著者は各時期ごとに事実にもとづいてドライに叙述しているが、その事実に従っていくと国民全体がこのように異常なまでに戦争に没入しうるのかという衝撃が押し寄せてくる。

2024-08-31 16:53:26 | 世界平和を実現するために
 

【レビュー】

「帝国日本」の国民はなぜ戦争を熱烈に支持したのか

登録:2024-08-30 09:16 修正:2024-08-31 08:15

 

『帝国日本のプロパガンダ―日本はどうして絶えず戦争を繰り返せたのか』 
貴志俊彦著、チョン・ムンジュ訳、チョ・ミョンチョル監修|タカース|2万2000ウォン
  

1894年の日清戦争から1945年の太平洋戦争まで 
「帝国日本」、視覚メディアを利用して戦争熱あおる
 
 
1944年に児童向けに制作された絵本『ダイトウアキョウドウセンゲン』。連合国に対抗するための国防強化策として、帝国日本は「大東亜共栄圏」という構想を流布した。同書の出版元は大日本雄弁会講談社=タカース提供//ハンギョレ新聞社

 東アジアは19世紀末から20世紀まで激動期だった。特に、1854年に米国と和親条約を結び、西洋と本格的に交流を開始した日本は、西欧式の近代化を追求しつつ急激な変化を遂げる。この時期、日本は明治維新を通じて西欧化を追求するが、単に西欧の文物と制度を導入するだけでなく、天皇制を復活させるなど、日本独自の特殊なかたちで近代化を構築していった。日本はまた、この時期に「日本は韓国、満州、東南アジアなどを占領すべきだ」という軍国主義論理で武装し、他国を絶えず侵略して領土拡張を図った。

 『帝国日本のプロパガンダ』(原書は『帝国日本のプロパガンダー「戦争熱」を煽った宣伝と報道』中央公論新社)は、1894年の日清戦争で始まり、1945年の太平洋戦争の敗北で終わった「帝国日本」に注目する。この時期、日本は1894年の日清戦争、1904年の日露戦争、1914年の第1次世界大戦、1931年の満州事変、1937年の日中戦争、1941年の太平洋戦争と、ほぼ10年に1度の割合で戦争を繰り広げた。本書の監修を務めたチョ・ミョンチョル元日本史学会会長(高麗大学名誉教授)は、「日本が絶えず戦争を繰り返せた背景には戦争好きの指導層がいたが、それに劣らず過度な軍事費予算を快く容認し、戦争を熱烈に支持した世論も欠くことができなかった」と指摘する。では、当時の日本国民はなぜそのように戦争を熱烈に支持したのだろうか。

 
 
『帝国日本のプロパガンダ―日本はどうして絶えず戦争を繰り返せたのか』貴志俊彦著、チョン・ムンジュ訳、チョ・ミョンチョル監修、タカース刊//ハンギョレ新聞社

 本書の著者である京都大学地域研究統合情報センターの貴志俊彦教授は、戦争とプロパガンダの相関関係にその答えを見出す。20年間、東アジアの図画像を研究してきた著者は、帝国日本が強烈な視覚イメージを利用して国民の「戦争熱」をあおり、戦争に対する肯定的イメージを植え付けたとする。情報メディアを通じたイメージと情報の伝達は、単なる情報伝達にとどまらず、自国の世論を統制する手段であるプロパガンダの機能を持ったということだ。著者は、1890年代以降に帝国日本がどのようなメディアをプロパガンダに用いたのかを時代を追って検討しつつ、メディアとジャーナリズムが当時の日本国民の時代認識にどのような影響を及ぼしたのかを探る。

 
 
日清戦争を題材にした演劇用戦争錦絵「川上演劇日清戦争」=タカース提供//ハンギョレ新聞社

 1890年代の日清戦争期には版画報道が流行した。石版画やコロタイプなどの版画技術のせいで衰退の道を歩んでいた多色刷りの木版画(錦絵)は、「戦争錦絵」で生き残りの道を模索する。日清戦争の開始とともに日本は「新聞検閲緊急勅令」を公布し、外交や軍事に関する事件を新聞や出版物に掲載しようとする時は行政庁または内務大臣の検閲許可を得ることを義務付けた。しかし、錦絵は検閲に時間がかかると販売に支障をきたす恐れがあるため、検閲結果がすぐに得られた。速報性を帯びた錦絵は大衆の人気を集めた。錦絵は戦争物の芝居の上演ポスターとして用いられたことで大衆文化として浸透し、プロパガンダとして作用する。当時の日本国民がどれほど戦争に酔っていたかというと、おもちゃ屋でも銃、軍帽などのおもちゃを売っており、酒場では「皇国」、「大勝利」、「百戦百勝」のような商標を付けた酒を販売していたという。

