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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

規制緩和の日本と真逆、規制強化で景気が良くなったドイツ

2015年11月24日 | 格差社会
  =ドイツ視察報告=
 ◆ 日本と真逆 規制の強化へ
(労働情報)
山井和則 民主党衆議院議員(厚生労働委員)

 国会内外で大きな争点になってきた労働者派遣法と労働時間規制(残業代ゼロ法案)。規制緩和一辺倒の日本とは真逆の改革を進めるドイツの実情を、視察から戻ったばかりの山井議員に聞いた。(聞き手・龍井葉二)
 ◆民主など労働時間規制へ対案を準備
山井 10月4日から10日までドイツに視察に行ってきました。メインは労働者派遣法です。ドイツが行ったハルツ改革(2000年代前半に実施された一連の労働市場改革)のなかの派遣法2003年改正がどうなったか。2つめの目的は労働時間規制です。
労働者派遣は、ドイツでは見直しの動きになっていますね。

山井 ハルツ改革全体には賛否両論がありますが、「派遣期間の上限を撤廃した03年の派遣法改正は失敗だった。そう結論が出ていました。
 それが証拠に、03年に改正したものを、12年に交わされたCDU(キリスト教民主同盟)とSPD(社会民主党)の「連立合意」で、再び期間制限を設けることになった。来年の法改正で上限は18カ月になります。
 ドイツで決着がついている派遣期間の上限撤廃を、日本では“周回遅れ”で強行採決したことに改めて怒りを感じました。
ー03年改正の失敗というのは?

山井 ワーキングプアの若者が増えました。それと、「派遣法の悪用が増えた」という言い方がされていました。
 派遣は本来、一時的な仕事に対応するもの。にもかかわらず03年の改正で、ずっとある仕事なのに、「回転ドア」のように正社員を派遣労働者に替える常用代替が進んだ。まるで将来の日本のことを聞いているようでした。
-小泉時代に製造業派遣が解禁になった結果、2002年からものづくり系企業の業績が上がったのに、増えたのは派遣だけだったことを思い出します。でも、産業競争力会議などでは、「ドイツは派遣の規制を緩和してるじゃないか」という議論が盛んでしたね。
山井 問題あるなと思うのは、ドイツでは見直しが進んでいるのに、日本の厚生労働省は「把握していなかった」と逃げまくってる。情けないですよ。
ードイツでは「流れが変わった」と見ていいんでしょうか。

山井 そうです。SPD(社会民主党)だけが言ってるんじゃない。メルケル首相も、彼女が属するCDUという経営者寄りの政党も失敗を認めてるんだから。
労働時間規制の方は?

山井 今回改めて衝撃を受けたのは、5時過ぎたら職場に人がいない
 理由は3点セットです。まず①本人の意識が違う。「5時過ぎたら家庭の時間ですよ」と。次に②上司の責任。部下に残業させたら勤務評価が下がる。そして、③法律で「原則8時間、最大でも10時間」という規制がしつかりある。
 翻って日本の場合、本人だけ意識改革しても早く帰れるはずがないですよね。上司のマネジメントだけでも難しい。日本にも労働時間の上限規制とインターバル規制の法律が必要だと痛感しました。
 年間労働時間は、政府統計では、日本は1700時間で、ドイツは1400時間です。日本が300時間長い。日本はサービス残業してますから、事実上2000時間くらいになるんじゃないか。それでドイツはEUでもっとも景気がいい
 ところが日本政府は「グローバル化時代だから労働時間規制を撤廃する」と残業代ゼロ法案(労基法改正案)を国会に出した。今でも働きすぎなのに、やってることが真逆です。
-私も連合で時短をずっと担当してきました。今回明らかに違うなと思うのは、裁量労働制はどんなルーズでも、一応は裁量権を持った労働者が対象です。ところが高度プロフェッショナルには、働く時間についての裁量権がない。これは、今までの労働時間規制とは全然違うものなんですね。
山井 年収1千万円以上の高度プロフェッショナルのことを政府はPRするんですけど、私は、「本丸」は裁量労働制だと見ています。対象者ははるかに多い。法律ができたら企業は拡大解釈して、入社4年目以降のホワイトカラーがかなり入れられるでしょう。
 ドイツも裁量制を増やしている。でもドイツのは、ほんとうの裁量制なんです。「1週間40時間労働」のなかで、月曜日は10時間働く。そのかわり火曜日は6時間で帰るとか。
 ところが日本で拡大されようとしている裁量労働制は名ばかりで、上限時間の規制もない
 時短の前提は労働時間把握です。ドイツは徹底して把握しています。ところが今回の残業代ゼロ法案では、労働時間把握をしなくていいことになる。
 ということは、事実上、経営者の安全配慮義務の解除です。過労死したって、労働時間がわからなければ労災認定を受けられない。労働者が倒れた翌日に会社がパソコンを回収し、労働時間が把握できるメール、ネット情報を消去した例もありました。
 ◆ 安保法案反対と一体で
-政府案への「対案」を準備されているそうですが。

山井 労働時間の上限規制とインターバル規制の議員立法ですね。ほぼ形はできています。野党共闘で提出したいし、臨時国会が開かれなければ通常国会に出したい。
 残業代ゼロ法案と並行して審議することで、長時間労働を助長する規制緩和がいいのか、それとも労働時間を短くして労働生産性を高めるべきなのか、はっきりさせたい。
 昨年過労死防止法が制定されましたが、その理念を具体化し、実効的にするのが労働時間規制の法案です。
-私も、一昨年ドイツに行って話を聞いてきたけど、日本は人材ビジネスグループの出番が多すぎますね。
山井 労働行政が人材ビジネスに引っ張られているんですよね。厚生労働省はもっと労働者の人生を考えないと。子どもが高校や大学を出て、「派遣に就職しました」って、人生どうなるんですか。
 派遣を全否定はしませんが、ずっと派遣では人生設計が立たない。SEALDsの学生さんの話を聞いて考えさせられたのは、安保法制反対と労働規制緩和反対は表裏一体だということです。実際、人材派遣で「イラク行きませんか」という募集が始まっている。挙句の果てには経済的徴兵制になりかねません
-国会の見通しは?

山井 「臨時国会を開け」と私たち野党は求めてるんですが。仮に臨時国会はないとしても、通常国会で与党は、参議院選挙の目の前で残業代ゼロ法案を突っ込めるのか。来年7月の参議院選は、安保も大きな争点ですが、同時に労働法制改悪をストップするチャンスです。派遣法は再改正をめざしたいと思います。
『労働情報 923号』(2015/11/15)

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