郎女迷々日録 幕末東西

薩摩、長州、幕府、新撰組などなど。仏英を主に幕末の欧州にも話は及びます。たまには観劇、映画、読書、旅行の感想も。

グリム兄弟の神風連の乱

2005年12月10日 | 映画感想
ブラザーズ・グリム公式サイト

実は昨日、『ブラザーズ・グリム』を見に行ってきました。
テリー・ギリアム監督の他の作品は見ていませんし、ネットでの評判をかいま見たところ、絢爛豪華なおとぎ話シーンを期待するのは無駄のようでしたし、どうしようかな、と迷いに迷っていたのですが、どうも悪評がかえって気になって、なにかありそな気がしたんですね。
昨日が最終日だったので、タクシーをとばして見てきました。
正解! でした。のっけからもう、笑いっぱなし。フランス軍が出てきたときには、それだけで爆笑。
いえね、監督の他の作品を見ていませんし、細かなパロディには気づいてなかったりするのでしょうけれども、コンセプトそのものが、見事なパロディなんですよね。
グリム兄弟の採話が、実のところ、ドイツ人の土俗のものではなく、フランスからドイツに亡命した新教徒の子孫のもので、シャルル・ペローの影響が強かったということは、けっこう知られていると思うのですが、そのグリム童話が、ナポレオンのドイツ侵攻を直接的なきっかけとして生まれた、近代的な国民国家ドイツの国民文学となってしまったという現実自体が、非常に皮肉です。

土俗的な物語というのは、そもそもが幻影です。土俗が近代に接したとき、攘夷感情が物語を育みます。しかしその物語は、結局のところ、国民国家を成り立たせる民族の物語として、近代に取り込まれるのです。
しかし、それでもなお、あったかもしれない土俗は、反近代の夢を見させてくれますし、だったかもしれないね、という思いは、押しつけられた近代の息苦しさに、風穴をあけてくれます。

えーとね、だから必然的にグリム兄弟は詐欺師だったんですけど、詐欺はいつしか、真実となったのかもしれない、のですよね。それが、物語というものでしょう。

と、理屈を並べましたが、けっして理屈っぽい映画ではありません。映像は美しいですし、コミカルですから陰惨ではありませんし、それでいて、ほどほどなリアリティもあります。
ギリアム監督は、もっとリアルに、当時はろくに歯医者もなかったのだから、登場人物の歯をきたなくしたりしたかったそうなのですが、そこまでしてくれなくていいです。歯がきたないのは、パゾリーニの映像でこりました。ハリウッド流でけっこう。
そして、モニカ・ベルッチの美しさには、声もありませんでした。この人が美しくなければ、物語の側の真実に、リアリティをもたせることはできなかったところです。
これはもう、絶対に、DVDを買ってしまいますね。

ブログめぐりをしていて、気づかせていただきました。モニカ・ベルッチ演じる鏡の女王の衣装、たしかに、ギュスターブ・モローの影響を受けてますね。いわれてみれば『一角獣』の左側の女性の衣装、そっくり。

ところで、最近続けて映画館に足を運んだせいで、『プライドと偏見』が映画化されていて、近々公開されることを知りました。ジェーン・オースティンの『高慢と偏見』です。
ヒロインは、キーラ・ナイトレイ! 『パイレーツ・オブ・カリビアン』の男前なねーちゃんです。うーん、どーなんでしょ。現代的すぎません?
それより心配なのはダーシー卿。
いえ、BBC版の『高慢と偏見』をDVDで持っているんですが、コリン・ファース演じるダーシー卿には、イギリスの多くのご婦人方と同じく、目を見張りました。えー、ダーシ卿って、こんなに魅力的だったっけ? と思ったほど。ついに『ブリジット・ジョーンズの日記』で、本人のコリン・ファースがパロディを演じたほどのはまり役、かなう役者さんがいるんですかしらん。
コメント (6)
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