私たちは今、奇妙な世界に住んでいる。世界核戦争のシナリオが繰り広げられているにもかかわらず、ポピュリズムを展開する新保守主義者とキャンセルカルチャー・・・

2023-10-01 07:08:43 | ロシアは戦争をやめろ!
 

[寄稿]核戦争と私たちの時代の狂気

登録:2023-09-26 05:57 修正:2023-09-30 18:29

 

[世界の窓]スラヴォイ・ジジェク|リュブリャナ大学(スロベニア)、慶煕大学ES教授
 
 
ロシア軍が昨年10月26日、北西部のプレセツクで核演習の一環として大陸間弾道ミサイルの発射試験を行っている=ロシア国防省提供/UPI・聯合ニュース

 ロシア陸軍のアレクサンドル・ドボルニコフ大将が先日、英国メディアとのインタビューで、不気味な警告を発した。「ロシアのウクライナ侵攻の『避けられない』結論は核戦争だ。大量破壊兵器の使用に切り替えるのに必要なのは、プーチン大統領の政治的決断だけあればいい。ロシアの目標と西側の目標は、それぞれの生存と歴史的な永遠性であり、これを守るためには、核兵器を含むすべての武力闘争の手段が使われるだろう。この戦争で核兵器が使われることは避けられず、そこから我々も敵も逃れることはできない」。彼は恐ろしい自己破壊的な虐殺を、高レベルの義務行為のように述べた。

 この話を単なる戦略的な脅しとして片付けてはならない。たとえ脅しの意図でなされた話であっても、それを現実化へと追い込む論理がそこには内在している。この論理では、冷戦期に核災害を効果的に抑制した相互確証破壊(Mutual Assured Destruction: MAD)の論理とは違い、「我々も敵も」逃れるところがないため、相互破壊は「不可避」なこととして提示される。

 ここで、「生存と歴史的な永遠性」という奇妙な表現の意味に注目する必要がある。彼はあたかもロシアがウクライナと同じように自己の生存を守るために戦っているかのように言う。彼がこのように言えるのは、「ロシア」をロシア帝国とソビエト帝国という巨大な概念を意味するものとして使っているためだ。その観点では「誰が先に攻撃を始めたのか」といった問題は些細なものになり、「ロシアのウクライナ侵攻」のような表現も平気で使うことができる。

 ならば、私たちがすべきことは何か。まず、単純な線形的展開から抜け出す兆候を感知しなければならない。今月初め、キューバ政府が、ロシアの人身売買組織がウクライナ戦争に参戦させるキューバ人を傭兵として集めていたことを摘発したというメディア報道があった。キューバ政府は声明を出し、人身売買ネットワークを無力化し、解体するために努力していると発表した。厳格な統制国家であるキューバが、この組織を本当に今になって発見したという可能性は低い。キューバ政府はなぜ今、このような発表をしたのだろうか。ウクライナ戦争に対してロシアを確固として支持してきたキューバでさえ、もはやロシアの危険な冒険から距離を置くことを決めたという意味ではないだろうか。

 私たちが何をすべきかについて一般化して言うならば、現在唯一の原則的かつ実用的なアプローチは、ロシアの核の脅威を認識しつつ、外交と軍事戦略の次元では、これを徹底的に無視することだ。そして、私たちが取りうる最悪のアプローチは、ロシアの脅迫に屈服し、「ロシアを刺激しすぎてはならない」という論理に従うことだ。私たちはウクライナを支援し続けなければならない。同時に、誰もロシアの領土のどんな一部も攻撃することを望まないと明確にすることによって、ロシアが核兵器の使用の名目として、自国領土への攻撃に対する防衛を掲げることができないようにしなければならない。

 私たちは今、奇妙な世界に住んでいる。世界核戦争のシナリオが繰り広げられているにもかかわらず、ポピュリズムを展開する新保守主義者とキャンセルカルチャー(誤った言動をしたと判断された人をSNSから排除する文化)を主導する左派が、それぞれ相手に対して文化戦争を行っており、先進国に住む多くの人たちが、平然と悪天候やフライトのキャンセルで自分の休暇が台無しになるかもしれないことばかりを心配しているような世界だ。このまったく異なる選択肢が平和に共存しているという事実は、私たちの狂気を示している。私たちは、核戦争で全滅しかねない状況にあっても、ポピュリズムやキャンセルカルチャーをより嫌悪し、さらには、自分たちの日常を一番心配する。私たちは、理性では3つの次元が互いに結びついているという事実を知りながらも、それを無視し、あたかもこれらがまったく別の問題であるかのように行動する。

