市民たちは何によって警戒警報が発令されたのか、どこに避難すればいいのか分からず混乱していた。ポータルサイトで状況を把握しようとしたが、急増したアクセスで接続すらままならなかった。

2023-06-01 09:11:19 | 韓米軍事同盟は?
 

韓国政府、

予告されたロケット打ち上げに対応遅れ混乱ぶり露呈…

危機管理システム失踪

登録:2023-06-01 06:34 修正:2023-06-01 07:14
 
ソウル市の「メール災害」で国民の不安が増幅
 
 
尹錫悦大統領が5月31日、大統領府迎賓館で開かれた社会保障戦略会議のために入場し、時計を見ている= 大統領室通信写真記者団//ハンギョレ新聞社

 「今日6時32分、ソウル地域に警戒警報発令。国民の皆様は避難する準備をして…」

 1000万人が住む首都ソウルの朝が混乱と恐怖に包まれた。始まりは31日午前6時41分、ソウル市から届いた一通の「緊急速報メール」だった。数分の時差を置いてソウル市内のあちこちにサイレンが鳴り、聞き取りにくい音声が官公庁のスピーカーを通じて流れた。

 市民たちは何によって警戒警報が発令されたのか、どこに避難すればいいのか分からず混乱していた。ポータルサイトで状況を把握しようとしたが、急増したアクセスで接続すらままならなかった。文字通り「パニック」だった。

「本当に戦争が起きたら、あたふたして死ぬ羽目になるかも」

 ソウル広津区(クァンジング)に住むソン・ウンギョンさん(57)は、「あんなに怖がらせておいて、具体的な内容や指針のない警報メールを見て途方に暮れた。本当に戦争が起きたらあたふたして死ぬ羽目になるかもしれないと思った」と語った。ソーシャルメディアやオンラインコミュニティなどでは、日本政府が午前6時30分、「ミサイル発射。北朝鮮からミサイルが発射されたものとみられます。建物の中、又は地下に避難してください」という内容で送った緊急速報メール(Jアラート)をシェアし、ソウル市が送ったメッセージの不備を指摘する書き込みが話題になった。

 
 
5月31日、龍山電子商店街のモニター画面に北朝鮮の宇宙発射体打ち上げのニュースが流れている/聯合ニュース

 行政安全部が22分後の午前7時3分、緊急速報メールを通じてソウル市の警戒警報が誤って発令されたことを知らせたが、ソウル市は午前7時25分になってようやく「警戒警報の解除」事実を緊急速報メールで通知した。先の警戒警報が「誤発令」ではないことを主張するものだった。

 災害対応の主務省庁である行政安全部と実行の主体である広域地方自治体の状況判断が食い違っていたわけだ。国家危機管理体系の乱脈ぶりを表わした早朝の「メール災害」だった。

予告されていたロケット打ち上げにも遅れた対応

 この日の混乱は、北朝鮮の衛星搭載ロケットの打ち上げと関連し、政府内の安保・災害対応省庁と地方自治体間で事前情報の共有と対応指針の点検が適切に行われていれば防げたはずの事件であり、ソウル市だけでなく政府も責任を免れないものとみられる。

 北朝鮮が軍事衛星の打ち上げを数日前から予告していたうえ、韓米軍当局の情報資産を通じて発射準備段階から北朝鮮側の動向に対するリアルタイムの監視が行われていた点で、政府とソウル市の足並みの乱れを単に地方自治体災害対応実務者の判断ミスにするには釈然としないところが少なくない。

 実際、ソウル市が北朝鮮衛星ロケット発射後に発送した緊急速報メールは、危機状況に対して中央政府と地方自治体の情報共有がどれほど行われたのかについて疑問を抱かせる。ソウル市は実際の発射時刻(合同参謀発表基準)から12分が経ってから警報発令事実を速報メールで知らせただけでなく、警報発令の理由についても一言も説明しなかった。

 
 
5月31日、ソウル市のオ・セフン市長がソウル市庁のブリーフィング室で、北朝鮮が主張する宇宙発射体の同日午前の打ち上げと関連し、ソウル市が発送した緊急災害速報メールに関する立場を明らかにした後、ブリーフィング室を後にしている/聯合ニュース

