7月15日 月曜日
ひとはだれかにあこがれる。そのひとの職業にも。
わたしは12歳。旧制中学さいごの入学生、人生で一番多感なころだった。
あこがれの対象は川上哲治。赤バットがいまでもイメージとしてのこっている。もちろんテレビのないころだ。少年むけの雑誌のグラビヤでみた。
そこで野球部に入ろうとグランドに見学に行った。
座布団を荒縄でくくりつけていた。打球がキンゾク音をたててとぶ。硬球野球をはじめてみた。それまでは、町内の少年たちで結成した『千手チーム』にいた。もちろん軟式だ。快音をあげて硬球の飛ぶのにおどろいた。でもそれから……。捕手が玉の直撃を玉にうけて、
ぶっ倒れた。ピョンピョンはねている。
「座布団を菱形にくくりつけるのだ。なんどもいっているだろう。バカ者」
監督の先生がわめいている。なるほど菱形にくくりつければ、男のなきどころに布団の角の部分くる。
わたしは先輩のくるしんでいるのをみてひるんだ。
もしあのとき野球部にはいっていたら友だちもおおぜいできて、それからの人生を賑やかにすごしたろう。
いま大谷翔平あこがれている少年は何億もいるのだろうな。
麻屋与志夫の小説は下記のカクヨムのサイトで読むことができます。どうぞご訪問ください。
ブログで未完の作品は、カクヨムサイトで完成しています。
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●角川のbookwalkerーにも載っています。
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わたしは12歳。旧制中学さいごの入学生、人生で一番多感なころだった。
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座布団を荒縄でくくりつけていた。打球がキンゾク音をたててとぶ。硬球野球をはじめてみた。それまでは、町内の少年たちで結成した『千手チーム』にいた。もちろん軟式だ。快音をあげて硬球の飛ぶのにおどろいた。でもそれから……。捕手が玉の直撃を玉にうけて、
ぶっ倒れた。ピョンピョンはねている。
「座布団を菱形にくくりつけるのだ。なんどもいっているだろう。バカ者」
監督の先生がわめいている。なるほど菱形にくくりつければ、男のなきどころに布団の角の部分くる。
わたしは先輩のくるしんでいるのをみてひるんだ。
もしあのとき野球部にはいっていたら友だちもおおぜいできて、それからの人生を賑やかにすごしたろう。
いま大谷翔平あこがれている少年は何億もいるのだろうな。
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