 
//ハンギョレ新聞社

スラヴォイ・ジジェク|リュブリャナ大学(スロベニア)、慶煕大学ES教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

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ゼレンスキー大統領の演説のキーワードはロシアの「武器化」だった。現在、武器自体を制限する多くの協約があるが、「武器化」に対する実質的な制限はない点を指摘し、3つの例を挙げた。

2023-09-22 08:43:58 | ロシアは戦争をやめろ!
 

ゼレンスキー大統領

「終戦交渉?プーチンが信頼できるのかプリゴジンに聞いてみよ」

登録:2023-09-21 06:17 修正:2023-09-21 08:34
 
ウクライナ大統領、国連総会で演説
 
 
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が19日(現地時間)、米ニューヨークの国連本部で開かれた第78回国連総会に出席し演説している/AP・聯合ニュース

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は国連総会で、ロシアが食糧・核・子どもなどを「武器化」しているとし、これを止めるべきだと訴えた。

 ゼレンスキー大統領は19日(現地時間)、米ニューヨークの国連本部で開かれた国連総会の一般討論演説で、「今最も恐ろしいのは核兵器ではない。侵略者は多くのものを武器化しており、これは我が国だけでなくあなた方の国に対しても敵対的に使われる」と述べた。また、ロシアは10年ごとに新しい戦争を始めるとし、ウクライナに対する今回の侵略に成功すれば、「国連総会長の多くの席が空席になるかもしれない」と警告した。そして、モルドバとジョージア領土の一部がロシアの占領下に入り、ロシアが化学兵器を動員してシリアを廃墟にしたうえ、ベラルーシをほとんど飲み込んだと語った。さらに、カザフスタンとバルト海沿岸国家まで脅かしている主張した。ゼレンスキー大統領は昨年、国連総会にはオンラインで出席した。

 ゼレンスキー大統領の演説のキーワードはロシアの「武器化」だった。現在、武器自体を制限する多くの協約があるが、「武器化」に対する実質的な制限はない点を指摘し、3つの例を挙げた。

 一つ目は「食糧」。ゼレンスキー大統領は、ロシアが昨年の侵攻後、ウクライナの主要穀物輸出ルートである黒海の航路を遮断し、今はその代案であるドナウ川港を狙ってミサイルとドローン攻撃を続けていると述べた。これは「占領した領土の一部を認めてもらうために食糧を武器化しようとする明らかな試み」だとし、「ロシアが食糧価格を武器化し、アフリカから東南アジアに至るまで広範囲な地域に影響を及ぼしている」と語った。

 ゼレンスキー大統領はさらに、ロシアが「核エネルギー」を武器化していると批判した。欧州最大の原発であるウクライナのザポリージャ原発を砲撃して占領し「現在は放射能流出もあり得ると脅している」とし、「ロシアが原発を武器化しているのに、(世界が)核兵器を減らすことに意味があるのか」と問い返した。

 最後にロシアがウクライナ領土で「子どもたち」数十万人を拉致し追放した証拠を確保しているとし、国際刑事裁判所(ICC)が3月にこの疑いでプーチン大統領に対する逮捕状を発行した事実に触れた。また「この子どもたちはロシアでウクライナを憎むよう教育を受けており、家族とのすべての関係が途絶えた」とし、「これは明白な大量虐殺」だと主張した。これについては、ロシアに友好的な南アフリカ共和国大統領でさえも「ウクライナから追放された子どもたちを返さなければならない」とし、(ゼレンスキー大統領を)支持する立場を表明した。

 ゼレンスキー大統領はさらに、ロシアが気候を武器化する可能性があると警告した。「幸いまだ気候を武器化する方法を学んでいない」としながらも「一部のならず者国家はそれ(気候危機の結果)もやはり武器化するかもしれない」と述べた。

 ゼレンスキー大統領は同日、昨年の主要7カ国(G7)首脳会議で公開したウクライナの「平和の公式」を再度強調し、ロシアの「武器化を止めなければならない」と訴えた。この公式には、ロシアの敵対行為の中止、ウクライナ全土からの完全な撤退、安全保障などの内容が盛り込まれている。

