1月4日 土曜日
●あれからずっと起きていた。
JINROH武と玲加のFIRST LOVE(奥さまはvampire)を改題した。――ものを訂正している。
ほとんど新しく書いているようなものだ。
●しばらくぶりで書いていて興奮している。
最初の方だけ読んでもらいます。
どうでしょうか。
JINROH武とMV玲加のFIRST LOVE
PART 1 人狼吸血鬼(Black-Vampire)現れる
1
初春。
日差しは強い。
紫外線は――。
お肌の敵。
と。
美麻 (ミイマ)はいやがっていないのだろうか。
心配になった。麻生学司はカミサンの麻生美智子をふりかえった。
美麻は学司のことは学(がく)ちゃんとか学と皆が呼びかける。学も美麻も美形だ。ふたりしでパリコレのモデルが務まる。それもスーパーモデルだ。
美麻は上げ底のブーツを履いている。背を高くみせる。必要はないのに。190センチある学にくらべても、それほど低くはない。
「忙しいのにつきあわせちゃってごめん」
栃木新聞の化沼(あだしぬま)支局に☎を寄こしたのはカミサンだった。春の陽光にしては光がまぶしい。まるで夏のようだ。紫外線は射すように美麻に降り注いでいる。それを承知で学を誘ったのだ。なにか、緊急の話でもあるのだろう。
「そんなことないさ。昼までフリ―だ」
さりげなく応えておく。
「今日も、一緒に歩けて、うれしい」
「どうも……それだけではないな」
なにか企んでいるだろう? と学はカミサンの耳元で息を潜めてささやく。
「あらぁ、わかってるのね」
カミサンは若やいだ声で応えを返してよこす。
化沼高校前。
マロニエ並木。
地方紙『栃木新聞』の化沼支局の記者にして超伝記作家の学は、カミサンといつものように連れだって歩いていた。評判のオシドリ夫婦だ。結婚して二年目になるのに、いまでも新婚気分でいっしょに歩いている。通例の朝のニュースを本社に送ったあとだった。あまりハデナ事件は起きない街だ。午後まで、時間が空いていた。
「日曜大工の店カンセキの園芸品売り場で、バラの新苗を見たいわ」
美麻にねだられた。お供することにした。
美麻はUVカットの美白ハット。
UVカット日傘。(日傘……といえばパラソルだ。『パラソル』という吸血鬼を扱った短編小説がある。井上雅彦の傑作だ。学の脳裏をパラソルを差した吸血鬼の群れがよぎった)
UVカット美白クリームの重装備。美麻にmind バアンパイアだと告白された時には驚いた。でも、白昼でも自由に歩き回れる。だいたい紫外線をそれほどきらつているようすはない。
そんな配慮は彼女にとっては必要のないことだ。
心理的な安心感に依存しているのだろう。
2
薔薇の鉢をカミサンはまだ眺めている。
花を咲かせているものもある。
「アンジェラが今年は少し早く咲きだしたみたいね」
「暖かな日がつづいているからな」
「月が変われば、家のバラも一斉に咲きだすわよ」
美麻は何かうわの空で返事を返してきている。
誰かを待っているみたいだ。
そのことを訊ねようとした。
美麻は裏の駐車場の方までつづいている薔薇の小道を歩いていく。
異様な風体の老婆だ。
灰色のボロをまとっている。
腰の曲がった老婆だ。
美麻に近寄っていく。
美麻が襲われる。学はそう感じた。
まさか、そんなことはあるまい。
美麻の腰のあたりの身長だ。
腰が45度くらいに曲がっている。
大地をナメルるようだ。
醜く太っている。
足が0脚に開いている。
ガマガエルでも歩いているようだ。
だがそのまさかが、現実となった。
老婆が立ち上がった。
よたよたと彼女のそばに近寄る。何かいっている。
学は走った。大声を上げた。美麻に警告した。
