戦略企画は一般的に、現在と未来の脅威を評価し、それに対応する目標、手段、方法を探して、それを具体的に実行する武器、部隊、兵力に対する所要を導き出した後、最終的に予算に反映する手順で行われる。

2023-10-31 08:40:14 | アメリカの対応
 

国防費をつぎ込む米国…どれほど大きな恐怖を望むのか

登録:2023-10-30 06:49 修正:2023-10-30 07:39
 
[ハンギョレS]ムン・ジャンリョルの安保多焦点 
米国の危険な核戦略 
 
中国とロシアという「2つの核競争相手」に直面 
バイデン大統領、「反撃を唯一の目的とする」核政策を廃棄 
核兵器増やし、核戦力を現代化 
軍拡競争に火をつける…危うい平和
 
 
22日、朝鮮半島南方の韓日の防空識別圏(ADIZ)が重なる区域で、韓米日空軍が共同空中訓練を実施している=米空軍提供//ハンギョレ新聞社

 米国が世界覇権を維持してきた力が軍事力に由来することについては異論がないだろう。第二次世界大戦後、米国の軍事力が核兵器を基盤にしてきた点も否定し難い。核兵器の発達と核戦略の進化は米国を主人公にしたストーリーだ。恐ろしく複雑に見える核戦略も、その主な部分を成しているのはあっけないほど簡単な常識だ。恐怖感。まさしくそれが8割を占める。抑止理論、制限的核戦争論、ミサイル防衛(MD)、核軍縮、反核運動など、ほとんどのものが恐怖感に基づいており、新規の核武装を除く多くのものを米国が主導してきた。

 米国の歴代の行政府が核戦略文書を発表してきた背景には、核戦争の危険性と恐怖を減らす目的もあるだろう。ジョー・バイデン政権もここ1年間で少なくとも5つの関連文書を公開した。昨年10月、米国防総省は4年周期の国家防衛戦略(NDS)を核態勢見直し(NPR)およびミサイル防御見直し(MDR)とともに公開した。今年2月、国家情報長官(DNI)は核脅威が含まれた定例の脅威評価報告書の公開版を発表した。先月28日には国防総省が9年ぶりに「2023大量破壊兵器(WMD)対応戦略」を出し、今月には下院議員14人で構成された戦略態勢委員会の最終報告書が発表された。さらに国防総省は、中国が約500発の核弾頭を保有しているという評価を含む「中国の軍事・安全保障上の展開」という年次報告書を議会に提出した。

米国、化学生物兵器への報復として核攻撃を暗示

 戦略企画は一般的に、現在と未来の脅威を評価し、それに対応する目標、手段、方法を探して、それを具体的に実行する武器、部隊、兵力に対する所要を導き出した後、最終的に予算に反映する手順で行われる。最近公開された米国の核戦略文書はこのような段階ごとに、少なくとも脱冷戦以降からオバマ政権までの基調とは異なる特徴が見られる。

 大きな変化は、中国がロシアとほとんど対等な水準とみなされていることだ。米国が「核を保有する2つの強力な競争相手と初めて直面している」という認識だ。米国は、中国が現在保有する核弾頭も従来の410発(ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が今年1月に推定)から100発ほど増えたとみており、今後2030年までに1000発ほどになると予測している。米国がロシアとの新戦略兵器削減条約(New START)に沿って配備された核兵器の数を1550発と制限しているため、数年後には中国が単独で米国と大差のない「作戦状態」の核戦力を保有することになると見込んでいるのだ。さらに、核拡散防止条約(NPT)に加盟していない核保有国のうち、唯一米国本土を打撃する意志と能力を持った北朝鮮の核脅威も考慮せざるを得なくなった。

 核戦略の目標は時代や国を問わず、核戦争の抑止だ。この不変の普遍的目標の他に、核兵器をどのような目的で「使用」するのかも目標になり得る。中国は核武装と同時に「核先制使用の放棄」(No First Use)を宣言したが、米国やロシアはそうしなかった。ロシアはウクライナ戦争で核兵器使用の可能性を示唆しており、米国は敵の化学生物兵器の使用やサイバー攻撃に対する報復として核兵器を使用できることを暗示している。バイデン大統領は大統領選で公約した、核兵器を敵対国による核攻撃の抑止や反撃のためにのみ使用するという「唯一の目的(sole purpose)」政策を廃棄し、敵を抑制するために核を含む軍事力と外交力、強力な同盟関係を結合する「統合抑止(Integrated Deterrence)」を掲げている。ここで「抑止」は敵の核攻撃に対してのみ適用されるわけではなない。