ソウルから250キロ離れた上空を通過した後、避難メール

 衛星が搭載されたロケットの軌道がソウルなど首都圏から遠く離れた白ニョン島(ペンニョンド)西側の海上を通過し、東シナ海側に向かっていることが探知されたにもかかわらず、ソウル市が警戒警報を発令したのも納得し難いところだ。

 ソウル市が緊急速報メールを送ったのは、北朝鮮の衛星ロケットがソウルから西に250キロ離れた西海上空を通過した後だった。ソウル市が発射体の飛行軌道に対して政府からどんな情報も共有されなかったか、共有されても無視したという意味だ。

 実際、北朝鮮が発射体(ミサイル)を発射すれば、空軍作戦司令部が1分以内に探知して速度と予想飛行経路、落下地点を計算し、陸海空軍、政府機関などに専用通信網を通じてほぼリアルタイムで知らせる。それを受け、行政安全部中央警報統制所は届いた情報をまとめて各市道の警報統制所に送ることになっている。

 ソウル市の警戒警報誤発令は、この情報伝達に問題が生じたか、システム自体が実効性を持って作動しなかった事実を示している。

パク・タヘ、イ・ジヘ、クォン・ヒョクチョル記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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ホワイトハウスが「ウクライナが対話の重要なテーマになるだろう」と述べたことから、ウクライナに対する韓国の軍事支援問題が首脳会談で取り上げられるか注目される。

2023-04-27 09:59:39 | 韓米軍事同盟は?

韓米、「核の傘」声明を推進…

ウクライナへの兵器供与も含まれるか

登録:2023-04-26 01:53 修正:2023-04-26 07:36
 
「より進んだ抑止案…最終的な文言は調整中」
 
 
米国を国賓訪問した尹錫悦大統領が24日(現地時間)、ワシントンDCの滞在先「ブレアハウス」に到着し、歓迎に出た在米韓国人らと挨拶している=ユン・ウンシク先任記者//ハンギョレ新聞社

 米国の拡大抑止へのコミットメントに対する疑念を解消するため、韓国と米国が26日の韓米首脳会談後に出る共同声明とは別に、拡大抑止と関連した声明を発表すると明らかにした。またホワイトハウスが「ウクライナが対話の重要なテーマになるだろう」と述べたことから、ウクライナに対する韓国の軍事支援問題が首脳会談で取り上げられるか注目される。

 韓国大統領室のキム・ウンヘ広報首席は24日(現地時間)、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が国賓訪問中の米ワシントンのプレスセンターで記者会見を開き、「尹大統領とジョー・バイデン米大統領は、今回の韓米首脳会談の結果として拡大抑止案を盛り込んだ別途の文書を発表する予定だ」とし、「より進展した拡大抑止案になると期待している」と述べた。韓米は毎年、両国の国防相会談の韓米安保協議会(SCM)を通じて拡大抑止へのコミットメントを再確認しており、前回の首脳会談の時も拡大抑止に言及したことがあるが、拡大抑止だけを取り上げた文書を発表するのは今回が初めて。

 
 
キム・ウンヘ大統領室広報首席が24日(現地時間)、米ワシントンのプレスセンターで尹錫悦大統領の米国国賓訪問と関連して記者会見を行っている=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 大統領室高官は「国民たちの北朝鮮の核・ミサイルの高度化に対する不安と懸念を解消できるよう、両首脳がより実効的で強化された拡大抑止案を議論するものとみられる」とし、「今は首脳会談が行われる前であり、文書に含まれる最終的な文言を調整している過程」だと明らかにした。

 これに先立ち、ホワイトハウスのジェイク・サリバン国家安保補佐官も同日、韓米首脳会談の議題などに対する記者会見で、「バイデン大統領は北朝鮮の脅威と関連し、韓国に対する拡大抑止のコミットメントを強化、増大」し、「両首脳は拡大抑止問題を取り上げた声明を出す」と明らかにした。また「韓国と韓国人に対する拡大抑止のコミットメントと関連した米国の信頼性について、非常に確実で明確なシグナルを送るだろう」と述べた。さらに「韓国は核拡散防止条約(NPT)の立派な守護者であり、今後もそうだと信じている」と述べたが、これは韓国の一部の「米国の戦術核の再配備」や「独自核武装」の主張をけん制したものとみられる。

