田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

歴女の推理/奥様はバンパイァ 麻屋与志夫

2009-10-31 21:54:10 | Weblog
奥様はバンパイァ 62

○猛夫のバイクに武はのっている。

玲加が後ろからだきついている。

救出したクラスメートはつぎつぎと彼女たちの家の近所までおくりとどけた。

玲加たちはMのバラ園についた。

バイクは園芸用の道具や肥料などをしまっておく納屋に隠した。

「こんな日がくるなんて思ってもみませんでした」

「わたしだってそうよ」

と玲加は猛夫にいう。

「武とは仲良くするから。よろしくね」

「それより、さっきなにに気づいたの? きかせてよ」

 武が照れくさそうにきく。

「わたしたち二つの部族はだれかにあやつられていた。人狼とわたしたち吸美族が

いったいとなると目覚めるforceがあるの。それを、その力の発現をきらっている

ものがいるのよ」

「それってなにものだ」

「わたしたちの新たな力はそいつと戦うためのものかもしれない」

屋敷の外でふいにバイクの騒音がおきた。

「あいつらもまた団結したみたいだ」

「どうした猛夫」

武と玲加も二階の窓から外の騒音の元凶を見下ろす。

門の外の駐車スペースにバイクが乗りいれてきた。

門とバラのヘンスにさえぎられて屋敷内には入ってはこられない。




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日光 お化け地蔵   麻屋与志夫

2009-10-31 07:43:47 | Weblog
    憾満ヶ淵/お化け地蔵
                              
                                        pictured by 「猫と亭主とわたし


 
 欝蒼と茂った杉木立の影になっていた。お化け地蔵は山裾にひっそりと並んでいる。青い苔が一面に生えた古仏は赤いよだれかけをしていた。杉の梢ごしに射しこむ秋の光が並んだ地蔵の膝のあたりにかろうじて照り映えていた。
 あの頃とまったくかわっていなかった。この思いでの憾満ヶ淵では、悠久の時間が流れていて、人の生きる時間などなにほどのこともなかった。
 あの頃、東京オリンピックの時代といっていいかもしれない。沼尾潔はこのお化け地蔵をなんどか訪れていた。

「あかちゃんがうまれたら、赤いよだれかけをこのいちばん端のお地蔵さんにかけるの」
「そういう風習があるんだ……」
「この土地にはないわ。わたしがはじめるの」
 並び地蔵といわれるだけあって七十体くらいはあるのではないか。潔はそう思った。日光の老舗旅館の一人娘、安西玲子はお腹をさすりながら潔をみあげた。
「すくすくと育ようにと」
 まだ、玲子はよだれかけのことを話していた。
 
 潔は妊娠の告知を玲子からうけて、それをどううけとめていいのか、わからないでいた。
 東京をオリンピックの通訳としてたまたま訪れた日光。ホテルはすでに満室でことわられた。しかたなく、安西旅館に博報堂のカメラマンの佐々木と、案内してきたNew York timesの記者と泊まることになった。そこで潔は運命の女に玲子とであったのだった。
 日本の風呂の入りかたを説明しているとき、たまたま玲子がお茶を入れてくれていて、同席していた。当時としても古風な五右衛門風呂だった。日本のこの種の風呂は下から沸かすから、上は水、二段になっていることがある。下が熱くて上が冷たい。よくかきまぜる必要がある。二段になっている、という説明がおもしろかったらしい。
「お風呂が二階建になっているというような表現は、考えてもみなかった」
と、いたく玲子は感動した。それが玲子とのはじめての会話だった。
 佐々木もジョージも二社一寺、東照宮などの日光ではなく裏日光観光案内を潔に期待していた。
「それなら、お化け地蔵がいいわね」
 きらきらする目でみられて潔はとまどっていた。
「行きと帰りではいくら数え直しても数があわないのよ。それで、お化け地蔵というの」
 
