The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

『オリエント急行殺人事件』 2017

2020-10-17 | アガサ・クリスティ
“Murder on the Orient Express”


もう3年以上前に 最初の製作発表に関する情報を見て ケネス・ブラナーのポアロと云う意外な
キャスティングと その他の出演者が余りにもう豪華で椅子から転げ落ちたという記事を書き、そ
の後関連情報を書いたきり作品を観た感想は書き忘れて居りました。

そんな折、先日地上波で放送があり そうそう・・・と思いだしたものの、その時は吹き替え版だっ
たので勿論パス。
そして同時にHuluで字幕版が配信されていた事に気付き ようやく再試聴。
で、
大変遅ればせながらですが、ようやく感想を書き残して置こうと思いたちました。

最初の記事(コチラ)に配役を書いてありますのでご参照下さい。


何度もひつこく書いてきましたが、”ポアロ”と言えば、何と言ってもTV版のデヴィッド・スーシェが
一番原作のイメージに近いと感じていたので、サー・ケネスのポアロはどうなんだろう? そして、
実際にメーキングやポスターを見ても どうもオヒゲが立派過ぎだし、クセの強いポアロとしては上
品すぎるように感じたので少々不安もありながら、あの豪華な出演者でサー・ケネス自身が監督も兼
ねるとなれば必見の作品ではないかと感じて居りましたよ。

そして、何より、サー・ケネスのフランス語訛りの英語聞きたかったし、その他の出演者も色々な国
の出身者という設定で、それぞれお国訛りのあるアクセントも聞きたかったし(やっぱりアクセント
フェチ)

原作、旧作(1974年、アルバート・フィニー版)、TVドラマ(デヴィッド・スーシェ版)全部観て
いますが、それぞれに特徴があり、特に最後の締め方が異なり興味ある点ですね。

ストーリー概略は、
エルサレムでの事件を解決したエルキュール・ポアロは英国へ帰国途中イスタンブールで休暇を
取ろうとしていたが、イギリスでの事件解決を依頼され急遽オリエント急行に乗車する事に。
列車は満室であったが、オリエント急行の運営会社の重役である旧知の友人ブークの計らいで何
とか乗り込むことが出来た。乗客は、アメリカの富豪、ロシアの貴族、宣教師、家庭教師、伯爵
夫妻、医師等国籍も職業も様々。
乗車してすぐにアメリカ人の富豪ラチェットから身辺警護を頼まれたポアロは彼の要請をあっさり
と断ってしまう。
しかし、深夜雪崩の為脱線事故を起こし、山腹の高架橋で立ち往生してしまった列車の中では自
室で刺殺されたチェットが発見される。 その身体には12か所の刺し傷があった。
ラチェットは何故殺されたのか? 犯人は誰なのか?乗客の中に犯人がいるのか?
立ち往生した列車の中でポアロは乗客達の聞き取り調査を始める。




↑ ジュディ・デンチとオリヴィア・コールマンの贅沢な組み合わせ

冒頭のエルサレムでのシーンは原作には無い部分ですが、ここでポアロと云う人物の性格(シンメ
トリーに拘る点や遺物盗難事件の解決方法等)、又セリフの中で”この世には善と悪しかない。その
中間は無いのだ” でエンディングにリンクさせています。

又、乗客のキャラクター、人種、国籍等を一部原作とは変えていますね。



兎に角ポアロのオヒゲが巨大なのですが、とても凝った構造(?)になっています。
このヒゲに関しては、そのデザイン構想に数か月を要したようです。
と云うのは、旧作アルバート・フィニーのポアロヒゲを見たクリスティー女史が「ヒゲが小さす
ぎる」と云った様な意見を持ったことに由来していた様です。

殆んどが列車の中での進行なので、会話劇の様になっていますが、今作品が旧作と異なる点は、
車外、トンネル内等視点を替え、又数か所俯瞰シーンを挿入していたりと画面構成変化が加えら
れています。

同時に、この作品ではポアロが比較的アクティブに動き回り、列車の上に登ったり”動”の部分も
加えられています。

そして、大変珍しいのは、ポアロが唯一の想い人というカトリーヌという女性の写真を持ち歩き、
何度も写真に語り掛ける。 ディケンズが好きで、ベッドで読みながら大笑いする・・・・等、
これまでのポアロ像とは異なるユニークな描き方をしています。
又、ラチェットと1つのケーキをシェアするシーンは何となく微笑ましい というか、これも目新
しい演出。 そして、ラチェットの依頼を断るポアロの理由「あんたの顔が嫌いだ」(笑)そう
言いたくもなるジョニー・デップの胡散臭い悪人ズラ。



ラストの全員を集めての種明かし、解決シーンは今回初めて(?)列車の外で行われています。
寒々とした雰囲気が伝わるのですが、敢えて車外にする必要があったのかしら?と・・・。

これまでも何度となく書いたのですが、何よりケネス・ブラナーのポアロ像が原作イメージと
かなり異なっているので一抹の不安もあったのですが、このポアロが原作の沈着冷静、自信家
で完璧主義者の部分を持ちながらも より人情味、情熱溢れるキャラクターとして、又犯人達
に対する心の葛藤、迷い、苦悩を表に出す人間らしいポアロ像がブラナーの名演によって描か
れていたと感じます。
サー・ケネスのフランス語訛りがチャーミングだし。

「オリエント急行殺人事件」に関する拙過去記事はコチラです

※ 『オリエント急行殺人事件』2017 リメイク版が豪華です!
※ 「オリエント急行殺人事件』公開を前に:アガサ・クリスティーやその他あれこれ

作品最後のシーンは、
乗客達を残しオリエント急行を後にするポアロに、”ナイル川で事件です”と告げられます。
エジプトへ向かうポアロ。
さり気なく次回作が「ナイル殺人事件」である事を示唆しています。

で、その「ナイル殺人事件」”Death on the Nile”の日本公開日が近づいて来ました。




以前ご紹介した様に、
2020年10月23日 日本公開となりました。

関連過去記事はコチラです。

※ ナイル殺人事件日本公開


何時観られるか分かりませんが、機会があれば又後日感想を書ければ・・・と思います。