「非核化」問題をめぐり全く異なる認識を示した朝米が、まず「核能力の凍結」と制裁緩和および関係正常化の推進などをまとめて「段階的包括交渉」を試みるまでは、少なからぬ時間を要するというのが大方の見解だ。

2025-01-31 13:39:20 | アメリカの対応
 

朝米首脳の熾烈な駆け引き…対話の接点見出せるか

登録:2025-01-31 06:40 修正:2025-01-31 07:23
 
 
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記兼国務委員長が「核物質生産基地と核兵器研究所」を視察し、「今年の兵器級核物質生産計画を超過遂行し、国の核の盾を強化することで画期的な成果を成し遂げなければならない」と指示したと、労働新聞が29日付で報じた/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記兼国務委員長とドナルド・トランプ米大統領が熾烈な駆け引きを繰り広げている。トランプ大統領がメディアとのインタビューで「金正恩(国務委員長)に連絡する」と述べ、対話のシグナルを送ったが、金正恩委員長は「核の盾の強化」を掲げ、それを無視した。「絶対に核を放棄しない」という態度を維持し、「非核化交渉はない」という従来の路線を再確認したのだ。二人はまだ対話に乗り出す接点を見出せずにいる。

 北朝鮮官営「労働新聞」の29日付の報道によると、金委員長は「核物質生産基地と核兵器研究所」を視察し、「今年の兵器級核物質生産計画を超過遂行し、国の核の盾を強化することで画期的な成果を成し遂げなければならない」と指示したという。同紙は金委員長の訪問した日付と施設の具体的な位置については明らかにしなかった。

 北朝鮮が金委員長による核物質生産基地・核兵器研究所の視察を報道したのは、昨年9月13日の「労働新聞」の初報道以来だ。特に今回の報道は、トランプ大統領が23日(現地時間)のFOXニュースのインタビューで、金委員長は「宗教的狂信者ではなく『賢い男』(smart guy)」だとし「彼に連絡する」と述べた後に出てきた。そのうえ、トランプ大統領は就任当日(20日)にも、「金正恩は核を持っているが(nuclear power)、我々はうまく行っていた。彼は私の復帰を歓迎すると思う」とし、「会って話したい」という意向をほのめかしている。

 金委員長が訪問した両施設は、北朝鮮の核能力の頭脳や心臓に匹敵するだけに、今回の報道が発信する政治的シグナルであることは明らかだ。金委員長が北朝鮮の安全保障について「最も奸悪な敵対国との長期的対決が避けられない状況」だとしながらも、「核の盾の不断の強化」を強調した部分で、簡単に交渉テーブルに座るつもりはないという意向が読み取れる。金委員長は「力による平和、力による安全保障」を強調し、「核対応態勢を無限に進化させることは確固たる政治・軍事的立場」だと明らかにした。金委員長はトランプ大統領の再選が確定した直後の昨年末、労働党中央委員会第8期第11回全員会議(2024年12月23~27日)でも、米国を「反共を国是としている最も反動的な国家的実体」だとし、「最強硬対米対応戦略」を掲げた。

 ただし、「これまで歩んできた道を突き進む」という金委員長の態度が「頑なな拒否」とは限らない。核物質の生産基地を視察した事実を公開することで、「今この時間にも北朝鮮の核能力は強化されている」という無言の示威を行い、「追い込まれて焦っているのは、私ではなくトランプの方」であることを知らしめようとしているともいえる。

 こうした中、米国家安全保障会議(NSC)のブライアン・ヒューズ報道官は28日、「聯合ニュース」のインタビューで、「トランプ大統領は政権1期目と同様、北朝鮮の完全な非核化を目指す」と明らかにした。トランプ大統領が北朝鮮を「核保有国」(nuclear power)とし、「現実」に焦点を合わせたとすれば、NSC報道官は「原則」を強調し、一種の「役割分担」をしているとみられる。