 核抑止の対象が「2プラスアルファ(北朝鮮)」の敵対的核保有国になった上、統合抑止の実現を目指すことにしたため、米国の対応戦略は変化を迫られている。戦略文書でもその方向性が示された。まず、核兵器を量と質ともに強化することだ。中国の核兵力が増強されれば、核兵器の数を制限する新戦略兵器削減条約は廃棄される可能性が高い。質的にも数十年経った旧型大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を新型に替え、次世代戦略爆撃機を導入することにより、いわゆる「3大核戦力」の現代化を進めるだろう。2030年代半ば頃までにこのような事業の完了を目指すものとみられる。

 核兵器だけでなく通常の先端兵器と新概念の兵器体系に対する投資も増えている。ミサイル防衛システムは、地上から海、空、宇宙、サイバー領域までを網羅する探知・追跡・迎撃の重層的連動システムで構成され、これを直ちに精密打撃の体系に連携する「戦争網(war net)」を高度化する。ビックデータと超高速演算を結合した軍事用人工知能(AI)は、指揮官の判断を「指揮」するようになり、それに繋がれ24時間疲れ知らずで動く無人システムが防衛と攻撃に加担する。つまり、米国の軍事覇権は徹底的に技術を基盤とし、「事実上の完璧な防衛」と「必要なだけの攻撃」能力を同時に備えることで維持されるということだ。

米学者ら「現在の核戦力で十分」

 米国の核戦略には、二つの昔からの問題が必然的に伴う。一つは高騰する国防費だ。2024会計年度の米国の国防予算(案)は総額8420億ドルで、史上最大規模だ。これには空中戦力611億ドル、海軍481億ドル、MD関連631億ドルなど、核戦略と比較的関連が大きい部分が1700億ドルを越える(ちなみに開発途上国を支援するために2013年に発足した「グリーン気候基金」の2020~23年の世界総拠出額は135億ドル水準)。

 二つ目の問題は、武器輸出と軍拡競争によって引き起こされる平和の破壊と戦略的不安定だ。米国は対象国や集団を問わない通常兵器輸出で不動の1位の国だ。核軍拡競争が今後かなりの間、中国、ロシア、北朝鮮の「反作用」によって加速化することは明らかだ。米国が数カ国を対象に核軍備を増強しても、対象国は米国を1対1の脅威として感じるだろう。

 チャールズ・グレーザーら米国の学者3人は先日、「フォーリン・アフェアーズ」への共同寄稿で、「米国の核軍備は中国とロシアを同時に抑止できる」とし、これ以上のミサイルは必要ないと主張した。14隻の米海軍オハイオ級原子力潜水艦にそれぞれ20基の弾道ミサイルが搭載され、各ミサイルには8発の核弾頭が装着されるうえ、各弾頭は数百キロトンの威力を持っているため、これに400基のICBMと60基の戦略爆撃機を加えれば「十分すぎる」という見解を示した。

 世界が突然戦争の罠に吸い込まれている。ウクライナとガザ地区で恨みと憎悪と恐怖があふれ出しているが、その根源の一軸である米国は休戦と平和のための責務には消極的だ。朝鮮半島の安全保障も、北朝鮮の核を諸悪の根源とみなし、北朝鮮政権終末論と北朝鮮非核化でなければ何もできないという「北朝鮮核還元論」という罠にはまり、身動きが取れない状況だ。本当にこれも「恐怖心」によるものだろうか。ある国々と勢力の貪欲のためだろうか。それとも罠を解く平和という鍵を手にしても使えない愚かさと卑怯さのためだろうか。

ムン・ジャンリョル|元国防大学教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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世話人は、安保3文書の閣議決定で、戦争が始まる空気がつくり出されていると述べ、「心一つに戦争しない国に進めていけるように一緒に活動していきたい」と語りました。

2023-10-30 11:14:13 | 国民の暮らし向上最優先!

