田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

吸血鬼/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-05-11 14:16:29 | Weblog
2 吸血鬼

5

5年前。新宿。
 
「悪意だ。それもかなり強い」
村上勝則が純にささやいた。
ゴールデン街の片隅だった。
雨はあがっていた。
水溜りにネオンが映っていた。
光っている。
「先生これは……」
犯罪の痕跡現場にどす黒い悪意が渦をまいていた。
「感じるか」
「すこしだけ」
「微弱な反応でもすばらしい。やはり純には特殊能力がある」
すすり泣くような音がしていた。
その音をきくと純はどっと汗が噴き出した。
戦慄。
とてつもない恐怖が純をとらえていた。
どうして、こんなたわいもない音を怖がるのか。
その実態をしりたくて、純は物陰からのぞいた。
路上に女が倒れていた。
なにやっているんだ。あの男は。
なにか妖しい。純はかけよろうとした。
「むだだ。もう死んでいる」
勝則にとめられた。
「見えるか。吸血鬼だ」
「吸血鬼? そんな――吸血鬼がいるなんて」
「そうだ。吸血鬼だ。やはりみえるんだな。おれが見込んだだけのことはある」
 男の口の端からは血がしたたっていた。
「ぼんやりとですが、吸血鬼に見えてきました」




にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説













さすらいの塾講師    麻屋与志夫

2010-05-10 09:19:27 | Weblog
1 もどってきたぜ

4

「いやにあっさり逃げていったな」
とG。翔子と純をうれしそうに眺めている。

酒に酔っている。
とろんとした目で翔子と純を眺めている。
「泉さん、ようこそ。よく帰ってきてくれたわね」
翔子の母、文枝が純の帰還を歓迎した。
「翔子さんとの約束ですから。翔子さんはいつごろから気づいたのかな」
翔子のメールにはストーカーに狙らわれている。
そのストーカーは吸血鬼のようだ。
とかかれていた。
純を帰京させるにはじゅうぶんな理由だった。
「わたしは父とお兄ちゃんが吸血鬼とそうぐうしたときは、
まだ小学生だった。
父がいつかは、どこからかかえってくるとおもっている。
そして、Gと母で、三人でこの道場と「ムラカミ塾」は守ってきた。
生徒だってあのころよりふえている」
「翔子。泉さんはなぜおまえがストーカーにおそわれるのかしりたいのよ」
「わたし吸血鬼なんてみたこともなかった。
それが地下鉄の通路でみてしまった。
壁がみように膨らんできた。
アレっと柱のかげにかくれた。
そしたら壁から吸血鬼があらわれた。
わたし夢中で逃げた。
追いかけてきた。
でも人が大勢やってきた。それですくわれた。
それからときどき、人がまばらなところであらわれるようになったの」
「でも、家にまできたのは初めてなの」
と、文枝。
「5年前とおなじことが起きるの」
純がいるのでうれしそうではあるが、不安を隠しきれないで文枝がいう。
つもるはなしもある。長い夜になりそうだ。

にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説
one bite please 一噛みして。おねがい。

1 もどってきたぜ/さらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-05-09 07:40:00 | Weblog
1 もどってきたぜ

3

「お兄ちゃん。まっていた。
翔子、お兄ちゃんが講師をやめて、
旅にでた日からずっとまっていたんだから……」

純にだきつくと翔子は泣きだした。

吸血鬼は切りおとされた血だらけの腕をひろいあげた。
切り口を長い舌をだしてベロリとなめる。
うぅまずい。
という顔になる。
「おじゃまのようだから、またくるわ」
だれももちろんひきとめなかった。

翔子はえりあしに純の息をかんじた。
息をかんじたところがほんのりとあたたかくなった。
しびれるような心地よさだ。
「噛まれていなかったようだ」
それが純のはじめてのことばだった。
旅からもどってきた。
そしてまっていた翔子にかけたことばがそれだった。
もう唐変朴。無粋。女心がわかんないのだから。
でも……わたしお兄ちゃんの彼女でもないシ。
わかれたときは、まだ小学生だったシ。
わたしが吸血鬼に噛まれてしまったかと本気で心配してくれているのだから。
ゆるしてあげる。

