半透明記録

もやもや日記

『僕、トーキョーの味方です アメリカ人哲学者が日本に魅せられる理由』

2014年07月15日 | 読書日記ー実用

マイケル・プロンコ著 矢羽野薫訳(メディアファクトリー)



《この一文》
“ 僕が心から感動するのは、荷物が行くべき場所へ確実に届くことだ。東京の道路は迷路で、住所表記はまるでなぞなぞだ。それでも宅配便のドライバーは現代の侍のように、ひるむことなくきびきびと飛びまわる。
 毎日、数え切れないほどの荷物が出発地から目的地へ迷わず移動するなんて、ほとんど奇跡だ。”
  「生活一式、宅配いたします」より


“ 新宿駅は、変化が好きな東京のダイナミズムを体現しているといえるだろう。この街は、変化を求めて変化し続けるのだ。そして東京は、過去も愛してやまない。永続性と連続性をもたらす寺の修復工事には、過去とつながっていたいという思いがあふれている。
 新宿駅を冷笑し、寺に敬意を払うのはたやすい。だが僕は、どちらの変化も好きだ。二つの変化が同時に進んでいることが好きだともいえる。未来と過去を行きつ戻りつしながら、変化する街。それが東京なのだと思う。”
  「過去へ未来へ、工事中」より



ニューズウィーク日本語版のサイトに「TOKYO EYE」というページがあって、そこでは日本に暮らす外国人達によるコラムを読むことができます。面白いので私はちょくちょく読みに通っているわけですが、なかでもこのマイケル・プロンコさんのコラムがいつも楽しみなのです。

私は元々コラムやエッセーを読むのが好きで、小説にはまる前のずっと若い頃にはもっぱらそういうものばかり読んだものです。色々な人が色々なものを見て色々に感じたり考えたりしたのを読むのが10代の頃には面白かったし、もうすぐ40になろうかという今でもやはり面白い。物の考え方に納得させられたり、視点そのものが新しくて驚いたり、時にはまるで同意できない意見に遭遇したりすることもあるけれど、こういう文章というのはいつも刺激的で楽しいですよね。

マイケル・プロンコさんの文章は面白い。日本人が気づかずにやり過ごしてしまうような物事について、東京に暮らすひとりの外国人としての繊細で鋭い眼差しをもって、極端になりすぎず、適度なユーモアを加え、街や人を鮮やかに描写し、知的で時にはハッとするほど詩的に語ってくれます。私は、街を行き交う人々が提げている様々の紙袋を見ても何も思わなかったし、そこらじゅうに溢れる自販機が茶道に結びついたりなんて想像もしなければ、ビルとビルの隙間に少しの悲しみと安らぎを感じたりすることもなかった。プロンコさんの目を通して見直すと、東京は私の知っていたのとはちょっと違った街に見えてくるのでした。


私は東京には8年間住んで、東京を離れてからはもう10年ほどになります。去ってからの時間の方がとうとう長くなってしまったか。この本は2006年に出た本なので、私が東京を離れた頃の東京を描いているということになりますか。ひとつひとつの文章をゆっくり味わいながら、私は心の中の、思い出の東京を駆け巡りました。
今でも東京は変わらずに東京のままだろうか? 街並は変わったところもあるだろうけれど、きっと今でもあの巨大なエネルギーが東京を東京らしくしていることだろうなあ。






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