 色白の古風な瓜実形の顔をしていた。口紅はつけていないようだったが赤かった。長い髪をうしろでかるくまいてまとめていた。あの髪を解いたら腰のあたりまでくるのではないかと潔は思った。
 憾満ヶ淵の南岸にあるお化け地蔵は鄙びた野趣をたたえた坐像で、七十体ちかくひっそりと並んでいた。佐々木もジョージもひどくよろこんだ。勇む心を抑えるようにひっきりなしにシャッターをきっていた。大谷川の激しい川音がしていた。不動明王の真言の一節のように聞こえるとから憾満ヶ淵と名づけられたとい川音だった。
 潔はなにもすることがない。英文の日光案内で陽明門のことなどを読んでいた。
「すこし、散歩しません……」
 誘ったのは玲子だった。すごくひかえめな声で、恥ずかしくてしょうがないのだが、思い切って……というような調子だった。
 大日堂まで歩いた。大谷川の川音が絶えずふたりの周りでしていた。
「わたしをだいてください」
 あまりに唐突な願いに潔はとまどった。まだ会ったばかりの玲子だった。しかし、運命の女にやっと出会うことができたと胸をときめかしていたのだから断ることはしなかつた。
 それどころか、いつきに情炎が燃え上がった。そのまま草むらのなかに倒れ込んだ。
「はじめてなの。はじめてなの。やさしくして」
 玲子はかすかにうめくようにうったえかけてきた。そして、まちがいなく処女だった。

 妊娠した。どんなことがあっても赤ちゃんを生むという手紙をもらったのは神宮の森の銀杏の葉がおちつくしたころだった。オリンピック競技場の熱気もうそのように冷えて行き、冬が訪れようとしていた。
 わたしはほんとうにうれしかった。父のきめたひとと結婚して、この宿を継ぐ。そうした定められた宿命に逆らってみたかつたのです。
 あなたが、潔さんがわが家の玄関に入ってきたときわたしも運命を感じました。この人なら、わたしをここからつれだしてくれる。わたしの運命をかえてくれる。わたしはこの人とならいつ死んでもいい。
 そんな思いで、必死であなたにおすがりしたのです。さぞやはすっぱな女と軽蔑なさったでしょうね。
 でもいいのです。なんと思われても、わたしのおなかにはあなたの命が息づいています。

 あれから、44年もたっているのだ。潔はたまたま、インターネットで下野新聞を読んでいたところ、安西玲子の訃報を知ったのだった。 日光市稲荷町の老舗安西旅館の安西玲子(62)さんが亡くなりました。五右衛門風呂で有名な日本古来の旅館の風情を守りぬいた経営者としても有名でした。と記事は結んでいた。
 
 潔は安西旅館の見える坂の下にたたずんでいた。旅館の大きな玄関は昔のままだった。ガラス戸の両側に黒い筆文字で安西旅館とある。なにもかわっていなかった。会葬することは憚られた。陰ながら野辺送りをするために東京からかけつけたのだった。香や線香のにおい。読経の寂しい声。黒い喪服の人。玄関前に設えた焼香の段飾りの周囲には別れの悲しみが漂っていた。潔は手を合わせて黙祷していると不意に声をかけられた。
「沼尾さんですか? 沼尾潔さんですよね。」
 潔はとまどいながらも、頷いていた。
「玲子の娘の玲奈です」
 と名乗った。
「母にはそういうところがありました。未来を見通すような力があったのだと思います。父が早く死んでからというもの、よくあなたのことを話していました。そんな好きな人がいるなら、なぜ結婚しなかったの。いまからでも会いにいったらとずいぶんすすめました。あの人にはもうしわけないことをしてしまったから。いつも同じ返事がもどってきました」
 夫に死なれてから玲子は長くさびしい人生を一人娘とともに過ごしてきたのだった。どうして知らせてくれなかったのだ。どうしてわたしを頼ってくれなかったのだ。わたしはそれほど頼りがいのない薄情な男として玲子の記憶にあったのか。
「潔さんがきたら、これを渡してくださいな。そう言われて預かっていたものがあります」
 なにをいまさらわたしに託すというのだ。もう遅い。もう一度、もういちどだけでいい玲子と会いたかった。
「それはいまどこに……? なにを預かったのですか」
 潔は勢いづいてたずねた。玲子はわたしにさいごになにを手渡しかったのだろう。
「赤い、よだれかけです」
「それはいまどこに」
「わたしが、持ってきています。もし沼尾さんがあらわれなかったら、納棺のときに、母の胸にかけてやろうと思っていました」
「もうしわけありませんが、見せていただけますか」
 玲奈は一瞬ためらった。母との秘密を名前を確かめただけで、見ず知らずの男に打ち明けたのを後悔しているふうでもあった。ためらっている。探るような眼差しを潔にむけている。
「まちがいなく、沼尾潔さんでしょうね」
「お母さんは、右の胸のあたりに大きなほくろがありました」
 はっと、おどろいた風だった。疑った非礼を詫びながら玲奈は喪服の懐に手をさしいれた。懐紙につつんだ赤いよだれかけをとりだした。
「わたしには、これがどういうことなのか、だいたいのことは見当がつきます」
 名残惜しそうに、それでも玲奈は潔に懐紙ごとそれを渡してよこした。

