―「昨日(令和02年10月30日)の記事」と、内容が、一部、重なります。―
(01)
括弧は、論理演算子のスコープ(scope)を明示する働きを持つ。スコープは、論理演算子の働きが及ぶ範囲のことをいう。
(産業図書、数理言語学辞典、2013年、四七頁:命題論理、今仁生美)
(02)
(ⅰ)論理式または命題関数において、量記号が現れる任意の箇所の作用範囲(スコープ)は、問題になっている変数が現れる少なくとも2つの箇所を含むであろう(その1つの箇所は量記号そのもののなかにある);
(ⅱ)論理式または命題関数において、量記号が現れる任意の箇所の作用範囲(スコープ)は、同じ変数を用いたいかなる他の量記号も含まないであろう。
(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、183頁改)
然るに、
(03)
記号で書けば、Rは、
∀x∀y(Rxy→~Ryx)
であるときまたそのときに限って非対称的である。
親であるという関係は非対称的である。なぜならば、aがbの好であるならば、bはaの親ではないからである。
(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、232)
従って、
(01)(02)(03)により、
(04)
① ∀x∀y(好xy→~好yx)
といふ「述語論理式」は、実際には、
① ∀x[∀y(好xy→~好yx)]
といふ風に、書くのが「正しい」。
従って、
(05)
① ∀x∀y(好xy→~好yx)
に対する「否定」である所の、
① ~∀x∀y(好xy→~好yx)
といふ「述語論理式」は、実際には、
① ~{∀x[∀y(好xy→~好yx)]}
といふ風に、書くのが「正しい」。
然るに、
(06)
① ~{∀x[∀y(好xy→~好yx)]}
といふ風に書くのは、「煩はしい」。
従って、
(05)(06)により、
(07)
これまで通り、
① ~∀x∀y(好xy→~好yx)
といふ風に、書くものの、
① ~∀x∀y(好xy→~好yx)
といふ「式」自体は、飽くまでも、
① ~{∀x[∀y(好xy→~好yx)]}
といふ「意味」である。
然るに、
(08)
① ~∀x∀y(好xy→~好yx)
といふ「述語論理式」は、
①{すべてのxとyについて(xがyを好きであるならば、yはxを好きではない。)}といふわけではない。
といふ「意味」である。
然るに、
(09)
①{すべてのxとyについて(xがyを好きであるならば、yはxを好きではない。)}といふわけではない。
といふことは、例へば、
① aさんが、b君に、告白した場合に、b君も、「aさんが好きである。」と言ってくれる『可能性』がある。
といふ、ことである。
然るに、
(10)
(ⅰ)
1 (1)~∀x∀y( 好xy→~好yx) A
1 (2)∃x~∀y( 好xy→~好yx) 1量化子の関係
1 (3)∃x∃y~( 好xy→~好yx) 1量化子の関係
4 (4) ∃y~( 好ay→~好ya) A
5(5) ~( 好ab→~好ba) A
5(6) ~(~好ab∨~好ba) 5含意の定義
5(7) ( 好ab& 好ba) 6ド・モルガンの法則
5(8) ∃y( 好ay& 好ya) 7EI
4 (9) ∃y( 好ay& 好ya) 458EE
4 (ア) ∃x∃y( 好xy& 好yx) 9EI
1 (イ) ∃x∃y( 好xy& 好yx) 14アEE
(ⅵ)
1 (1) ∃x∃y( 好xy& 好yx) A
2 (2) ∃y( 好ay& 好ya) A
3(3) ( 好ab& 好ba) A
3(4) ~(~好ab∨~好ba) 3ド・モルガンの法則
3(5) ~( 好ab→~好ba) 4含意の定義
3(6) ∃y~( 好ay→~好ya) 5EI
2 (7) ∃y~( 好ay→~好ya) 236EE
2 (8)∃x∃y~( 好xy→~好yx) 7EI
1 (9)∃x∃y~( 好xy→~好yx) 128EE
1 (ア)∃x~∀y( 好xy→~好yx) 9量化子の関係
1 (イ)~∀x∀y( 好xy→~好yx) ア量化子の関係
従って、
(10)により、
(11)
① ~∀x∀y(好xy→~好yx)
② ∃x∃y(好xy& 好yx)
に於いて、
①=② である。
然るに、
(12)
② ∃x∃y(好xy&好yx)
といふ「述語論理式」は、
②{xとy}の{変域(ドメイン)}が、
②{a,b,c}の{3人}であるとすると、