2023年10月29日(日)

平和・ジェンダー平等実現へ

婦団連 70周年記念のつどい

写真

(写真)婦団連創立70周年記念のつどいで主催者あいさつをする柴田真佐子会長=28日、東京都文京区

 23団体が加盟する日本婦人団体連合会(婦団連)は28日、東京都内で創立70年の記念のつどいを開き、憲法・女性差別撤廃条約にもとづく平和・ジェンダー平等の実現を呼びかけました。日本共産党の志位和夫委員長があいさつしました。(志位氏のあいさつ)

 主催者あいさつで柴田真佐子会長は、創立以来、平和と男女平等、ジェンダー平等の実現をめざして運動してきたと紹介。来年には国連女性差別撤廃委員会の審議が行われると述べ、ジェンダー平等実現に向けて運動を強めていく決意を語りました。

 来賓あいさつで国際婦人年連絡会の前田佳子世話人は、安保3文書の閣議決定で、戦争が始まる空気がつくり出されていると述べ、「心一つに戦争しない国に進めていけるように一緒に活動していきたい」と語りました。

 志位氏は、婦団連の70年の歴史について、「平和と平等を一体的に追求してきた」とのべ、「平和がなければ女性の権利、ジェンダー平等もありえません。同時に、ジェンダー平等を貫くことは、平和をつくる大きな力となると思います」と強調しました。

 また婦団連がジェンダー平等を国際的視野からとらえて促進してきた歴史にふれ、「女性差別撤廃条約の選択議定書を速やかに批准することは最大の焦点です。力を合わせて実現のために力をつくします」と語りました。

 さらに志位氏は、この数年、国内外でジェンダー平等をめぐる大激動ともいうべき大きな歴史的変化が起こっていることを実感するとのべ、「女性の世界史的復権」の時代が到来しているもとで、婦団連の発展を心から願うとのべました。

 市川房枝記念会女性と政治センターの林陽子理事長、全労連の小畑雅子議長、全国商工団体連合会の太田義郎会長があいさつしました。

 日本共産党の倉林明子副委員長・ジェンダー平等委員会責任者が出席しました。

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 同会の伊井野雄二理事長(69)は「気軽に参加して、奇麗な自然が身近にあることを知ってもらいたい」と話していた。

2023-10-30 10:52:47 | しらなかった

里山散策で元気に 

11月5日に名張・赤目地区で

情報紙ユウより転載 535
 

 三重県名張市の「赤目の里山を育てる会」(同市上三谷)は11月5日、赤目地区の里山を散策するイベント「コロナ禍を越えて里山散策で元気になろう」を開催する。申し込みは同2日まで。

 当日は、動植物や水生昆虫に詳しい同市富貴ヶ丘の本庄眞さんの案内で、午前9時30分から旧錦生小学校(同安部田)を出発。極楽寺を通って山道に入り、石切り場、トムソーヤ広場、トンボ池、赤目の森などを巡る約8キロの道のりを歩く。道中には里山の象徴として知られる絶滅危惧種のカワバタモロコを始め、サワガニ、カワニナ、ハッチョウトンボなどが生息しているという。

 参加費は300円(保険料など含む)。小学生は半額で、乳幼児は参加不可。定員は先着30人。

 当日は動きやすい服装で参加し、タオル、水筒、帽子、弁当、軍手、雨具を持参する。小雨決行。

 同会の伊井野雄二理事長(69)は「気軽に参加して、奇麗な自然が身近にあることを知ってもらいたい」と話していた。

 申し込み、問い合わせは同会(0595・64・0051)まで。

2023年10月28日付855号11面から

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 米国の情報の失敗の例も似ている。2001年の9・11同時多発テロ発生後に委員会が分析した情報の失敗の最も重要な原因は、中央情報局(CIA)と連邦捜査局(FBI)との協力の不在だった。

2023-10-30 10:31:04 | アメリカの対応
 

[寄稿]   極右はなぜ安保に無能なのか

登録:2023-10-30 01:46 修正:2023-10-30 09:11
 
 
情報の失敗は情報の収集ではなく、主に情報の分析過程で発生する。最も重大なのは偏見だ。偏見は他の可能性を排除し、自分の主張に有利な情報ばかりを積み上げるため、結局は確証バイアスがかかってしまう。(…)技術情報力がいくら上がっても、AI技術を導入したとしても、偏見を排除しなければ何の役にも立たない。分析の失敗はいつも機械ではなく人がおかすのだ。 
 
