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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

国連「表現の自由」特別報告官が取り上げた植村隆氏問題

2016年04月28日 | 人権
  【シリーズ植村隆の闘い 第1回】 (ハーバービジネスオンライン)
 ● 尋常ならざる我が国の言論状況


 「表現、報道、編集、そうした自由は極めて確保されている」??21日の記者会見で「国境なき記者団」が発表した「報道の自由ランキング」で、日本の順位が前年の61位からさらに後退し、180か国中72位と大幅に落ちていることを指摘された菅官房長官は、いささか憮然としながらこう答えた。
 (参照「報道の自由『極めて確保』 菅氏、ランキング下落に反論」2016年4月22日『朝日新聞』)
 菅が憮然とするのは無理もないかもしれない。いかに有名とはいえ「国境なき記者団」は単なるNGO。彼らの出す勧告やランキングに何ら法的あるいは条約に基づいた拘束力はない。単なる一NGOが出す「ランキング」ごときに一喜一憂していては、国政など運営できぬだろう。菅としては「バカなことを聞くな」とでも言いたかったに違いない。
 だが、国連から「日本の表現の自由、大丈夫かね?」と疑義を呈されたとしたらどうだろう?
 19日、約一週間の調査を終え離日する国連「表現の自由」特別報告者のデビッド・ケイ氏は、ニュースリリースを発表した。
(“Preliminary observations by the United Nations Special Rapporteur on the right to freedom of opinion and expression, Mr. David Kaye at the end of his visit to Japan (12-19 April 2016)” 国連人権高等弁務官事務所サイトに掲出)
http://ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=19842&LangID=E
 一週間にわたる聞き取り調査の結果、「(日本の報道の自由を巡る懸念は)より深まった」とするケーン氏がこのニュースリリースで取り上げた問題は、放送法第4条や特定秘密保護法の改正、記者クラブの廃止、自民党改憲草案の懸念点など、かなり広範囲かつ具体的なものとなっている。
 氏の提言内容についての詳細については、他メディアの記事(例えば、「国連『表現の自由』特別報告者『懸念は深まった』記者クラブ廃止など提言【発言詳報】」 2016年04月20日『ハフィントンポスト』など)を参照いただくとして、本稿では、氏のニュースリリースの中で個人名を取り上げられた唯一のジャーナリスト、植村隆氏について注目したい。
 ● 国連までもが注目した植村氏へのハラスメント
 ケーン氏はこのニュースリリースの中で、植村さん事件を「植村氏に対するハラスメント事件」と断言する。確かにこれはケーン氏の言う通りだ。ここ数年、植村氏や氏の家族の受難は、ハラスメント以外の何物でもない。しかもケーン氏はこの事件を言及するのにほぼ一章分の分量を費やしている。
“The university to which he moved faced pressures to remove him, and outside individuals threatened him and even his daughter with violence, including sexual violence and death. ”
 この一文で出てくる” The university”とはいうまでもなく、植村氏が教壇に立っていた北星大学のこと。北星大学脅迫事件はこうして、国連人権高等弁務官事務所までもが注目する大事件となった。
 植村氏は当然のことながら、ケーン氏が「ハラスメント」と表現する数々の受難に対して黙っているわけではない。しっかりと法的な対応を取っている。その一つである櫻井よしこ氏に対する名誉毀損訴訟の第一回口頭弁論が、4月22日、札幌地裁で開かれた。
 ● 植村氏への憎悪を扇動したあるコラム
 法廷で植村氏が読み上げた意見陳述書の内容は、あまりにも凄惨で、氏と氏の家族がいかに非道な目にあわされてきたのかを物語る。
 その中から少し引用しよう(全文はこちら http://sasaerukai.blogspot.jp/2016/04/blog-post_60.html
 “脅迫状はこういう書き出しでした。
 「貴殿らは、我々の度重なる警告にも関わらず、国賊である植村隆の雇用継続を決定した。この決定は、国賊である植村隆による悪辣な捏造行為を肯定するだけでなく、南朝鮮をはじめとする反日勢力の走狗と成り果てたことを意味するものである」
 5枚に及ぶ脅迫状は、次の言葉で終わっています。

 「『国賊』植村隆の娘である○○○を必ず殺す。期限は設けない。何年かかっても殺す。何処へ逃げても殺す。地の果てまで追い詰めて殺す。絶対にコロス」”
 “娘への攻撃は脅迫だけではありません。2014年8月には、インターネットに顔写真と名前が晒されました。そして、「こいつの父親のせいでどれだけの日本人が苦労したことか。自殺するまで追い込むしかない」と書かれました。こうした書き込みを削除するため、札幌の弁護士たちが、娘の話を聞いてくれました。私には愚痴をこぼさず、明るく振舞っていた娘が、弁護士の前でぽろぽろ涙をこぼすのを見て、私は胸が張り裂ける思いでした。”
 意見陳述の時間は限られている。ここで植村氏があげた脅迫状の事例は氷山の一角に過ぎない。このほかにも、脅迫状は多数送られてきており、北星大学に入電した脅迫電話に至ってはその数倍に上るだろう。もはや尋常の沙汰ではない。
 この差別的意図を含んだ憎悪を煽ったのは、櫻井よしこ氏に他ならない。

 植村氏の意見陳述書にはこうある。
 “私は、神戸松蔭女子学院大学に教授として一度は採用されました。その大学気付で、私宛に手紙が来ました。「産経ニュース」電子版に掲載された櫻井さんの、そのコラムがプリントされたうえ、手書きで、こう書き込んでいました。
 「良心に従って説明して下さい。日本人を貶めた大罪をゆるせません」

 手紙は匿名でしたので、誰が送ってきたかわかりません。しかし、内容から見て、櫻井さんのコラムにあおられたものだと思われます。”
 かくの如き脅迫状で教授採用の人事事案を左右する神戸松蔭女子学院大学の定見のなさは別途非難しよう。しかし、まずは「このような前近代的ともいうべき尋常ならざる事態が出来しているのが現在の日本である」という事実を直視したい。
 そしてその事実こそが、ケーン氏をして「日本の報道の自由を巡る懸念はより深まった」と言わしめるものであり、「国境なき記者団」をして「報道の自由ランキング」における日本の地位を下げさせるものに他ならない。
 次回は、同じ法廷で櫻井よしこ氏が読み上げた意見陳述書の内容に触れる。

 おのずと「わが国の言論の歪さ」が浮き彫りになるであろう。

<文/菅野完(Twitter ID:@noiehoie)>

※菅野完氏の連載、「草の根保守の蠢動」が待望の書籍化。連載時原稿に加筆し、『日本会議の研究』として扶桑社新書より発売されます!
『ハーバービジネスオンライン』(2016/4/24)
http://hbol.jp/91832
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