 「非核化」問題をめぐり全く異なる認識を示した朝米が、まず「核能力の凍結」と制裁緩和および関係正常化の推進などをまとめて「段階的包括交渉」を試みるまでは、少なからぬ時間を要するというのが大方の見解だ。ご飯を食べるためには、苗を植えて夏の間に育てて収穫をし、米を洗って釜で炊くという長い忍苦の時間が欠かせない世の理と変わらない。元政府高官は30日、「核問題をめぐる朝米の交渉の試みを韓国は積極的に支持・鼓舞し、その中で韓国の役割を拡大しようとする戦略的アプローチを考えなければならない」と語った。

イ・ジェフン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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山添氏は、トランプ氏が北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対し、国防費を国内総生産(GDP)比3%に増額すべきだと求め、NATO側も応じる動きを見せていると指摘。

2024-12-23 11:27:12 | アメリカの対応

2024年12月23日(月)

日米同盟絶対視 脱却を

NHK「日曜討論」 山添氏が指摘

 日本共産党の山添拓政策委員長は、22日のNHK「日曜討論」で今後の日米関係について「トランプ次期大統領の言いなりで軍事費を拡大すれば、さらなる増税になりかねず、日米同盟絶対という思考停止の状態から抜け出すべきだ」と強調しました。

 山添氏は、トランプ氏が北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対し、国防費を国内総生産(GDP)比3%に増額すべきだと求め、NATO側も応じる動きを見せていると指摘。岸田前政権がGDP比2%への軍事費増額を決めたのも、トランプ氏の要求がきっかけだったと言及。山添氏が6日の参院予算委員会で軍事費を2%以上に増やすのかをただすと、石破首相は否定しなかったとして、「いまこの調子では、トランプ氏の言いなりで軍事費をどんどん拡大し、さらなる増税になりかねない」と批判しました。

 番組では、各党の政策責任者も見解を示しました。「安全保障の機軸は日米だ」(自民党の小野寺五典政調会長)、「トランプ氏でも日米関係を維持する」(国民民主党の浜口誠政調会長)、「日米同盟が最も大切だ」(公明党の岡本三成政調会長)などと日米同盟を絶対視する発言が相次ぎました。立憲民主党の重徳和彦政調会長も「アジアの安全保障にアメリカをつなぎとめることが大事だ」と述べました。

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朝米関係改善が中国との戦略競争で優位に立つことに寄与し、米国内で超党派的に出ている戦略的懸念である「中国・ロシア・北朝鮮・イラン連帯」を阻止できると考える可能性もある。

2024-11-11 10:16:18 | アメリカの対応
 

トランプ氏の帰還、

朝米首脳会談「シーズン2」始まるか【コラム】

登録:2024-11-11 05:32 修正:2024-11-11 10:01
 
 
6日(現地時間)米国の第47代大統領の当選が事実上確定したドナルド・トランプ前大統領が、フロリダ州ウェストパームビーチにあるコンベンションセンターで勝利宣言をしている=ウェストパームビーチ/AP・聯合ニュース

 米国大統領選で共和党のドナルド・トランプ前大統領が勝利した。2016年のトランプ氏の当選は米国政治における一時的な「逸脱」だとみなされてきたが、彼の再選で「トランピズム」が「日常」になっているという診断さえ出ている。トランプ氏が選挙人団だけでなく全国の得票者数でも上回り、共和党が上院はもちろん下院まで席巻する可能性が高いという点で、なおさらだ。

 トランプ氏が帰還してからよく聞く質問は「朝米首脳会談は再び開かれるだろうか」だ。私の予測は、2025年は「中間」程度で、2026年は「高い」だ。では、成果はどうなるだろうか。金正恩(キム・ジョンウン)政権と第2次トランプ政権は「互いに満足できる合意」に達するとみられるが、韓国からは交錯した評価が出てくる公算が高い。

