ゴーっと音を立てて5両編成が那珂川鉄橋を渡ってやってきた。
青と白のツートン、常磐快速と同じ形式が走るのは、黒磯駅構内で直流から交流に電化方式が変わるからだ。
休日06:30の東京駅、もう日が高いのに閑散とした丸の内、夢を見ているかのようなギャップだ。
この朝もすでに30度近い、梅雨が明け、太平洋高気圧とともに「青春18きっぷ」のシーズンがやってきた。
06:51発の1522Eがこの旅のトップランナー、東京始発の宇都宮行きはこの列車が唯一。
東北へと旅立つ各駅停車の旅には相応しい列車だと思う。
轟音を立てて渡る利根川鉄橋を合図に、まずは1本目の “こだわりレモンサワー” を開ける。
JR東日本の呑み潰しも二周目に入ったから、今まで以上に呑んで喰らって、ゆるりと旅をしたいものだ。
10番線に2番手ランナーの641Mが待っている。2022年に投入されたE131系という車両だ。
快適性やバリアフリーに優れた車両だけど、ロングシートという一点が、呑む旅を愛するボクには不満だ。
乗り換え時間の30分、7・8番ホームの「野州そば」で “かき揚げ天玉” をズズッと啜る。
東北本線のホームにある駅そばとしては、早くもここが北限ではないかなぁと記憶を巡らす。
これぞ旅の醍醐味と思う反面、おばちゃんの好感度がね、旅情の演出には程遠い。
これではコンコースにあるファストフード店然とした店には敵わないよ。
3番手の4131Mは黒磯から新白河まで約20分少々の短距離ライナーだ。
どうも直流、交流の両方を走れる電車ってのはかなり高価なものらしい。
そこで交直切替のあるこの区間を、たぶん2編成程度が忙しなくシャトルしているのだと思う。
みちのくの玄関白河駅は、西洋がわらをのせた風格ある木造洋風建築だ。
2015年に東北を呑み鉄旅した時には、待合室で「行くぜ、東北」のポスター、木村文乃にやられた。
駅構内の地下道を潜ると白河小峰城、戊辰戦争白河口の戦いの舞台である。
奥州関門の名城には復元した三重櫓、関ヶ原の役以降の城は大天守を持たず、三重櫓がこれに代わった。
5番手の2133Mは郡山までを繋ぐ。ホーム上には188kmのポストが突き刺さっている。
さあここから「行くぜ、東北」の旅、どんな酒肴に巡り会えるだろうか。
13:27、福島着。駅構内の円盤餃子の名店には長蛇の列ができている。
でも構わない。ボクは暑い中を15分歩いて円盤餃子元祖の店へと向かう。
円盤の焼き上がりにはだいたい15分、冷たい生ビールと枝豆で待つ時間も楽しい。
福島稲荷神社近くで暖簾を掲げる「満腹」は、週末にはお昼から営業している。
一杯目のジョッキが空くころ、こんがりきつね色の円盤がボクの卓にも飛来する。
白菜ベースの餡は案外あっさりと美味しくて、苦戦すると思われた30個をぺろりといただいた。
もちろん二杯目のジョッキの助けは借りてなのだが、餃ビーは無敵ですね。
6番手の1183Mは白石行き、とにかく細かく繋がないと先に進めない東北本線の旅。
時間帯も関係するのかも知れないけど、とうとう2両編成、しかも旅情のないロングシートには残念。
県境を越えて30分の乗車で白石駅、市の玄関を1.5km離れた白石蔵王駅に譲ってちょっと寂しげ。
この駅に降り立ったら “白石温麺(うーめん)” をいただこうと思っていたけれど、まだお腹が空かない。
白石城は伊達藩の支城、一国一城令の例外として幕末まで至る。白河小峰城と同様に三重櫓が天守に代わる。
それにしても白石城を一枚収めるための往復2kmに汗が吹き出す夏の午後だ。
7番手の459Mは比較的新しいE721系の6両編成、さすがに仙台地区には主力の車両を投入している。
この車両、呑み鉄には嬉しいセミクロスシート、さらにドリンクテーブルまで付いている。
っで、クーラーから吹き出す冷気を全身に浴びながら、カポッとワンカップを開ける。先頭車両は貸切状態。
コクと旨みのこの本醸造は南会津の酒、沿線の酒ではない、さらにここはすでに宮城だけど、ご愛嬌だ。
459Mは駅毎に乗客を増やして約50分、貸切だった車両はいつしか満員になって仙台駅に終着した。
東北一の大都市・仙台のポテンシャルを十分に実感するところになる。
仙台城跡まで登って来た。いつものことながら街を見下ろす政宗公は逆光になる。
反り返る石垣越しの仙台市街地と瀬音を立てる広瀬川、なるほど杜の都は緑が豊かだ。
文化横丁に壱弐参(いろは)横丁、週末は案外休みの店が多い。名店「源氏」も閉まっている。
っで今宵は一番町南町通りの「横丁三七三(みなみ)」へ、居心地の良いお店でした。
お店の推し “肉厚のチーズハムカツ” に “枝豆” も並べて、たまにはホッピーではじめよう。
日本酒の品書には華やかに夏酒が並んで、これは楽しく呑めそうではある。
華やかな香りとほのかな酸味の “Mr. Summer Time” は、宮寒梅の夏限定純米吟醸。
懐かしいサーカスのハーモニーを聴きながら夏の想い出で呑みたい一杯、少し時期が早かったかなぁ。
これは美味い “クリームチーズのチンジャ和え” を突っつきながら、夏酒をちびりちびり。
カウンター越しの囲炉裏でボクの “大トロイワシ” がパチパチと音を立てて愉しい。
二杯目は港町石巻 “日高見” の夏限定酒、漁師の町の酒だから魚に合わない訳がない。
レモンをたっぷり絞って、脂がのったイワシを崩しながら、キレの良い爽やかな純米吟醸が美味しい。
〆には “仙台牛炙り寿司” 二貫を口に放り込んで、一番町の夜は更けゆくのだ。
東北本線 東京〜仙台 351.8km
Mr. サマータイム / サーカス 1978
ブログフォローありがとうございました。これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
コメントをいただきありがとうございます。
小峰城も洋風建築の白河駅もなかなか良いですね。
実は白河へは奥州道中を歩いて入ったこともありまして、
白河関から下ってくる感じも良かったです。
今後ともよろしくお願いいたします。