民族内部の関係の特殊性を否定することで、はたして朝鮮半島の運命に対する自己決定権を維持できるのだろうか。統一部を廃止しても統一の使命は消えないように、分断の現実を忘却しても分離体制は消えない。

2023-08-16 09:15:34 | 南北は一つ
 

[寄稿]南北対決時代の新たな朝鮮半島統一論

登録:2023-08-15 04:22 修正:2023-08-15 08:58
 
民族主義的な統一論は説得力を失ったが、それでも二国家論は代案にはなれない。解放と分断、そして戦争と戦後の秩序は、南北の二者関係ではなく国際的な力の衝突と協力によって決定されたが、民族内部の関係の特殊性を否定することで、はたして朝鮮半島の運命に対する自己決定権を維持できるのだろうか。分断の現実を忘却しても分離体制は消えない。 
 
キム・ヨンチョル|元統一部長官・仁済大学教授
 
 
ムン・スンヒョン統一部次官(左)が先月28日午前10時30分、統一部記者室で南北会談・交流協力・出入国業務を担当する組織に統廃合して拉致問題対策班を新設することを骨格とする統一部の組織・人材の大幅縮小案を発表している=イ・ジェフン記者//ハンギョレ新聞社

 南北の両方から統一が消えた。7月、現代グループのヒョン・ジョンウン会長が統一部に北朝鮮訪問を申請した際、北朝鮮の外務省が事前に「拒否」した。韓国の統一部に相当する北朝鮮の「祖国平和統一委員会」は、2019年8月の「南北対話中断」を宣言した談話以降は休業中で、委員長も長期にわたり空席だ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権も同じだ。人事と組織改編を通じて事実上の統一部廃止に着手した。「統一」への道が失われた。

 戦後70年の年月で、このような「対話の不在」の長期化は初めてだ。かつて最も長きにわたり対話が途絶えたのは、1980年8月から1984年4月までの約3年8カ月だった。2018年12月の南北体育分科会談が最後であるため、「公式の対話」が消えてから4年8カ月を超えた。今後、当面の間は対話が再開される可能性もない。いつか水面下での対話は再開できるだろうが、公式の対話がなければ続かない。公式の対話を担当する統一部ではなく、水面下の対話を担当する情報機関に依存する方式は時代錯誤だ。

 金正恩(キム・ジョンウン)体制における「失われた統一」は、南北関係の悪化を反映している。金正日(キム・ジョンイル)体制では民族を強調したが、金正恩体制は国家を強調している。金正恩体制で、国家を強調する歌を普及させ、国家のシンボルを作り、国家体育を強調する「国家第一主義」は、統一論と衝突する。南北関係が悪化し統一論としての民族という言説も消えた。「わが民族同士」という言葉が消えたのはかなり前だ。

 北朝鮮の統一策は伝統的な高麗連邦制から、1991年には「緩やかな連邦制」に、2000年の南北首脳会談では「低い段階の連邦制」へと着実に変化した。他の分断国の事例をみれば、国力が弱い側は概して連合や低い段階の連邦制を主張し、国力が強い側は統合水準が高い連邦制を主張する。弱者は吸収に対する恐れのため敷居を上げ、強者は吸収する自信から統合の敷居を下げようとする。韓国と北朝鮮の国力の差が比べ物にならないほど広がった現状では、北朝鮮が連邦制から連合制に近い統一案に切り替え、統一への言及を減らすのは自然なことだ。これに対して、韓国の保守派が連邦制を主張するのが正常だが、残念なことに、彼らの認識は1950年代で止まっている。

 分断の年月の間、保守勢力はしばしば統一についての議論を国内政治的に悪用した。朴正煕(パク・チョンヒ)政権は、7・4南北共同声明を維新体制推進の背景とし、金泳三(キム・ヨンサム)政権は、対北朝鮮政策を保守結集の機会に利用した。李明博(イ・ミョンバク)政権に続き尹錫悦政権は、北朝鮮に対する敵対政策が作り出した空白を、「吸収統一論」という理念で埋めようとしている。吸収という理念とは違い、対決政策は逆に二つの国家の実存を証明する。理念と現実の矛盾であり、残るのは統一問題の国内政治的な悪用だけだ。

 対決の時代が長引き、二国家論が流行のように登場した。隣国として、国家と国家として併存すれば、問題が解決されるのだろうか。南北関係を国家間の外交でアプローチするのが難しい理由は、民族内部の関係が持つ特殊性によるものだ。そのような点から、1991年の南北基本合意書で南北関係を「統一を志向する暫定的な特殊関係」と規定したことは、今でも有効だ。ここでの特殊関係は、「二つの国家」という現実と「一つの民族」という使命の二重性だ。二つの概念の間の均衡点が、新たな統一論の重要な課題だ。

 ドイツの事例は示唆する点を与える。1973年、バイエルン州政府が1972年の東西ドイツ基本条約は統一の使命を明記した基本法に反するため違憲だとして訴訟を起こした際、西ドイツの連邦憲法裁判所は、この条約が「性質上は国際法的な条約だったとしても、内容上は内的関係」だとしたうえで、「再統一の使命に違反していない」とする判決を下した。分断国家の特別な二重性を考慮したのだ。ヘルムート・コール首相が1982年の就任演説で「ドイツには二つの国家があるが、一つのドイツ民族がある」と宣言したのもやはり暫定協定の知恵を発揮したものだ。

 民族主義的な統一論は説得力を失ったが、それでも二国家論は代案にはなりえない。分断の克服なしに二つの国の正常な関係は不可能だ。解放と分断、そして戦争と戦後の秩序は、南北の二者関係ではなく国際的な力の衝突と協力よって決定されたが、民族内部の関係の特殊性を否定することで、はたして朝鮮半島の運命に対する自己決定権を維持できるのだろうか。統一部を廃止しても統一の使命は消えないように、分断の現実を忘却しても分離体制は消えない。