 当然、相反する予測も可能だ。まず、対北朝鮮政策自体がトランプ政権の1期目のときとは違い、2期目では対外政策の優先順位が高いとはみなしがたい。トランプ氏が「24時間以内に終わらせる」と大言壮語したロシア・ウクライナ戦争の問題が最優先だ。悪化の一途をたどっている中東紛争も同じだ。米中戦略競争で勝利するという意志は、戦略的に上位の順位に該当する。また、韓国と北朝鮮の溝も大きい。第1次トランプ政権のときは、文在寅(ムン・ジェイン)政権が朝米首脳会談の積極的な仲裁者に乗りだしたが、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は北朝鮮に対しては強硬基調から一歩も脱していない。米国との関係正常化を最優先課題にして首脳会談に臨んだ金正恩政権は、対米交渉の期間として提示した2019年が過ぎると、未練を捨て、「安全保障は核で、経済は自力更正と自給自足で、外交は中国・ロシアと行う」という「新たな道」を歩んできた。

 それでも、朝米首脳会談が実現する可能性が高いとみる理由は何だろうか。まず、金正恩委員長との会談を通じて問題を解決するというトランプ氏の意志は一貫して確固としている。トランプ氏は政界進出を模索していた2010年代初期から、朝米首脳会談が必要だと主張しており、2016年の大統領選の際には、ヒラリー・クリントン候補側から「親北朝鮮主義者」だと非難されても、信念を曲げなかった。2024年の大統領選の期間も同じだった。特に7月中旬の共和党全党大会の大統領候補の指名受諾演説で「私は北朝鮮の金正恩とうまくやってきた」とし、「われわれは北朝鮮のミサイル発射を中断させた」と主張した。さらに、「今の北朝鮮は再び挑発を続けている」とし「多くの核兵器を持つ者と仲良くすることは良いこと」であり、「われわれが再会すれば、私は彼らとうまくやれる」と強調した。トランプ氏のある側近は「トランプ氏は就任と同時に『非常に適した人』を北朝鮮特使に指名する予定だ。特使をすぐに平壌(ピョンヤン)に送り、首脳会談に進展させる方法を議論するだろう」と語った。

■会談の意志固いトランプ 
就任と同時に対北朝鮮特使を派遣か 
早ければ来年に会談実現の可能性 
米国は関係改善を通じて中国をけん制 
「ロシア・中国・北朝鮮・イラン連帯」の遮断を期待 
北朝鮮は「戦略的地位」を固める機会に

 このようなトランプ氏の所信と、優先順位が高いウクライナ戦争や米中戦略競争などの他の対外政策の間で、食い違いが生じる可能性はある。しかし、これらの事案と対北朝鮮政策は「結びついた問題」だ。トランプ氏がウクライナ戦争を終わらせるためには、伏兵として浮上した北朝鮮の派兵問題も視野に入れざるをえない。北朝鮮との連絡チャネルが完全に閉ざされたバイデン政権が、空しく懸念だけを表明したとすれば、トランプ氏は金正恩委員長との親密な仲を前面に掲げ、北朝鮮特使の派遣などを通じて北朝鮮の派兵問題を解決できると主張する可能性があるということだ。また、朝米関係改善が中国との戦略競争で優位に立つことに寄与し、米国内で超党派的に出ている戦略的懸念である「中国・ロシア・北朝鮮・イラン連帯」を阻止できると考える可能性もある。

 しかし、外交は相手がいるゲームだ。トランプ氏が首脳会談を打診したとしても、金正恩委員長が応じるかどうかは不明だということだ。実際のところ、「対米関係正常化の放棄と対米長期戦突入」を核とする北朝鮮の大転換は、2019年末から、すなわちトランプ政権1期目の中盤から起きた。そして、かなりの成果を出していると自評している。このような北朝鮮の転換は、「米国の対朝鮮敵対視政策」の顕著な変化が先に出てこない限り、簡単には変わらないだろう。同時に、トランプ氏の再登場は、金正恩委員長の戦略的算法にも影響を及ぼすことになるだろう。その予告編はすでに出てきている。

