現場の声も聞かず、実証的な研究の裏付けもないまま、思いつきで上から押しつけられた「2学期制」が全国で頓挫している。教育における一種の「国策」であったろうか。「やったふり改革」の典型である。「国民の教育」ではなく、上から目線の「教委の教育」になっている全国の実情が露わである。
◆ 2学期制から撤退続々
授業増効果期待外れ、現場に不評
前期と後期の「2学期制」を採用した公立小中学校で、元の3学期制に戻す動きが相次いでいる。2学期制を採れば、3学期制に比べて始業式や終業式、定期テストなどの回数が減り、その分を授業に回せるメリットがあるとされてきたが、実際にはさほどの効果がなく、逆に「前期の中に長い夏休みが入るなどしてメリハリがつかない」と不評を買う結果に。一時のブームは冷めた格好だ。
1年を前期と後期に分ける2学期制では、9~10月に数日間の秋休みを置いて境目にすることが多い。
学校週5日制が完全実施された2002年ごろから、授業時数を増やそうと導入する学校が急増。文部科学省によると、導入した公立小の割合は04年度の9.4%が07年度は20.2%、公立中学校も04年度の10.4%から07年度は21.9%に増加した。ただし、右肩上がりだったのはここまで。直近の09年度の調査では小学校21.8%、中学校23.0%とわずかに増えてはいるものの、現場に目を落とすと評価する声は減っており、中止する学校が続いている。
「年間で20~30時間増やせると期待したが、実際にはその半分以下だった」。09年度から3学期制に戻した大阪府四條畷市教育委員会の担当者は言う。05年から一部で2学期制を試行した兵庫県尼崎市の中学校でも、増えた授業時数は「年10時間ほど」。市教委の担当者は「この程度なら3学期制でもやりくりでひねり出せる」という。同市は昨年11月、全校導入を見送ることを決めた。
横浜市では04年度までに約500の小中学校のほぼ全校が2学期制を導入したが、今年度、計11の小中学校が3学期制に戻した。中学校の校長の一人は「長い夏休みの前に通知表がなく、何を目標に勉強してよいのか戸惑う生徒がいた。期末テストを終えて、通知表をもらって夏休みに入るという3学期制のほうが、気持ちの区切りになる」と明かす。
徳島市教委も今春、全46の市立小中学校で05年に導入した2学期制をやめて3学期制に戻した。ここでも「けじめが付けにくい」「学習や運動に最も適した時期に秋休みを置くのはよくない」といった不満が現場や保護者から上がっていたといい、市教委が実施したアンケートでは小学校長の7割が「3学期制が良い」と答えたという。
群馬県太田市は04年度以降、全体の3割にあたる12の市立小中学校で2学期制を試行したが、09年度までに中止した。通知表の回数が年2回に減ることに対する保護者の反発が特に強かったという。学校側には教員の負担減に期待もあったが、保護者からは「年に3回あったほうが努力目標が増える」との声が上がり、一部の学校では、本来の2回の通知表に加えて夏休み前と冬休み前の2回、通知表に近い「振り返りカード」を作成。事務負担が逆に増えるという皮肉な結果になった。
学校のカリキュラムに詳しい八尾坂修・九州大学大学院教授(教育行政学)は「2学期制だと学期当たりの期間が長くなり、より継続性のあるカリキュラムを組める利点もある」と指摘する。「学習の達成状況や生活態度の連絡表を渡すなど、保護者とのコミュニケーションを密にできるのであれば進めていく価値はある」と話す。(花野雄太)
『アサヒ・コム』(2010年7月2日)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY201007020270.html
◆ 2学期制から撤退続々
授業増効果期待外れ、現場に不評
前期と後期の「2学期制」を採用した公立小中学校で、元の3学期制に戻す動きが相次いでいる。2学期制を採れば、3学期制に比べて始業式や終業式、定期テストなどの回数が減り、その分を授業に回せるメリットがあるとされてきたが、実際にはさほどの効果がなく、逆に「前期の中に長い夏休みが入るなどしてメリハリがつかない」と不評を買う結果に。一時のブームは冷めた格好だ。
1年を前期と後期に分ける2学期制では、9~10月に数日間の秋休みを置いて境目にすることが多い。
学校週5日制が完全実施された2002年ごろから、授業時数を増やそうと導入する学校が急増。文部科学省によると、導入した公立小の割合は04年度の9.4%が07年度は20.2%、公立中学校も04年度の10.4%から07年度は21.9%に増加した。ただし、右肩上がりだったのはここまで。直近の09年度の調査では小学校21.8%、中学校23.0%とわずかに増えてはいるものの、現場に目を落とすと評価する声は減っており、中止する学校が続いている。
「年間で20~30時間増やせると期待したが、実際にはその半分以下だった」。09年度から3学期制に戻した大阪府四條畷市教育委員会の担当者は言う。05年から一部で2学期制を試行した兵庫県尼崎市の中学校でも、増えた授業時数は「年10時間ほど」。市教委の担当者は「この程度なら3学期制でもやりくりでひねり出せる」という。同市は昨年11月、全校導入を見送ることを決めた。
横浜市では04年度までに約500の小中学校のほぼ全校が2学期制を導入したが、今年度、計11の小中学校が3学期制に戻した。中学校の校長の一人は「長い夏休みの前に通知表がなく、何を目標に勉強してよいのか戸惑う生徒がいた。期末テストを終えて、通知表をもらって夏休みに入るという3学期制のほうが、気持ちの区切りになる」と明かす。
徳島市教委も今春、全46の市立小中学校で05年に導入した2学期制をやめて3学期制に戻した。ここでも「けじめが付けにくい」「学習や運動に最も適した時期に秋休みを置くのはよくない」といった不満が現場や保護者から上がっていたといい、市教委が実施したアンケートでは小学校長の7割が「3学期制が良い」と答えたという。
群馬県太田市は04年度以降、全体の3割にあたる12の市立小中学校で2学期制を試行したが、09年度までに中止した。通知表の回数が年2回に減ることに対する保護者の反発が特に強かったという。学校側には教員の負担減に期待もあったが、保護者からは「年に3回あったほうが努力目標が増える」との声が上がり、一部の学校では、本来の2回の通知表に加えて夏休み前と冬休み前の2回、通知表に近い「振り返りカード」を作成。事務負担が逆に増えるという皮肉な結果になった。
学校のカリキュラムに詳しい八尾坂修・九州大学大学院教授(教育行政学)は「2学期制だと学期当たりの期間が長くなり、より継続性のあるカリキュラムを組める利点もある」と指摘する。「学習の達成状況や生活態度の連絡表を渡すなど、保護者とのコミュニケーションを密にできるのであれば進めていく価値はある」と話す。(花野雄太)
『アサヒ・コム』(2010年7月2日)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY201007020270.html
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