6月29日 金曜日
●レストランで食事をするときに必ず割りばしを頼む。これは、若いときからそうであった。銀食器だと歯にカチカチあたる感触がいやなのだ。塗り箸もだめ。おなじようにあのつるつるした歯ざわりがいやなのだ。それに、先がとがっている。歯にあたる音も鋭くてスプーンもフォークもだめ。それでいて、洋食がすきだ。若いとき通訳のマネごとをしていた。アメリカのひととよくレストランで食事をした。かれらの視線がわたしの手元に集まる。わたしは右の箸の下のほうを持ちステーキにすばやく連続した穴をあける。そして箸先で悠然と肉片を挟む。食べる。彼らはわたしのこのパーフォマンスを「おう、侍チョツプステックス」と感嘆したものだった。いまは老いてそうしたちやめっけはなくなった。気に入った割りばしだと「もったいない」と家に持ち帰る。カミサンはいやな顔をする。「なんでもすてるのがきらいなんだから。わたしが長生きしてあげないとあなたまちがいなく、ごみ家敷老人になるわね」カミサンがむしょうにに元気な理由だ。カミサンに長生きしてもらうのには「わたしがいないとこのひとはだめだ」と思ってもらうことだ。
●昭和ひと桁世代だ。欲しがりません勝つまでは。と教育された世代だ。持ち帰えった箸がうれしい。毎日よろこんで使っている。カミサンは微苦笑。
●今朝もその箸で食事をしていると甘いいい香りがする。初めて気づいた。一輪ざしにくちなしの花がさしてあった。白い可憐な花びらがいい。食卓の花瓶には、アジサイ、シトケシヤ、都忘れが活けられている。庭で咲いた花で部屋をいつも飾れるのも田舎住まいの恩恵なのだろう。
●レストランで食事をするときに必ず割りばしを頼む。これは、若いときからそうであった。銀食器だと歯にカチカチあたる感触がいやなのだ。塗り箸もだめ。おなじようにあのつるつるした歯ざわりがいやなのだ。それに、先がとがっている。歯にあたる音も鋭くてスプーンもフォークもだめ。それでいて、洋食がすきだ。若いとき通訳のマネごとをしていた。アメリカのひととよくレストランで食事をした。かれらの視線がわたしの手元に集まる。わたしは右の箸の下のほうを持ちステーキにすばやく連続した穴をあける。そして箸先で悠然と肉片を挟む。食べる。彼らはわたしのこのパーフォマンスを「おう、侍チョツプステックス」と感嘆したものだった。いまは老いてそうしたちやめっけはなくなった。気に入った割りばしだと「もったいない」と家に持ち帰る。カミサンはいやな顔をする。「なんでもすてるのがきらいなんだから。わたしが長生きしてあげないとあなたまちがいなく、ごみ家敷老人になるわね」カミサンがむしょうにに元気な理由だ。カミサンに長生きしてもらうのには「わたしがいないとこのひとはだめだ」と思ってもらうことだ。
●昭和ひと桁世代だ。欲しがりません勝つまでは。と教育された世代だ。持ち帰えった箸がうれしい。毎日よろこんで使っている。カミサンは微苦笑。
●今朝もその箸で食事をしていると甘いいい香りがする。初めて気づいた。一輪ざしにくちなしの花がさしてあった。白い可憐な花びらがいい。食卓の花瓶には、アジサイ、シトケシヤ、都忘れが活けられている。庭で咲いた花で部屋をいつも飾れるのも田舎住まいの恩恵なのだろう。