 米国大統領選をめぐり、現在までに北朝鮮から出ている立場は2つある。1つ目は、7月23日に朝鮮中央通信がトランプ氏に対して「公は公、私は私」だとしたうえで、「米国は朝米対決の得失について誠実に考えて、正しい選択をする方がよかろう」と論評したことだ。これは、金正恩委員長が2018年から2019年に築いたトランプ氏との個人的な絆が、朝米関係を新たにしうる「神秘的な力」だと感じた過ちを繰り返さないという意味だ。2つ目は、8月4日に出てきた金正恩委員長の発言だ。米国について「対話も対決もわれわれの選択肢になりうるが、われわれがより徹底的に準備しておくべきは対決」だと述べた。対決に重点が置かれているが、金委員長が対話に言及したのは、2021年6月の労働党全員会議以来3年2カ月ぶりのことだ。

 これらをみると、北朝鮮はトランプ氏の当選をきっかけに、対外戦略路線の再検討に入る可能性が存在する。なにより「公私の区別」を強調したのは、もう二度と失敗はしないという意味もあるが、公と私がどれくらい一致するのかについては、今後を見守るという意味も含まれている。北朝鮮は朝米首脳会談のプロセスが失敗に終わったのは、当時のマイク・ポンペオ国務長官やジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)などの「Xメン」の策略が大きかったとみている。このため北朝鮮は、朝米首脳会談を急ぐよりも、第2次トランプ政権の外交安保チームの構成と立場をまずは見守るだろう。また、トランプ氏は1期目には「大人たち」もしくは「抵抗勢力」と呼ばれた反対派勢力を最大限排除し、2期目は「忠誠派」で参謀を構成する可能性が確実視されている。これにともない、第2次トランプ政権の対北朝鮮政策の「内部的均質性」は1期目より強まるだろう。

■会談の議題は 
ロシア・ウクライナ戦争、米中戦略競争など 
米国の対北朝鮮政策と「つながる問題」 
「互いに満足」できる合意を引き出すために 
北朝鮮が同意しない「非核化議題」の代わりに 
軍拡統制・核削減に重点を置く見込み

 何より北朝鮮は、トランプ氏の帰還が自身の目標を実現できる契機となるかどうかに注目するだろう。北朝鮮の目標は、最近強調している「戦略国家」「戦略的均衡」そして「国際秩序の多極化」から答えを探ることができる。これら3つの目標を合わせたものこそ、核保有国としての地位を強硬にすることだ。すでに核武力法の制定と憲法改正を通じて国内的な手続きを終えた北朝鮮は、外部からもこのような地位を確保しようとしている。ロシアのプーチン大統領はすでに北朝鮮を核保有国と認定した状況だ。金正恩政権はこれをテコとして、中国の習近平政権にも核保有国の認定を要求しているが、これがまさに最近の朝中関係に冷気が流れている本質的な理由だ。そこへ、「核兵器を持つ者と仲良くすることは良いこと」だと言っていたトランプ氏が米国の大統領になった。金正恩委員長としては、もう一つのチャンスのドアが開かれていると感じてもおかしくない。

 おそらくウクライナ戦争が休戦・終息すれば、朝ロ関係も調整に入るだろう。そして、北朝鮮は米国と中国を同時にみるだろう。朝米首脳会談はそのための有力なカードになりうる。2018年から2019年に金正恩委員長とトランプ氏が3回会談した際、過去には一度もなかった金正恩・習近平首脳会談が5回も行われた。再び朝米首脳会談のプロセスが進めば、朝中関係も冷気を払いのけて強化されうるという意味だ。特に金正恩委員長がトランプ氏から北朝鮮の制限的な核保有を容認されれば、習近平主席を説得することも容易になりうる。これを通じて北朝鮮は、核保有国の地位を強固にしながらも、「朝ロ同盟維持・朝中関係強化・朝米関係改善」というこれまで一度も経験できなかった戦略的地位を築くことができる。