②{(好aa&好aa)∨(好ab&好ba)∨(好ac&好ca)}∨{(好ba&好ab)∨(好bb&好bb)∨(好bc&好cb)}∨{(好ca&好ac)∨(好cb&好bc)∨(好cc&好cc)}
といふ「式」に、「等しい」。
然るに、
(13)
「ド・モルガンの法則」により、
②{(好aa&好aa)∨(好ab&好ba)∨(好ac&好ca)}∨{(好ba&好ab)∨(好bb&好bb)∨(好bc&好cb)}∨{(好ca&好ac)∨(好cb&好bc)∨(好cc&好cc)}
といふ「式」は、
③ ~〈~{(好aa&好aa)∨(好ab&好ba)∨(好ac&好ca)}&~{(好ba&好ab)∨(好bb&好bb)∨(好bc&好cb)}&~{(好ca&好ac)∨(好cb&好bc)∨(好cc&好cc)}〉
といふ「式」に、「等しい」。
(14)
「ド・モルガンの法則」により、
③ ~〈~{(好aa&好aa)∨(好ab&好ba)∨(好ac&好ca)}&~{(好ba&好ab)∨(好bb&好bb)∨(好bc&好cb)}&~{(好ca&好ac)∨(好cb&好bc)∨(好cc&好cc)}〉
といふ「式」は、
④ ~〈{~(好aa&好aa)&~(好ab&好ba)&~(好ac&好ca)}&{~(好ba&好ab)&~(好bb&好bb)&~(好bc&好cb)}&{~(好ca&好ac)&~(好cb&好bc)&~(好cc&好cc)}〉
といふ「式」に、「等しい」。
(15)
「ド・モルガンの法則」により、
④ ~〈{~(好aa&好aa)&~(好ab&好ba)&~(好ac&好ca)}&{~(好ba&好ab)&~(好bb&好bb)&~(好bc&好cb)}&{~(好ca&好ac)&~(好cb&好bc)&~(好cc&好cc)}〉
といふ「等式」は、
④ ~〈{(~好aa∨~好aa)&(~好ab∨~好ba)&(~好ac∨~好ca)}&{(~好ba∨~好ab)&(~好bb∨~好bb)&(~好bc∨~好cb)}&{(~好ca∨~好ac)&(~好cb∨~好bc)&(~好cc∨~好cc)}〉
といふ「式」に、「等しい」。
(16)
「含意の定義」により、
④ ~〈{(~好aa∨~好aa)&(~好ab∨~好ba)&(~好ac∨~好ca)}&{(~好ba∨~好ab)&(~好bb∨~好bb)&(~好bc∨~好cb)}&{(~好ca∨~好ac)&(~好cb∨~好bc)&(~好cc∨~好cc)}〉
といふ「式」は、
⑤ ~〈{(好aa→~好aa)&(好ab→~好ba)&(好ac→~好ca)}&{(好ba→~好ab)&(好bb→~好bb)&(好bc→~好cb)}&{(好ca→~好ac)&(好cb→~好bc)&(好cc→~好cc)}〉
といふ「式」に、「等しい」。
従って、
(12)~(16)により、
(17)
②{(好aa&好aa)∨(好ab&好ba)∨(好ac&好ca)}∨{(好ba&好ab)∨(好bb&好bb)∨(好bc&好cb)}∨{(好ca&好ac)∨(好cb&好bc)∨(好cc&好cc)}
といふ「式」は、
⑤ ~〈{(好aa→~好aa)&(好ab→~好ba)&(好ac→~好ca)}&{(好ba→~好ab)&(好bb→~好bb)&(好bc→~好cb)}&{(好ca→~好ac)&(好cb→~好bc)&(好cc→~好cc)}〉
といふ「式」に、「等しい」。
然るに、
(18)
① ~∀x∀y(好xy→~好yx)
といふ「述語論理式」は、
⑤{xとy}の{変域(ドメイン)}が、
⑤{a,b,c}の{3人}であるとすると、
⑤ ~〈{(好aa→~好aa)&(好ab→~好ba)&(好ac→~好ca)}&{(好ba→~好ab)&(好bb→~好bb)&(好bc→~好cb)}&{(好ca→~好ac)&(好cb→~好bc)&(好cc→~好cc)}〉
といふ「式」に、「等しい」。
従って、
(11)(12)(18)により、
(19)
① ~∀x∀y(好xy→~好yx)
② ∃x∃y(好xy& 好yx)
に於いて、
①=② である。 といふことは、
①{xとy}の{変域(ドメイン)}が、
②{a,b,c}の{3人}であるとすると、
① ~〈{(好aa→~好aa)&(好ab→~好ba)&(好ac→~好ca)}&{(好ba→~好ab)&(好bb→~好bb)&(好bc→~好cb)}&{(好ca→~好ac)&(好cb→~好bc)&(好cc→~好cc)}〉
②{(好aa&好aa)∨(好ab&好ba)∨(好ac&好ca)}∨{(好ba&好ab)∨(好bb&好bb)∨(好bc&好cb)}∨{(好ca&好ac)∨(好cb&好bc)∨(好cc&好cc)}