 
 
      「帝国日本のプロパガンダ」の著者、貴志俊彦=@Miyuki Nakajima//ハンギョレ新聞社

 1904~1905年の日露戦争では、印刷技術の目覚ましい発展に伴い、「写真」を載せた新聞や「日露戦争写真集」のような画報雑誌が人気を集めた。絵葉書も人気で、戦場の将兵たちに41種の「慰問絵葉書」が無料で配布されたり、逓信省から「戦争記念絵葉書」などが登場したりした。官と民で絵葉書が作られたため、戦争絵葉書を収集する人々も現れた。それだけではない。19世紀末には白黒の無声映画(活動写真)が登場し、日露戦争を扱ったショートフィルムは公開前にチケットが売り切れるほど人気を博した。

 1910年代に第1次世界大戦が起きた時、戦争のための総動員体制が整えられたが、読売新聞のような報道機関はプロパガンダの役割を自ら買って出た。同紙は「戦時の婦人の心構え」などの報道もおこなった。また、進歩系といわれる朝日新聞でさえ「青島(チンタオ)陥落」を祝う企業広告を掲載したり、戦況を報道したりした。このように帝国日本期には、報道機関もやはり戦争の「火付け役」を果たした。

 
 
        『支那事変聖戦博覧会画報』(1938年)=タカース提供//ハンギョレ新聞社

 国家プロパガンダは1930年代に頂点に達した。中国との戦争を遂行するために軍官民産が密接に結びついた。この時代、すべての戦争報道は軍部の許可を受けなければならなかった。当時の内閣情報部は「写真週報」も作ったが、それには「愛国行進曲」を歌う少年少女の姿が掲載されるという具合だった。さらに朝日新聞社に至っては、陸軍省と海軍省の後援で「支那事変聖戦博覧会」を主催した。大衆に日中戦争が「聖戦」であることを刻印するための宣伝活動の一環だった。1943年、帝国日本は連合国に対抗するための国防強化策として「大東亜共栄圏」を構想し流布するが、「ダイトウアキョウドウセンゲン」という児童向けの絵本まで出版されている。

 著者は各時期ごとに事実にもとづいてドライに叙述しているが、その事実に従っていくと国民全体がこのように異常なまでに戦争に没入しうるのかという衝撃が押し寄せてくる。特に当時の大人たちが、幼い子どもたちに対してさえ平和ではなく戦争を刻印するために、戦争に関する漫画やゲーム、芝居を作って流布したという事実には、ぞっとするばかりだ。そして、改めてイメージの持つ強い力を認識する。イメージをなぜプロパガンダとして利用するのかも理解できる。

 今もロシアとウクライナの戦争は終わっておらず、イスラエルのガザ地区侵攻も続いている。戦争写真と戦況を伝える速報は、かつてないほど急速に全世界に伝えられている。本書を読んでからは、戦争に関するイメージに接する時、そのイメージはどのような主体によって、どのような目的で作られたのかをみなければならないという思いがする。著者もやはり「帝国日本期の姿が現代を考える契機になればとの思いで本書を執筆した」と述べている。

ヤン・ソナ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

政府が未来世代のための温室効果ガス削減目標を定めていないのは国民の基本権を侵害する行為だ。このような憲法裁判所の判断が下された。

2024-08-30 16:10:42 | 韓国を知ろう

ハンギョレ新聞【社説】

「未来世代」の権利に呼応した「気候訴訟」韓国憲法裁が判決

登録:2024-08-30 07:22 修正:2024-08-30 15:35
 
 
気候訴訟憲法訴願の判決前日の28日、憲法裁判所前で請求人の1人のハン・ジェアさんがプラカードを掲げて立っている=キム・ヨンウォン記者//ハンギョレ新聞社

 政府が未来世代のための温室効果ガス削減目標を定めていないのは国民の基本権を侵害する行為だ。このような憲法裁判所の判断が下された。2030年までの削減目標を規定しているのみの現行法を、その後の削減目標も定め、未来世代の基本権を保護するよう改正せよ、との判断だ。政府は憲法裁の判断を重く受け止め、未来世代に気候危機を押し付けることのないよう、直ちに行動に移すべきだ。