女から悪意がながれでている。
女から邪悪な想念が美麻に放射された。
学は叫びながら美麻に向かって走った。
薔薇の鉢につまづいた。危うく転がるところだった。
ジャンプした。それでも避けきれなかった。
鉢が大きな音をたてた。美麻がこちらを見た。
学は美麻のところに走りよる。
よかった。間に合ったようだ。
老婆は美麻に肉迫していた。
立ち上がった老婆はいがいと大きかった。
顎が美麻に接触した。とは、いかなかった。
美麻が素早く体をひらいた。
老婆の噛みつこうとした顎をさけた。
「バラなんかきらいだ。棘がある。棘があるから――。バラなんかきらいだ」
呪うような、悪意のこもった音声で老婆くりかえしている。
美麻が当惑したような顔をした。
とりあわないようにという顔を学にした。
「美麻。逃げるんだ」
女が鉤爪もあらわにカミサンの顔に手をのばした。
まにあわない。どうしてもっとはやく気づかなかったのだ。
わたしは女と美麻の間にまたジャンプした。
美麻を守るためにジャンプした。
一瞬、まだまだやれるとい感情がわきあがった。美麻はこの学が守る。声にはだせなかった。そのことばは、尻の肉への激痛に消された。あたりは暗くなった。いや霧の中にいる。すぐそばに人がいる。そのはずなのに、よく見えない。カミサンが薔薇の枝をかまえている。
「人狼――吸血鬼――BV(ブラック・バンパイア)ね。うちのダーリンに何の恨みがあるの」
「かっこつけるんじゃないよ。九尾族の千年ババァ」
背丈が倍近くなり、脚もたくましくまっすぐにのびていた。
四足歩行にみえていたものが、立ち上がっていた。
老婆だったものは、両眼を赤くひからせている。
獲物を狙う野獣の眼だ。
そのために衣類がはじけていた。
青黒く毛深い膚。
狼の体。
顔はまさに吸血鬼のものだった。
般若に似た顔。
乱杭歯に長い犬歯。
歯を剥いて襲いかかってきた。
〈わたしは全身に若やいだエネルギーが満ちていた。さっきからおかしい。体が柔軟に動く。尻の痛みも消えている。出血もとまった〉
「お、おまえは」
人狼がたじろいだ。空に向かって相図の遠吠え。
「おまえは……わたしたちを見ることができるのか……そんなわけはない。人間のはずだ」
わたしは人狼吸血鬼BVを見てもさほど怖いとは感じなかった。
想像を絶するほど醜悪な顔だ。でも恐怖は感じなかった。唇からは黄色く濁った涎をたらしていた。遠吠えの相図で、周囲に人狼の群れが忽然と現れた。待ち伏せされていたのだ。
「食らってやる」
眉間には深い二本の縦皺が刻まれていた。目は白濁してぶよぶよながれだしそうだ。
カミサンが薔薇の枝――鞭で打ちかかった。顔面から青い液体がふきだした。いやな臭いがする。まるで膿だ。
「バラの棘は美しいものを守るためにある。あんたは消えなさい」
「そのことばはそつくりあんたら二人にお返しするぜ。ジャマなんだよ。あんたらが」
おう、痛いぜよ。と薔薇の枝でたたかれた傷跡をなめている。
「ヤッテおしまい」
老婆は配下の人狼に声をかけた。人狼の爪がぐいっと、剣のようにのびる。
ザザッと剣風をともなって切りこんでくる。
「これを、学、使って!」
美麻がパラソルを投げてよこした。
パラソルの芯を抜き放った。仕込みになっている。直刀があらわれた。
銀色に光っている。その銀色に光りに人狼がタジロイダ。
老婆とともに美麻を襲う人狼に斬りこんだ。斬り捨てた。
恨みの首が薄黒い煙の中に消える。
「さすが、ダーリン。剣道で鍛え、傭兵で鍛えてきただけのことはある」
美麻は人狼をけん制する。大声で学の動きを鼓舞する。敵は学がただののっぽではないことを知る。ただのイケメンではないことを剣風からも察知した。たじろぐ。
