「82階建てマンション」並ぶ北朝鮮の黎明通り、
1年で完工…秘訣は“振興資本家”
登録:2019-01-28 10:01 修正:2019-02-03 11:38
私たちが知らなかった北朝鮮 4
黎明通り、1年で完工…北朝鮮の10大高層ビルの5カ所が位置
金主に工事を任せて特恵を提供する方式、前例のない工期短縮
「金主がいなければ国の建設課題の遂行は想像もできないのが現実」
2017年4月13日、平壌の黎明通りの竣工式が終わった後、住民たちが新しく建設されたマンションなどを見ている=平壌/ロイター聯合ニュース
2017年4月13日、平壌(ピョンヤン)の黎明(ヨミョン)通りの竣工式。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長がテープカットをする姿を近接して捉えた映像・写真が世界に伝えられた。黎明通りは平壌市大城(テソン)区域の錦繍山太陽宮殿から永生塔までの長さ3キロメートル、往復8車線道路だ。82、70、55、50、45階の超高層マンション40棟と公共建物60棟が新しく建てられた。270メートルの高さの82階のマンションは、柳京ホテルを除けば北朝鮮で最も高い。北朝鮮の10大高層ビルのうち、5カ所が黎明通りのマンションだ。「70階建ての家を建てた経験はない」という「黎明通りの建設指揮部の労働者キム・ジンソン」の告白(「錦繍江山」2016年7月号)は大げさな言葉ではない。「社会主義文明の理想の街路」(パク・ボンジュ首相)や「労働党時代の仙境」(「労働新聞」)と呼ばれる。
金委員長の発起で2016年3月18日に着工し、約1年後の2017年4月13日に完工した。「パルリパルリ(速く速く)」なら世界最高水準である韓国の大手建設会社も不可能なスピード戦だ。北朝鮮の相次ぐ核実験とミサイル発射、国連・米国の制裁強化が絡み合い、朝鮮半島に戦雲が漂った時だ。さらに、金正恩委員長の就任後、平壌でのみ、倉田(チャンジョン)通り(2012年)、銀河科学者通り(2013年)、衛星科学者住宅地区(14年)、未来科学者通り(2015年)、黎明通りが相次いで造成された。朝鮮戦争後、平壌が計画都市として再建されてから、当局レベルで追加造成した14の街路のうち5つが金委員長の政権獲得期に建設された。
制裁強化による資材不足と経験不足などを乗り越え、前例のない工期短縮を可能にした力はどこから生まれたのだろうか。1970年代以降、北朝鮮経済をだめにした主犯とされる金正日式のスピード戦だろうか。秘密を解く鍵は「金主(トンジュ)」(振興の資本家)にある。北朝鮮経済専門家のヤン・ムンス北韓大学院大学教授は、「金主がなければ国家建設課題の遂行など想像もできないというのが北朝鮮の現実」だと指摘した。金主は特に、北朝鮮では手に入れられなかったり不足している建築資材の調達に責任を負う。「金主の資本力と中国から迅速な資材調達能力がなければ、工期短縮は不可能だ」というのが専門家たちの評価だ。
2017年4月13日、平壌の黎明通りの竣工式で金正恩北朝鮮国務委員長がテープカットをする姿を朝鮮中央通信が報道した写真=平壌/朝鮮中央通信 聯合ニュース
作動方式はこのようになる。国策建設課題が党・内閣・軍に割り当てられる。各機関の責任者たちは「金主」を招いて工事を任せ、特恵を約束する。金主たちは投資金より利益を得られるよう、一部の建物使用権を譲渡されるなどの「契約」を行う。
金正恩時代の国策建設事業の実体は、民間資本誘致事業であり、官民合作事業だ。ただし、法的には「民間建設会社」が存在できないため、金主の役割は合法ではない。契約の法的効力もない。「民間遊休資金」の誘致は奨励されるが、「使用権」(事実上所有権)を金主に渡すことは認められないからだ。だからといって投資金を踏み倒されたり、「不法癒着」で刑務所に行くこともない。それどころか、投資規模が大きく権力に近い金主は「努力英雄」の称号・勲章、「金正恩表彰状」を受けたりもする。合法でも不法でもない、グレーゾーンでの共生だ。
金正恩時代に入って、グレーゾーンが急速に広がっている。国営企業と金主の共生もさまざまな分野に拡散している。例えばこのようなやり方だ。中国貿易業者がかつら1万個を1カ月以内に納品してほしいと北朝鮮貿易会社に注文する。貿易会社は傘下工場で1000個を生産し、残りの9千個は金主が主導する生産者ネットワークに渡す。金主たちは普段から取引していた国営企業に金を与え、生産を注文する。結局、国営企業が金主の注文によって賃加工会社の役割をするわけだ。
金主が国営企業の名義を借りたり、さらに工場の建物と機械設備の使用権まで得て、生産者の役割をしたりもする。法的に生産手段の事由は認められないが、現実は違う。ヤン・ムンス教授らが2015年に脱北者を対象に国営会社に個人(金主)が投資したり直接運営する割合を調べてみたところ、食堂64.1%、商店56.2%、地方産業工場26.2%、中央工業工場21.7%だった。それだけ「他人に労働させる個人事業者」の成長、つまり事実上の「企業私有化」が進んでいるという意味だ。
このように内外が異なる「形だけの国営」の拡散は、金正恩委員長の「我々式の経済管理方法」と「社会主義企業責任管理制」による「企業の自律権拡大」政策と「市場化進展」が化学反応をした変化だ。資本主義経済のように競争が激化し、格差が発生する。例えば「黄金野商店」(2014年12月開店)の責任者は公然と「早朝6時から夜12時まで他の商店より奉仕(営業)時間を延長し、価格を合理的に策定し、品質を監督する」と「差別性」を強調する。国営企業である黄金野貿易会社が(名目上)運営主体だ。韓国側の大型スーパーマーケットのように「低価買い上げ・低価販売」という一種の薄利多売戦略を打ち出した黄金野商店は、平壌普通江(ポトンガン)区域と中区(チュング)駅などに同時多発的に店舗を開いた後、「奉仕網」を徐々に広げる最初の「北朝鮮版コンビニチェーン」だ。「消費者の趣向狙い」はもはや北朝鮮でも必須課題だ。
ヤン・ムンス教授は金主と手を組んで早い変身を遂げる国営企業を「『赤い帽子』または『社会主義の帽子』をかぶった企業」と呼んだ。これは中国の改革開放初期に成長動力だった農民個人または集団所有の「郷進企業」で発生した現象と似ている。郷進企業は中国の農村で農民が設立した「(工業・運輸・サービス業など)非農業部門の非国有企業」の総称だ。
イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )