諦めない教育原理

特別支援教育は教育の原点と聞いたことがあります。
その窓からどこまで見えるか…。

256 幸福をどうするか #08 統計の輪郭(Unicefの主旨)

2025年01月05日 | 幸福をどうするか
晩秋の日光白根山🈡 中禅寺湖の先の奥日光はここ金精峠を越えで上越側へ古道が続いています。現在はトンネルができてひっそりしています。

nicefのレポートではこれまで見てきたように、子どもたちの幸福を多層・多面的に考える新しいモデルで検証している。
今回はその総評である。
それは、このレポート(PDF)の冒頭にまとまっており、Unicefの研究機関でるイノチェンティ研究所のアナ・グロマダという方が担当され、それをフォローする形で評論家の尾木直樹さんと、東京都立大学人文社会学部教授 兼 子ども・若者貧困研究センター長の阿部 彩という方が、そのお立場からのさらに掘り下げた分析、評価をされている。
この統計調査見えることのまとめを参照しよう。

イノチェンティ レポート 16
子どもたちに影響する世界:
先進国の子どもの幸福度を形作るものは何か

https://www.unicef.or.jp/library/pdf/labo_rc16j.pdf

【解説】日本の子どもに関する結果第5章



まとめ(解説)をさらに端的にまとめるてみる。



第1の円 日本の子どもの幸福度
ここで指摘されていうのは、両極端(パラドクス)である。
身体的健康は 1 位でありながら、精神的幸福度は 37 位という最下位に近い結果である。
また、スキルは、27位で、うち「すぐに友達ができる」かとの問い答えた子どもの割合30%は世界のワースト2位だ。
このとこについて尾木直樹さんは、学力指標だけで振り分けられる競争原理に基づく一斉主義により序列化を懸念し、これが自己肯定感へつながっていないことを指摘している。一方、日本の子どもは友だちづくりにナーバスになっているのである。友だちがあることは幸福の大きな条件であるともいえる。


第2の円 子どもの世界
ここでは、日本の比較データがないが、外遊びと幸福度との相関が思いのほか強かった。
「子どものあたりまえの活動である遊びをどう位置 づけるのか、ということでもあると思います。」とあるように、学校教育の比重が高まるにつれて、またオーバーロード(学習の過重負荷)によって、子ども幸福を担保する遊びが追いやられるのは避けなければならい。

そして、いじめは急速に幸福度を下げることも万国共通であり、逆に学校への帰属意識は幸福度(生活満足度)をあげる。序列主義ではあっても学校が平和で活躍できる場が多様であること改めて確認できる。


第3の円 子どもを取り巻く世界
身近な存在はつまり家族であり、その家族は特に日本では保護者のワークライフバランスが難しく、それが子ども生活の質に影響している。また、地域に十分な遊び場があること、家に本があること幸福への要件である。


第4の円 より大きな世界
失業率、ニート率が低いのに、ワークライフバランスが難しく、子ども貧困率が低くない。
子どもの貧困は、子どもの幸福度の結果に影響するため重要。
その上、日本は、大人にとても 困った時に頼れる人の少ない国の一つである。このような社会実相は直接、間接的に子どもの幸福度に影響していると言える。




以上、キーワードを強調しながらまとめみたが、ここには世界統計の限界もある。
「日本の子ども場合」と言ったとき、いったいどの地域の、どの年齢層なのか、男女別もあるだろう。そこをもっと突き詰めるのは各国の課題である。東京都の例を示しながら阿部 彩さんは次のようにまとめているのは興味深い。

中学 2 年生において、「楽しみにしている ことがたくさんある」「生きていても仕方がないと思う」「何をしても楽しい」など答えた割合は、家庭の経済状況によっ て格差があることが報告されています。また、いじめに遭う確率も、経済状況と関係していることがわかってきました。

社交的で、たくさんの友人にいつも囲まれていない子どもが悪いということではありません。人によって は、シャイであったり、一人でいるのが好きな子もいるでしょう。しかし、どのような性格の子どもであっても、周りから偏見の目で見られることがなく、友だちをつくろうと思ったら、すぐできる、という環境があるのか、ないのか、それが問われていると思います。

親のワーク・ライフ・バランスの重要性が指摘され、指標としては、「母親・父親に認められる育児休業の週数合計」が提示されています。日本は上から5 番目ですが、多くの人がご存じのように父親の育児休業取得率はやっと 6%(平成 30 年度)です)。つまり、「認められる」 育児休業週数は多くても、実際に「取得」されているものはごく僅かです。

日本の子どもの幸福度を上げるために、必要なのは、最も幸福度が低い状況に置かれている格差の底辺にいる子どもたちとその家族の状況を改善することです。いじめに遭いやすい貧困世帯の子どもや、ワーク・ライフ・バランス など考えることもできない非正規労働の保護者、子どもを保育所に預けることもできない家庭。一番底辺の人々の状況を改善し、格差を縮小することで、「すぐに友達ができる」子ども、困った時に頼れる人がいる大人、そして、生活に満足する子ども・大人が増えるのではないでしょうか。


各論に落とし込むほど、子どもの幸福論は課題意識とともに現実論になる。

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