でもそのつぎにでたことばは……。
「翔子ちゃん、おとなになったな。胸もふっくらとして」
翔子は九十あるバストを純におしつけていた。
あわてて離れようとすると、
「ただいま。よくがんばっていたようですね」
とやさしくハグしてくれた。
翔子は涙がほほをつたってほろほろとおちるままにしていた。
感極まって泣いていた。
あいたかった。あの日からずっとまちつづけていた。
雑踏の中をあるいていても、
ふとお兄ちゃんに似た人がいるとあとをつけたりした。

にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説
one bite please 一噛みして。おねがい。

水木しげる/加太こうじ 麻屋与志夫

2010-05-08 11:31:51 | Weblog
5月8日 土曜日
徹夜明けの眠い目をなんとか見開いて「ゲゲの女房」をみる。
あいかわらず快調なテンポで水木さんの家庭をみせてくれる。
夫婦の会話が、おもしろい。

わたしはながいこと水木さんと加太こうじさんを混同していた。
加太さんとは、
わたしの師匠木村学司先生が主宰していた「二十一世紀」の会で知り合った。
混同したのにはむろん訳がある。
そのころ加太さんは紙芝居の「黄金バット」の作者として知られていた。
後には作家となって数々の時代物の傑作をものにしている。
気になるのでインターネットで調べたら二十一世紀をまたずに亡くなっていた。
ご冥福をお祈りします。

そもそもあの会は、
「二十一世紀までげんきで生きましょう」という趣旨で結成された。
いま何人くらいご健在でしょうかね。

わたしはあいかわらず、東京と鹿沼をあわただしく行き来している。
売れたり売れなかったりする原稿をかきつづけている。
ただひとつかわったことといえば、このPCだ。
ゲゲの女房がガリ版刷りで会報をすっているところ、
なつかしくてほろりとした。
むかしはみんなああだったのだ。

小説の第一稿を、載せられる。
毎日、書きあげるとすぐにアップして、翌日には訪問者と閲覧数がわかる。
まるで新聞小説を連載しているような気分だ。
これでコメントが増えればもっとたのしいだろうな。
「ファンタジー小説」のバナーというのですか???
あれをクリックしてもらえればもっと励みになります。
GGもおだてら腰がのびる。
ついでにふんぞりかえったりして……。
とオネダリしてるポーズ。

でも今朝はうれしかった。
訪問者が200。閲覧数が669。
もっとのびてくれればいいな。
それにはもっともっとおもしろい小説を更新しなければね。


にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説
one bite please 一噛みして。おねがい。

新連載 「さすらいの塾講師」  麻屋与志夫

2010-05-08 01:40:05 | Weblog

1 もどってきたぜ

2

ジイチャンは黙って酒をのんでいる。
翔子の父が不在となってからは毎晩のように酒を飲んでいる。
ドブロク仕立ての「白川郷」という濁り酒が祖父のこのみだ。
母は流しで夕食の後片づけをしていた。
激しく水道水がはじける音がしている。
カチカチと食器のこすれ、触れあう音。
静かなキッチンに食器洗いの音がしていた。
いつもの夜がはじまろうとしていた。
Gには寝床にごろりと横になることしか残されていない。
父がいなくなってからめっきり老けこんだ祖父を翔子はGと呼ぶ。
Gと呼びかけたほうがわかわかしくひびく。
祖父をはげましたかった。
さきほど、ジイチャンと呼んだ。
めったにないことだ。
よほどコウフンしていたのだ。
翔子はこれから勉強にとりかかる。
 