 ならば、北朝鮮が第2次トランプ政権が推進するとみられる朝米首脳会談に呼応する時期はいつになるだろうか。これについては北朝鮮の政治日程も重要だ。トランプ氏が就任する2025年は、北朝鮮が2021年の第8次党大会で宣言した国家発展5カ年計画の最後の年に該当する。これにともない、来年は5カ年計画の目標達成に総力を挙げ、2026年に開くとみられる第9次党大会を機に、対米戦略の輪郭が示されるだろう。3回目の朝米首脳会談が2026年に行われると予想するのはこのためだ。もちろん、その時期が早まるか可能性もある。トランプ氏が就任直後に対北朝鮮特使を打診して北朝鮮が呼応し、朝米首脳会談の条件と環境に共感が生まれれば、来年にも開かれる可能性がある。

 朝米首脳会談が開かれれば、「互いに満足できる合意」に到達する可能性も存在する。「シーズン1」ではトランプ氏は完全な非核化を、金正恩委員長は対北朝鮮制裁の解除で「早期収穫」を望んだ。これに対して「シーズン2」では、非核化と制裁が最大の議題にはならないだろう。北朝鮮が非核化を議題とする交渉に同意する可能性もまったくなく、米国でも非核化は当面は現実可能な目標ではないとして、まずは軍拡統制から推進すべきだとする声が高まっている。また、制裁解除を渇望する北朝鮮は、2021年の党大会を通じて、制裁を自力更正と自給自足を実現できる「良い機会」とみなし、立場を変えた。北朝鮮にとって制裁解除が「渇望の対象」から「不敢請固所願」(自分からは動かず、相手が自分の望みを実現してくれるよう願うこと)に変わったため、北朝鮮が対米交渉で制裁解除を先に強く提起することはないだろうということだ。

 では、互いに満足できる合意とは何だろうか。「米国第一主義」を掲げているトランプ氏は、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)問題に強い関心を示すだろう。カギはどの程度の水準に目標値を設定するかにある。最低レベルの目標は、北朝鮮にICBM発射の中止を約束させることだ、最高レベルの目標は、北朝鮮が保有するICBMの廃棄だといえる。前者は北朝鮮が受け入れる可能性があるが、後者は短期的にはない。そのため、ICBM試験発射の中止「プラスα」が重要になりうる。これには、ICBM凍結、核実験中止や豊渓里(プンゲリ)核実験場の完全閉鎖、そして寧辺(ヨンビョン)核施設の廃棄などの追加的な核兵器生産中止がありえる。そして、これに対する相応措置としては、韓米合同演習や米国の戦略資産展開の中止・縮小、対北朝鮮制裁の緩和と朝米関係改善、朝鮮半島緊張緩和案、さらには停戦体制の平和体制への転換などが議論される可能性がある。

 つまり、朝米は非核化の代わりに、軍拡統制や核縮小の協議に重点を置く可能性が高いということだ。これについて韓国内では、陣営を越えて「最悪のシナリオ」や「悪夢」だとする人が多い。また、尹錫悦政権が朝米接近をけん制するために「非核化は韓米共通の目標」だとする点を強調し、トランプ氏が望む防衛費分担金の引き上げや対米投資拡大などに同意する可能性もある。しかし、私たちにとっての最悪は戦争だ。次悪は軍拡競争の激化と戦争のリスクの高まりだ。最善が当面の間不可能であるのなら、軍拡統制という次善の策に対する拒否感を捨てるときだという意味だ。

チョン・ウクシク|ハンギョレ平和研究所所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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韓国がロシアとの関係をどのように管理できるかが、イデオロギー外交に突き進んできた「尹錫悦外交」がトランプ2.0時代に適応できるかを占う重要なバロメーターになるとみられる。