「玲子が家出した。おまえとしめしあわせての家出だろう」
 玲子の父親から青山の潔の下宿に電話がかかってきた。 
 玲子は憾満ヶ淵の霊廟閣にいた。
「朝からずっとここにいたの。死ぬ前にもういちどだけ潔さんにあいたいと仏様におねがいしていたの」
 玲子は潔にしがみついてきた。愛情をともなったものではなかつた。愛し合う男と女の抱擁ではなかった。なにか、もっとさしせまったものがあった。潔は家の娘をキズものにして、どうしてくれる。玲子の 父親にののしられたことを思いおこしていた。
 玲子は潔がなぜ青山の下宿から、これほど早く日光に……そしてここにきたのかも問わなかった。そんなことには、頓着ないようすだった。上目づかいに潔を見る目は焦点をむすんでいなかった。
「死んで。わたしといっしょに死んで」
 大谷川の激流に身をなげようとしている。男体山から噴出した溶岩を削る川音も高い流れだった。
 潔は必死で玲子をだきとめた。玲子の体はこごえていた。死人のように冷たかった。
「冷静になるんだ。おちつけ玲子。それより、なにがあったのだ」
「流産してしまったの。赤ちゃんがもうわたしのおなかにいないの」
 そこではじめて潔は玲子の下腹部がひっそりとしているのに気づいた。家を出て、東京で所帯をもち、潔と子どもを育てることをあれほど楽しみにしていたのに。そのふたりの愛の証である胎児がいない。
 赤ちゃんがいない。子どもとしての体をもつにいたらないまま、消えてしまった。
「わたしもう生きていられない。ゴメンナサイ。ゴメンナサイ。死にたいの。わたしといっしょに死んで。死んで」
「おちつくんだ。死ぬことはいつでもできる。玲子が死にたいのなら心中してもいい。でも、悲しいことだが流産しただけで、玲子を死なすわけにはいかない。わたしたちには、まだこれから長い人生が用意されているのだ。それを精一杯生きていきたいとは思わないか」
 玲子はわたしのいうことに耳をかたむけだした。
 わたしは玲子の手をひいて岩伝いに憾満ヶ淵から離れた。川音が遠のいた。
「ねえ、このまま東京へつれていって。もう父のいる家に帰りたくない」
 
 どうしてあの時、玲子の願いをかなえてやらなかったのだろうか。
 玲子の父に人でなしと罵られたことを、気にしていたのだろうか。
 オリンピックも終わり、臨時の通訳としての仕事もなくなり途方にくれていた。潔は小説を書きだしていた。生活に自信がもてなくなっていた。いまのようにアルバイトをして、それだけでフリターとして、あるいは派遣としても生活がなりたつような時代ではなかった。
 でもそんなことは、いいわけにすぎない。わたしが、臆病だったのだ。ふたりで、東京で同棲するだけの勇気がなかったのだ。
 
 潔はあれからずっと悔やんできたが、もうどうすることもできない。人生の一過性が悔やまれて、恨めしくて、それでもどうしょうもない。過去をとりもどして、もういちどやりなおすことはできないのだ。
 玲子は死んでしまった。生まれてきた場所も時も違うが、死ぬのは一緒だと誓い合っていたのに。
 あの時、死んでしまっていたほうがよかったのかもしれない。死にたいという玲子をむりに説得して家に送り届けるようなことはしないほうがよかったのかもしれない。
 そうすれば、この歳になって涙をこぼしながら憾満ヶ淵に歩みよらなくてすんだのだ。
 慈雲寺の山門が見えてきた。お化け地蔵はあの山門をくぐればすぐのはずだ。 
 
 玲子からわび状がとどいた。なにも詫びる謝るようなことはなかったのに。詫びたいのは潔のほうだった。玲子をつれだすことができず、家に帰らせたことをいまでも悔やんでいる。
 