 拡大抑止は、米国の同盟国が核攻撃を受ければ、米国が核兵器、ミサイル防衛能力、通常兵器などを動員して報復するという概念だ。北朝鮮が最近、固体燃料の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を初めて行うなど核・ミサイル能力を高度化している中、有事の際に米国が拡大抑止のコミットメントを守るかについて疑念の声が上がっていることを受け、今回の首脳会談で別途の文書を通じてこれを明確に示すのが狙いといえる。

 これまで政府当局者と専門家が検討してきた拡大抑止の信頼性と実行力を高める案としては、韓米間協議の枠組みの格上げと制度化や、朝鮮半島周辺への戦略資産配備強化などが挙げられる。米国と北大西洋条約機構(NATO)が核計画グループ(NPG)を構成して協議しているように、韓米の拡大抑止関連協議体を常設の協議体に格上げする案が話し合われているという。両国の次官級による拡大抑止戦略協議体(EDSCG)などは常勤者や事務室なしで両国が必要に応じて話し合う形だ。米国が朝鮮半島周辺で核弾頭を搭載した戦略爆撃機や原子力空母を展開する頻度をさらに高め、米戦略資産の常時配備と似たような効果を上げる案も取り上げられている。

 サリバン補佐官は、韓国がウクライナに対する殺傷力のある兵器を供与する案も首脳会談で取り上げられるのかという質問には「ウクライナは明らかに対話の重要なテーマになるだろう」とし、「バイデン大統領は韓国の人道支援と制裁および輸出統制支援に感謝を表し、現場の軍事的状況に対する対話を交わす機会を持つだろう」と答えた。この発言後、大統領室関係者は記者団に対し、韓米首脳会談の議題に「ウクライナへの兵器供与」が含まれる可能性について「今のところはない」と述べた。

 サリバン補佐官は、バイデン大統領が日本との関係改善に向けて示した尹大統領の「決心と勇気」を強調する予定だとし、韓米日の協力強化にも言及した。また、サムスン電子や現代自動車、SKなど韓国企業がバイデン政権発足後、1千億ドル(133兆5千億ウォン)を投資し、米国の雇用創出に寄与したという点も強調した。

ワシントン/キム・ミナ記者、イ・ボニョン特派員、クォン・ヒョクチョル記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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緊張の高まりの責任は韓米合同演習にあり、合同演習の状況によって正常角度でのICBM発射や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射など武力示威のレベルを引き上げる可能性を示唆したものとみられる。

2023-02-23 08:24:37 | 韓米軍事同盟は?
 

武力が武力を呼ぶ「悪循環」…再び試される尹政権の安保能力

登録:2023-02-21 06:18 修正:2023-02-21 08:44
 
偶発的衝突を避ける危機管理能力求められる 
北朝鮮「情勢激化の狂信者たちに代償を払わせる」 
SLBM、正常角度でのICBM発射など挑発を予告 
韓国政府「韓米合同演習は予定通り」 
北朝鮮機関5カ所、個人4人を独自制裁対象に
 
 
北朝鮮が東海上に機種の確認されていない弾道ミサイルを発射した20日午前、ソウル駅の待合室で市民が関連ニュースを視聴している/聯合ニュース

 しばらく沈黙を守っていた北朝鮮が、3月の大規模な韓米合同軍事演習を控えて武力示威に乗り出し、また韓米がそれに対抗することで、朝鮮半島の緊張が高まっている。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の危機管理能力も再び試されることになった。

 北朝鮮が18日と20日にそれぞれ発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)と超大型放射砲(短距離弾道ミサイル・SRBM)は、それぞれ戦略核兵器と戦術核兵器に分類される。戦略核は米国を、戦術核は韓国を狙ったものだ。北朝鮮官営「朝鮮中央通信」は、ICBMは「敵対勢力に対する致命的な核反撃能力」を、SRBMは「敵の作戦飛行場の機能を焦土化できる」という点を誇示するのが目的だと明らかにした。

