デジ庁に行政指導
岸田政権の責任問われている
マイナンバーに本人以外の公金受取口座の情報が誤登録されていた問題で、デジタル庁が個人情報保護委員会の行政指導を受けました。個人情報の漏えいを多数引き起こした同庁が指導を受け、改善を求められるのは当然です。しかし遅すぎます。担当官庁を追及して済むことでもありません。個人情報保護をないがしろにして、マイナンバーの利用範囲の拡大やマイナンバーカードの普及を強引な手法で急ぐ岸田文雄政権の責任が問われています。
個人情報保護ないがしろ
プライバシーを守る権利は、憲法が保障する基本的人権の一つです。個人情報保護法は「個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきもの」と明記しています。行政機関が保有する個人情報を漏えいすることなど絶対にあってはなりません。
公金受取口座の誤登録は全国で940件確認されています。口座番号などを他人が見られるようになっていました。誤登録が自治体からデジタル庁に報告されたにもかかわらず、担当部署以外に情報が共有されなかったことを個人情報保護委員会は問題視しました。デジタル庁に個人情報の漏えいであるとの意識が欠如していたと指摘しました。
しかし原因を職員の意識の欠如だけに帰すわけにはいきません。
デジタル庁は、2021年5月に成立したデジタル関連法に基づいて同年9月に発足しました。「デジタル時代の官民インフラを今後5年で一気呵成(かせい)に作り上げる」(同庁ホームページ)ための官庁です。安倍晋三政権から進めてきた個人情報の利活用を一気に実現させることを使命としています。
職員約1000人の4割は大手IT企業などの民間出身者です。ほとんどが非常勤で、兼業や出身企業からの給与補填(ほてん)も容認されています。これら大企業は個人情報ビジネスで利益をあげています。出身企業の意向が反映され、利益誘導の恐れが強いことが発足前から指摘されていました。
その一方、個人情報を守るルールは緩められています。デジタル関連法は行政、民間、独立行政法人のそれぞれに分かれていた個人情報保護法制を一元化し、国が関与して個人情報を利活用する方向に道を開きました。
デジタル庁が、政権のこうした意向でつくられた官庁であることに問題の根源があります。官民癒着の温床となりかねないデジタル庁は必要ありません。
しかも個人情報保護委員会の担当閣僚は河野太郎デジタル相です。個人情報の利活用も保護も同じ閣僚に担当させるところに、個人情報保護に逆行する岸田政権の姿勢があらわれています。
マイナカード強制やめよ
岸田首相は先の内閣改造にあたって河野氏を新たに「デジタル行財政改革会議」の担当相に任命しました。「国と地方の行財政の仕組みを変えていく」としています。健康保険証のマイナカードへの一体化が大混乱を招いていることに反省がありません。保険証を24年秋に廃止する方針も変えません。これでは国民の信頼回復など不可能です。
マイナカードの押し付けをやめ、個人情報保護を強める立場で行政のあり方を全面的に見直すことが求められています。