「なに、おたついているの。こちらの方が数はおおいのよ」
3
化沼高校の二階。一年B組の教室。見園玲加が窓から見ている。転校生としての挨拶をすませたばかりだ。まだ、教壇に立っている。道路を隔てた日曜大工の店カンセキを見下ろしている。
「見園くん。視力は」
「2てん0です」
「だったら、後ろから二番目の席、犬飼武の前の席で、いいな」
「わあっ、武に抱きつかれるわよ」
だれかがつぶやいた。玲加はそれにはかまわず、カバンを空いていた机の上においた。ただ窓からヨソミ、見下ろしていた訳ではない。異常を感じるセンサが稼働した。たしかに異様だ。広い駐車場に黒い竜巻が発生している。狼煙にみえた。ただの竜巻ではない。円錐状なのだ。仲間を狼が集めるサインでもある。そして、その底辺の中心から殺気がもれている。
これだったのね。わたしの視線を窓の外に向けさせたのは。ピピピッとわたしの感覚を刺激した……。そうわかると、玲加は教室をとびたした。廊下を走っていた。
「見園どこへいく」
武の声が背後から追いかけてくる。わたしに嫌われたとでも、思ったのかしら。
「玲加どこへいくのよ」
血相かえて飛びだす玲加に何人かのクラスメイトからも声がとぶ。
長い黒髪が初春の風になびいていた。美しい。玲加の姿は校庭を走っている。校門を出た。黒い竜巻はない。円錐状の異空間がある。煙のなかにいるようだ。飛びこむ。
進路をハバンダ人狼の首に空手チョップを叩きつける。人狼の首がカシグ。折れたかもしれない。手練の業だ。
「やっぱ、美智子おばさまだぁ。」
「神代寺の歴女クラブの玲加さんじゃないないの」
「一日早く着いたの」
「何おとぼけだぇ。スケットを呼ぶということは、徹底抗戦の気がまえとみたよ、九尾の千年ババァ」
「美智子おばさまのこと……。ババァなんて呼ばないで。許しませんよ」
「まとめて、くらってやんな」
老婆が人狼にゲチをとばす。ザワッと包囲網が狭まる。
「お婆! これは族長の命令なのか」
武が包囲網をかきわけて悠然と現れた。
「だとしたら武、どうだというのだ」
「オヤジの命令だとしても許さないよ」
「なぜだよ」
「見園玲加はぼくのクラスメイトだ。ぼくのそばに座るひとだ」
「それがどうしたのだい」
「ぼくはクラスメイトの玲加とツキアウつもりだ。だから見園を傷つけることは許さない」
「ゲェ、ゲェ。武、それ本気か」
「本気だ」
その叫びを聞くと老婆が蒼白になった。
「ひとまずヒク。あとが怖いからね。覚悟しておくんだね」
BVは身をひるがえして、円筒状のバリアの外にジャンプした。黒い風の尾をひいて走り去った。配下の人狼もそれに従った。バリアの煙も彼らとともに消えた。
「こんなに早く来てくれるとは思わなかった」
玲加を見て、美麻がうれしそうだ。
「どうして――あなたとつき合うことになっているの」
玲加が武をにらんでいる。でも声に迫力はない。武がタイプらしい。
「うちに下宿したらいい」
転校してきたばかりで、まだ土地カンのない玲加に学は勧めた。
カミサンは薔薇の鉢、ゴールドバニーを買ってごきげんだ。
玲加はカバン一つで早退してきた。
「転校の手続きがすんだら、すぐ伺うつもりでした」
角川ブックウォーカー惑惑星文庫で検索してください。
はじめの4ページくらいは立ち読みコーナーがあって気軽に読めますよ。
ブログとは違ったGGの小説の文章を読んでみてください。
今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
皆さんの応援でがんばっています。
にほんブログ村