つれづれに 

老いてゆく日々、興味ある出来事に私見を添えた、オールドレディーの雑記帳です。

28年前のスーツ・・・

2006-03-07 | Weblog
 私の弟夫婦の子どもの話である。甥と姪がいて、今はもうそれぞれ家庭を持ち、一児の親である。もう28年も前の昔話になるが、甥が4歳と5ヶ月、姪が2歳10ヶ月の時に、七五三の祝いをした。念のため、その頃は私も若かった(笑)。

 姪の着物は、亡くなった母が反物を買い、その頃和裁を習っていた私が仕立てることにした。大きくなってお祭りにでも着られるようにと、大人仕立てにして、身丈、肩上げも二重にした。おかげで姪の小さな身体には重すぎて、着せると後ろにひっくり返る始末で、父親がずっと抱いていたことを思い出す。
 その頃、一家は神戸市に住んでいたので、田舎と違ってお祭りで着物を着るということもなく、どういういきさつか忘れたが、その着物はほどいて、洗い張りに出して、私が保管していた。いつか姪が結婚して女の子が生まれたら、仕立て直して着せてやろうと思っていたが、昔と違い物の豊かな時代になって、そういう私の思いを押し付けるのもはばかられて、3年前私がケアハウスに入居する時に、一切の家財道具と共に処分してしまった。また浮世へ還俗することになったが・・・。
 一方甥には、神戸大丸で、三つ揃いのスーツとシャツ、靴に至るまで、上から下まで買い揃えてやって、立派な小さな紳士になった。と、ここまでは、二人が可愛くて、伯母として見栄を張った、単なる話である。

 ところが昨日、甥のブログ「今週の私」を見てびっくり、何とその時のスーツが未だに残っているというのだ。義兄の結婚式に出席するため、子どもの洋服を探していたら、母親が送ってきたという。母親、つまり私の義妹であるが、メールで確認したら、「びっくりしたでしょう。物が取り持つ「縁」に感動していますが、良い物を買って貰ってたからだと思います。親戚中で話題になり盛り上がっています」という返事が来た。
 彼女には姉弟がたくさんいて、いとこも近くにおり、それぞれ家庭を持ち、孫がいる歳になっても、とても仲が良く、良い付き合いを続けている。というわけで、その洋服は、28年間親戚中を回りまわって、元の甥のところへ戻って来たというのだ。
 昔ならいざ知らず、今の物の有り余った、豊かな時代になってまでも、着られる物は捨てないで、それも親戚中で着回していたとは、すっかり忘れていた私は驚きとともに、それこそ感動もので、よくぞ大切に着てくれたと、礼を言いたいくらいである。こうなったら、あの姪の着物も、姪の娘の七五三に仕立て直したら、案外喜んでくれたかもしれないと思うと、処分したことが残念でならない。

 甥の七五三の写真と、同じ服を着た甥の子どもの写真を見ると、まるで瓜二つというくらい良く似ている。あの可愛らしかった兄妹の二人が、今はもう立派な親となったとは、28年間の過ぎ去った年月が感慨深く思い起こされる。
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2 コメント

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見栄を張ったおば様に感謝 (関西のヤングばーば)
2006-03-07 09:32:32
28年前のあなたの見栄が今でもお役に立っているなら、それは文化であり、あなたのご親戚の思い入れがそうなったのだから大いに胸を張ればいいではありませんか。

 お着物は本当にもったいないくらいたんすの肥やしとして眠っているのがほとんどでしょう。着物文化が廃れてしまって残念ですが、いいもの1枚でも娘さんから孫へ受け継いでいってもよいと思います。

 ただ手入れや保存に専門家の手がいることが今の世代の方に受け入れていただくことは難しいと。

 いつかテレビで明治の方の振袖が何代も受け継がれて仕立て直して成人式に着るというのを見ましたが色合いがすばらしいものでした。着物は100年持つといいますが着てこそ値打ちがあるのです。
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そうですね (オールドレディー)
2006-03-08 13:07:01
 私などのご幼少のみぎりは(笑)、戦後の貧乏な時代で着物など望むべくもなかった。ただ、母が若い頃着ていた銘仙(今の人は知らないだろう)という着物を仕立て直したり、母方の祖母がたった一枚姉にこしらえてくれた着物の上を姉が、長じゅばんを私がと分けてきたお祭りの記憶がある。今ならお笑いで、そんなことをする人はいないだろうが、多分どうしても着物が着たかったのでしょうね。

 あの頃が懐かしく思い出されます。昔を懐かしむようになったら、ボケの始まりといいますが(笑)。

 
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