 憲法裁は29日、小学生のハン・ジェアさん(12)ら青少年と市民団体が提起した「気候訴訟」憲法訴願事件で、炭素中立基本法の一部条項の改正を命ずる憲法不合致決定を下した。同条項は2030年の温室効果ガス排出量を2018年の排出量を基準として40%削減するとしているが、2031年以降は何の目標値も設定していない。パリ協定では、2050年までに炭素中立(カーボンニュートラル)を達成することになっている。請求人たちは、このようなやり方では地球の平均気温の上昇を産業化以前に比べて摂氏1.5~2度高い水準に抑制することを目指すパリ協定は守れないと主張したが、政府は各年の目標値をあえて明らかにしなくてもよいと主張した。憲法裁は、政府のこのような態度は国民の基本権の保護のために最小限の措置を取らなければならないという「過少保護禁止」原則に違反していると判断した。特に気候危機は未来世代に対してより致命的な影響を及ぼすため、いかなるかたちであれ目標値を提示しなければならないということだ。

 今回の憲法裁の決定は、ドイツ連邦憲法裁判所が2021年に下した判決と趣旨が同じだ。ドイツ憲法裁は、パリ協定の目標を達成するために、2030年以降はより短期間内に急激に温室効果ガスを削減しなければならないとの判決を下した。ドイツ政府は直ちに後続措置を取った。削減目標値を上方修正し、炭素中立の時期も2050年から2045年に前倒しした。炭素削減技術の開発のために50億ユーロ(約7兆4000億ウォン)を投資した。韓国政府は見習うべきだ。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は、文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に樹立された炭素中立履行計画を努めて揺さぶろうとしている。温室効果ガス削減目標で産業界にかかる負担を軽減し、その軽減分は原子力発電の拡大などで代替するという。温室効果ガスの排出量が最も多い産業部門の削減目標値を縮小し、原発を増やすことが炭素中立なのか。原発の拡大は、未来世代にさらに負担を転嫁するものだ。今回の憲法訴願を請求したハン・ジェアさんは訴訟中、「権利は私にある」と堂々と主張してきた。政府はこの言葉を深く肝に銘じなければならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

 韓国の兵士たちは給料のほとんどを貯金していることがわかった。

2024-08-29 17:05:48 | 韓国を知ろう
 

徴兵制「月給20万円超の時代」…

韓国兵士の給料の使い道で最も金額が多いのは

登録:2024-08-30 06:25 修正:2024-08-31 07:58

 

回答者の60%は「将兵明日準備積立預金に貯金」
 
 
22日午後、ソウル道峰区の道峰山駅一帯の道路で首都防衛司令部第56師団龍馬旅団将兵たちが民防衛訓練空襲警報が発令されるや軍・警合同交通統制所を設置した後、警戒に当たっている/聯合ニュース

 韓国の兵士たちは給料のほとんどを貯金していることがわかった。

 国防広報院傘下の「国防日報」は、12~18日に兵士855人に対し、給料の使い道のうち最も金額が多いものを尋ねるアンケート調査を実施した結果、回答者の60.9%は「積立預金(貯蓄)」と答えたと29日に報じた。預金は「将兵明日準備積立預金」を意味し、元金に非課税利子はもちろん元金の100%である政府マッチング支援金までもらえる商品だ。

 陸軍基準で服務期間18カ月間、同預金に個人月最大納入額40万ウォン(約4万3千円)を毎月貯金すれば、除隊する時に元金、利子、政府支援金を合わせて1400万ウォン(約150万円)を貯めることができる。来年から月納入限度が55万ウォン(約5万9千円)に引き上げられる。