 
//ハンギョレ新聞社

キム・ヨンチョル|元統一部長官・仁済大学教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

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「戦略的忍耐」政策を踏襲する米国のジョー・バイデン政権と圧迫を強調する尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権のもとでは、朝鮮半島の平和に向かって進むことは難しいと指摘した。

2023-07-31 13:24:27 | 南北は一つ
 

「対北朝鮮強硬策は核兵器を増やしただけ…

このままでは対話は成功しない」

登録:2023-08-01 06:47 修正:2023-08-01 09:09
 
[インタビュー] 
停戦70年、カミングス教授に聞く朝鮮半島の未来
 
 
ブルース・カミングス米シカゴ大学スウィフト冠教授=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

 朝鮮戦争停戦協定締結から70年(7月27日)を迎えたが、戦争は原則的には終息しておらず、北朝鮮の核をめぐる衝突の可能性も最近急速に高まっている。

 朝鮮戦争に関する記念碑的著作である『朝鮮戦争の起源』の著者、ブルース・カミングス米シカゴ大学スウィフト冠教授は29日、ハンギョレとのインタビューで、「戦略的忍耐」政策を踏襲する米国のジョー・バイデン政権と圧迫を強調する尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権のもとでは、朝鮮半島の平和に向かって進むことは難しいと指摘した。特に、数十年間にわたり「北朝鮮崩壊論」を基にしてきた米国の政策を批判し、米国の冷徹な現実認識が朝鮮半島問題の解決の出発点になると述べた。1980年代に第一巻(上)が韓国語で翻訳されたカミングス教授の著書が先月、第二巻(下)までそろって完訳され再出版されたのは、それだけ朝鮮戦争が「進行形」であることを示している。

-停戦70周年を迎え、南北は戦争で勝利したと主張するなど、互いに対する強い敵意を示した。反省は見当たらない。朝鮮戦争について誰よりも深く研究した学者として、現在の朝鮮半島の状況をどう見るか。

 「北朝鮮は長い間、米国との関係正常化を望んでいたが、今は違うようだ。バイデン政権も関係正常化に関心がない。そうした中、朝中ロと韓米日の結束が深まっている。ウクライナ戦争が長期化し、米中関係が悪化するとともに米ロ関係が非常に悪い現在の状況は、南北関係をさらに冷え込ませるだろう。米国の北朝鮮政策は北朝鮮の核兵器と大陸間弾道ミサイル(ICBM)を増やす結果をもたらしており、これは決して米国の朝鮮半島政策の目的ではない。だから、私はいま悲観的だ。将来的には韓米両国で北朝鮮との関与に関心のある大統領が政権を握ることを望む。ビル・クリントン政権時代のように、韓米に革新的な大統領が政権を握るのが理想だ」

-『朝鮮戦争の起源』第一巻を執筆してから40年が過ぎた。その後、ベルリンの壁が崩れ、ソ連が崩壊した。教授は朝鮮半島の歴史がどこに向かって展開すると予想していたのか。

 「冷戦の終結後、2つのコリア(南北)にどんなことが起きるかについてずっと考えてきた。著書が広く読まれた分、質問もたくさん受けた。私は北朝鮮が崩壊しないと主張した。北朝鮮の指導部は、どうすれば権力を保てるかを熟知しているという現実を直視すべきだと指摘した。そのため、多くの批判も受けた。妻の親戚にも批判する人がいた。(カミングス教授の妻は韓国人)。朝鮮半島の人々は数千年にわたり、主に王朝と君主制という政治体制のもとで暮らしてきたが、これは世界で最も長い期間の一つだ。北朝鮮の住民たちは君主制、日本の支配、族閥王朝以外には経験したことがない。それを嘆かわしいと言ったからといって、それが北朝鮮に何らかの影響を与えるわけではない。私は北朝鮮、北ベトナム、中国は東欧と違ってソ連が指導しなかった反植民地革命に当たるケースだと説明してきた。東欧の政権はスターリンによって移植された。ゴルバチョフが東ドイツの民主化を容認した当時、東ドイツにはソ連軍40万人がいた。北朝鮮はソ連の複製品ではない。米情報当局も(東欧の事例を見て)完全に誤った推定をしてきた。ジョン・ドイッチ中央情報局(CIA)長官は1995年、北朝鮮が崩壊するかどうかではなく、いつ崩壊するかが問題だと述べた。それから48時間も経たないうちに北朝鮮軍首脳部は、朝鮮戦争が再び勃発するかどうかではなく、いつ勃発するかが問題だと反論した。これは、米国の政策のどこが間違っているのかを端的に示している」

-韓国の新政権発足後、南北関係は悪化の一途を辿っている。何が原因だと思うか。

 「北朝鮮の持続的な核兵器庫の強化とミサイル発射などが結びついた問題だろう。韓国では、強硬かつ敵対的に出るのが北朝鮮の効果的な扱い方だと考えた前任者たちに倣う保守的な大統領が政権を握っている。北朝鮮に対する最大限の圧迫は、韓国国民に自分を強く見せたい尹錫悦大統領のスタンスとより関連があると思われる」

-北朝鮮の今年の停戦協定70年行事には、中国代表団だけでなくロシアのセルゲイ・ショイグ国防相も出席した。新冷戦について語る人も多い。朝鮮戦争は冷戦初期に勃発した。このような状況をどれだけ懸念すべきか。

 「非常に重要な状況展開だ。ロシア国防相が平壌(ピョンヤン)を訪れたというニュースを見て驚いた。(ロシアと違って)中国は停戦協定締結の当事国でもあり、関係が悪化した2014~2015年を経て北朝鮮と以前よりも絆が強まった。米国が中国に敵対的な場合、北朝鮮にも敵対的だというのはほぼ物理の法則のようなものだ。ロシア、中国、北朝鮮、イランは協力を強め、4カ国による反米政権連帯を作り上げた。中ロが制裁の履行に真剣でなくなったのは、北朝鮮にとって風穴になっている。冷戦時代を思い出させるこのような状況は、二つのコリアの間で肯定的な事件が起きるまで長い時間がかかることを示唆する」

-バイデン政権は「前提条件のない対話」を掲げている。バラク・オバマ政権の「戦略的忍耐」の繰り返しという指摘もある。バイデン政権で対話の再開が可能だと思うか。

 「バイデン政権の政策は、銃器規制協定を進めようと提案しながら『私はあなたを狙う機関銃5万個を手放すつもりはないが、あなたは機関銃をなくせ』というのと同じだ。米国は爆撃機や、核兵器を搭載して最近釜山(プサン)に寄港した戦略原子力潜水艦『ケンタッキー』などで北朝鮮を威嚇してきた。そのような状態で対話が成功する見込みはない。バイデンが再選するなら、より建設的な北朝鮮政策を展開する可能性もあると思う。昨日、シグフリード・ヘッカー(北朝鮮を数回訪問した米国の核科学者)と共にコンファレンスに出席したが、上院に北朝鮮の核問題についてブリーフィングした時の話を聞かせてくれた。(上院議員だった)バイデンが近づいてきて、2時間にわたり北朝鮮について話し合ったという。今は大統領選挙を控えているため、北朝鮮と新たな試みをすることはないだろう。しかし、彼が二期目を迎えれば、私たちは少なくとも北朝鮮について多くのことを知っている大統領を持つことになるだろう」

 
 
ブルース・カミングス米シカゴ大学スウィフト冠教授=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

-ドナルド・トランプ前大統領が政権を握るとしたら、北朝鮮政策はどうなるだろうか。金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長がトランプ前大統領の返り咲きを期待していると思うか。

 「とても難しい質問だ。金正恩はトランプに会えてとても嬉しかっただろう。私はトランプがどの現職大統領もしなかったことを実行に移したことは認める。しかし、ハノイでの朝米首脳会談で、トランプと補佐陣は昼食会もキャンセルしてその場を立ち去った。これは非常に屈辱的な出来事であり、手ぶらで平壌に帰る金正恩は大変困ったことだろう。トランプは前日に言ったことを翌日には覆せる気まぐれな人物なので、予測が非常に難しい。トランプの最大の長所は、ワシントンの外交政策エリートたちをあまり気にしないことだ。しかし、私はトランプは再選できないと思う」

-金委員長が主要行事に相次いで娘のキム・ジュエと共に姿を現したことで、娘を後継者にすると予想する人もいるが、これについてどうみるか。

 「私が間違っているかもしれないが、(金委員長は)世界の世論と韓国の世論を弄んでいるのかもしれない。私は金正恩がさらに数十年は権力の座に留まると思う。息子もいると聞いている。北朝鮮のような保守的な王朝では、息子が継承する可能性が高いだろう。韓国人や多くの米国人にとってあまり嬉しくないことかもしれないが、金正恩は私たち二人よりは長生きすると思う。いや、あなたより長生きするかどうかは分からない」

-教授は朝鮮半島の分断と朝鮮戦争に対する米国の責任を強調してきた。また、一人の米国人として責任を感じるとも語ってきた。米国がこのような歴史的、道徳的責任について何をすべきだと思うか。

 「米国は一方的に朝鮮半島を分断させたという莫大な責任を負っている。これと共に、私がますます理解できないのは、連合軍が日本のために働いた民族反逆者を特に警察と軍隊で再雇用したことだ。私は朝鮮戦争に関する著書で、誰が戦争を始めたのかを取り上げた章を通じて、3つのシナリオを提示した。同章の結論では、一つの答えを得るための質問を投げ続けると、二つのコリアは決して和解できず、それは二つのコリアと米国、ソ連、中国がいずれも戦争に責任があるためだと記した。(朝鮮戦争)当時、韓国には検閲があり、米国は最も抑圧的な時期であるマッカーシズムの時代だった。したがって、朝鮮戦争は(真相が)あまり知られていない戦争であり、より多くの人が戦争について(きちんと)知れば、いつか統一のチャンスも広がると思う」

-先月、『朝鮮戦争の起源』が韓国で完訳され、再出版された。韓国の読者たちに伝えたいことは。

 「素晴らしい翻訳で全巻がついに出版されたことに大変満足している。第一巻が1981年、第二巻が1990年にそれぞれ訳されてから、2023年に全巻がそろって再出版された。これは異例のことだ。私が同書で取り上げようとした質問の重要性を示していると思う」

ワシントン/イ・ボニョン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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現実と理想はコインの裏表のようなものだ。統一がますます難しくなっている現実に積極的に対応しつつも、朝鮮半島問題の究極の志向としての統一という価値をしっかりととらえていくための工夫が必要だ。

2023-07-27 21:58:26 | 南北は一つ
 

「北朝鮮は統一を保留する姿勢…

『事実上のツーコリア』へと向かう可能性高い」

登録:2023-07-25 08:31 修正:2023-07-27 10:30
 
キム・ヨジョンの相次ぐ「大韓民国」発言の意味 

4年前から国対国へと転換 
金正恩は南北交流は先代の誤りとの考え 

「統一志向の特殊関係」にしがみつくことが 
逆に南北関係改善の障害になるのを懸念 
「国家構図」の中の過程の平和追求を 

相互評価を追求する「事実上のツーコリア」 
軍備規制・北朝鮮の人権改善を導く可能性も 

北朝鮮を利用した韓国の政争化は危険水位 
共存平和が定着すれば韓国内での対立も緩和

 このところ北朝鮮のキム・ヨジョン労働党副部長が「大韓民国」という表現を相次いで用いている。北朝鮮が公式談話で「南朝鮮」や「南側」ではなく、正式な国号である「大韓民国」を使用したのは非常に異例のことだ。これは何を意味するのか。専門家たちの意見を聞いた。北韓大学院大学のキム・ソンギョン教授と統一研究院北韓研究室のホン・ミン室長の書面回答を一問一答形式にした。

 
 