 戦争開始から1年7カ月が過ぎた状況で、一部では今回の戦争の「外交的」な解決を図るべきだという声も上がっている。ウクライナが領土の一部をロシアに与え、戦争を終結すべきだという主張だ。ゼレンスキー大統領はこれに対し、「背後にある怪しい取引」だとし、ロシアとは交渉できないという点を明確にした。ゼレンスキー大統領はロシアに対抗して武装反乱を起こし、先月疑問の飛行機墜落事故で死亡したロシアの民間軍事会社「ワグネル」の首長だったエフゲニー・プリゴジン氏に言及し「プーチンの約束を信じる人がいるのか、プリゴジンに聞いてみるべきだ」と語った。

ベルリン/ノ・ジウォン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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ロシアが一定の時間を置いてから同じ場所を連続攻撃し、救助隊員まで攻撃しているという批判が出ている。AP通信などが8日(現地時間)報じた。

2023-08-08 17:20:13 | ロシアは戦争をやめろ!
 

ロシア軍、救助隊員まで狙った「時間差連続攻撃」…

批判高まる

登録:2023-08-10 09:53 修正:2023-08-10 13:50
 
同じ場所を30~40分後に再び攻撃
 
 
ロシア軍が40分おきにミサイル攻撃を行い、救急隊員にまで2次被害を与えたウクライナのドネツク州ポクロフスクの空爆現場で8日(現地時間)、救助隊員らが捜索作業を行っている=ポクロフスク/AFP・聯合ニュース

 ロシアが一定の時間を置いてから同じ場所を連続攻撃し、救助隊員まで攻撃しているという批判が出ている。AP通信などが8日(現地時間)報じた。

 同通信はロシアが7日夕方、ウクライナ東部ドネツク州ポクロフスク市内のアパートを40分の間に2回爆撃し、9人が死亡、80人余りが負傷したと伝えた。ウクライナ当局は、最初の爆撃が起きた直後、救助隊員らが現場に駆けつけ、2次被害を受けたと説明した。死亡者のうち1人は救助隊員で、負傷した救助隊員も7人発生。警察官も31人が負傷した。ポクロフスクは戦闘が繰り広げられている最前線から約50キロメートル離れたドネツク州中西部の都市。

 ウクライナ警察庁のイワン・ビヒウスキー警察庁長は「(警察官)全員が最初の空爆後に住民救助のため現場に行った。敵軍は故意に再び攻撃した」と述べた。ドネツク州のパブロ・キリレンコ知事は、ロシア軍は打撃の正確度を高める高級誘導装置を備えた最新型短距離戦術ミサイル「イスカンデル」で攻撃したと主張した。正確度が低かったため同じ場所に偶然2回落ちたわけではないという指摘だ。

 AP通信によると、ロシア軍は2011年に始まったシリア内戦でもこのような「連続攻撃」方式を使用したことがあり、昨年2月末にウクライナに侵攻した後も、随所で似た方式の攻撃を加えたという。このような連続攻撃は、爆撃直後に被害者救助に乗り出した救助隊員まで危険にさらすという点で、特に非人道的だという指摘が出ている。ウクライナ戦争以来、これまでロシアの攻撃で死亡した救助隊員は計78人、負傷者も280人を超える。

 ポクロフスク市のセルヒ・ドブリアク行政責任者は、30~40分の間に同じ場所を狙う連続攻撃を「典型的なロシアの作戦シナリオ」と表現し「爆撃後に人命救助隊員が到着すると再びロケット攻撃が行われ、このため被害規模がさらに大きくなる」と説明した。

 国連のウクライナ人道支援調整官のデニス・ブラウン氏は声明を出し、この日の攻撃は「極度に非人道的なもの」だとし、これは国際法に深刻に反するものであり、「あらゆる人道主義原則」にも反するものだと批判した。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は空爆後の国民向け演説で、ロシア軍が一般住居用建物を攻撃したと述べ、最上階が破壊された典型的な旧ソ連式5階建てマンションの写真を公開した。戦争状況を取材する西側のジャーナリストがよく訪れる近くのホテルやピザ屋も、この日の攻撃で被害を受けた。

シン・ギソプ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
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