私の犯した失敗の話しを書きます。
この写真の方は、2日連続での抜歯即時インプラント手術、即時荷重インプラント治療で、終われた患者さんです。
重症歯周病で、一気に治したいと言うことでお引き受けして、全力を尽くして何とか成功させた、と言える結果を出すことができました。
この方が、何故ここまで悪くなったかと言うと、この方は強い嘔吐反射があり、歯磨きが全然できないまま大人になってしまったからでした。
それ故に、お引き受けしたは良かったのですが、治療はひとかたならぬ困難を極め、ようやくにしてここまで漕ぎ着けられた、と言うのが私の本音です。
そして、現在メインテナンスになったのですが、全然メインテナンスに熱心ではありません。
あまつさえ、歯磨きができないのを治療途上で訓練をし、克服しつつあったのに、完全に後戻りしてしまいました。
ご本人はなんともない、と言われますが、我々としては、歯磨きができなければ、インプラントを支えている歯肉、骨が炎症を起こし、やがてはダメになる、簡単に言えば、インプラントも歯周病になってしまいますよ、と注意していただくようにお願いをしたのですが、聞く耳がありません。
残念ながら、即時インプラントの最大の問題点が出た形になってしまいました。
余りにも、楽に早く綺麗に治ってしまうために、悪くなったら又治せば良い、と思われてるのでしょう。
もしくは、インプラント治療したら、問題解決とでも思っているのかも知れません。
それは、大きな誤りです。
インプラントは虫歯にはなりませんが、骨に刺さって歯肉貫通して人工歯を支えている金属のネジに過ぎません。
歯肉貫通してる界面では、歯と同様プラークは付着しますし、人工物ですから生体の歯よりも防御機構は弱いのです。
だから、容易に骨に感染が波及してしまい、炎症を起こしたり、歯周病のような病巣を作りかねません。
つまり、インプラントにしたら、より一層プラーク除去に頑張らないといけないのです。
これが、インプラント治療の大きな課題なんです。
ところが、然程痛んだりとかしないんです。
静かに感染が深化して骨が犯されるのに、です。
そして、今日のこの患者さんさんは、治療中は頑張って歯磨きできるように、今まで自分を克服するできるように頑張られていたのに、治ってしまったら、元の木阿弥になってしまったのです。
私の犯した大失敗です。
今は良くても、この方が高齢者になって、更に歯磨きができなくて、骨が炎症を起こしてボロボロになってしまったら…
嘔吐反射が強い方ですから、絶対入れ歯はできません。
しかも、高齢になれば、今よりももっと適応力が落ちますし、生体の治癒力、免疫力も落ちます。
その時になって、何故あの時頑張らなかったのか、と悔やまれる人生で締め括りになるのではないか、と危惧しています。
私より若い方ですから、私が責任を取ることができる可能性も低い、と思います。
あとの世代に問題を先送りしてしまった、と悔やまれます。
プラーク除去の努力は、患者さんが頑張らないとどうしようもないのです。
その教育をきちんとできなかった、失敗を犯してしまいました。
残念ながら、聞く耳も持っていただけないので、メインテナンスのお約束すら怪しい感じでした。
せっかく克服できかけていたのに、人は易きに流される、を改めて思い知らされ、愕然としました。
嘔吐反射は、患者さんが頑張ればかなり克服できます。
何人もの患者さんさんが頑張られて、先生磨けるようになったよ、おえおえしながら磨いてるよ、と自慢されたことも何度もありました。
しかし、この方ではできませんでした。
お恥ずかしい話しです。
まだまだ未熟です。
それでも、諦めずに頑張るしかありません。
この方の未来を、ターミナルを守れるのは、我々しかいないからです。
これを読まれる同業者の方は、こんな失敗は犯されませんように。
又、患者さん、一般の方は、インプラントしたからと安心しきらず、プラーク除去、ブラッシングの定着、予防に頑張って下さい。
私の犯した失敗を、他山の石として下さい。