『警視の哀歌』 講談社文庫 2018年2月
”The Sound of Broken Glass”
原作 デボラ・クロンビー、西田 佳子翻訳
内容紹介
初老の弁護士が全裸で緊縛、猿轡されたまま、遺体で発見された。容疑者は新進気鋭のギタリス
ト。貧しい少年時代を過ごした彼には、しかるべき動機があった。その直後、またも彼と因縁深
い弁護士が同じ手口で殺害された。ロンドンを舞台に、容疑者、被害者、関係者の、錯綜した過
去が解き明かされる人間ドラマ。
(「BOOK」データベースより)
アメリカの作家 デボラ・クロンビーによる「警視キンケイド」シリーズの15作目。
(尚、一作目は”A Share in Death” 「警視の休暇」1993年初版、日本発行は1994年でした)
前作の”To Dwell in Darkness”「警視の挑戦」から約一年経っての発売でした。
何だかとても久し振りのキンケイド警視です。
バツイチ同志で結婚したキンケイドとジェマ。 お互いにそれぞれ連れ子がいる上に、前作で両
親を失った幼い子供を養子にした為、傷の癒えない少女の保育園が見つかるまで育休中のキンケ
イド警視に代わり妻のジェマが殺人事件の捜査の指揮にあたります。
才能の開花を見せる若いギタリストの貧しく辛い過去と現在、様々な人のストーリーや心情が並
行して描かれる重曹的な描き方がされています。
今回モチーフで用いられているのがロンドンにある ”The Crystal Palace : クリスタル・パレス”
(水晶宮)、各章の冒頭にこの場所に関する由緒に触れる記述があり、初めて詳細を知りました。
又、キンケイドの部下であったダグとメロディーの友情(?)も、メロディーがギタリストと特
別な関係になってしまった為不穏な雰囲気で、おまけに引っ越しで模様替え中のダグは骨折・・
二人の関係がどうなる?という点も平行して描かれています。
人間関係が入り組んでいて複雑ではあるのですが、キンケイドの一生懸命な主夫振りも涙ぐましく、
捜査に取り組むジェマを陰で支えている・・・のは良いんですけど・・・。
今回はそんな訳で、女性主体にフォーカスが当てられています。
個人的にはキンケイドが活躍するストーリーの方が好きなんですけどね。
アメリカ人でありながら英国に住んだ経験もあり、英国愛に満ちたクロンビー女史の作品中には
ロンドンの情景や、風習が随所に描かれていて、又今作では ダグが「ドクター・フー」のオタ
クであった事や、メロディーがケネス・ブラナーのファンで「ヘンリー5世」を何度も観たなんて
事に触れられており、個人的なツボもあり見つける度に1人ニヤついておりました。
又キンケイドはノッティングヒルに住んでいる・・・って? そんな高級住宅地にヤードの警視
が住む事が出来るんだろうか? 又そんな高級住宅地にある保育園の入園事情等セレブの事情に
もさり気なく触れられていて、本題からは外れますが これらも興味深く読めましたね。
そして、本作で事件も解決した直後、最後に何やら不穏な終わり方。
次作ではキンケイドがどうなるのだろう?と期待と不安を盛り上げています。
16作目は、
”A Share in Death” は2014年に発行されていますが、翻訳本日本発売が待たれます。
最後にチョコッと不満を。
この「キンケイド」シリーズは、第一作から「警視の・・・」という日本語タイトルが付けられ
ているので、仕方ないのかも知れませんが 今作の「警視の哀歌」というタイトルは無理やりの
感じも受けます。 もう少し内容に即したタイトルにして欲しかったところです。
その2は、アチコチに触れられていましたが、”メロディー”と書かれるべきところが”ジェマ”
になっていたのが2,3か所ありました。 何度も校正されるのでしょうが漏れる事もあるんでしょ
うかね。
残念です。
”The Sound of Broken Glass”
原作 デボラ・クロンビー、西田 佳子翻訳
内容紹介
初老の弁護士が全裸で緊縛、猿轡されたまま、遺体で発見された。容疑者は新進気鋭のギタリス
ト。貧しい少年時代を過ごした彼には、しかるべき動機があった。その直後、またも彼と因縁深
い弁護士が同じ手口で殺害された。ロンドンを舞台に、容疑者、被害者、関係者の、錯綜した過
去が解き明かされる人間ドラマ。
(「BOOK」データベースより)
アメリカの作家 デボラ・クロンビーによる「警視キンケイド」シリーズの15作目。
(尚、一作目は”A Share in Death” 「警視の休暇」1993年初版、日本発行は1994年でした)
前作の”To Dwell in Darkness”「警視の挑戦」から約一年経っての発売でした。
何だかとても久し振りのキンケイド警視です。
バツイチ同志で結婚したキンケイドとジェマ。 お互いにそれぞれ連れ子がいる上に、前作で両
親を失った幼い子供を養子にした為、傷の癒えない少女の保育園が見つかるまで育休中のキンケ
イド警視に代わり妻のジェマが殺人事件の捜査の指揮にあたります。
才能の開花を見せる若いギタリストの貧しく辛い過去と現在、様々な人のストーリーや心情が並
行して描かれる重曹的な描き方がされています。
今回モチーフで用いられているのがロンドンにある ”The Crystal Palace : クリスタル・パレス”
(水晶宮)、各章の冒頭にこの場所に関する由緒に触れる記述があり、初めて詳細を知りました。
又、キンケイドの部下であったダグとメロディーの友情(?)も、メロディーがギタリストと特
別な関係になってしまった為不穏な雰囲気で、おまけに引っ越しで模様替え中のダグは骨折・・
二人の関係がどうなる?という点も平行して描かれています。
人間関係が入り組んでいて複雑ではあるのですが、キンケイドの一生懸命な主夫振りも涙ぐましく、
捜査に取り組むジェマを陰で支えている・・・のは良いんですけど・・・。
今回はそんな訳で、女性主体にフォーカスが当てられています。
個人的にはキンケイドが活躍するストーリーの方が好きなんですけどね。
アメリカ人でありながら英国に住んだ経験もあり、英国愛に満ちたクロンビー女史の作品中には
ロンドンの情景や、風習が随所に描かれていて、又今作では ダグが「ドクター・フー」のオタ
クであった事や、メロディーがケネス・ブラナーのファンで「ヘンリー5世」を何度も観たなんて
事に触れられており、個人的なツボもあり見つける度に1人ニヤついておりました。
又キンケイドはノッティングヒルに住んでいる・・・って? そんな高級住宅地にヤードの警視
が住む事が出来るんだろうか? 又そんな高級住宅地にある保育園の入園事情等セレブの事情に
もさり気なく触れられていて、本題からは外れますが これらも興味深く読めましたね。
そして、本作で事件も解決した直後、最後に何やら不穏な終わり方。
次作ではキンケイドがどうなるのだろう?と期待と不安を盛り上げています。
16作目は、
”A Share in Death” は2014年に発行されていますが、翻訳本日本発売が待たれます。
最後にチョコッと不満を。
この「キンケイド」シリーズは、第一作から「警視の・・・」という日本語タイトルが付けられ
ているので、仕方ないのかも知れませんが 今作の「警視の哀歌」というタイトルは無理やりの
感じも受けます。 もう少し内容に即したタイトルにして欲しかったところです。
その2は、アチコチに触れられていましたが、”メロディー”と書かれるべきところが”ジェマ”
になっていたのが2,3か所ありました。 何度も校正されるのでしょうが漏れる事もあるんでしょ
うかね。
残念です。