 ごめんなさいね。いつも、迷惑ばかりかけて、こんなわたしを許してください。
 わたしは父のいうとおりこの旅館を継ぐことにしました。もう潔さんと会うこともないでしょう。
 あなたとのことは、生涯でただいちどの恋、賭けでもありました。このひとなら、わたしをここからつれだしてくれる。約束された結婚そして宿屋の女将としての暮らしから解放してくれると思ったのです。
 でもわたしはまちがつていました。ここでの生活を、家族とともにまつとうしたいと思います。わたしは、負けたのです。わたしは負けた。悲しいけれどなぜ反対できなかったのか、泣けてきます。流産ではなく堕したのです。
 ごめんなさい。未婚の母になることなど許さない。父の叱責と命令には逆らえませんでした。
 さいごにもういちどごめんなさい。わたしはあなたに、潔さんほんとうにもうしわけないことをしてしまいました。

 潔はあれほど玲子がとりみだし、自殺までしようとした原因を知った。
 そういう時代だったのだ。家業を守ることが至上命令としてなりたっていた。
 シングルマザーなどという言葉がまだない時代だったのだ。まして地方ではまだまだ戦前の古風な考え方がまかりとおっている時代だったのだ。
 潔は返事を書いた。
 わたしはいま小説家になろうとしています。作家になってみせます。そうすれば、どこにいても、玲子さんあなたにはわたしの所在がわかります。
 わたしが作家になれたら……そうしたら、ぜひもういちどだけでも、会ってください。会いにきてください。そうならなかったら、もうにどと会うことはないでしょう。あなたは、あなたの道をすすんでください。わたしはわたしの道をいきます。さようなら。
 それが、玲子にとって、どんなにつらく、どんなに残酷なしうちか、わかいわたしは分らなかった。わたしは、ようやく、歩みだしたじぶんの道を行くのに夢中だったのだ。
 
 わたしは、玲子に再び会うことはなかった。でも、それから六年くらいたって、日光を再訪したことがあった。友だちの友だちに頼まれ東照宮を見たいとしいうアメリカからの観光客を案内したことがあった。わたしは、安西旅館と表示のみえる玄関を坂道の下に立って見上げていた。
「お母さん、はやくはやく」
 四歳くらいの女の子が、玄関から飛び出してきた。
「お母さんはやくうー」
 娘は急がせていた。わたしは玲子の娘だと思った。玲子の幸せそうな顔を想像してから、あわててその場を離れた。
 これでいい。これでよかったのだ。と潔はじぶんを納得させた。
 
 あの時の娘が、玲奈なのだろう。
                            
 わたしたちの生きる道は……このように悲しかった。これしか道はなかったのだろうか。
 わたしが玲子のもとに入り婿となるという選択肢だってあったはずだ。
 わたしは、あれからずっと小説を書き続けている。賞を獲得するほどの実力もないまま雑文を書き生きてきた。
 こんなことなら、旅館のおやじとして過ごしてもよかったのではないか。謝らなければならないのは、わたしのほうだ。山門をくぐった。潔は憾満ヶ淵に向ってとぼとぼと歩いていた。
 生まれてこなかったわしと玲子の子どもに会いたい。
 あの世で三人で暮らしたい。小説家になりたいために犠牲にしてきたものの大きさを、潔は痛感していた。
 こんなことなら、玲子、あなたの言うことを聞いてあの時、憾満ヶ淵から大谷川に入水していればよかった。
 そうすればなにもかも思うようにいかなかった過去を悔いて生きているあわれな老人にならないですんだのだ。
  
 潔は赤いよだれかけをとりだした。
 手がふるえていた。
 よく見ると裏側に『強』と縫い取りがしてあった。
 玲子が生まれてくる子を男の子と期待してつけた名前なのだろう。
 潔はじぶんの名とみように語呂があっているような気がした。
 
 玲子が望んでいたように……。
 いちばん手前のお化け地蔵の胸に……。
 
 それをかけた。

       