に於いて、
①=② である。 といふことに、他ならない。
然るに、
(20)
②{(好aa&好aa)∨(好ab&好ba)∨(好ac&好ca)}∨{(好ba&好ab)∨(好bb&好bb)∨(好bc&好cb)}∨{(好ca&好ac)∨(好cb&好bc)∨(好cc&好cc)}
といふ「式」は、
(ⅰ)(好aa&好aa)
(ⅱ)(好ab&好ba)
(ⅲ)(好ac&好ca)
(ⅳ)(好ba&好ab)
(ⅴ)(好bb&好bb)
(ⅵ)(好bc&好cb)
(ⅶ)(好ca&好ac)
(ⅷ)(好cb&好bc)
(ⅸ)(好cc&好cc)
といふ「9通り」の内の、「少なくとも、1個(、多ければ、9個)」が「真(本当)」である。
といふことを、「意味」してゐる。
従って、
(20)により、
(21)
②{(好aa&好aa)∨(好ab&好ba)∨(好ac&好ca)}∨{(好ba&好ab)∨(好bb&好bb)∨(好bc&好cb)}∨{(好ca&好ac)∨(好cb&好bc)∨(好cc&好cc)}
が「真(本当)」である場合は、
(ⅱ)(好ab&好ba)≡(aはbが好きであり、bもaが好きである。)
(ⅳ)(好ba&好ab)≡(bはaが好きであり、aもbが好きである。
といふ「2通り」が、「真(本当)」であることが『可能』である。
従って、
(09)(19)(20)(21)
(22)
① ~∀x∀y(好xy→~好yx)
② ∃x∃y(好xy& 好yx)
に於いて、
①=② であるが故に、
① ~∀x∀y(好xy→~好yx)⇔
①{すべてのxとyについて(xがyを好きであるならば、yはxを好きではない。)}といふわけではない。
といふことは、
①{aさんが、b君に、告白した場合に、b君も、「aさんが好きである。」と言ってくれる。}といふ『可能性』がある。
といふことを、「意味」してゐる。
然るに、
(23)
私の場合は、「様相論理」のことは、「何も知らない」に等しいものの、
「大窪徳行・田畑博敏、論理学の方法、1994年、192頁」を見ると、
《形成規則》 Ⅰ 記号規則
(1)文論理の記号
(2)□(必然と読む)
Ⅲ 定義
DS2‐1 ◇α=df~□~α(◇を可能と読む)
といふ風に、書かれてゐる。
従って、
(23)により、
(24)
「様相論理」の場合は、
「αであることが、可能である。」 といふことを、
「αでないことが、必然ではない。」といふ風に、「定義」してゐる。
然るに、
(22)により、
(25)
① ~∀x∀y(好xy→~好yx)⇔
①{すべてのxとyについて(xがyを好きであるならば、yはxを好きではない。)}といふわけではない。
の場合は、
① ∀x∀y(好xy→~好yx)⇔
① すべてのxとyについて(xがyを好きであるならば、yはxを好きではない。)
に対する「否定」である。
然るに、
(26)
① すべてのxとyについて(xがyを好きであるならば、yはxを好きではない。)
といふのであれば、
①{aさんが、b君に、告白した場合に、b君も、「aさんが好きである。」と言ってくれる。}といふ『可能性』は、「0%」である。
従って、
(26)により、
(27)
① すべてのxとyについて(xがyを好きであるならば、yはxを好きではない。)
といふのであれば、『必然的』に、
① aさんが、b君に、告白した場合に、b君も、「aさんが好きである。」と言ってはくれない。
従って、
(25)(26)(27)により、
(28)
① ~∀x∀y(好xy→~好yx)
② ∃x∃y(好xy& 好yx)
に於いて、
①=② である。
といふことは、
①{aさんが、b君に、告白した場合に、b君が、「aさんを好きである。」とは、言はない。}といふことが、『必然』ではない。
②{aさんが、b君に、告白した場合に、b君も、「aさんが好きである。」と言ってくれる。}といふことは、『可能』である。
に於いて、
①=② である。
といふことに、「等しい」。
従って、
(22)~(28)により、
(29)
「様相論理」が、
「αであることが、可能である。」 といふことを、
「αでないことが、必然ではない。」といふ風に、「定義」してゐる。
といふことと、「述語論理」に於いて、
① ~∀x∀y(好xy→~好yx)
② ∃x∃y(好xy& 好yx)
に於いて、
①=② である。
といふことの間には、「同じやうな関係」が有る。
といふ風に、言へさうである。