                                ホン・ミン統一研究院北韓研究室長=本人提供//ハンギョレ新聞社

-北朝鮮は事実上、統一をあきらめて「ツーコリア」政策へと向かっているのか。

ホン・ミン:金正恩(キム・ジョンウン)政権は2019年以降、「国対国」構図へと南北関係を転換しようとしてきた。同年10月の金委員長による金剛山(クムガンサン)観光地区での現地指導で、すでに南北関係に関するガイドラインは設定されていると思う。彼は過去の南北交流協力のことを、国力が微弱だった時期に先代の誤った判断によって行われたものと強く批判した。南北関係を根本的に再設定するという意志を表明したのだ。その後は開城(ケソン)共同連絡事務所の爆破、対南部署の廃止および縮小、「労働新聞」の対南紙面の廃止、韓国による北朝鮮に対する提案の無視戦略と、一貫している。2021年からは「我が民族同士」、「民族」、「統一」という用語はほとんど使っておらず、さらに第8回党大会で採択された改正党規約の序文に至っては「統一」、「南朝鮮革命の強化」などの対南関連部分をなくした。また2021年からは戦術核を強調しはじめたが、同じ民族に対する戦術核使用の可能性に言及したことは、北朝鮮がこれまで維持してきた「我が民族同士」および統一戦線の論理と衝突する。これは2018年になされた南北・朝米合意が履行されていないこと、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足後に一層悪化した情勢と無関係ではない。キム・ヨジョン副部長の談話も、このようなことの連続線上で把握する必要がある。

キム・ソンギョン:キム副部長が「大韓民国」という表現を使ったのには、明らかに理由があるだろう。党規約で統一について変化した立場を表明したこと、尹錫悦政権の大胆な構想を非難し、互いに意識しないようにしようと述べたことも、同じ流れの中にあると思う。「ツーコリア」の方向性だと断定することは難しいが、少なくとも統一を国家目標と絶対的理想にすることに対して保留する立場を取っている。

 
 
                          北韓大学院大学のキム・ソンギョン教授=本人提供//ハンギョレ新聞社

-国内・南北・国際状況をすべて考慮すると、「統一志向の特殊関係」の維持は望ましいものなのか。

キム・ソンギョン:統一は朝鮮半島内外の様々な問題の解決にとって依然として有効な目標だと思う。分断以来、南北双方のいびつな社会の根幹には分断が存在するためだ。しかし、統一に至る道がかなり長く、かつ様々な現実的制約がある中で「統一志向的な特殊関係」というものにしがみつくことは、むしろ南北関係改善の障害にもなりうる。現在の国際情勢や韓国内の政治の両極化などを考慮すれば、「普遍的国家関係」としての南北関係を本格的に考えてみる必要がある。「普遍的関係」でアプローチすれば、むしろ南北の関係の特殊性が重要になる契機が作られるだろう。

ホン・ミン:「統一志向的特殊関係」と「国対国の関係」は選択の問題だと考えるのは困難だ。究極的に統一は目指すものの、現実と理想との乖離(かいり)を解決していく過程では事実上の「国対国」構図を利用することが必要だ。重要なのは統一志向性に合った「過程的平和」のよりきめ細かな設計と管理にある。「統一志向的特殊関係」と言いながら、内容的には力による圧倒に埋没してしまえば、「過程的平和」が不在のまま統一志向性からより遠ざかってしまう恐れがある。「過程的平和」を通じて敵対的関係を友好的関係へと変化させるとともに、それが究極的に統一という過程へと自然に転換しうるようにする知恵が必要だ。

-ツーコリアへの方向転換は南北対話の議題となり得るか。

ホン・ミン:対話の議題とするためには、南北がツーコリアへの転換を公式に認めなければならないが、不可能に近い。分断以降、南北は「統一志向性」を体制の正当性の観点から規定してきた。これを転換するためには、両体制ともに政治的合理化に向けた内部作業をしなければならないが、そこから派生する対立は乗り越えがたいと思う。したがって「公式のツーコリア」ではなく「事実上のツーコリア」へと向かう可能性が高い。「事実上のツーコリア」には2つの様相がある。一つは今のように軍事安保的なにらみ合いと敵対にもとづく現状維持の中で「統一志向」の原則だけがあり、事実上誰も統一を期待しない様相だ。もう一つは、朝鮮半島のすべての構成員が平和に暮らす権利の観点に立ち、可能なことから相互脅威の緩和に手を付けていくことだ。それに向けて「国対国」の観点からの軍備規制アプローチも考えうる。

キム・ソンギョン:南北が解決すべき議題の中には、南北関係の特殊性のせいでまともに議論すらできないものも多くある。南北の気候環境や感染症などの問題を「政治化」することなく、実質的な改善を目的として対話を始めることはできる。政権によっては「特殊関係」を掲げ極度に政治化される北朝鮮の人権問題も、国際社会に準ずるよう求めるくらいの主張を韓国がすることで、北朝鮮住民の人権の実質的な改善は引き出せる。留意すべきは、韓国が統一すると主張するほど、北朝鮮はそれを脅威と感じる可能性が高いということだ。南北がかなり長い期間にわたって共存することが必須不可欠な中では、せめて「普遍的関係」を作ってまず平和共存することから始めなければならない。

-特殊関係から一般関係への転換の模索は、韓国内での対立にどのような影響を及ぼすと考えるか。

ホン・ミン:国対国の外交的対象になったとしても、南南対立(韓国内での理念的な対立)そのものが直ちに消えると考えるのは難しい。「民族」から「隣り合う敵対的国家」へという形式の変化だけでは、北朝鮮という敵対的他者性、歴史性、血縁的想像を脱することは難しいだろう。国対国という形式だけでなく、内容的に関係の友好性を作り出すことができなければ、北朝鮮は絶えず外交的・軍事的対立の素材かつ「親北」と「反北」という二分法的対象として残ることになるだろう。ただし、長期的に人口社会学的な世代が変化し、国対国という外交的対象化と一定の共存的平和が定着すれば、南南対立の構図もかなり薄まる可能性はある。

