◆ 韓国、良心的兵役拒否への有罪判決覆る
徴兵反対派は「画期的」と歓迎 (AFP通信)
【10月18日 AFP】韓国・光州(Gwangju)の控訴裁は18日、宗教上の信条を理由とした良心的兵役拒否者2人に対し下級審が下した有罪判決を覆した。同国の徴兵反対派は、画期的な判決による大きな勝利だと歓迎している。
朝鮮戦争(Korean War)の休戦以来60年以上にわたって、18~35歳の健康な韓国人男性はほぼ例外なく約2年間の兵役を義務付けられてきた。良心的兵役拒否者にとって現時点では兵役に代わる地域奉仕活動などの選択肢はなく、兵役を拒否した者は全員、最長2年の実刑が科されている。
しかし今回、光州の控訴裁は、宗教団体「エホバの証人(Jehovah's Witnesses)」の信者2人は真に宗教的信念によって兵役を拒否したとして、下級審が下した禁錮18月の有罪判決を覆した。
韓国・聯合ニュース(Yonhap News)の引用によると、控訴審判決は「宗教的良心、個人の良心は憲法で保障されており、刑事処分によって制限されてはならない」と述べている。また「国際社会は良心的兵役拒否者を認めている。わが国の社会においても、代わりとなる選択肢が必要だという合意が形成されつつある」とも述べた。
また検察側は、下級審の時点で無罪というまれな判決を受けた3人目の良心的兵役拒否者を有罪にするよう求めていたが、判事団はこれも却下した。
この3人目の良心的兵役拒否者もエホバの証人の信者だという。
韓国の控訴審が類似の裁判で、政府方針に反する判決を下したのは今回が初めて。
憲法裁判所では今後数か月以内に、良心的兵役拒否を犯罪とみなすことは個人の基本的な権利を侵犯しているとの申し立てに基づき、審判が行われる見込み。
『AFP通信(フランス通信社)』(2016年10月18日)
http://www.afpbb.com/articles/-/3104840
◆ [社説]代替服務制求める
「良心的兵役拒否」に無罪判決 (ハンギョレ新聞)
光州地方裁判所の刑事控訴3部(キム・ヨンシク裁判長)が良心による兵役拒否者3人に無罪を宣告した。
良心による兵役拒否に対する無罪判決は1審では増えていたが、控訴審でも今回初めて下された。司法府の風向きが大きく波打っているというシグナルである。
裁判所は無罪の理由を明らかにし、「国家の責任」を強調した。
被告人が兵役免除などの特典をくれというのではなく代替服務をする意向を明らかにしているのに「国家が現実的な対策である代替服務制を準備せずに入営を強要したり、入営拒否に対する責任を彼らに回してはならない」ということが裁判所の判断だ。
良心による兵役拒否は兵役法の処罰を免じる「正当な理由」ということである。
裁判所は「宗教の自由と良心の自由は憲法が保障する権利で、刑事処罰で制限されない」として「国家は少数者の権利主張に対して忍耐を要求するだけでなく関心を向けるべきである」と述べた。
良心の自由は兵役義務などを理由に侵害されたりないがしろにされてはならないという指摘だ。
裁判所の言う通り、毎年数百人ずつ機械的に処罰者を量産するのではなく「堂々と代替服務制を導入して彼らに共同体のための仕事が出来る機会」を与えることが国家の当然の責務である。
良心による兵役拒否の処罰中断と代替服務制導入の主張は、今回の裁判以前から強かった。
国連の自由権規約委員会は2006年以降、代替服務制など二者択一の立法措置を韓国に何度も勧告している。
昨年は懲役刑を宣告された良心による兵役拒否者全員を直ちに釈放することを韓国政府に勧告した。
国家人権委員会も代替服務制の導入を促す勧告を繰り返しており、憲法裁判所でさえすでに2004年に国会に代替服務制の立法検討を促した。
弁護士の80%、一般国民の70%が代替服務制に賛成しているという調査結果もある。
根本的に良心の自由をはじめとする少数者の人権は多数決に優先して保障されるべき規範的価値だ。
いかなる犯罪の予防効果も、国防力の維持などの政策的意味もなくなり、存在意義が疑問視されている処罰にこれ以上固執することはやめるべきである。
代替服務制の導入に正面から反対する人はそれほど多くないようだ。
それならば政府と国会も何年間も後回しにしてきた議論を再開すべきである。憲法裁判所と最高裁も基本権の砦という本来の役割に沿った決定に躊躇していてはならない。
韓国語原文入力:2016/10/18
原文: http://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/766262.html
訳T.W
『ハンギョレ新聞』(2016年10月18日)
http://japan.hani.co.kr/arti/opinion/25429.html
徴兵反対派は「画期的」と歓迎 (AFP通信)