 これに先立ち、北朝鮮は17日の外務省報道官談話で、韓米合同軍事演習を非難し、「米国と南朝鮮が演習の構想をすでに発表した通り実行に移した場合、前例のない強力な対応に直面することになるだろう」と警告した。北朝鮮は談話発表の翌日、ICBM「火星15型」を発射することで、これを実行に移した。韓米は19日、戦略爆撃機(B1B)などを動員して合同空中訓練で対応しており、北朝鮮は20日、これを口実に再び「超大型放射砲(SRBM)」を発射した。

 キム・ヨジョン労働党中央委員会副部長は20日に発表した談話で、「情勢を激化させる狂信者たちにその代償を払わせる意志に変わりがないことを改めて確認する」と述べた。緊張の高まりの責任は韓米合同演習にあり、合同演習の状況によって正常角度でのICBM発射や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射など武力示威のレベルを引き上げる可能性を示唆したものとみられる。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は強対強の対決基調を再確認した。大統領室は同日、キム・ソンハン国家安保室長主宰で安全保障状況点検会議を開いた。大統領室の主要関係者は「大統領室全体が鋭意注視している状況だ。各省庁でそれぞれ状況に合った措置を取っている」と述べた。外交部は同日、北朝鮮の核・ミサイル開発と対北朝鮮制裁の回避に寄与したとして、ソンウォン船舶会社など機関5カ所と個人4人を独自制裁の対象に追加指定した。

 問題は、朝鮮半島が南北・朝米対話の不在の中、軍事的緊張が高まる典型的な「安全保障のジレンマ」の状況に陥っていることだ。北朝鮮の武力示威→韓米の軍事的対応→北朝鮮の対抗という悪循環が繰り返されている。「力による平和の実現」を強調する尹錫悦政権発足以後、著しい現象だ。

 韓国政府は予定されている韓米合同演習を計画通り実施する予定だ。18日、国家安全保障会議(NSC)常任委員会は、「朝鮮半島の平和は強い力によって維持される」とし、「22日(現地時間)、米ワシントンの国防総省庁舎で行われる韓米拡大抑止手段運用演習(DSC TTX)と3月中旬の韓米合同演習および実機動演習(『フリーダムシールド(自由の盾)』訓練)などを通じて対応能力を強化する」と明らかにした。

 北韓大学院大学校のク・カブ教授は「朝鮮半島情勢が『負のスパイラル』に陥っており、少なくとも合同演習が終了する3月末までは緊張が高まるものとみられる」と予想した。 9・19軍事合意がすでに半分ほど無力化した状態で、偶発的な衝突の防止が重要だという指摘もある。キム・ヨンチョル元統一部長官(仁済大学教授)は「非武装地帯など陸上境界地域だけでなく西海(ソヘ)と東海(トンヘ)の境界地域でも偶発的な衝突を避けるための危機管理が求められる」と指摘した。

チョン・インファン、キム・ミナ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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韓国国内の消費者物価上昇率は6.3%(7月現在、23年8カ月ぶりの最高値)、米国は9.1%(6月現在、41年ぶりの最高値)まで急騰した。

2022-12-31 10:51:30 | 韓米軍事同盟は?
 

2022韓国10大ニュース:

尹大統領の「龍山時代」、158人死亡の「梨泰院惨事」

登録:2022-12-27 07:35 修正:2022-12-31 08:14
 
 
                 //ハンギョレ新聞社

1.失言めぐる物議で「出勤時の取材対応」中止…野党との協治が課題に

 3月9日、第20代大統領選挙で尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が当選した。2位のイ・ジェミョン候補(共に民主党)とは得票率0.73ポイント(24万7077票)差だった。5月10日の就任式で尹大統領は「自由、人権、公正、連帯の価値を基盤に国民が真の主人である国を作る」と宣言した。「自由」を35回強調した一方、「統合」は一度も言及しなかった。