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PKパワーの目覚め/奥様はバンパイァ 麻屋与志夫

2009-10-28 04:13:07 | Weblog
奥様はバンパイア 61

○「なにが起きてるんだ」

「タケシ!! あたらしい歴史ょ。わたしたちが組むと、サイキックパワーに目覚め

るのよ。あとではなすけど、わたしなにかわかった気がする……」

「なにが……なにいってるんだ。わらない。説明して」

「だめぇ。まだ敵は目の前にいるの」

これだって、ぜんぜんオカシイ。

わたしと武が化沼にもどってきたとたんに。

こんなトラブルにまきこまれた。

人狼って最強出ではなかったの。

マインドバンパイアって最強でなかったの。

わたしたちに戦いをいどむ敵がこの地にいたとは、オドロキ……と思ったところへ

鉄パイプの攻撃が来た。

倒れたケントをかばって革ジャンの巨体がおそってきた。

相撲部屋の入門試験をうけたほうがいいのではないかと忠告したくなる男だ。

タァッ。と気合いをかけて玲加が掌底をつきだす。

なんと、巨体が吹っ飛ぶ。

その後ろにいた仲間がひともちになってコンクリートの上を雪崩れていく。

なにこれ珍百景に登録ねがいたいような、めったにみられない光景だ。

一度目覚めた能力だ。ひとりだって発揮できるんだ。

武も気づいた。ウルルンと吠える。

琥珀色の眼光。暴走族の猛者がかたまった。

漫画みたい。人狼に睨まれただけだ。

両目からほどばしる光を浴びただけだ。

射すくめられて動けないでいる。

「なんだ、つまらない。帰ろうよ、武。みんなもいこう」

玲加はこれまた乱闘をみて怯えていたクラスメートに声をかけた。

「タケシってすごい」

「玲加ってそれでもニンゲンなの」

「ゲームの世界にまぎれこんだの」

「わたしたち、なんだかチョウたのしい」

「モットヤッテエ」

大変なことになった。

「記憶を消せるか。このひとたちの記憶がけせるか」

「それは……もう……表芸ですもの。忘れたの、わたしはマインドバンパイァなの

よ」

ひとのこころを操るなんて、たやすいことなのだ。

「そうは簡単にいくかな」スーパーのお店をぬけてきたのだろう。

裏口の従業員専用口がさきほど表で争ったこれまたデブ男たちを吐きだした。

「トウチャン!!!」

未来の力士が歓喜の声をあげた。

なにこれ珍百景。

またこれかよ。

なにこれ。

これこれ……なあに???。

巨体少年。

デブ男。

肥満女。

ジャジャント、御一行様揃い踏み。

シコフンジャッタ。

とはいかないが。

まことにもって、壮観だぁ。

「どうする。猛夫」

表のパーキングからかけつけた人狼バイカーに武がのんびりときいている。

そこで玲加はまだここにきてからの乱闘は、瞬時のハプニングだと認めた。

わたしたちなにか新たな歴史を、都市伝説を創生しているみたい。

「いちおう、引きましょう」

玲加は武と猛夫にこえをかけるとバイクのりヤーシートにとびのった。

クラスメートも喜々として玲加にならった。

高鳴るバイクの轟音。

煙が辺り一面にひろがった。

おもしろがってバーストさせている。



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歴女VS暴走族/奥様はバンパイァ 麻屋与志夫

2009-10-27 11:11:39 | Weblog

奥様様はバンパイァ 60

○「猛夫がきてくれてたすかったよ。こんなところであらそいたくはないもの」

「無断欠席がつづいたので、五十嵐先生が心配している」

「月曜日からは出席する」

「わたしもよ」

「仲がよくて、いいですね。これでお狐さんたちとのあらそいはなしですね。で

も……章夫さんたち過激派に噛まれたRFはどうなりますかね」

猛夫が固い表情で武の顔をのぞきこむ。

武もなんにんかは噛んでいる。

血をすすっている。

それがいまでは悔やまれる。

マインドバンパイァ、見園玲加とつきあいだしたからだろう。

彼女の支配下にある。でもなんともうれしい。

このキラキラするようなよろこび。

血を吸ったり、肉食系として山野をかけめぐってエモノを捜すより心が高揚する。

わくわくする。

猛夫が鼻をひくひくしている。

「だれか、スーパーのうらでおそわれている」

いちはやく玲加ははしりだしていた。

「おそわれているのは、クラスメートよ」

テレポートするように速い。

バンパイァ特有の走りだ。

武も負けていない。

「なんだぁ。きさまら」

暴走族が女子高生をとりかこんでいた。

彼らにしたら、なにもない空間に玲加と武がわいてでたように見えたろう。

