土屋賢二 (文春文庫)
《内容》
「お茶の水女子大の方から来ました」「妻と助手を養わなくてはならないんです」「読んでも読まなくても必ず笑えるから」などと言いながら、本書を売り歩いている哲学教授がいます。屁理屈をこねまわして簡単には断れませんので、ボランティアだと思って、ぜひ2~3冊まとめてお買い求めください。解説・三浦勇夫(精神科医)
《この一文》
“こんなにうれしそうに働いている姿に感銘を受けない者がいるだろうか。わたしはこの男のような純粋な喜びの気持ちを失っている自分を深く恥じた。
――「働く喜び」より ”
ブックオフの100円本のところで見つけたので、つい魔が差して買ってしまいました。土屋先生の本は、これまでにも何冊か買いましたが、本を手に取って買おうとするたびに「あれ……これ、もう買ったやつだったっけ?」と不安になります。中身をちらっと見ただけでは、既に買ったものかどうか判断できないので、いつも不安ながら「ままよ」という気持ちで買うのでした。どの本もだいたい内容が同じなので、咄嗟にそれが既に読んだものかどうかを判別できないのです。中身で区別がつかないならタイトルを覚えればいいことですが、タイトルも微妙に違うだけでほとんど同じものが付けられていたりして、全然区別が付きません。今回も心配しましたが、まだ買ってないやつでした。よかった。
しかし私の極度の忘れっぽさも手伝って、どれも似たような内容のエッセイにもかかわらず、毎度面白可笑しく読んでいます。なんか面白いんですよね。先生の周りにいる女性たち(奥さんや助手、同僚の女性教官などなど)とのやりとりを取り上げて、いかに女性が素晴らしい存在かを皮肉たっぷりに賛美しています。毎度お決まりのパターンなのですが、これがなぜかいつ読んでも笑えます。先生がお店などで空気のように無視されるパターンの話も面白いです。
ほとんどが人を馬鹿にしたような笑える話ばかりなのですが、唯一「働く喜び」だけは、例外的に真剣な語り口(わりと)だったので印象的でした。これは面白かった。働くとはどういうことかを、あらためて考えさせられます。
この文庫の表紙は、いしいひさいちさんが描いてらっしゃいますが、このあいだジュンク堂に行ったら、土屋先生の新刊(多分)の単行本が並べられていました。大胆なことに、表紙には「先生がどこかちゃんとした風の、大きなガラス窓越しに庭が見える立派な室内で、椅子に腰掛けて遠くを眺めておられる写真」が目一杯使われていました。何と言うか、すごい。
私はユーモアのある人を凄いと思うのですが、ユーモアのある人というのは頭が良さそうなので、凄いと同時に油断がならないな…とも思ってしまうのでした。でもうらやましい。笑える文章が書けるって、いいですよね。
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