 尹大統領は就任と同時に、青瓦台に入らず「龍山(ヨンサン)時代」を開いた。政府発足3週間後の6月1日に行われた第8回地方選挙で、与党「国民の力」は17の市道知事のうち12カ所を制し圧勝した。しかし、すぐに自ら危機を招いた。大統領室は「出勤する大統領を国民が毎日目にし、国民の疑問に随時答える最初の大統領」を「尹錫悦時代」の主な変化に掲げたが、出勤時の取材対応(略式会見)で露呈した尹大統領のずけずけとした発言はしばしば物議を醸した。大統領室の「私的採用」疑惑と「尹核官」(尹大統領の核心関係者)が率いた国民の力のイ・ジュンソク代表追放をめぐる混乱まで加わり、尹大統領の国政遂行支持率は就任3カ月後の8月第2週に24%(韓国ギャラップ調査、信頼水準95%に標本誤差±3.1ポイント)まで落ち込んだ。「外交惨事」と批判された英国、米国、カナダ歴訪直後の9月第5週にも、再び最低(24%)を記録した。これといった国政運営のビジョンが見えない中、「西海(ソヘ)公務員殺害事件」や「東海(トンヘ)漁民送還事件」など文在寅(ムン・ジェイン)政権時代の政策決定に対する検察捜査は急ピッチで進められた。共に民主党のイ・ジェミョン代表を狙った捜査も本格化している。

 尹大統領の出勤時の取材対応は11月、61回目までで中断された。米ニューヨーク歴訪時の卑語発言を初めて報道した「文化放送(MBC)」取材陣に対する大統領専用機搭乗排除と、それに伴う摩擦の中で生じた結果だった。尹大統領が記者団と質疑応答をしていた場所には、視野と動線を遮る間仕切り壁が設置された。

 出勤時の取材対応の中止で失言をめぐる物議が減り、尹大統領の支持率は上がった。貨物連帯のストライキに「法と原則」を前面に掲げて厳しく対応したことも支持率上昇につながったというのが専門家の分析だ。大統領室は、2年目の2023年を労働、教育、年金改革の元年とし、「尹錫悦流政策課題」を実行すると発表した。この過程で欠かせない野党との協治は、依然として大きな課題だ。

 
 
                  //ハンギョレ新聞社

2.セウォル号惨事以来最大の人命被害

 10月29日夜、ソウル龍山区の梨泰院(イテウォン)で158人が圧死し、196人が負傷する惨事が発生した。2014年のセウォル号惨事以来、最大の人命被害だ。ハロウィーンを迎えた週末、梨泰院のハミルトンホテル近くの幅4メートル弱の坂道に数百人が押し寄せ、身動きが取れない状態になったことで起きた悲劇だった。死亡者のうち女性犠牲者が102人(65%)、20代犠牲者は106人(67%)だった。外国人も26人(16%)含まれていた。

 惨事の原因と責任を究明するため、11月1日に警察庁特別捜査本部が発足し、約20人が立件され捜査を受けている。11月24日、国会も国政調査特別調査委員会を設置し、真相調査に乗り出した。遺族は12月14日、梨泰院に市民焼香所を設置し、尹錫悦大統領の謝罪と責任者処罰を求めている。

 
                
                  //ハンギョレ新聞社

3.南北、互いを「主敵」に…朝鮮半島危機高まる

 朝鮮半島の空を戦争危機の恐怖が再び覆った。5月10日の尹錫悦政権発足以降、南北は互いを「主敵」とみなして吠え合った。尹錫悦政権の代表的な統一・北朝鮮政策である「大胆な構想」を、北朝鮮は「李明博(イ・ミョンバク)逆徒の『非核・開放3000』のコピー版」にすぎないと非難した。南北の間で、ミサイルがミサイルを呼び、砲射撃が砲射撃を呼び、また戦闘機による威力示威がさらなる威力示威を呼ぶ「パワーゲーム」が次々と繰り広げられた。南北関係の最後の安全弁と呼ばれる9・19南北軍事分野合意は崖っぷちに追い込まれた。合同参謀本部の発表基準で、北朝鮮は今年、過去最多の弾道ミサイル(36回、75発)を発射した。北朝鮮は「先制核攻撃」を排除しない「核武力政策法」(9月8日)まで作った。2023年には平和の光を再び見ることができるだろうか。