インターホンが鳴った。
「泉さんだ」
翔子はすばやくたちあがった。
ドアにはしって、開いた。
「やめろ!!」
背後にGの声をきいたが、おそかった。
見たこともない男が立っていた。
夜なのに、黒メガネをかけている。
そして黒のスーツ姿。
マンインブラック。
黒服の男。
にんまりと笑っている。
「いちど嗅いだ臭いはわすれませんよ」
翔子の体臭を追ってきたというのか。
犬みたいに鼻のきくやつだ。
「訪問販売なら、おことわりよ」
「お嬢さんそんなこといわないで」
「あら、押し売りにばけるわけ」
「どうしたの……翔子」
洗い物をしていたのでいままで翔子と男のやりとりはきけていなかったのだろう。
「翔子!! かがんで」
母の手から皿がとんできた。
翔子はリンボー・ダンスのように膝の高さまで上半身をのけぞらせた。
翔子の体の上を皿がとんでいく。
皿とともに投げられたベティナイフがドアにつきささった。
柄がビィンとふるえている。
翔子は両手で床をたたいて体を半回転させて母とGの間に立った。
「これはどえらい歓迎ですね」
鼻筋がとおっているが、肉薄なので品がない顔立ちだ。
肌は石膏のような白さだ。
声まで酷薄にきこえる。
Gがふたりを庇うように進みでた。
口に含んだ酒を男にふきかけた。
ジイッと顔がとける。
「おれには命の水。神国日本の水でつくられた酒はおまえらには、死の水だ」
「なにをとぼけたことをいう。これは紙製の仮面だ」
男はうれしそうに哄笑する。
仮面をはずす。
両の目が赤くひかっている。
「やはり吸血鬼か!! おれの家から出でいけ。
ここはおまえらのくるところではない。少林寺拳法のしんせいな道場だ」 
青白い顔がにたにた不気味にわらっている。
乱杭歯の間からヨダレをたらし近寄ってくる。
「歯の矯正くらいしなさいよ」
翔子は抜き身をきらめかせて切りつけた。
「ほう、感心した。いつでも武装しているんだ」
さして感心しているようにはひびかない。
むしろからかわれているようだ。
老人と女子どもとみてなめている。
切りつけた翔子の白刃は吸血鬼のもつ皿ではじかれた。
三人はじりじりっと流しのほうに追いつめられる。
翔子は必死で二の太刀を逆袈裟がけで切りつける。
吸血鬼がその剣をまたも皿ではじく。
ずずっと青白い腕が翔子の喉元にのびる。
あわやと一瞬その腕に三人の視線が集まった。
そこで思いがけないことがおこった。
のびてきた腕が肩のからズバッと切断された。
どんと床に落ちても。
まだ手は翔子の首をつかもうとでもするように。
執念深くうごめいている。
「お兄ちゃん。きてくれたのね」
吸血鬼の背後から泉純が現れた。


にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説
one bite please 一噛みして。おねがい。

連載開始 「さすらいの塾講師」 麻屋与志夫

2010-05-07 17:55:24 | Weblog
1 もどってきたぜ

1

那須野の広々とした展望が新幹線の車窓にひらけていた。
無線がつながりインターネットが使用可能となった。
PCにメールアドレスは登録してあった。
携帯はあれからなんども買い替えていた。
泉純は西早稲田の「ムラカミ塾」にメールを打った。

I’ll back at twilight.
「たそがれ時にはもどります」
これでいいのかな。
英作文はあまり得意ではなかった。
でも翔子への返信なのですこしきどってみた。
W大の学生だった5年前にアルバイトをさせてもらった学習塾の娘さんだ。
当時はまだ村上先生が健在で少林寺拳法の道場もかねていた。
SOSのメールを純のPCによこした翔子はまだ小学生だった。
いまはもう、高校2年生だろう。
 
トワイライト。
茜色の夕映え。
東西線の地下鉄階段を上った西早稲田の街にはもう街灯がともっていた。
青春の街。
早稲田。
鶴巻公園のベンチには恋人たちが宵のひとときをたのしんでいる。

トワイライト。
村上先生に助けられて吸血鬼と戦った記憶もあいまいとなっていた。

吸血鬼出現。エクスキューターの帰りをまつ。

それだけのメールだった。
よほどあわてていたのだろう。
差出人の名前はなかった。
それでじゅうぶんだった。
翔子の苦境はひしひしと伝わってきた。

新幹線なのにそのスピードがもどかしかった。
いまこの瞬間にも翔子が吸血鬼におそわれているかもしれないのだ。

頭上から黒い影がおそってきた。
池袋の街を照らしていた人工の光がさえぎられた。
その瞬時前、翔子は胸騒ぎがしていた。
予感にはすなおに反応するようにしこまれていた。
路上にころがって逃げた。
影は翔子の脇をあるいていたサラリーマンの喉元にくらいついた。
逃げだした翔子は不気味な音をきいた。
血が啜りこまれている音だ。

