諦めない教育原理

特別支援教育は教育の原点と聞いたことがあります。
その窓からどこまで見えるか…。

181 近未来からの風#18 OECDの提言「コンピテンシー」

2022年08月21日 | 近未来からの風
テーマ設定の山 奥秩父の雄大な尾根 遥か向こうが国師岳、その先に金峰山

「VUCA」(Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguity)(不安定,不確実,複雑,曖昧)という未来像での学校教育はどうあるべきか、各国の有識者はどう考えるのか「OECD(経済協力開発機構) Education 2030 プロジェクト」から見て行きたい。
テキストは、
白井 俊『OECD Education2030プロジェクトが描く教育の未来:エージェンシー、資質・能力とカリキュラム』ミネルヴァ書房 (2020/12/22)

参考のHP
OECDにおける Agencyに関する議論について - 文部科学省
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/142/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2019/01/28/1412759_2.pdf

序章 コンピテンシーに関する議論の展開 から

この本の冒頭に掲げるように、コンピテンシーの設定がこのプロジェクトの重要テーマの一つなのである。
そして、この聴き慣れないコンピテンシーとは、

ある職務又は状況に対し、基準に照らして効果的、あるいは卓越した業績を生む原因として関わっている個人の根源的特性

と定義づけられるという。

つまり変化の激しい近未来にむけて、根源的な力とは何かをまずは押さえようということだ。
馴染みのある言い方だと、「教育目標」だったり、「望まれる人間像」でもあるし、「重要徳目」でもあり、「人間力の構成要素」なんて言ってもいいのだうろう。

ただし、これを教育の過程で育むわけだから、

・学習可能であること
・様々な文脈における重要で複雑なニーズを満たすために役立つこと
・誰にとっても重要であること
・メタ認知など高次のスキルを含むこと
・社会的に高い価値が認められる結果につながること


と言った条件が必要だという。
そして、そのコンピテンシーをもつことで、

個人及び社会全体の2030年におけるウェルビーイング(Well-being)の推進力になる

という普遍的価値につながるというゴール設定がされる。

ウェルビーイング(Well-being)、

「個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念」(厚労省定義)

に近づいていく
そして、

伝統的に、どの国においても、教育の手段は「何を学ぶのか」と言うコンテンツを中心として形成されてきた。すなわち「どのような力がついたか」と言う結果よりも、「どのような形内容を扱うのか」と言うインプットに焦点が当てられていたと言える。

と、これまでの学校教育の傾向が反省される。「学校で習ったことの意味は、後でわかる」という言い方はこれなのだろう。

そして、プロジェクトは議論の末、次の3点のキー・コンピテンシーに到達する。

責任ある行動をとる力(Creating new value)
新たな価値を創造する力(Coping with tensions and dilemmas)
対立やジレンマに対処する力(Taking responsibility)


いかがだろう。さっと読むと簡単な感じだが、想像力と創造力を働かせ考えると、やはり含蓄のある3つのカテゴリーだと言えるのではないか。

そして、こうした議論の結果、各国でコンピテンシー重視のカリキュラム改革が進んでいるという。
以下は、ニュージーランド、シンガポール、日本のカリキュラムの構造図である。
(不鮮明で恐縮です)









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