「わたしは、このひとたちのクラスメート。お友だちよ」

「ぼうやたち、なにしてるのかな」と武。

「なんだぁ!! お前らのほうがガキだろうが」 

暴走族のいくつもの顔が怒気を含んで叫んだ。

くるわ。

玲加は感じた。

チエンがうなりをあげてとんできた。

武と玲加がぐっとチエンをひとにらみした。

チエンの先が伸びきらず〈?〉クエスチョンマークのようにかたまった。

「なんだ。どうしたんだよ。ケントさん」

玲加もおどろいていた。

武と組むことによって、ふたりには新たな力、念動力が発現したのだ。

「ケント!!!」

どたっとケントが倒れた。 

わたしたちはあらたな歴史のページのなかにいる。

サイコキネスで戦っている。

すてき。

わたし歴史をつくっている。

この歴史の好きなわたしが、歴史のなかにいる。

すてき。



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下流にながされて/麻屋与志夫

2009-10-26 09:07:48 | Weblog
10月26日 月曜日

○放送禁止用語とか侮蔑用語だから使わないほうがいい。そうした心遣いはやはり

円滑に人間関係をつづけるには必要不可欠なものなのだろう。でもどうしても小説

の中でデブ女と書きたかった。おそらく禁句なのだろうと推察して自己規制した。

かわりに肥満女という言葉をつかった。

○「ブスの瞳に恋して」こうした使い方もあるのだなぁ。これならブスと表現して

もだれも傷つかないだろう。でも……きれいorきれいでない、なんてことはかなり

メンタルな要素が混入した結果に個人が決めることだ。はっきりとした基準はない

に等しいからあまりくよくよ考えないほうがいいような気がする。

○さてこれからの「奥様はバンパイァ」だがどんな話になっていくのか、作者であ

るわたしにもわからない。そして不適切な表現が出たらごめんなさい。いま世をあ

げて福祉の時代だが、とくに老人福祉においてはわたしはひとりでいろいろ考えて

いる。老人福祉のために、若者の生活がかなり厳しいことになっている。若者がか

わいそうだ。なにもせずに年金でのうのうと生活して、若者をののしっている肥満

女。周囲にいるいる。こうしたことを観察した結果「奥様はバンパイァ」のPART

2 の出だしは、老人のたれながす害意、悪意ある雑言と若者が対決するシーンから

はじめることになった。

○肥満していいことはないですよね。かくいうわたしも、かつては85キロあった。

ダイエットに成功して、いまはむ74キロだ。72キロまでおとそうとがんばってい

る。

○しかし体の肥満より。こころの歪みが増大するのが気になる。

○老いも若きも、いま形成されつつある格差社会で下流にこころならずも流された

ひとたちがいらいらしているのがよくわかる。先日も隣町の宇都宮にいったところ

数十人集まった女性群がもうもうとタバコの煙をはいていた。ビルの合間にできた

街角公園でのことだ。いらいらしているのが一目でわかった。わめきだしそうな雰

囲気だった。なにか不愉快な会合の帰りだったのだろうか。いま田舎町は都会から

見ている以上に不況だ。これからの鳩山内閣の政策に期待したい。




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歴女VS醜女/奥様はバンパイァ 麻屋与志夫

2009-10-26 03:56:22 | Weblog
奥様はバンパイァ 59

●武は〈狂戦士〉――人狼集団の長の次男坊だ。

奈良に向かっている過激派の長男章夫とはちがって穏健派だ。

とはいっても、なめたらアカンデヨ。

いざとなれば殺戮の喜びのために殺戮のできる狼だ。

そういう玲加もじぶんがバンパイァであることを忘れていた。

いまは、歴史的にみてずっと長いことひとの血はすっていないはずだ。

が、それからさきのことはわからない。

喉の渇きをかすかに感じることがある。

そんな時は……じぶんが浅ましくなる。

悲しみながらトマトジュースをがぶ飲みする。

●いまその渇きの発作がやってきた。

玲加はジロリと肥満女を睨む。

武の拳からしたたるトマトの汁をぺろりとなめた。

ひとがいいきもちで、いやわたしたちはひとではない。

ひとの範疇、カテゴリイからはかけはなれている。

まあいいか。

ひとがいいきもちで武と買い物にやってきたのに。嘲るほうがわるいのだ。

中年肥満醜悪女たちがふるえている。

「おかしいよ。あのアンちゃんと姉ちゃん、眼がひかった。ひかった」

●店内からレジ袋を両手にさげた男たちがでてきた。

これまた大男。わめく。

「うちのカアチャンになにした」

「なにもしてませんよ。お上品な奥様たちですね」

