奥様はバンパイァ 30
○わたしは素早く理解しなければいけなかったのだろう。
でも、理解するまでに数分かかった。
カミサンと玲加はわたしに心配かけまいとして事情をふせておいたのだ。
そんな配慮はあまりありがたくないのに。
老人あつかいされるのにはまだ慣れていない。
はたしてわたしは老人なのだろうか。
と疑問がわく。
彼女たちの年齢からしたら子どものような年ではないか。
「ごめんなさい」
わたしの思考をよみとってカミサンがぼそっとつぶやく。
「洋子さんのことが……とうなるかと、心配なの……」
「あっ、反応が消えた」
「携帯にきづかれたのよ。でも生きてはいるらしいわね」
玲加は走りだした。
なにかわたしにはない直感につきうごかされているようだ。
「あ、また映った。電波のとどかないところを移動しているのよ。きっとそうだ
わ」
一縷の望みが、玲加の走りをさらに加速した。
「玲加。玲加」
わたしはぜいぜい息切れがしていた。
カミサンは身軽にすいすいと玲加についていっている。
ようやく、このころになってわたしにも、ビジョンがみえてきた。
洋子の後ろ姿だ。
床にころがされている。
屋上の部屋かもしれない。
窓に月がうつっている。
「でも、GPSからみると地下みたい」
「ふたてにわかれよう」
わたしはエスカレーターで二階にむかった。
この階も子供づれの客がおおかった。
共稼ぎで夜しか子供と連れだって買い物にでられない家庭がふえているのだろう。
「あのお姉ちゃん、どうしたの? 気持ちわるくなったのかな」
小学4生くらいの男児が母親を見上げてたずねていた。
「どんなようすだった。いくつくらいだった」
「高校生くらい」
おしゃべりな男の子に感謝のことばをのこしてわたしは屋上へ。
こんどはエレべーターにのった。
「屋上へきてくれ」
「携帯はゴミ箱にすててあった。すぐいくから。ムリしないで」
屋上の隅に後から建てたのだろう物置みたいな部屋があった。
明かりがついている。
わたしは忍びよる。
部屋に気配はないようだ。
フラッシュドアはカギがかかっていなかった。
カミサンと玲加がくるのを待っていられなかった。
もし洋子が倒れていたら、一刻も早くたすけださなくては。
わたしはドアに手を伸ばした。
「ストップ。ダーリン」
カミサンにうしろから腕をつかまれた。
「ブービートラップがあるかも」
玲加が腹ばいになってドアの下に手をやって、開く。
目前を白い光がキラメキ通過した。
「ボウガンね」
「あぶないとこだった」
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○わたしは素早く理解しなければいけなかったのだろう。
でも、理解するまでに数分かかった。
カミサンと玲加はわたしに心配かけまいとして事情をふせておいたのだ。
そんな配慮はあまりありがたくないのに。
老人あつかいされるのにはまだ慣れていない。
はたしてわたしは老人なのだろうか。
と疑問がわく。
彼女たちの年齢からしたら子どものような年ではないか。
「ごめんなさい」
わたしの思考をよみとってカミサンがぼそっとつぶやく。
「洋子さんのことが……とうなるかと、心配なの……」
「あっ、反応が消えた」
「携帯にきづかれたのよ。でも生きてはいるらしいわね」
玲加は走りだした。
なにかわたしにはない直感につきうごかされているようだ。
「あ、また映った。電波のとどかないところを移動しているのよ。きっとそうだ
わ」
一縷の望みが、玲加の走りをさらに加速した。
「玲加。玲加」
わたしはぜいぜい息切れがしていた。
カミサンは身軽にすいすいと玲加についていっている。
ようやく、このころになってわたしにも、ビジョンがみえてきた。
洋子の後ろ姿だ。
床にころがされている。
屋上の部屋かもしれない。
窓に月がうつっている。
「でも、GPSからみると地下みたい」
「ふたてにわかれよう」
わたしはエスカレーターで二階にむかった。
この階も子供づれの客がおおかった。
共稼ぎで夜しか子供と連れだって買い物にでられない家庭がふえているのだろう。
「あのお姉ちゃん、どうしたの? 気持ちわるくなったのかな」
小学4生くらいの男児が母親を見上げてたずねていた。
「どんなようすだった。いくつくらいだった」
「高校生くらい」
おしゃべりな男の子に感謝のことばをのこしてわたしは屋上へ。
こんどはエレべーターにのった。
「屋上へきてくれ」
「携帯はゴミ箱にすててあった。すぐいくから。ムリしないで」
屋上の隅に後から建てたのだろう物置みたいな部屋があった。
明かりがついている。
わたしは忍びよる。
部屋に気配はないようだ。
フラッシュドアはカギがかかっていなかった。
カミサンと玲加がくるのを待っていられなかった。
もし洋子が倒れていたら、一刻も早くたすけださなくては。
わたしはドアに手を伸ばした。
「ストップ。ダーリン」
カミサンにうしろから腕をつかまれた。
「ブービートラップがあるかも」
玲加が腹ばいになってドアの下に手をやって、開く。
目前を白い光がキラメキ通過した。
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