 
 
                   /ハンギョレ新聞社

4.物価高、金利高、ドル高ウォン安の3重苦

 グローバルインフレの圧力が消費、投資、輸出、金融、不動産など経済領域全般に吹き荒れた「経済の年」だった。韓国国内の消費者物価上昇率は6.3%(7月現在、23年8カ月ぶりの最高値)、米国は9.1%(6月現在、41年ぶりの最高値)まで急騰した。金融危機以後、約10年間続いた低金利による高流動性の時代が終わりを告げ、金融引き締めの時代が到来し、政策金利が米国では年率4.25~4.50%、韓国では年率3.25%まで急上昇した。「ジャイアントステップ」や「ビッグステップ」などの聞きなれない言葉が日常用語となった。インフレに端を発した金利ショックや輸出減速、貿易赤字の持続により、ウォンの相場も変動し、1ドル当たり1444.20ウォン(10月25日)までウォン安が進んだ。物価高、金利高、ドル高ウォン安の影響が本格的に押し寄せる「逆境の2023年」が目の前に来ている。

 
 
                         //ハンギョレ新聞社

5.ストーキング、性暴力…繰り返される「ジェンダー殺人」

 悲劇が再び繰り返された。女性であるというだけで犠牲になった人たちが今年もいた。2016年のソウル江南(カンナム)駅殺人事件から6年が経ったが、韓国社会はあまり変わっていない。9月、ソウル地下鉄2号線の新堂(シンダン)駅の女子トイレを巡回していた女性駅員が殺害された。犯人は被害者をストーキングしていた職場の同僚だった。ストーカー容疑で在宅起訴の状態で裁判を受け、1審判決を翌日に控えて殺人を犯した。同事件で「ストーキング被害者保護法」制定が急がれるという声が高まったが、同法案は国会の敷居を越えられずにいる。7月には仁荷大学で被害者が性的暴行を受け死亡する事件が発生した。同級生の加害者は、被害者に性的暴行を加えたうえ、押して墜落死させた容疑で起訴された。加害者は18回反省文を書いて裁判所に提出したが、検察は無期懲役を求刑した。

 
 
                   //ハンギョレ新聞社

6.カカオトークの通信障害で日常も麻痺

 10月15日、SK C&C板橋(パンギョ)データセンターの火災で、カカオトークのサービスが止まり、韓国の日常も立ち止まった。「国民メッセンジャー」のカカオトーク障害でオンライン対話が途絶え、タクシー利用(カカオT)、送金・決済(カカオペイ)、ポータル検索(ダウム)、音楽ストリーミング(Melon)、ウェブトゥーンの購読(カカオウェブトゥーン)の障害などで、多くの人が不便を強いられた。カカオサービスが復旧するまでにかかった127時間33分は、プラットフォーム独寡占時代の危険性が露呈した時間だった。カカオのナムグン・フン各自代表が辞任し、非常対策委員会体制に転換した。カカオは自主調査を通じてデータセンターの二重化が不十分であり、人材および可用資源が不足していたとし、インフラ構築への投資費用を大幅に増やすと約束した。データセンターとプラットフォーム事業者の災害管理対策の樹立などを義務化した「カカオ通信障害防止法」も国会を通過し、来年施行される。

 
 
                 //ハンギョレ新聞社

7.2年ぶりに「ウィズコロナ」に挑戦

 学校の教室が再び開かれた。野外でマスクを外す自由も戻ってきた。4月、政府は集まりの人数制限など人と人の接触を最小化する「社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)」を2年ぶりに解除した。これでコロナと共存する「ウィズコロナ」時代が開かれた。新型コロナウイルスによる社会経済的被害を最小限に抑えながらも、持続可能な防疫体制を整えるための挑戦だ。