2024-11-09 11:48:21 | アメリカの対応
 

韓国、韓米同盟に全賭けしてきたが…

「米国第一主義」の嵐がやって来る

登録:2024-11-08 01:36 修正:2024-11-08 08:08
 
 
米共和党の大統領候補のドナルド・トランプ前大統領が6日(現地時間)、フロリダ州ウェストパームビーチにあるコンベンションセンターに現れ、支持者に向かって拳を振り上げ微笑んでいる=ウェストパームビーチ/AP・聯合ニュース

 「米国第一主義」をいっそう高く掲げてトランプが帰ってきた。「自由主義」の先頭に立つとして韓米同盟にすべてをかけてきた尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の外交に、巨大な嵐が迫りつつある。

 トランプの再選は、韓国が過去70年あまりにわたって馴染んできた米国主導の自由主義国際秩序が揺らぐ「大変動の時代」に直面したことを意味する。尹錫悦政権は「寛大な味方である米国」という幻想に寄りかかって国際情勢の冷静な現実を無視し、イデオロギーにとらわれた「ネオコン」外交で疾走してきたが、トランプの登場でその土台そのものが崩壊した。このかん北朝鮮の核能力は強化され、南北関係は戦争が懸念されるほど悪化しており、北朝鮮とロシアは密着した。中国やロシアとの関係を悪化させつつ尹錫悦政権がすべてをかけてきた韓米日協力の未来も、極めて不透明になった。

■「韓国はマネーマシーン」トランプ、防衛費で圧力かけ同盟揺さぶるか

 来年1月に「トランプ2.0」がはじまれば、韓米同盟はまず在韓米軍の「防衛費」問題で試されると予想される。

 韓米は今月4日、2026年から適用される在韓米軍防衛費分担金特別協定(SMA)に署名した。SMAは2026年の分担金を前年度に比べ8.3%上昇の1兆5192億ウォンと定め、その後も消費者物価指数(CPI)の増加率を反映して毎年引き上げていくとしている。現行の協定の満了まで2年近く残っている中、韓米両政府が異例にも交渉を急いだのは、トランプが大幅な引き上げを要求する可能性の遮断を意図したものだったが、むしろ逆効果になる可能性が高い。

 トランプは「韓国はマネーマシーン(Money Machine)」、「(防衛費分担金として)年間100億ドル」を要求するとして、選挙運動の間中、韓国の防衛費の大幅引き上げを主張してきた。年間100億ドルというのは、韓米が特別協定で合意した金額の9倍近い。大統領室の関係者は6日、トランプが防衛費分担金合意を破棄する可能性について問われ、「米国の大統領選挙の結果がどうあれ、私たちが十分に協議した結果として基準点を提示する効果があるはず」だと語ったが、希望にとどまることが非常に懸念される。

 専門家は、交渉を急いだことがかえってトランプの目を引きつけ、韓国が標的にされる可能性が高いだけでなく、トランプが交渉カードとして在韓米軍の削減などを主張することで、韓米同盟の亀裂が拡大すると予想する。世宗研究所のキム・ジョンソプ首席研究委員は、「韓国はぜい弱な位置にあるため防衛費の大幅引き上げへと引っ張っていかれる可能性があり、交渉過程でトランプ大統領に在韓米軍の大幅削減や撤退を主張されて圧力をかけられたら、拡大抑止に対する信頼が揺らぐとともに、韓国の核武装論が大きく浮上することになるだろう」との見通しを示した。

 尹錫悦政権が注力してきた「韓米日協力」の動力も、大きく下がる可能性が高い。韓米日協力はトランプの強調する中国けん制という目標に役立つため、完全に廃棄されることはないだろうが、バイデン大統領の主要政策である「韓米日協力」が積極的に推進される可能性は低い。そのうえ、トランプは同盟に気を使わない米国第一主義を追求しているため、「韓米日協力」ではなく韓国に対する安保コストの要求に集中すると考えられる。