「まあな」

「そんなこといわれても許さんぞ」

べつの悪の権化みたいな男がつめよってくる。

レジ袋をゆっくりと凄みをきかせておく。パット殴りかかってきた。

武はおおきくアギトをひらいた。

バカな男だ。狼の口のなかにパンチをくりだした。

カブツト武が口をとざした。咀嚼音がする。

「ああ。おれの手が、拳が喰われた」

「なにいつてるんだ。タカオよ。ちゃんと手はついてるぞ」

幻覚を見せられたのだ。

タカオは噛みちぎられたあとから血がふきだしているように見える。

首にまいていたタオルを手にまきつけている。

「わあわあわあ」

大男が脱兎のごとく逃げていった。

●「武さん。帰ってきていたのですか」

バイクがバーストしながら急停車した。

犬飼族のめんめんがおりてきた。

玲加は首をかしげてブリッコぶった挨拶をした。




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 二人だけの化沼/奥様はバンパイァ 麻屋与志夫

2009-10-25 04:35:35 | Weblog
●奥様はバンパイァ58  PART 2

「わたしたちだけで化沼にもどってくるとは思わなかったね」

「しょうがないだろう。新学期ははじまったばかりだし。Mのバラ園はだれかせわ

しなければならないのだから」

「そうよね。ふたりでいられれば、どこにすんでもいいよ」

 武を眩しいような眼差しでながめている。

 胸をどきどきさせながら武によりそっている。

 玲加はじぶんのことがわからなくなっていた。

 あんなに敵対していたのに。

 いまそこにある、現実の敵として戦いぬいてきた。

 いや過去の時代から争ってきた。

 由緒ある敵対関係にあるふたつの部族の出なのに……。

 こんなに仲良くなっていいのかしら。

「これって、ロメオとジュリエットみたいね」

「なんだょ……きゅう。なに考えている???……の」

「うれしいよ。こうしてふたりであるけて」

「なにかんがえてのかね」

 ふいにぎざぎざした棘のある声がきこえてきた。

 ここは化沼の黒川岸にあるスーパー『ヨークシャ』のフロントだ。

 買い物客が一休みできるようにプラスチックのテーブルや椅子が並べられてい 

る。玲加があわててみまわす。

 だれかにかかえてもらわないと椅子からたちあがれそうにない巨女がこちらをみ

ている。立ちあがる前に、椅子がよよみそうだ。

 それでもふたつ椅子を並べているのだからおどろきだ。

 ひとつだつたら椅子はつぶされていたろう。

 醜悪な中年女たちがフロントを出入りする若者に悪口をあびせているのだった。

「まったくね。でれでれ手なんかつないで。よくはずかしげもなく歩けるね」

 なんかスーパーの野菜売り場みたい。カボチャ、ジャガイモ、黄色いピーマン、

玉ねぎ。みたいなごろごろしたオバサンたちがじろじろ武と玲加を棘ある視線でな

めまわし悪口雑言。

「いわしておけよ。玲加があまりきれいなのでjealousyさ」

 なにかとんできた。武が手をあげてとらえた。

 玲加の顔にあたらないですんだ。武の手が真っ赤に染まった。

 熟れたトマトだった。

「なんだかんだと、バカにするのはいいよ。でもぼくの彼女を傷つけるとあんたら

のあたまがこうなるからね」

 ううつと武が吠えた。なにせ人狼だから咆哮は真に迫っている。

 ホンモノの唸り声をきいて肥満女たちが椅子ごとうしろにデングリ返った。


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冬枯れの庭で/麻屋与志夫

2009-10-24 19:27:42 | Weblog
10月24日 土曜日

○9月26日に「奥様はバンパイァ」は「武と玲加の愛」を書いたきりだった。

1月近く休んだことになる。

こんなことは初めてだった。

スランプなのだろう。

いままでのじぶんの表現方法に疑問をもってのことか!!

そうでもないらしい。

日常生活のちょっとした変事にすぐに反応してしまう性格からきているようだ。

○創作に励むには、できるだけ平静なこころでいないと、わたしはダメのかもしれ

ない。

○寒くなってきた。ホリゴタツでわが愛しのハルとむかいあっている。

これからの寒冷地での冬、がんばりつづけていい小説を書きたいな。

書きたいことがいっぱいあるのだからあまり方法論にこだわらず、書いていこうと

思う。

○庭ではカミサンが手間暇かけて育てているバラがまだ咲き続けている。

執筆に疲れたらバラの花とその芳香をかぎに庭にでていけばいい。

いつでも癒しの空間がわたしをまっている。

    マチルダ
       

              