キム・ヨンチョル|元統一部長官・仁済大学教授
 
 
10月7日(現地時間)、パレスチナのイスラム武装組織ハマスによるものとみられるミサイルが、ガザ地区からイスラエルへと打ち込まれている=ガザ/EPA・聯合ニュース

 なぜイスラエルはハマスの奇襲攻撃を察知できなかったのだろうか。典型的な情報の失敗だ。情報機関は可能性を警告し、直前には動きをとらえていたし、周辺国からは関係する情報が伝えられていたが、ネタニヤフ政権はなす術もなくやられた。イスラエルの情報の失敗から教訓を得るべきだとの主張があふれているが、それらには肝心なものが欠けている。いくら予算を投資したとしても、技術情報の水準が高くても、政府が無能だったら何の役にも立たないということだ。

 情報の失敗は分裂からはじまる。イスラエルの極右政治が作り出した分裂が、ハマスに活動の隙間を提供した。国民の分裂はいつも政府の中でも生じる。情報機関同士の関係も同様だ。今回はモサド、軍の情報機関、そしてシンベト(Shin Bet、国内情報を収集する機関)の協調ができていなかった。情報の属性のために概して情報機関は競争し、情報を共有しようとしないが、極右政治のコミュニケーション不在と一方主義のせいでその調整がなされていなかったのだ。

 米国の情報の失敗の例も似ている。2001年の9・11同時多発テロ発生後に委員会が分析した情報の失敗の最も重要な原因は、中央情報局(CIA)と連邦捜査局(FBI)との協力の不在だった。その後、米国は情報機関同士の情報共有と協力を強化するために、調整体系を改革した。しかし常に、制度そのものよりも、制度を運用する指導者の能力の方がはるかに重要だ。情報機関の特性の違いにより情報判断が異なった場合、正しい結論に到達するためには政府内の「開かれた討論」が必要となる。指導者が様々な情報判断に耳を傾け、異なる意見を調整してこそ誤った判断は防げる。

 指導者がコミュニケーションを取らず、責任も取らず、怒鳴りつけながら強硬策ばかりを主張すれば、情報の失敗は避けられない。なぜ権威主義的な指導者は民主的な指導者より無能なのか。指導者は野党やメディアとのコミュニケーション能力だけでなく、政府組織の力量を最大限に引き出す内部交渉力を備えていなければならないからだ。情報機関同士の協力と外交安保省庁の調整は、絶対的に指導者の態度、能力、公的な責任感にかかっている。権威主義的な指導者は概して政策決定プロセスをまひさせ、組織を破壊する。誤った判断を減らし、組織を活性化し、持続可能な代案を見出せるのは民主的な指導者だけだ。

 情報の失敗は情報の収集ではなく、主に情報の分析過程で発生する。最も重大なのは偏見だ。偏見は他の可能性を排除し、自分の主張に有利な情報ばかりを積み上げるため、結局は確証バイアスがかかってしまう。情報の失敗の後には常に情報収集予算を増やすべきだとの主張がなされるが、技術情報力がいくら上がっても、AI技術を導入したとしても、偏見を排除しなければ何の役にも立たない。分析の失敗はいつも機械ではなく人がおかすのだ。

 実用ではなく理念を追求する極右勢力は、偏見という培地で生まれ育つ。彼らは歴史を歪曲し、事実を認めず、多様性を嫌悪し、頻繁にうそをつく。偏見という色眼鏡をかけていると、現実の変化を読み取るのは困難になる。当然にも、問題を起こすことにかけては名人だが、問題を解決する能力はない。理念と無能の相関関係は明らかだ。

 原因を取り除かなければ情報の失敗は繰り返される。極右は概して、失敗を認め危機を国民統合の契機とするのではなく、怒りを動員する。怒りは理性とはかけ離れており、判断力を曇らせる。9・11同時多発テロ後、ブッシュ政権は怒りを動員してアフガニスタンとイラクを侵略した。どちらの戦争も莫大なコストがかかり、米国社会に深い傷を残したうえで戦争以前に戻った。9・11テロの情報の失敗とイラク戦争の情報の失敗とは、怒りという橋でつながっていることを忘れてはならない。