 
 
チョ・テヨル外交部長官とフィリップ・ゴールドバーグ駐韓米国大使が4日午後、ソウルの外交部庁舎で韓米防衛費分担特別協定(SMA)に署名している=外交部提供//ハンギョレ新聞社

■トランプと金正恩が再会したら、韓国の立場は

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長はトランプに対して核保有を認めた上での交渉を求めつつ、韓国の立場を徹底的に排除する「通米封南」を追求すると予想される。トランプと金正恩の首脳会談が行われた2018~2019年に比べて北朝鮮の核やミサイルの能力は大幅に高まっており、南北関係は最悪で、韓国の声は反映されにくい。トランプが北朝鮮の要求どおり核保有を事実上認めるかたちの交渉をはじめ、韓国の安保に対する懸念を反映しないかたちで妥協した場合、韓国の安保環境は想像し難い危機に直面することになる。

 キム・ジョンソプ首席研究委員は、「北朝鮮はトランプが北朝鮮の核保有を認めた状態で交渉を提案してくれば拒まないだろうし、トランプは大陸間弾道ミサイル(ICBM)などの米国の安全を脅かす部分だけを除去しようと言って北朝鮮に接近する可能性がある」と述べた。北朝鮮の金正恩国務委員長は今、ロシアという新たな活路が生じたため、2018~2019年のように米国との交渉を急いでいるわけではないが、新たな選択肢がもう一つできることを拒む理由はないということだ。キム首席研究委員は、「トランプが実際に交渉に乗り出せば韓国が朝米交渉に反対しても無駄であろうし、韓国の立場を反映できるかも不透明な、非常に難しい状況に直面することになるだろう」との予想を示した。

 
 
2019年2月28日、米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩国務委員長がベトナムのハノイで首脳会談に臨んでいる=ハノイ/EPA・聯合ニュース

■ウクライナ戦争と北朝鮮の派兵、朝ロ密着はどこへ

 トランプの登場は、ウクライナ戦争を媒介とした朝ロ密着には二面的な影響を及ぼすとみられる。韓国国防研究院(KIDA)のトゥ・ジンホ国際戦略研究室長は、「ロシアは笑いを隠してこれまでの道を行くだろう。ウクライナに対する封鎖をさらに強化することで、米国内で『現実を直視しよう』という認識を広げるとともに、西側の結束を瓦解させて有利に戦争を終えようとするだろう」と予想した。このようなプーチンの戦略に合わせて、北朝鮮軍のウクライナ戦争での役割もしばらく終わらない可能性が高い。トゥ研究室長は「北朝鮮もいったん決断を下した以上、所期の成果が必要だ。北朝鮮とロシアはひとまずクルスクで連合態勢を確立したうえで、他の地域への北朝鮮軍の投入を検討しつつ、自分たちのタイムテーブル通りに攻勢を強めていくだろう」と予想した。そうなった場合、北朝鮮はウクライナ戦争が終わった時、「共同勝利国」としての成果を誇示しうる。

 だが、トランプが公言通り速やかにウクライナ戦争を終わらせた場合は、朝ロ密着の動力は弱まると予想される。トゥ研究室長は「ウクライナ戦争の終結後も朝ロ密着はかなりのあいだ続くだろうが、戦争が短期間のうちに終われば北朝鮮が受け取れるパイは減り、朝ロ協力の動力も弱まるだろう」との見通しを示した。韓国がロシアとの関係をどのように管理できるかが、イデオロギー外交に突き進んできた「尹錫悦外交」がトランプ2.0時代に適応できるかを占う重要なバロメーターになるとみられる。

パク・ミンヒ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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米ワシントンでは25日、シン・ウォンシク国家安保室長、米国のジェイク・サリバン大統領補佐官(安全保障担当)、日本の秋葉剛男国家安全保障局長が3カ国の安全保障担当高官協議を行った。