●カラスウリもだいぶ赤くなってきた。

ささやかな狭い庭だがこれからの冬にむかっての変化が楽しみだ。

       

       

●冬枯れが訪れようとしている庭に立って、創作意欲は枯れませんように誰にとも

なく祈ったものだ。

     pictured by 「猫と亭主とわたし



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歴女歴史を変える/奥様はバンパイァ 麻屋与志夫

2009-10-24 18:30:12 | Weblog
10月24日 土曜日
奥様はバンパイァ 57

○「愛しています。わたしぃ……武と交際してみる。交際させてください」

武がゆっくりと息をはきだした。

玲加は目を開いた。

「わたし武のこと好きみたい」

玲加を見下ろしていたGGとMがほほえんでいる。

「わたしどうなっているの」

「武さんが助けてくれなかったら、人狼の過激派に喉笛くいちぎられていた」

そうだ。武がふいに現れてわたしをつきとばした。

わたしはそれでたすかったのだ。

武は、腕から血を流していた。

「ありがとう。武。でも、どうして??? 助けてくれたの」

「わからない。玲加がかみ殺されそうなので。助けなければと思ったら体が動いて

いた。夢中で体が動いていた」

「ありがとう」

犬飼の過激派は武の兄章夫に先導されて、奈良に向かったらしい。

奈良の地になにがあるというのだ。

奈良の地でなにをしようとしているのだ。

「ぼくにも、わからない」


玲加と武はバラ園を歩いていた。

遥、はるかむかし、わたしたちは天使だった。

天国の神の庭園でバラの世話をしていた。

まだ人狼とバンパイァというように枝分かれしていなかった。

ある日バラの棘で指を傷つけられたわたしたちの始祖が、うっとりと血を啜ってい

るのを神に見咎められた。

天国を追われて、堕天使となった。

「それいらいの歴史を変えてみないか。ぼくらが愛し合えばなにか変るかもしれな

い。人狼と吸血鬼のあいだの争いに終止符をうつことになるかもしれない」

玲加は武の腕をとって顔をすりよせた。

それが玲加の応えだった。

歴女が歴史を変えたからといって、だれも批判することはないだろう。

「武のこと好きだよ」



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吠えろカメ!! シズカにしなくていいよ!!! /麻屋与志夫

2009-10-11 07:45:14 | Weblog
10月11日 日曜日

○亀井静香大臣がコメンテーターの集中砲火にあっていた。

四五日前のテレビだ。

局番と出席者の顔ぶれは伏せておく。

だいぶ荒れていた。

○話題は「モラトリアム」。

中小企業、零細業者の借入金返済を三年間猶予しようという、あの話だった。

内容の是非、どちらが正論かということについては結論のでることではない。

○コメンテーターの顔が歪んでいた。

いらいらして、攻撃的になっていた。

○「せっかくわたしがくるのだからもっと話のわかるコメンテーターと入れ替えて

もらいたかった」と大臣にいわれるほど失礼な発言が多々あった。

○大臣は国民の選挙で選ばれた人だ。

コメンテーターは局側で選んだ人なのだろう。

それにしては、じぶんの側に選良意識がありすぎはしないか。

そして議論のしかたにも問題がある。

顔色が変わってひきつっていた。

○大臣はさすが海千山千。

いくたのこうした修羅場をくぐりぬけてきている。

前述の言葉もシラッと言ってのけた。

いわれたコメンテーターは「入れ替え」……言葉はいま少し違った表現だったかも

しれません――録画していなかったので確かめるすべがありません、まちがつてい

たらごめんなさい。

入れ替えといわれてさらに顔色がかわった。

どの番組をみていても、なにをいわれても動じないのはお笑いタレントくらいのも

のだ。

かれらはバカといわれ「アホヤナ」といわれて、ナンボといった世界で鍛えられて

いる。

優秀なコメンテーターは、大臣の言葉ではないが、確かに自分が批判されたことは

あまりないので、他者から侮蔑的な言葉を浴びせられることには免疫がない。

そう感じました。

○議論の仕方も、話の運びもわれわれ日本人には勉強する必要がありそうです。

○そして亀井大臣にはもっと吠えてもらいたい。

銀行の体質についてももっと追究してもらいたい。

吠えろカメ。シズカにしていなくていいよ。失礼しました。

○みなさん、コメンテーターの方へも。妄言多謝。



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