「現われた。ジイチャン、あれは吸血鬼よ。泉さんにメール打ったからね」 
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説
one bite please 一噛みして。おねがい。



心が劣化している? 麻屋与志夫

2010-05-06 05:24:44 | Weblog
5月5日 水曜日
子どもの日。端午の節句。
いつのころからか、端午の節句とはいわなくなった。
子どもの日、というようになった。

街に鯉のぼりがあまり泳がなくなった。
もしかすると、この鯉。
絶滅危惧種なのかもしれない。
少子化で、子どもの減ったこともあるだろう。
むかしの風習はテレビのコマーシャルの、
世界にだけのこっているようだ。

駅のプラットホームに鯉のぼりが掲げてあった。
はじめ、わたしはそれが鯉のぼりとはおもわなかった。
駅舎の屋根によじれた布がはりついている、ようにみえた。
ポールも立てず、樋にでもくくりつけたのだろうか。
うまく風に乗って泳がないようなら修正する。
場所をかえるとか、風の流れをみきわめるとか。

まだあの鯉のぼりは屋根に着地したままだろうか? 
季節感をせっかく味あわせてくれたのに、あと一歩ですね。

鉄道で思い出した。東武日光線にのっていた時のことだ。
「鹿沼方面は大雪です」という車内アナウンスがあった。
電車はすでに鹿沼駅にちかづいていた。
車窓からみる故郷の空は快晴。
どうしてこういうことが起きるのだろうか。
晴れ渡った空を眺めながら、
「気象庁か会社からの予報がはいっていて、
それをそのまま鵜呑みにしてアナウンスしたのかな」とおもった。
そうとしか思えない。窓の外は晴れ渡っているのに。
恐怖にふるえだした。
まるでSFの世界だ。
言われたとおりにしか反応しないロボットみたいだ。
「そんなことありませんよ、
ロボットだってファジーなことにも適宜な反応をしめすわよ」
とカミサンはきびしい。

このところ、美術館などでも職員が実に不愉快なことがある。
マニアル通りの言葉しかいえない。
例えば出口いる彼女たちの前を通過した。
あと一枚ポスターを買いたそうとして直ぐ目前の売店に戻ろうとした。
直ぐ目の前なのだ。
「退館したらもどれません」。ああ……。

カメラ持参で街にでたが、鯉のぼりは泳いでいなかった。
したがって、pictureはアップできません。
ザンネンダナ。

にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説
one bite please 一噛みして。おねがい。

藤の花/カミサンの立ち話  麻屋与志夫

2010-05-05 06:08:40 | Weblog
5月4日 火曜日

藤の花が咲きだした。
花房が咲きながら垂れ下がって大きくなっていく。
咲いてからさらにのびて大きな花房になるところがおもしろい。
五月の薫風にふかれてゆらゆらゆれている。

カミサンと買いものにでかける。
トワイライトの中をわが家にもどってきたときに、
鹿沼石(深岩石)の塀の上で咲き誇っている藤の花をみる。
「草臥れて宿かる頃や藤の花」芭蕉の句がいつもこの季節には話題になる。
人間もこの歳まで生きてくると、
年々歳々あまりかわり映えのしない暮らし方をしているものだ。
もっともあまり変化がないのが、
日々是好日、
と平穏でいいのかもしれない。

富山奏校注の芭蕉文集で学んだ。
「頃や」の「や」に、
疲労と旅愁とが極限に達した嘆きが込められ、
「藤の花」は、そうした心情の形象化としての意味を持つ、とある。
たそがれ時の藤の花に託して心情を表白する例は、
古来の歌文に見られる。と解説はつづく。
俳句での「や」にこめる思いの深さ、これほどにはわたしには「や」を理解できない。
だから散文を書いているのだろうな。
これからでも遅くはない。
俳句を学ぼうかな。

