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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

橋下前大阪府知事「最強」の言論術を検証する

2011年11月24日 | 日の丸・君が代関連ニュース
 【現代ビジネス】《永田町ディープスロート》から
 ◇ すり替え、詭弁、責任転嫁
 ---借金を6兆円に膨らませても「改革者」に納まった橋下前大阪府知事「最強」の言論術を検証する
[取材・文:松本創]

 橋下徹・前大阪府知事の3年9ヵ月間で、府の財政は何ら改善されていないばかりか、借金(府債残高)は過去最高の6兆円超に膨らんだ---という「改革」の実態を前回記事では示した。
 しかし、そのこと自体は驚くに当たらない。大阪府は長年、景気低迷や企業の流出による税収減に悩まされてきた。大阪経済の長期低落傾向は1970年の大阪万博からとも言われている。いくら歳出を削減しても将来の負担は増すばかりという、府が陥っている負のスパイラル状態は、1期4年にも満たない在任期間で抜け出せるほど簡単なものではなかった、という話だ。
 驚くべきはむしろ、そうした事実にもかかわらず、橋下がさも財政再建を成し遂げたかのように振る舞い、世の中にもなんとなく「実績を上げた改革者」のイメージが流布していることだ。これは、たびたび指摘されてきたようにマスメディアの責任も大きい。
 テレビのニュースショーを見れば、「橋下さん、頑張ってますね」「黒字化は大きな成果」「この勢いで日本も変えてほしい」といったコメントが溢れている。
 だが、その虚像を作り上げてきたのは何よりも、橋下自身のほとんど天才的ともいえる巧みな弁舌と論争術、さらには、話の内容よりも分かりやすく単純化したイメージのみを伝える「テレビ的言語センス」だ。
 前者は、示談交渉を専門的に取り扱った弁護士の職歴によって、後者は、過激なコメンテーターとして重宝されたテレビ出演歴によって、磨き上げられたのだろう。
 知事就任時に府庁を「破産会社」と断じて賛否を呼んだことを逆手に取り、退任時の去り際には「優良会社」と言って持ち上げる。繰り返すが、大阪府が「優良会社」に変わったと言える財政的な裏付けは何もないのに、である。あれは府職員たちを労う言葉などではなく、自分がトップとして再生させたとアピールする印象操作だったとも受け取れる。退任から10日あまり後、テレビの討論番組で、市長選を争う平松邦夫・大阪市長から6兆円も借金があって、何が優良会社なのか」と問われると、橋下はこんなふうに答えている。
 「優良会社の意味を全く誤解されている。僕が大阪府のトップになってからさまざまな改革・・・全国でいちばん公務員改革をやり、国にも権限移譲を迫り、それから大阪マラソンも御堂筋イルミネーションも、次から次と僕の発案したことを(職員たちが)実現してくれたわけです。そういうことをもって優良会社と言ったわけですね」
 財政状態を表すはずだった「会社」の比喩が、ここでは職員の働きぶりの話にすり替わり、それにも増して、自分をアピールする材料になっている。
 橋下の発言録を眺めてみると、こうした例は枚挙に暇がない。すり替え、詭弁、責任転嫁、約束の反故、強引な二元論、あり得ない比喩・・・
 これらはすべて、橋下が2003年に著した『最後に思わずYESと言わせる最強の交渉術』なる指南書で推奨している「交渉のテクニック」である。
 同書では、橋下は「相手を思い通りに動かすかけひき論、約束を反故にし、相手を言いくるめていくレトリック、自分のペースに引き込む話術のポイント、ピンチを切り抜ける切り返し術」の数々を自らの体験を披歴しながら得々と説いている。自身の口八丁ぶりには絶対の自信を持っているのである。
 橋下はどんな言葉を操り、いかに敵を"口撃"し、どのようにして自らの虚像を作ってきたのか。知事在任中の発言から検証する。
■形勢不利と見るや、すり替え、責任転嫁
 前回記事で示したように、橋下は自分の在任中に大阪府財政が悪くなったとは決して認めていない。府債残高の多さは前の知事たちのせいであり、国の責任である臨財債が増えているためだ、と主張してきた。その一方で、「大阪都」構想をぶち上げて以来、"敵"と定めた大阪市の財政については繰り返し批判している。
 (略)

■「大阪都構想」をめぐる発言の変遷
 ダブル選の重要争点とされている「大阪都」構想をめぐる議論にも、橋下式言論テクニックはいくつも潜んでいる。相手が賛成しようもない話を唐突にふっかけ、反対すれば「対案を出せ」と迫る(教育基本条例案も同じ)。府市が協議して解決すべき行政課題を指摘されても「制度を変えれば解消する」と言い張る。大阪市内24区を8~9の自治区に再編すると言いながら、具体的な区割り案は決して示さない---。
 (略)

■「信頼関係は足かせになる」という信条
 最たるものが、府市の水道事業統合協議の決裂だった。これをきっかけに、それまで良好だった平松との関係が損なわれ、橋下は都構想に向かったと見られている。経緯はこうだ。
 (略)


  冒頭に挙げた指南本の中で、この言動とまさに符合する記述がある。
 「私だって交渉でせこいことはたくさんしている。オーケーしたことは反故にしていくし、責任転嫁も徹底的にする。『今回の問題でまとまらないのは、まあ、結局はおたくのせいなんだよ』ということをあらゆる手段を講じながら見せていく」
 さらに、「交渉の足かせになる"信頼"」という項目では、こうも説いている。
 「世の多くの交渉術には、相手方との信頼関係醸成の重要性を説くものが多い。だが、実際にはそうとも言い切れない。(中略)人間性も含め、互いに認め合う親しい関係。そんな信頼関係は、交渉の足かせになることが多い
 なるほど、橋下にとっては覚書を無視し、市との信頼関係を壊すことなど、何ほどのこともなかったのかもしれない。
 平松への回答で「大阪市の信頼のなさ」をあげつらっているのは何とも皮肉な話である。自らの目的や利益のためには信頼関係など不要。そう言い切る政治家を、大阪の有権者は信じることができるだろうか。

『現代ビジネス【永田町ディープスロート】』(2011/11/22)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/27300

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