒にご機嫌な蕎麦前のひとときだ。
絶妙のタイミングで "へきそば" が運ばれる。翡翠色のつやつやした蕎麦がキレイだ。
布海苔(ふのり)を使ったコシの強い蕎麦をズズっと啜って美味しい。
雪国が生んだ素朴な味わいを愉しんで、この美味しい途中下車にほくそ笑むのだ。
1736M水上行は関東平野まで戻れる数少ない1本。"青春18きっぷ" の季節ならではの鈍行列車の旅は、
地酒と郷土料理を求めてのんびりと往く。越後川口から堀ノ内にかけて2本の長いトンネルを潜ると、
左手に越後三山(八海山・越後駒ヶ岳・中ノ岳)が見えてくる。どれもたっぷりと残雪を背負っているね。
ここで仕込んでおいた "八海山" を開けると云うストーリー。幸い車内はガラガラだから心配はない。
ほろ酔いの耳に唸りを上げる1736Mのモーター音が響くと越後湯沢の町が見えてきた。
まちぶせ / 石川ひとみ 1981
碓氷峠を登って中軽井沢〜追分で見上げる浅間山の風景は、
私にとって、ふるさとに帰ってきたなぁと実感するスイッチです。
ステキな軽井沢の写真を拝見に伺います。