 兵士たちが積立預金と貯蓄に使う平均金額は40万から70万ウォンが62.8%で最も多かった。陸軍5砲兵旅団のK一等兵は、「毎月の給料80万ウォンから40万ウォンは軍積立預金に入れ、20万ウォンは別に貯蓄し、残ったお金だけを使う」と語った。積立預金の加入率は2021年70.7%から昨年95.2%に上がり、兵士のほとんどが加入しているといえる。

 他の使い道は軍マート(PX)が10.8%で2位、外出や外泊、休暇など、外出費用が10.6%で3位の順だった。

 兵士の給料は兵長基準で来年から月205万ウォン(約22万円)に引き上げられる。

パク・ミンヒ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1155941.html韓国語原文入力: 2024-08-29 12:03
訳H.J
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

歴代都知事は式典に追悼文を送ってきました。ところが、小池氏は知事に就任した2016年は送付したものの、翌年からは取りやめました。今回も見送れば8年連続となります。

2024-08-28 10:25:00 | しらなかった

2024年8月28日(水)

主張

朝鮮人虐殺と知事

史実を直視し追悼文の送付を

 東京都の小池百合子知事は、1923年の関東大震災直後に虐殺された朝鮮人犠牲者らを追悼する式典に今年も追悼文を送らない考えを示しています。

 歴代都知事は式典に追悼文を送ってきました。ところが、小池氏は知事に就任した2016年は送付したものの、翌年からは取りやめました。今回も見送れば8年連続となります。式典を主催する実行委員会(日朝協会東京都連合会などで構成)が、小池氏の追悼文送付拒否を厳しく批判しているのは当然です。

■式典の意味を無視

 追悼式典は9月1日に都立横網町公園(墨田区)内にある東京都慰霊堂そばの朝鮮人犠牲者追悼碑の前で営まれます。追悼碑は関東大震災から50年目の1973年に虐殺の犠牲となった朝鮮人らを悼む目的で当時の実行委員会が寄付を募り都と連携し建立したものです。翌74年から毎年、大震災のあった9月1日に追悼式典を開いてきました。

 小池氏が追悼文を送るのをやめたのは、2017年3月の都議会で自民党の古賀俊昭議員(当時)が碑文の内容などに難癖をつけ、碑の撤去や追悼文送付の再考を求めてからでした。

 小池氏は今月23日の記者会見で、追悼文を出さない理由について「(9月1日に)東京都の慰霊堂で開かれる大法要で、(関東大)震災による極度の混乱下での事情で犠牲となった方も含めて、全ての方々に対して慰霊する気持ちを表している」と、これまでの主張を繰り返しました。

 しかし、朝鮮人犠牲者追悼式典は「人の手によって命を奪われた朝鮮人犠牲者を追悼し、二度と同じ過ちを起こさないことを誓い合う式典」(実行委員会)です。大地震による自然災害で命を失った被災者への追悼と、震災とは別の人災による犠牲者への追悼は意味が異なります。そのため歴代の知事は都慰霊堂の大法要で追悼の辞を述べるとともに、朝鮮人犠牲者追悼式典に追悼文を送ってきました。小池氏の態度は式典の意味を無視するものです。

■虐殺は歴史の事実

 小池氏は、大震災での朝鮮人虐殺について問われても、「何が明白な事実かについては歴史家がひもとくもの」などと述べ、事実だと認めません。しかし、大震災の発生直後から、朝鮮人が暴動を起こすなどといったデマが流れ、軍や警察、自警団が集団虐殺を行ったことを示す公的資料は数多く存在しています。

 政府の中央防災会議の「災害教訓の継承に関する専門調査会」は09年に関東大震災に関する報告書を公表しています。

 同報告書は「当時の公的機関が作成した記録に依拠」してまとめたもので、「朝鮮人が武装蜂起し、あるいは放火するといった流言を背景に、住民の自警団や軍隊、警察の一部による殺傷事件が生じた」「武器を持った多数者が非武装の少数者に暴行を加えたあげくに殺害するという虐殺という表現が妥当する例が多かった」と明確に認定しています。

 朝鮮人虐殺は動かしようのない歴史の事実です。「極度の混乱下での事情で犠牲となった」などとあいまいにすることは許されません。小池氏は史実を直視し、追悼文を送るべきです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

13日に中央労働委員会と地方労働委員会に労働争議調整申請書を提出した。保健医療労組は28日までに調整に失敗した場合、29日午前7時から同時にストライキに突入する計画だ。

2024-08-27 19:33:22 | 韓国を知ろう
 

業務過多の看護師らも29日からスト予告…医療空白、

さらに拡大するか=韓国

登録:2024-08-26 06:30 修正:2024-08-26 07:52

 

全国61の病院が参加…「5大病院」は参加せず 
救急室や手術室など必須維持業務に除外  
韓国政府「必須診療に支障がないようにする」
 
 
医療空白事態の長期化で、全国保健医療産業労働組合(保健医療労組)が29日からの全面ストライキ開始を予告した中、25日、ソウル中区の国立中央医療院に保健医療労組のストライキを知らせる横断幕が貼られている/聯合ニュース

 韓国で専攻医(インターン・レジデント)らの研修病院からの離脱にともなう医療空白を埋めてきた看護師など保健医療労働者たちが、29日に全面ストライキの開始を予告した。医療現場では、半年以上続いている人材空白に全面ストライキが重なれば診療や手術などに少なからぬ影響を及ぼすという懸念の声があがっている。ただし、救急救命センターや集中治療室などで必須維持業務を行う看護師などはストライキに参加しない予定だ。

 看護師や医療技師などが属する全国保健医療産業労働組合(保健医療労組)は、19日から23日まで61の病院で争議行為の賛否をめぐり投票を行った結果、賛成率91%で全面ストライキに入る案を可決したと24日に発表した。投票には61の事業所の組合員2万9705人のうち、2万4257人(81.66%)が参加し、2万2101人(91.11%)がストライキに賛成した。保健医療労組は「高い投票率と賛成率は、6カ月以上続いた医療空白事態に神経をすり減らしながら耐えてきた組合員らの切実な要求を示している」と述べた。保健医療労組は、早急な診療正常化▽医師たちの集団行動による責任転嫁の禁止▽総額の6.4%賃上げなどを要求している。ストライキを予告した61の病院は国立中央医療院、高麗大学医療院、漢陽大学医療院などで、「5大病院」と呼ばれるソウルの主要な大型病院は含まれていない。

 保健医療労組がストライキに突入するかどうかは、使用者(病院)側との調整結果にかかっている。保健医療労組は賃金と団体協約交渉が決裂したことを受け、13日に中央労働委員会と地方労働委員会に労働争議調整申請書を提出した。保健医療労組は28日までに調整に失敗した場合、29日午前7時から同時にストライキに突入する計画だ。

 看護師などの労働者たちは、専攻医の集団行動で不安な労働環境に置かれることになったと訴えた。釜山(プサン)のある上級総合病院に勤める看護師のAさんは「今年3月から突然PA(診療支援スタッフ)の業務を担当することになった。教育も受けずに手術に入り熟練していない業務をこなしているのも不安なのに、業務範囲もますます広がっている」と語った。 保健医療労組のソン・ウノク高麗大学医療院支部長は「研修病院では看護師などが無給休暇に行ったり、本人の意思と関係なくPAに配置されたりするケースが多く、このために本来働いていた所に残ったスタッフもさらに難しくなり、不満が大きい状況」だと伝えた。

 保健医療労組はストライキに入っても救急救命センターや手術室、集中治療室、分娩室、新生児室など患者の生命と直結した業務にはスタッフを投入する計画だ。しかし、現場では医療空白の状況が悪化する可能性があるという声があがっている。ストライキが予告されたソウルのある上級総合病院の外科教授は「専攻医が出た以後、看護師が引き受ける業務が多くなった。必須維持業務を担当するスタッフを残しても、一部の手術が延期される可能性があるなど、ストライキの影響は大きいだろう」と語った。

 政府は保健医療労組がストライキに突入しても診療に支障が生じないように対応する方針だ。医師集団行動中央事故収拾本部は25日、第60回会議を開き「ストライキが発生した場合、救急救命センターなどの24時間非常診療体系を維持し、ストライキに参加しない公共医療機関を中心に非常診療を実施する予定だ」と述べた。

キム・ユンジュ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする