つれづれに 

老いてゆく日々、興味ある出来事に私見を添えた、オールドレディーの雑記帳です。

日明 恩著『それでも、警官は奔る』・・・

2008-10-31 | お気の毒です
 先日、中国人の女が、同居する中国人の男との間にもうけた男児を出産する直前、日本人の男と偽装結婚し、生まれてきた男児に日本国籍を取得させていたという記事があった。警視庁は、子供に日本国籍を与えることで、自分も日本で働き続けるのが目的だったとみているという。さらに、具体的な数はわからないが、同じような経緯で日本国籍を得た子供が多数中国国内に確認されているそうだ。今回の事件では多額の金銭の授受があったそうだから、裏に犯罪組織の存在がうかがわれる。

 この記事が報道された頃、ちょうど私は、日明 恩著『それでも、警官は奔る』という小説を読み終えたところだった。この小説は不法滞在外国人の子供をめぐる国籍問題、児童の人身売買などを題材にした社会派、かつ警察小説である。この小説の中にも、不法滞在外国人の子供に日本国籍を取得させようと奔走する女性ボランティアが登場する。

 作者名の「日明 恩」、最初なんと読むのだろうか、全く検討がつかなかった。「たちもり めぐみ」というそうで、1967年生まれ、神奈川県川崎市出身、日本女子大学卒業の女性作家である。夫は、漫画家の青木たかお氏だとか。
 余談だか、この「日明」は当て字だろうと思うのだが、「日月(たちもり)」ならPCでもちゃんと変換できるし、「日月」姓は全国でもかなりある。この「日月」の由来は、“月の初めは一日でツイタチ。月末はツゴモリといって晦日と書く。この一字を取って月日のことをタチモリという”だそうで、月日でも日月でも同じだというのである。

 日明 恩氏は、2002年『それでも、警官は微笑う』で第25回メフィスト賞受賞でデビュー。『それでも、警官は奔る』は続編で、登場人物はほぼ同じだというのだが、私は前作は読んでいない。
 最初、題名からして大して期待が持てそうもないと買うのを躊躇したのだが、カバー裏表紙の、【警視庁蒲田署に異動となった武本は、不法滞在外国人を母に持つ幼女監禁事件を追った。一方、かつての上司、潮崎は、武本の力になりたい一心で、独自に事件の調査を始める。そして、浮き彫りになる子供の人身売買や虐待の現実。法律では裁ききれない闇に、2人はどのような光をあたえるのか?】と書かれている内容に惹かれて買った。
 読み始めて、この人本当に女性だろうかと何度も経歴を確かめたものである。女性とは思えぬ力強い文章で、警察内部をよく知り尽くしていると思われる背景描写、登場人物の心情描写がうまい。思いがけないラストの展開、680ページもの長編だが、これは当たりだった。私は女性作家の警察小説は初めてであるが、結構おもしろかった。
 違法と知りつつ不法滞在外国人の子供たちをかくまって世話をする若き女性ボランティアのぞみ、それがやがて犯罪へとエスカレートしてゆくのである。情においては理解できるが、警察官としては法を守らねばならないというジレンマに悩む武本。反対に徹底的に罪を憎む“冷血”といわれる和田、それぞれの心情には共感できるものがある。
 ラスト近くに女性ボランティアのめぐみが言った、『困っているだろうから優しくしたい。気持ちは判るの。でも、だからって、ただで物を買い与えたりしないで。可哀想と思われることって、思われた側からすれば、最大の侮辱なのよ』という言葉が妙に印象に残っている。
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2 コメント

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Unknown (オールドレディー)
2008-11-01 10:17:18
♠nanaさま
先日もテレビで不法就労者一斉摘発の模様を放送していましたが、ほとんどが不要滞在者です。
みんな一生懸命働いて祖国へ送金している人たちばかりでした。
安い賃金で働かせているのでしょうが、日本国内の若者には職がなくて困っている者がたくさんいます。正規の手続きを踏んでこの人たちを雇用すれば経済情勢もよくなると思うのです。
企業の利益優先主義が今の現状を生んでいるといえますね。

一方、介護の分野では外国人の手を借らなければならない現状です。
日本って外からみたらよほど魅力ある国なんでしょうね。
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Unknown (nana)
2008-10-31 21:33:41
日本も少子高齢化、いよいよ人口減も間近で行く末を考えたら外国人の就労者(もっと言えば移民)までも視野に入れないといけない時なのかもしれません。
治安の問題などありますが先細りの今の日本には未来が見出せないかも。
それとも小さな国を目指すのか・・・・
大多数の国民は今の生活水準を維持して欲しいと願うはず。
厳しい現実がありますね。
どちらを選択するのか。
というか、いまから来る人口減の時代の対処を考えるべきなのにだれも考えている雰囲気がありません。
こういう問題って対処療法ではダメだと思うのですが。
外国人の不法就労、それが必要とされている現実もあるし、もしかしたらあと数年もすると本当にその力を借りなければいけないかも。
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