キム・ソンギョン:北朝鮮という他者を利用した韓国の政治勢力の政争化は、すでに危険水位を超えている。このような脈絡から、北朝鮮との関係の転換は冷戦によって構築された政治地形の素顔をあらわにし、労働・経済の両極化・福祉・地方消滅・環境・ジェンダーなどの韓国社会の重要な議題を浮上させる効果を作り出しうる。ある意味、市民の意識と生活はすでに北朝鮮を主要変数として考慮していないのに、政治勢力だけが極端化した支持勢力を結集させるために北朝鮮問題を利用しているのかもしれない。現実と理想はコインの裏表のようなものだ。統一がますます難しくなっている現実に積極的に対応しつつも、朝鮮半島問題の究極の志向としての統一という価値をしっかりととらえていくための工夫が必要だ。

チョン・ウクシク|ハンギョレ平和研究所所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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「戦争を望んでいるわけではないが、(いざとなったら)戦争も辞さない」といったものだ。これからは「戦争を望まないなら、戦争を予防できる方法を一緒に模索しよう」に切り替えなければならない。

2023-06-27 00:10:35 | 南北は一つ

南北関係「ゼロ時代」…

偶発的な衝突防ぐ「ガードレール」設けるべき

登録:2023-06-27 06:38 修正:2023-06-27 11:44
 
対話と交流は姿を消し、抑止が横行 
離散家族の生存者が大幅に減り 
南北の感情的相互依存も弱まる 

停戦70年、平和の模索が姿を消し 
南北米当局、軍事力とその使用の意志を誇示 
危機管理に乗り出す必要性がさらに高まる 

最悪のシナリオを防ぐために 
緊張緩和を最優先議題にすべき 
米中関係をヒントに安全装置の構築急がれる
 
 
2019年5月22日、取材陣が江原道鉄原郡「DMZ平和の道」内の孔雀稜線眺望台に上がり、鉄柵の向こうの非武装地帯を眺めている//ハンギョレ新聞社

 南北関係において「関係」という言葉を使うのがためらわれるほど、関係自体がなくなっている。まず、南北対話と朝米対話がゼロになって久しい。1971年に始まった南北対話は2018年12月以来、1992年に始まった朝米対話は2019年10月以来、これまで一度も開かれていない。南北対話と朝米対話がこれほど長い間断絶したのは初めてだ。だからといって、南北米中4カ国協議やこれに日本とロシアを加えた6カ国協議があったわけでもない。

 南北の経済協力と人的・物的交流も同じだ。2021年には、1989年に統計が作成されて以来初めて南北間を往来した人が0人になり、いまもその状態が続いている。車の往来は2021年から、船舶、航空機、鉄道の往来は2019年から現在までゼロだ。畳みかけるように、離散家族の生存者が大幅に減り、南北の感情的な相互依存も弱まっている。離散家族問題には南北関係をつないでいくべき理由を道徳や人道主義の面から訴えかける力があったが、それさえも消えてなくなっていくわけだ。南北当局が離散家族の無念を顧みなければならないのもそのためだ。

 残念な場面は他にもある。今年停戦70年を迎え、国内外の市民社会と宗教界を中心に停戦協定を平和協定に切り替えるための取り組みが活発に行われているが、南北当局はこれにあまり関心がない。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は6月初めに発刊した国家安全保障戦略書で、平和協定について言及すらしなかった。平和協定を締結して平和体制を構築しなければならないというのは、北朝鮮の長年の主張であり要求だった。しかし、2020年以降、このような要求は姿を消した。今年停戦70年の「節目の年」を迎え、このような主張が出てきてもおかしくないはずなのに、現在まで一言もない。南北いずれも平和体制の構築に無関心と言っても過言ではない。

 このように変化した現実の中で、我々は南北関係をどう設計し直すべきだろうか。関係が途絶え、互いに対する敵対感と武力示威だけが極限に達している、今の現実からその答えを見出すことができる。当分の間、再び仲良くなれないなら、少なくとも喧嘩はやめようということだ。

 戦争はいろいろな逆説を抱いている。まず戦争が勃発する可能性自体は非常に低いが、一旦戦争になると、莫大な被害をもたらす。前者の可能性に重点を置けば怠惰になりやすく、後者のリスクに傾倒して戦争の準備に励むと、かえって戦争の可能性を高めることになる。また、戦争は悲観主義と楽観主義の奇妙な結合だ。悲観主義とは、自分に脅威を与える、あるいは与えると予想される相手に対して、いま思い知らせないと後でさらに大きな災いを招きかねないという考えと、小規模の衝突が発生した場合、きちんと思い知らせておかなければ相手がより大胆になりかねないという考えから、武力攻撃や過剰対応を選ぶ心理的現象のことだ。一方、楽観主義は、戦争を通じて戦前より良い状態を達成できるという主観的確信を指す。だが、我々は様々な戦争の歴史を通じて「こうなると知っていたら戦争しなければよかった」という後悔の念を幾度も抱いてきた。

 しかし、いま朝鮮半島はこのような逆説に覆われている。多くの人々が激しくなる軍拡競争と武力示威の攻防戦を見ながら「このままでは戦争が勃発するのではないか」と心配しているのに、南北米の当局は力だけが生き残る道だと主張し、軍事力とそれを使う意志をさらに誇示している。南北米の政府はいずれも非現実的な仮定と極端な被害妄想を織り交ぜ、軍事行動を合理化しようとしているが、そうすればするほど戦争を心配する人は増えていく。韓米同盟と北朝鮮は自分たちの軍事力がこれまでで最強だと豪語しながら、安全保障環境は最悪だと主張している。ならば、ここで南北米政府に問いかけたい。

 相手を悪魔化し、軍事力を誇示することで、果たして平和を守ることができるのか。戦争を防ごうとする言動がかえって戦争の危険性を高めているのではないか。韓米が「正常化」という名で強化している合同演習や軍備増強は、朝鮮半島の安全保障を本当に「安定化」しているのか。相手の攻撃の兆候が見えれば先制攻撃に出られるというが、人間の判断の誤りや機械の誤作動の可能性は考えてみたのか。北朝鮮は韓米の非核攻撃の際にも戦術核を使えるというが、これがどのような結果をもたらすかはちゃんと分かっているのか。韓米は北朝鮮が戦術核を使っても金正恩(キム・ジョンウン)政権を終わらせる「圧倒的対応」に乗り出すと言っているが、この過程で朝鮮半島の住民たちが受ける被害については考えてみたのか。戦争が勃発した場合、罪のない人々が受ける恐るべき被害は、誰がどのように責任を持って補償するのか。南北米はこの危機状況を安定的に管理する意志と能力を持ち合わせているのか。

 では、喧嘩しない南北関係を築くためには、どのような努力が必要だろうか。米中関係からヒントを見出すことができる。両国は激しい戦略競争を繰り広げているが、競争が武力衝突に飛び火しないよう「ガードレール(安全装置)」を設けるべきということには共感している。5年ぶりに行われた米国務長官の6月の訪中でも、これを確認することができる。アントニー・ブリンケン米国務長官は、中国の秦剛外相や王毅共産党中央政治局委員、習近平主席などと相次いで会談し、衝突防止のために両国関係を「安定化」することで合意した。

 実は、南北にも巨大なガードレールがある。軍事境界線を基準に南北両側に155マイルにわたって2キロずつ設定された非武装地帯(DMZ)がまさにそれだ。DMZは名称からも分かるように、南北の境界地域に非武装緩衝地帯を作って武力衝突防止するためのものだ。しかし、DMZは時間が経つにつれて重武装地帯に変わり、数回の武力衝突も発生した。このような問題点を解決し、近隣地域にまで緩衝地帯の拡大を目指したのが南北軍事合意(2018年9月)だ。

 南北軍事合意を山火事に例えてみると、その重要性が理解できる。高温で乾燥したところでは小さな火種でも山火事が発生し、いったん山火事が起きれば手に負えないほど広がって、鎮火にも大きな困難が伴う場面を、我々は世界各地で目撃している。気候変動の影響のためだ。同様に、「南北関係の変化」によって関係はますます形骸化しており、政治・軍事的敵対感と軍拡競争は熱くなっている。これは小さな衝突が発生する危険性も、その衝突が大きな戦争に飛び火する危険性も高くなっていることを意味する。尹錫悦政権が「南北軍事合意は文在寅(ムン・ジェイン)政権の遺産」という政派的観点から抜け出して、南北いずれもこの合意を守ることがいつにも増して重要になっている。

 南北関係の変化がより根本的なレベルで起きていることに注目し、戦争予防および危機管理に乗り出す必要性も高まっている。前述したように、南北関係は対話ゼロ、人的・物的交流と往来ゼロの時代に入っている。その代わりに「抑止一辺倒の関係」が幅を利かせている。相互抑止は過去の南北関係にもあったが、対話、交流往来、南北経済協力などと共存していた。だが、2020年以降、特に尹錫悦政権が発足して以来、抑止だけが横行している。これは朝米関係も同じだ。このように抑止の追求が避けられないもので、またこれが大きな流れになったとしても「抑止関係の安定性」を期する努力も非常に重要だ。安定性に欠ける抑止関係は、人間の判断の誤りや誤認、そして機械の誤作動による武力衝突のリスクを高め、抑止本来の趣旨を裏切る結果を招きかねないためだ。

 抑止の三つの要素は、能力(capability)、信頼(credibility)、伝達・疎通(communication)である。敵対的抑止関係は、相手より軍事的能力で優位に立とうとする軍拡競争、自分を攻撃すれば恐るべき報復に遭うと思わせるための軍事戦略や準備態勢、そしてこのような能力や意図を相手に伝える様相を呈している。これは本来自分の安全保障を強化するためのものだが、相手の反作用を引き起こし、むしろ自分の安全保障も危うくする安全保障のジレンマを作り出す。

 これに伴い、抑止を追求しても不安定を減らし、安定性を期することができる関係への転換が非常に重要だ。そのためには、韓米同盟と北朝鮮が軍拡競争よりは軍備統制を通じて軍事力のバランスを維持しようとするアプローチが求められる。また、報復の脅しが空言に過ぎないことを相手に信じさせようとする敵対的な信頼よりは、互いが先制攻撃を行わず、偶発的な衝突が発生した時には平和的な解決を目指す友好的な信頼を構築するために努力しなければならない。さらに、相手に恐怖を与えるかたちの伝達を避け、相互満足できる解決策を模索する対話と意思疎通の方法を構築しなければならない。

 
 
2018年8月20日、金剛山で開かれた離散家族再会行事で、韓国側のイ・グムソムさんが息子のリ・サンチョルさんを見てすぐに気づき、抱き合って頬ずりしながら涙を流している=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 対話が消え、抑止が横行する朝鮮半島の状況で、対話と交渉の目標を再構成することも必要だ。これまで南北-朝米対話を含む各種の会談の目標は「善意のシナリオ」に基づいていた。朝鮮半島平和体制と非核化の実現、南北の経済共同体の建設とユーラシア大陸への進出、朝米関係の正常化と対北朝鮮制裁の解決、交流協力の拡大と平和的統一の実現などがまさにそれだ。これらの動機と目標は放棄できないが、まずは対話と交渉の目標を「最悪のシナリオ」を防ぐことに照準を合わせて設定しなければならない。朝鮮半島問題の主要当事者ともいえる南北米中いずれも戦争を望まないという最小限の共通分母は、対話を再構成する基盤になりうる。

 こんにちの南北当局の態度を一言でいうと、「戦争を望んでいるわけではないが、(いざとなったら)戦争も辞さない」といったものだ。これからは「戦争を望まないなら、戦争を予防できる方法を一緒に模索しよう」に切り替えなければならない。また韓米は北朝鮮に対して「条件のない対話」を掲げているが、「朝鮮半島の完全な非核化に向けて」という、当面は実現不可能な目標を修飾語として付けている。一方、対話の扉を固く閉ざした北朝鮮は対話再開の条件として「敵対政策の撤回」を求めている。韓米同盟と北朝鮮は現実を直視しなければならない。韓米が非核化を強調すればするほど非核化は遠ざかり、北朝鮮が対話の条件として敵対政策の撤回を要求するほど、北朝鮮のいう敵対政策はさらに強化されている現実を。こうした現実を乗り越えるためには、南北米が「戦争防止と緊張緩和」を対話の最優先議題に据えなければならない。足元に降りかかってくる火の粉をまず消してこそ、遠く険しい道を歩んでいけるからだ。

チョン・ウクシク|ハンギョレ平和研究所長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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統一は北朝鮮体制に変化が生じ、南北の類似性と同質性が高まった時点で、南北の住民が決める問題です」

2023-02-20 10:26:01 | 南北は一つ

「米国寄りから抜け出し、

『骨のある』自国中心の外交が韓国には必要だ」(1)

登録:2023-02-20 05:28 修正:2023-02-20 08:36

 

チョン・セヒョン元統一部長官インタビュー 
韓国外交を診断した著書『チョン・セヒョンの洞察』で 
国際秩序から時代の答え探し 
三国統一以来の「従属の外交史」を分析 
 
「米国は衰退し、中国を浮上する激動期」 
「ヤクザの世界で国益を守らなければ」 
「米国ばかり追いかけていては再び日本の下に置かれる可能性も」 
「北朝鮮の『核保有』が認められる状況に備えるべき」
 
 
最近、著書『チョン・セヒョンの洞察』を出したチョン・セヒョン元統一部長官が14日、本紙のインタビューに応じている。同書は公開から数日でベストセラーになった=ユン・ウンシク先任記者//ハンギョレ新聞社

 「尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権になって、あまりにも米国寄りの外交を展開しています。日本との関係も米国が望む方向に傾くのを見ていると、一体どうするつもりなのか、心配になります」

 チョン・セヒョン元統一部長官が最近出した本『チョン・セヒョンの洞察―国際秩序から時代の答を探す』(青い森)の主なメッセージは、韓国外交が国益のために自国中心性を持つべきというものだ。「朝鮮がどうやって滅びましたか。中国が世界の中心から遠ざかっていることも知らず、『小中華(思想)』を掲げ、対外関係のすべてを一つひとつ中国に伺いを立て、いち早く欧州中心の秩序に便乗した日本にのみ込まれたではありませんか」

 14日に会ったチョン氏は、「米国の国務長官を務めたヘンリー・キッシンジャー氏も十数年前に『米国は衰退し、中国が浮上している』と診断したにもかかわらず、韓国の外交官や国際政治学者の中には依然として米国側に立っていればうまくいくと信じている人が多い」と残念さをにじませた。

 チョン氏は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権と金大中(キム・デジュン)政権時代、2年5カ月間にわたり統一部長官を務め、「南北和解協力政策」を第一線で導いた。長官在任中、南北会談を95回も指揮し、73件もの南北合意書を作り出した。南北協力の象徴である「南北鉄道・道路連結」と「開城(ケソン)工業団地の着工」もチョン氏の長官時代の出来事だ。

 チョン氏は同書で、東アジアを中心に国際秩序の変遷を振り返り、解放後、韓国大統領たちが米国とどのような外交を展開してきたのかを主に取り上げた。

 同書によると、国際政治は「ヤクザの世界」と変わらない。昨年のロシアのウクライナ侵略からも分かるように、先に手が出て、言い訳や口実は二の次ということだ。この「ヤクザ」の秩序の中で国家利益を守るためには、外交が自国中心性を持たなければならないが、チョン氏によると、韓国外交は「自国中心性がほとんどゼロに近いと言わざるを得ない」。さらに「現政権であれ前政権であれ、外交で自国中心性が必要だという意識を持った人はあまりいないようだ」とも語った。

 チョン氏は「小川に入った牛が左側の草も食べ、右側の草も食べながら歩くように、韓国はそのような外交を展開しなければならない」という金大中元大統領の言葉を借りて、「韓国は米国と中国をうまく活用するなど等距離外交をしなければならない」と述べた。「韓国の最大交易国である中国は2010年にすでに世界経済のナンバー2になっており、2049年には米国の国内総生産(GDP)を追い越すという目標に向かって走っています。韓国が世界経済10位になったのも中国のおかげです。にもかかわらず、尹大統領はNATOに行って『脱中国』を叫んだのだからもどかしい」

 そして、韓国外交が自国中心性を発揮した代表的な例として、金大中政権時代の韓米首脳会談を挙げた。「2002年1月、北朝鮮を悪の枢軸と名指しする演説をした息子のジョージ・W・ブッシュ米大統領が、それから1カ月後に韓国を訪問した時でした。金大統領は100分間、あらゆる言葉で説得を重ねた末、ブッシュ大統領が都羅山(トラサン)駅で『北朝鮮と対話し、人道支援を行う』という演説をするように導きました」。一方、自国中心性の欠如が国益を損ねた例としては、朴槿恵(パク・クネ)政権時代、中国を標的とした米国の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備要求に屈服したことを挙げた。

 チョン氏は、文在寅(ムン・ジェイン)政権時代、南北関係に進展がなかったのも同じ理由だと指摘した。「2018年、4・27板門店宣言と9・19平壌共同宣言が発表され、南北が急速に近づくのを見て、米国が韓国側に『韓米作業部会』の構成を提案しました。この機構を作ってから、米国は南北関係を発展させようとする韓国側の足を事あるごとに引っ張りました」。 チョン氏は「その時、米国は車の搬入が対北朝鮮制裁違反だとして医薬品(タミフル)の輸送まで阻止した」とし、「米国がそう出るなら、韓国は手押し車に乗せてでも北朝鮮に(医薬品を)送るべきだった」と語った。