 しかし、11月に入って冬季流行(第7波)が押し寄せ、医療現場では新規の重症患者の受け入れが難しいという声があがっている。高齢層と基礎疾患を有する者の健康被害を防ぐためには、より良いシステムの構築が必要だ。病気になったら休める権利が保障されない限り、経済的脆弱層が政府の勧告通り「自発的な社会的距離措置」に参加することは不可能だ。

 
 
                                        //ハンギョレ新聞社

8.記録的豪雨で14人死亡、6人行方不明

 今年は記録的な豪雨や日照りなど気候変動にともなう異常気候を体感せざるをえなかった1年だった。8月、首都圏と江原道、忠清南道などに降った大雨で14人が死亡し、6人が行方不明になった。特に、ソウルの1日降水量では気象観測115年目にして最高値を記録した。9月に朝鮮半島を襲った台風「ヒンナムノー(台風11号)」で慶尚北道浦項(ポハン)などでも人命被害(死亡・行方不明12人)が相次いだ。一方、全羅南道地域では22日基準で今年1年間の降水量が845.8ミリにとどまり、記録的な日照りが続いた。これは1995年(843.2ミリ)を除いては1973年以来最悪の日照りだ。異常気象はこれだけではない。11月末の暖かい気温で、朝鮮半島各地で春の花であるレンギョウとツツジが咲いたが、12月中旬からは最低気温氷点下10度前後の厳しい寒さが続いている。

 
 
                    //ハンギョレ新聞社

9.「K映画」ブーム繋いだ『別れる決心』

 映画『パラサイト 半地下の家族』の2019年カンヌ国際映画祭と2020年アカデミー同時席巻、2021年ネットフリックスシリーズ「イカゲーム」の世界市場制覇に続き、2022年にも韓国コンテンツの勢いは留まる所を知らなかった。第75回カンヌ国際映画祭でパク・チャヌク監督が『別れる決心』で監督賞を、俳優ソン・ガンホが『ベイビー・ブローカー』(是枝裕和監督)で主演男優賞を受賞した。メロドラマとミステリーをパク・チャヌク流に描いた『別れる決心』は、カンヌで公開された時、海外メディアの絶賛を受け、最高評点を記録した。パク監督はこれで2004年『オールドボーイ』でグランプリ、2009年『渇き』で審査員賞に続き、3度目のカンヌ受賞の栄誉に輝いた。『別れる決心』は来年3月に開かれるアカデミー国際長編映画賞のショートリスト(予備候補)にも含まれ、さらなる成果への期待が高まっている。

 
 
                    //ハンギョレ新聞社

10.「労働改革」を掲げ、労組のストライキを弾圧

 検察出身の尹錫悦大統領は労働組合と労働界を「対話と妥協」の相手とみなさず、「法と原則」により処罰し改革すべき対象と捉えた。6月2日から慶南巨済(コジェ)の大宇造船海洋玉浦造船所で51日間続いた下請け労働者のストライキ当時、公権力の行使と損害賠償請求訴訟を掲げて圧力をかけた。11月24日から16日間続いた安全運賃制サンセット条項の廃止と品目拡大を要求する貨物連帯の2次ストライキの時も、初の業務開始命令などを発動し、全面降伏を引き出した。だが、尹大統領はここに留まらず、「労組腐敗は3大腐敗の一つ」だとして、労働組合財政の透明化などさらなる攻勢をかけている。年が明けて本格的に「労働改革」が進められれば、その勢いはさらに増すものとみられる。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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韓米は同日、江原道鉄原三栗里(チョルウォン・サミュルリ)のダムト射撃場で前日に続き、多連装ロケット発射システム(MLRS)訓練を行った。韓米は2日間、多連装ロケット57発を撃ったという。

2022-12-08 09:22:39 | 韓米軍事同盟は?
 

