basso(茜新社)
《内容》
『イタリア男、スーツ、眼鏡』がテーマの小粋なCOMIC。
初老のインテリ政治家ファウスト・カッラーロはバカンス先でカメラマンの熊男ブルーノと出会う。全く好みのタイプではなかったブルーノに次第に引かれていくファウストだが……。
近頃大人気のオノ・ナツメさんは、bassoという別名義でBLなんかも描いておられるそうで、私は評判の高い『クマとインテリ』を手に取ってみたわけです。
実は、この人の絵はちょっと独特の雰囲気があるので、「絵柄がちょっと私の趣味には合わないのではないか」と思って尻込みしていたのですが(松本大洋のときも同様のことを思っていた)、読んでみたらアラアラ不思議! 「この絵でないとダメだろう!」というほどにハマってしまいました(松本大洋のときも同様のことを思ったのだった。どこまでも学習しない私;)。
というわけで、面白かったです!
表題作の「クマとインテリ」、「Manifesto(マニフェスト)」の2作には唸らされましたね。人物の造形が独特すぎるなんてことは、一瞬で吹っ飛びます。たちまち、ものすごく魅力的な人に見えてくる、この不思議! なぜ! どうして! こんなに格好いいのですか!? わなわな……。特に「Manifesto」の秘書の彼には悶絶させられました。眼鏡がテーマとのことですが、なるほど眼鏡ですね。ブルブル。短髪に眼鏡ってサイコーですね。フフ…
結局、ストーリーが良いのだと思います。ドラマチックで、とてもお洒落でもあり。クセのある絵柄の割に、描かれている物語は非常に繊細なものであると言えるでしょう。ちょうどよい具合に控え目で繊細。場面の切り取り方が素晴らしいですね。
また、そのクセのある絵柄にしても、たしかに私好みの丁寧で繊細な感じではありませんが、大胆で力強い、圧してくるような魅力が要所要所に感じられるので、つい目が離せなくなってしまう。
それにしても、この人の絵は、何を使って描いているものなんでしょうかね? 線の太いところは、版画のように見えるところもあります(特に影の部分)。いったん太い線で描いてから、細い白い線で消しているように見えますね。
それから塗りの部分もちょっと独特です。トーンを貼っているというより、やっぱり塗って(あるいは描いて)いるように見えるのですが、どうなんでしょう。なんにせよ、個性的な絵柄ですね、ほんとうに。
アクは強いけど、嫌味なところがない。なるほど人気があるわけだぜ……
うーむ、そういうわけで、大変に面白かったです。やっぱり絵の第一印象だけでは分かりませんね。というか、よくよく見たら、このカバーイラストだって、ものすごく格好良いではありませんか。私はもっと目を鍛えねばならぬようです。うむ。
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