 また、「1995年の金泳三(キム・ヨンサム)政権時代から、米国は北朝鮮政策で『韓米協力』の原則を突きつけ、韓国政府が米国の方針に反対できないようにしてきた」とも述べた。「韓米協力が今は逆らえない名分になったが、本当の意味は米国が行こうとする方向に韓国も行かなければならないというものです。文政権は韓米作業部会で米国が韓国の足を引っ張ろうとする時、強く反発するか、米国に従わずに持ちこたえて本来の方針を貫くべきでした。帝国を運営してきた国である米国は、原則や時限を掲げて他国を一方的に引っ張っていこうとします」

(2に続く)

 

「米国寄りから抜け出し、

『骨のある』自国中心の外交が韓国には必要だ」(2)

登録:2023-02-20 05:26 修正:2023-02-20 08:41

 

チョン・セヒョン元統一部長官インタビュー 
 
 
チョン・セヒョン元統一部長官の著書『チョン・セヒョンの洞察―国際秩序から時代の答を探す』(青い森)//ハンギョレ新聞社

(1から続く)

 チョン氏は米国の言うことに従うだけのけの外交は、韓国が日本の下に置かれる結果を再び招きかねないと懸念を示した。「今、日本は米国の副将の役割を果たしています。米国の力が弱まった時『自分が出て中国と1対1で対抗し米国的秩序を維持する』として、米国の委任を受けようとするでしょう。実は米国中心の秩序は口実にすぎず、日本が中心となることを夢見ているのです。現在、日本の軍艦が掲げている旭日旗がそのような野心をよく示しています。米国にとって韓国は日本の下です。米国ばかり追いかけていると、日本の下に入るしかありません。しかし、中国とも良い関係を維持すれば、中国の力が強くなる時、韓国が中心国に入ることがより容易になります」

 韓国外交の自国中心性の欠如はどこに由来するのかという質問に対し、チョン氏はこのように答えた。「従属性が我々の遺伝子に組み込まれてしまったのではないかと思えるほどです。新羅三国統一以降、高麗や朝鮮まで支配層は中国との関係においてむしろ従属的であることを自ら選び、日本統治時代も『朝鮮の奴らはどうしようもない』と言う人がたくさんいました。解放後、李承晩(イ・スンマン)大統領と朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が米国を引き入れて政権維持に活用した影響もあります」

 米国に対抗すれば、むしろ韓国政府を非難する「国民感情」を乗り越え、外交の自国中心性を貫くことができるだろうか。チョン氏は「韓国は今、軍事的に世界6位、経済的に世界10位で国際的に尊重される国。今後、政治指導者が骨のある外交を展開していけば、国民も徐々に考えを変えるだろう」としながら、こう述べた。「大人になっても父親に自分のすべきことをいちいち聞く小学生のように振る舞っていたら、いつ正常な国になれるのでしょうか」

 チョン氏は著書の中で、1981年の自身のソウル大学政治学博士論文(「毛沢東の対外観研究」)審査の時のエピソードを紹介し、韓国の世論主導層に蔓延している米国寄りの考え方の問題点を指摘した。「私が論文の結論に『1978年に改革開放を行った中国が経済成長を成し遂げれば、富国強兵の原理に従って必ず軍事大国になるだろう。そうなれば天下に号令した過去の自国の地位を回復しようとするはずであり、それに備えた韓国の外交政策を考えなければならない』と書きました。ところが審査で教授たちが『中国の経済が発展すれば都農と貧富の格差が広がり、少数民族が立ち上がって(国が)割れるのが目に見えている。大国の命脈も維持するのは難しいだろう』といって、論文の修正を求めました。教授たちのそのような考えこそが、まさに中国に対する米国の見解でした。外交官や学者たちが米国の目で世界を見ているのは、今も大きな変化がありません」

 チョン氏は外交の自国中心性を確保するカギは結局、人だと語った。「金大中政権時代、(反発する)米国をなだめながら、中国や北朝鮮との関係も発展させました。もちろん大統領の意志があったからこそ可能でしたが、イム・ドンウォンという参謀がいなければそれも難しかったでしょう。盧武鉉政権も大統領府にイ・ジョンソクという参謀がいた時は、韓米より南北関係を重視しました」

 南北関係の見通しについては「南北関係にも四季がある」としてこのように答えた。「今は冬の時期に入っています。でも、英国の詩人シェリーが『冬来りなば春遠からじ』と詠んだように、次の政権は金大中・盧武鉉政権時代のように南北関係の春を迎える可能性があります。もちろん『金大中-イム・ドンウォン』『盧武鉉-イ・ジョンソク』のような大統領と参謀の組み合わせがあればの話ですが」

 チョン氏は著書の最後に、北朝鮮は核を放棄したウクライナが侵攻されるのを見て、「絶対に核を放棄してはならない」と考えただろうとし、「今後、米国が北朝鮮の核保有を既成事実とする交渉に韓国を追い込み、不意打ちを食らう恐れもある」と述べた。「核保有国であることを認められた北朝鮮が軽量化・小型化した核爆弾を実戦配備するのが、韓国にとって最悪の状況です」

 ならば、どうすれば良いだろうか。「北朝鮮が韓国を軍事的に威嚇すれば、彼らの暮らしが脅かされるほど、南北の経済的な依存度が高まるよう構造化すべきです。今の韓中関係がまさにそのような状態ですね」

 チョン氏は北朝鮮との関係は統一ではなく、欧州連合(EU)のような国家連合を目指すべきという持論も示した。「事実上、南北が二つの国家になって久しい。なにより、経済力の差が大きすぎます。南北の所得の差は28倍にもなります。この状態では連合も容易ではありません。統一は北朝鮮体制に変化が生じ、南北の類似性と同質性が高まった時点で、南北の住民が決める問題です」

 
カン・ソンマン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/1080329.html韓国語原文入力:2023-02-20 02:33
訳H.J
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