 ネタニヤフ政権も、ガザ地区への進撃が怒りにもとづいているのなら、それは別の情報の失敗へとつながるだろう。

 極右は国内では民主主義を危機に陥れ、嫌悪をあおり、統合の政治ではなく分裂の政治を助長する。民主主義は確執を認めたうえで、制度の中でのコミュニケーションで解決しようとするが、極右は極端な敵意を持ち、意見が異なる相手を根絶の対象と考える。外交的には利益ではなく理念を追求し、平和ではなく暴力を追求する。

 世界各地で縫合されていた対立が戦争へとつながる混沌の時代だ。朝鮮半島情勢を安定的に管理するためには、慎重かつ柔軟でなければならない。過剰な理念では、急変する現実において安全は守れない。イスラエルの教訓から我々は何を学ぶべきか。理念は政策ではなく、怒りは戦略ではないのだ。

 
//ハンギョレ新聞社

キム・ヨンチョル|元統一部長官・仁済大学教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

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「重複・常習事業所に対しては労働部が先制的な特別労働監督を実施するとともに、厳正に法を執行してこそ母性保護制度が職場にきちんと定着しうる」と語った。

2023-10-29 11:07:18 | 韓国を知ろう
 

育児休暇を取ったら「退職しろ」という会社…

雇用労働部はどう処理?=韓国

登録:2023-10-31 08:59 修正:2023-10-31 09:19
 
 
                                       ゲッティイメージバンク//ハンギョレ新聞社

 「育児休職の延長を希望したら、退職してから再入社しろと言われ、延長できなくされた」

 「出産休暇終了後、すでに勤務者がいるので原職復帰は難しいと言われた」

 韓国の雇用労働部が4月に設置したオンライン母性保護匿名申告センターに届け出のあった事例だ。今年第2四半期の合計特殊出生率が0.7人と過去最低値を記録した中にあっても、育児休職、育児期の労働時間短縮、出産休暇などの母性保護制度が現実において作動していない状況が如実に表れている。

 労働部は30日、育児休職などの母性保護制度の違反事例のオン・オフラインでの届け出内容の類型、および措置の現状を公開しつつ、「6カ月間に220件の届け出があり、203件については是正させ、17件については事実関係を調査中」だと明らかにした。母性保護申告センターの運用は、今年3月に大統領直属の少子高齢社会委員会が発表した少子化対策の一つで、母性保護制度とこれを活用できていない現実との隙間を埋めるために問題のあるケースを届け出てもらい、労働監督の強化などを実施するというのが趣旨だった。

 届け出のあった事例を制度ごとに見ると、育児休職(40.9%)に関するものが最も多く、次いで育児期の労働時間短縮(17.3%)、出産休暇(9.1%)が多かった。違反行為では、休暇(休職)使用を理由に不利な処遇(32.7%)をされたケースが多かった。「育児休職後に退社を促された」あるいは「育児休職を理由に事業主に退職を勧告された」というものだ。育児休職を与えなかったり、使用を理由に不利益を与えたりすると、使用者は500万ウォン(約55万2000円)以下の罰金に処される。届け出のあった例の中には「90日の出産休暇を与えなかった」ケースもあった。出産前後の休暇の未付与は2年以下の懲役、または2000万ウォン(約221万円)未満の罰金に処される違法行為だ。

 しかし労働部の申告センターに届け出のあった母性保護制度違反は、ほどんどが「行政指導」で済まされていた。会社側に対する是正要請程度で処理が済まされており、処罰や過料処分などにはつながっていないということだ。軽い処罰は、育児休職(1988年)、出産前後休暇(1953年)などの長い歴史を持つ母性保護制度が依然として現実において作動していないことの代表的な理由だと指摘されている。

 社団法人「パワハラ119」のパク・チョムギュ運営委員は「母性保護制度違反の場合、是正すると言っておきながら、その後、会社側が各種の嫌がらせで自発的な退社に追い込むケースが非常に多く、ストレスが子どもに及ぼす影響も憂慮されるため、労働者が自ら問題提起することが難しいという特性がある」とし、「重複・常習事業所に対しては労働部が先制的な特別労働監督を実施するとともに、厳正に法を執行してこそ母性保護制度が職場にきちんと定着しうる」と語った。

チャン・ヒョヌン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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