そうしたわたしの心情もしらず……薄暮の中で藤の花房がゆれていた。

         

                

福島の帰途、交通渋滞にまきこまれた息子夫妻が夜やってきた。
このまま東京に戻るのは少し無理とのことだった。

月の光で藤の花を見る。

         

塀の外、藤の花の下で、カミサンが、お腹が大きくなりかけている嫁と立ち話をしている。
なにを話しているのだろうか。
カミサンの華やいだうれしそうな声だけがしていた。


にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説
one bite please 一噛みして。おねがい。

礼讃「ゲゲゲの女房」 麻屋与志夫

2010-05-04 10:19:50 | Weblog
ゲゲゲの女房

5月4日 火曜日
栃木芙蓉高校文芸部(小説)の第一部完。
次回からは東京、できれば地元大森、品川界隈を小説の舞台としたい。
ぼくの小説の読者はどういった方なのだろう。
今朝、NHKの朝ドラ「ゲゲの女房」をみていたら、
はじめて「墓場鬼太郎」の読者に彼女が会う貸本屋のシーンがあった。
なかなか感動的だった。
水木しげるの漫画は息子が大のファンだったこともあり、
ぼくもずっと愛読している。
神代植物園のことや、
鬼太郎のキャラクタのあるソバ屋街をはしごした話は以前に書いたことがある。
「初恋の白いバラ」拙作も、神代植物園の思い出ベンチで書きあげたくらいだ。

このドラマは漫画作家や小説家の女房の苦労話的なところがあるので、
いつもカミサンとはらはら、げらげら笑いながらみている。
若いときの苦労は、成功すれば楽しい思い出となる。
まあ、わたしの場合はかならずしも楽しいおもいでばかりではない。
これはわたしが小さな成功しかしていないからなのだろう。

夫の留守に彼女が仕事部屋をきれいに掃除する。
一般の家庭であったら感謝されるところだが、
しかられてショボンとしている彼女に、
わたしたち夫婦はほろりとさせられた。

わが家では、
わたしの最後の砦、
聖域である四畳半のホリゴタツのある部屋にカミサンはいまだに侵攻してくる。
おこるわけにもいかない。
きれいに整頓された机上の本を眺めながら、
いつになってもヒット作のでないわがみの非才ぶりにほとほとあきれている。
わたしには、カミサンを撃退する説得のセリフさえ浮かばない。

苦境にある漫画家、作家。
その他の芸術家の卵に彼女あるいは女房がいる。
という天の配剤に感謝しなければならない。
やさしく支えてくれる彼女にめぐりあうことができず、
わかくし芸術に憤死した友達が何人もいる。
いつの日か、
若くして逝った彼らを追悼して青春の日々を書いてみたい。

ゲゲの女房の、これからが毎朝たのしみだ。
おかげさまで早起きの習慣がつきそうです。



にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説
one bite please 一噛みして。おねがい。

消えた転校生 麻屋与志夫

2010-05-04 00:36:50 | Weblog
part15 消えた転校生 栃木芙蓉高校文芸部(小説)


71

「新学期から文芸部廃部なの。
悲しいよね。
番長は……あれどうなった」

「知美は大中寺の七不思議。
書き終えたのかよ」

「それがまだなの。
新学期までには書き上げる。
部員が大勢増えたような気がするの。
みんなで七不思議の話、
競作してた気がする。
夢だったのね」

「おれも次期番長を後輩に譲った気がする。
剣の達人で、
番長にはもったいないようなやつが確かにいたような、
……幻覚……だったのかな。
夢だったのかな」

知美と植木は巴波川に浮かんだ遊覧ボートを眺めていた。
川べりのベンチには、遊歩道には、大勢の観光客がいた。
栃木は春。
彼らが、
かかわってきた事件などしらぬ鶯が、
古い黒塀で囲われた庭の梅の木で鳴いている。

栃木芙蓉高校文芸部 第一部 完



にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説
one bite please 一噛みして。おねがい。