南北の熾烈な「舌戦」…互いの砲射撃を「挑発」と主張

登録:2022-12-07 06:46 修正:2022-12-07 07:48
 
1日2~3回の立場表明で世論戦
 
 
北朝鮮の金正恩国務委員長は9月25日から10月9日にかけて、北朝鮮軍戦術核運用部隊や長距離砲兵部隊などの訓練を視察した。写真は当時の放射砲訓練の様子/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 南北は5日から2日連続で砲射撃を行う一方、互いの砲射撃を「挑発」と主張し、即刻中止を求めた。韓国は国防部担当記者らに3回(北朝鮮軍砲射撃状況に関するショートメールの告知2回と、国防部の立場発表)にわたり状況と主張を伝えており、北朝鮮は総参謀部報道官発表を2回行った。韓米は同日、江原道鉄原三栗里(チョルウォン・サミュルリ)のダムト射撃場で前日に続き、多連装ロケット発射システム(MLRS)訓練を行った。韓米は2日間、多連装ロケット57発を撃ったという。

 合同参謀本部によると、北朝鮮は同日午前10時頃から江原道高城郡(コソングン)一帯から東海上に約90発、午後6時頃から江原道金剛郡(クムガングン)一帯から東海上に約10発の放射砲を発射した。北朝鮮は前日に続き2日連続で放射砲射撃を行い、同日も「敵側で発生した挑発的軍事行動に対応したもの」だと主張した。

 北朝鮮軍総参謀部は午前、報道官の発表を通じて「昨日(5日)に続き、今日9時15分頃から敵が再び戦線近接一帯で放射砲と曲射砲を射撃する情況が見られた」とし、「前線砲兵区分隊に直ちに強力対応をする警告を目的とした海上実弾砲射撃を断行するよう命令した」と明らかにした。さらに「敵側は戦線近接地帯で挑発的な軍事行動を直ちに中断すべきだ」と主張した。

 これに対し、合同参謀本部は同日午後5時34分と午後7時33分、担当記者団にショートメールを送り、「(北朝鮮の放射砲)砲弾が落ちた場所は(9・19南北軍事合意で砲射撃が禁止された)北方限界線(NLL)以北の海上緩衝区域(北朝鮮の海)」だと説明した。合同参謀本部は「東海上の緩衝区域への相次ぐ砲兵射撃は明白な『9・19軍事合意違反』であり、直ちに中止することを強く要求」した。

 国防部も同日午後8時2分頃、「国防部の立場」を発表し、「現在進行中の韓米合同砲兵射撃訓練は、『9・19軍事合意』に基づいて砲兵射撃訓練が中止された地上緩衝区域(軍事境界線以南5キロメートル)の外で実施された正常な訓練だ」としたうえで「北朝鮮側が韓米の正常な訓練を不当に非難し、むしろ『9・19軍事合意』に違反する海上砲射撃を繰り返す行為は決して容認できない」と明らかにした。さらに「北朝鮮側の一方的で持続的な『9・19軍事合意』違反でもたらされる結果について、北朝鮮にすべての責任があることを厳重に警告する」と述べた。

 北朝鮮軍総参謀部報道官は同日午後8時頃、北朝鮮官営の「朝鮮中央通信」を通じて発表を行い、「前線近接地域における敵の砲射撃挑発に対する対応および警告目的の一環として、82発の放射砲弾を8時間30分にわたって海上に向かって射撃した」とし、「これは敵の計画された陰険な挑発の試みに対するわが軍の対応および警告を目的とする軍事行動だったことを明確にする」と主張した。また「わが軍は前線近隣地帯で刺激的な軍事行動を直ちに中止するよう、敵側にもう一度厳重に警告する」と付け加えた。

 総参謀部報道官は「敵は意図的に数十発の放射砲弾射撃を肉眼監視が可能な前線一帯の射撃場で行い、我々のやむを得ない対応を誘発させた後、『9・19南北軍事分野合意』に対する『違反』という常套的な詭弁を並べ、我々に責任を転嫁しようとしている」と述べた。さらに「9・19北南軍事分野合意に対する違反を論じるならば、敵が過去に行った合意違反行為からまず振り返らなければならない」と明らかにした。

 南北が相手の軍事行動を挑発と主張し、状況悪化の責任を転嫁していることから、南北の間でしばらく互いに「対抗」するための軍事行動が続くものとみられる。

クォン・ヒョクチョル記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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