【10月18日 AFP】韓国・光州(Gwangju)の控訴裁は18日、宗教上の信条を理由とした良心的兵役拒否者2人に対し下級審が下した有罪判決を覆した。同国の徴兵反対派は、画期的な判決による大きな勝利だと歓迎している。
朝鮮戦争(Korean War)の休戦以来60年以上にわたって、18~35歳の健康な韓国人男性はほぼ例外なく約2年間の兵役を義務付けられてきた。良心的兵役拒否者にとって現時点では兵役に代わる地域奉仕活動などの選択肢はなく、兵役を拒否した者は全員、最長2年の実刑が科されている。
しかし今回、光州の控訴裁は、宗教団体「エホバの証人(Jehovah's Witnesses)」の信者2人は真に宗教的信念によって兵役を拒否したとして、下級審が下した禁錮18月の有罪判決を覆した。
韓国・聯合ニュース(Yonhap News)の引用によると、控訴審判決は「宗教的良心、個人の良心は憲法で保障されており、刑事処分によって制限されてはならない」と述べている。また「国際社会は良心的兵役拒否者を認めている。わが国の社会においても、代わりとなる選択肢が必要だという合意が形成されつつある」とも述べた。
また検察側は、下級審の時点で無罪というまれな判決を受けた3人目の良心的兵役拒否者を有罪にするよう求めていたが、判事団はこれも却下した。
この3人目の良心的兵役拒否者もエホバの証人の信者だという。
韓国の控訴審が類似の裁判で、政府方針に反する判決を下したのは今回が初めて。
憲法裁判所では今後数か月以内に、良心的兵役拒否を犯罪とみなすことは個人の基本的な権利を侵犯しているとの申し立てに基づき、審判が行われる見込み。
『AFP通信(フランス通信社)』(2016年10月18日)
http://www.afpbb.com/articles/-/3104840
◆ [社説]代替服務制求める
「良心的兵役拒否」に無罪判決 (ハンギョレ新聞)
光州地方裁判所の刑事控訴3部(キム・ヨンシク裁判長)が良心による兵役拒否者3人に無罪を宣告した。
良心による兵役拒否に対する無罪判決は1審では増えていたが、控訴審でも今回初めて下された。司法府の風向きが大きく波打っているというシグナルである。
裁判所は無罪の理由を明らかにし、「国家の責任」を強調した。
被告人が兵役免除などの特典をくれというのではなく代替服務をする意向を明らかにしているのに「国家が現実的な対策である代替服務制を準備せずに入営を強要したり、入営拒否に対する責任を彼らに回してはならない」ということが裁判所の判断だ。
良心による兵役拒否は兵役法の処罰を免じる「正当な理由」ということである。
裁判所は「宗教の自由と良心の自由は憲法が保障する権利で、刑事処罰で制限されない」として「国家は少数者の権利主張に対して忍耐を要求するだけでなく関心を向けるべきである」と述べた。
良心の自由は兵役義務などを理由に侵害されたりないがしろにされてはならないという指摘だ。
裁判所の言う通り、毎年数百人ずつ機械的に処罰者を量産するのではなく「堂々と代替服務制を導入して彼らに共同体のための仕事が出来る機会」を与えることが国家の当然の責務である。
良心による兵役拒否の処罰中断と代替服務制導入の主張は、今回の裁判以前から強かった。
国連の自由権規約委員会は2006年以降、代替服務制など二者択一の立法措置を韓国に何度も勧告している。
昨年は懲役刑を宣告された良心による兵役拒否者全員を直ちに釈放することを韓国政府に勧告した。
国家人権委員会も代替服務制の導入を促す勧告を繰り返しており、憲法裁判所でさえすでに2004年に国会に代替服務制の立法検討を促した。
弁護士の80%、一般国民の70%が代替服務制に賛成しているという調査結果もある。
根本的に良心の自由をはじめとする少数者の人権は多数決に優先して保障されるべき規範的価値だ。
いかなる犯罪の予防効果も、国防力の維持などの政策的意味もなくなり、存在意義が疑問視されている処罰にこれ以上固執することはやめるべきである。
代替服務制の導入に正面から反対する人はそれほど多くないようだ。
それならば政府と国会も何年間も後回しにしてきた議論を再開すべきである。憲法裁判所と最高裁も基本権の砦という本来の役割に沿った決定に躊躇していてはならない。
韓国語原文入力:2016/10/18
原文: http://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/766262.html
訳T.W
『ハンギョレ新聞』(2016年10月18日)
http://japan.hani.co.kr/arti/opinion/25429.html
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