2024-10-28 11:42:15 | アメリカの対応
 

「北朝鮮軍数千人、ロシアのクルスクに到着」…

戦場投入されるかに注目集まる

登録:2024-10-28 06:32 修正:2024-10-28 07:00
 
 
NYT報道「戦闘に参加するかは不明」 
共同通信「キム・ヨンボク副総参謀長、ロシア入り」
 
 
2018年9月9日、北朝鮮の平壌で開かれた北朝鮮建国70周年記念パレードで、軍人たちが行進している=平壌/AP・聯合ニュース

 北朝鮮軍数千人がロシア西部のクルスク地域に到着したと、米紙ニューヨーク・タイムズが米国当局者の話として報道した。韓米日3カ国の安全保障担当高官は米ワシントンで,

北朝鮮軍のウクライナ戦争への投入如何と程度による段階別対応シナリオについて協議した。

 ニューヨーク・タイムズは25日(現地時間)、ウクライナ政府関係者1人と米政府関係者2人の話として、北朝鮮軍数千人がウクライナとの国境地帯であるロシア南西部のクルスク州に到着したと報じた。クルスク州は8月6日、ウクライナ軍が攻撃しロシア領土の一部を占領したところだ。

 同関係者らは、まだ北朝鮮軍が戦闘に参加しておらず、どのような役割を担うかは不明だと語った。ウクライナ政府関係者は同紙に、28日までに最大5千人の北朝鮮軍の集結が予想されるとし、北朝鮮軍がロシアのウラジオストクからイリューシン(IL)76輸送機でロシア西部の軍飛行場に移動した後、車で戦闘地域に移動していると話した。

 共同通信は26日、朝鮮人民軍総参謀部のキム・ヨンボク副総参謀長がロシアに派遣された北朝鮮軍の総活躍としてロシアに入国したと、ウクライナ軍の消息筋の話として報じた。同通信は、ロシア軍が作成した北朝鮮軍派遣部隊の幹部リストをウクライナ軍当局が入手したところ、同リストの最上位にキム副総参謀長の名前が位置付けられていたと報道した。

 ウクライナ軍は北朝鮮軍参戦を念頭に置いて対策を講じている。共同通信は、ウクライナ軍事情報局(GUR)が、北朝鮮軍が戦線に投入された場合、韓国語のビラを撒いて投降を勧める方針を明らかにしたと報道した。

 米ワシントンでは25日、シン・ウォンシク国家安保室長、米国のジェイク・サリバン大統領補佐官(安全保障担当)、日本の秋葉剛男国家安全保障局長が3カ国の安全保障担当高官協議を行った。

 シン室長は協議後に行ったワシントンの韓国特派員たちとの懇談会で、具体的な論議内容を公開することはできないが、「北朝鮮軍の派遣に伴う朝ロ軍事協力の進展の推移によって発生可能なシナリオと対応方案を含め、緊密な協議が行われた」と述べた。

 韓国大統領室高官はこれと関連し、北朝鮮軍がウクライナ戦争に投入されても、非戦闘任務を遂行することも、戦闘に直接投入されることもあり得るとみて、このような段階別対応を米日と協議したと明らかにした。これは、ウクライナに対する韓国の攻撃用兵器提供などの対応措置のレベルが、派遣された北朝鮮軍の活動内容によって調整される可能性があることを示唆したものとみられる。

 同高官は「兵力まで大規模に(北朝鮮からロシアに)行くことになれば、見返りがないとは考えられない」とし、北朝鮮がロシアに対する兵器供与に続き、派兵まで行ったため、ロシアが見返りとして兵器関連の先端技術を提供する可能性が高くなったという判断を示した。さらに、これまで取りざたされてきた衛星、核、大陸間弾道ミサイル(ICBM)だけでなく、北朝鮮に足りない防空網や航空機関連技術が提供される可能性もあると予想を示した。

ワシントン/イ・ボニョン特派員、パク・ピョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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