◆ 東京「日の君」五次訴訟で教員が陳述
「生徒を裏切らないために不起立」
「減給処分取消しで戒告の再処分」 (週刊新社会)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/5d/ee3b6756ecffc0dc9ffd9b7512ace81f.jpg)
7月29日の"君が代"裁判後の報告集会で発言する川村佐和さん。右端は田中聡史さん。
東京都教育委員会は、2003年の“10・23通達”発出後の周年行事・卒業式以降、校長から“君が代”起立等の職務命令を出させ、不起立教員に1回目戒告、2・3回目減給、4回目以降停職の、他県等にない(橋下徹首長就任以降の大阪を除く)重い懲戒処分を出し、被処分者は延べ484人に上る。
だが、教員らはこれまで4次の処分取消し訴訟を闘い、1次訴訟で12年1月、「減給以上の処分は原則違法」とする最高裁一部勝訴判決を勝ち取り、機械的累積加重処分システムは崩壊した。
しかし都教委はこの後も、減給等処分取消しで給与減額分を支払った現・元教員のうち、現職には戒告処分を出し直す再処分を出し続けている。これに対し15人の教員が3月31日、東京地裁に5次訴訟を提起。7月29日の第1回口頭弁論で教員2人が意見陳述した。陳述要旨は次の通り。
◆ 被処分者は年金受給後は首切り
都立高校 川村佐和さん
「思想信条に関わる問題で不服従は処分」という強制が教育現場で行われることは絶対に許せず、04年4月の入学式で不起立。この処分以降、担任外しが続いた。
13年4月、久々に担任になった時の嬉しさは忘れられず、3年間懸命に仕事をした。16年3月の卒業式での3回目の不起立は、「間違っていることにはノーと言える勇気を持つ人になろう」と伝え続けてきたことが嘘になってしまい、生徒を裏切ることはできないと思ったから。
定年後の再任用が決まった19年1月25日、校長が深刻な顔で、落合真人都教委選考課長(当時)発出の「懲戒処分歴のある教員に対する事前告知」と題するメールを読み上げた。
その内容は「年金支給開始年齢に達するまで任用するが、その後は任用更新せず、非常勤教員にも採用しない」というもの。
「再任用職員としての資質、に欠けるものあり」との記述もあり、教員としての尊厳を深く傷付けられ、校長も「ひどい。怒っていいよ」と憤っていた。
その後2年、毎年同内容の告知を校長に伝えさせる都教委の執念深さは恐ろしい。私はあと8カ月しか教員として勤務できず、経済的不安はもちろんだが、生き甲斐が奪われる辛さ、寂しさを感じている。
◆ 戒告処分で多額の賃金減額
都立特別支援学校田中聡史さん
「教員という仕事を通じ、差別のない、誰もが平和に生きられる社会を作りたい」と願う私にとって、10・23通達に基づく校長の職務命令は、耐えがたい。
“君が代”はかつての日本政府によるアジア侵略戦争や植民地支配のシンボル。日の丸に向かって起立し、“君が代”を斉唱、それらに敬意を表すという所作は私にとって、平和に生きる権利を否定し民族差別を肯定する行為だ。
私も原告となった「国歌斉唱義務不存在確認等請求訴訟(=予防訴訟)」で、「起立斉唱の職務命令は違憲・違法」と判じた06年9月の東京地裁判決を読み、起立斉唱の職務命令に従う必要はない、と確信した。
都教委は「教員が起立斉唱する姿を生徒に見せ、範を示せ」と言うが、起立斉唱し“日の君”に敬意を表す姿を生徒に見せることは、私の良心が痛む。
処分後、毎回受講させられる再発防止研修で、都教委側は不起立を“非違行為”と呼び、繰り返し“反省”を求めるのは、大変な苦痛だ。
また都教委は、処分発令前“事情聴取”と称し都庁に呼び出す。私は再発防止研修や事情聴取の際、毎回弁護士立ち合いを求めるが、認めない。
これは、66年のILO/UNESCO「教員の地位に関する勧告」に反する。
さらに都教委は現場教員の実情を顧みず、生徒の在校時間にこれらを設定するので、生徒指導に支障を来たす。
違法な減給処分取消し最高裁決定から2年弱後、昨年12月、都教委は戒告の再処分を2件発令。このため今年4月、4号昇給のはずの定期昇給を2号昇給に減らされた上、6月の勤勉手当は約17万円減額された。権力側が「懲戒処分中、最も軽い」と言う戒告処分の実態は、多額の賃金減額。減給処分と本質的な違いはない。
☆
2人の書、平松真二郎弁護士ば「君が代の時、不起立教員を教委が処分してよいとの最高裁判断」に、朝日新聞世論調査で「納得できない65%」が「で
きる31%」を大きく上回った事実を紹介。「真っ当な人権感覚を持った的確な審理」を求めた。
(教育ジャーナリスト 永野厚男)
『週刊新社会』(2021年9月7日)
「生徒を裏切らないために不起立」
「減給処分取消しで戒告の再処分」 (週刊新社会)
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7月29日の"君が代"裁判後の報告集会で発言する川村佐和さん。右端は田中聡史さん。
東京都教育委員会は、2003年の“10・23通達”発出後の周年行事・卒業式以降、校長から“君が代”起立等の職務命令を出させ、不起立教員に1回目戒告、2・3回目減給、4回目以降停職の、他県等にない(橋下徹首長就任以降の大阪を除く)重い懲戒処分を出し、被処分者は延べ484人に上る。
だが、教員らはこれまで4次の処分取消し訴訟を闘い、1次訴訟で12年1月、「減給以上の処分は原則違法」とする最高裁一部勝訴判決を勝ち取り、機械的累積加重処分システムは崩壊した。
しかし都教委はこの後も、減給等処分取消しで給与減額分を支払った現・元教員のうち、現職には戒告処分を出し直す再処分を出し続けている。これに対し15人の教員が3月31日、東京地裁に5次訴訟を提起。7月29日の第1回口頭弁論で教員2人が意見陳述した。陳述要旨は次の通り。
◆ 被処分者は年金受給後は首切り
都立高校 川村佐和さん
「思想信条に関わる問題で不服従は処分」という強制が教育現場で行われることは絶対に許せず、04年4月の入学式で不起立。この処分以降、担任外しが続いた。
13年4月、久々に担任になった時の嬉しさは忘れられず、3年間懸命に仕事をした。16年3月の卒業式での3回目の不起立は、「間違っていることにはノーと言える勇気を持つ人になろう」と伝え続けてきたことが嘘になってしまい、生徒を裏切ることはできないと思ったから。
定年後の再任用が決まった19年1月25日、校長が深刻な顔で、落合真人都教委選考課長(当時)発出の「懲戒処分歴のある教員に対する事前告知」と題するメールを読み上げた。
その内容は「年金支給開始年齢に達するまで任用するが、その後は任用更新せず、非常勤教員にも採用しない」というもの。
「再任用職員としての資質、に欠けるものあり」との記述もあり、教員としての尊厳を深く傷付けられ、校長も「ひどい。怒っていいよ」と憤っていた。
その後2年、毎年同内容の告知を校長に伝えさせる都教委の執念深さは恐ろしい。私はあと8カ月しか教員として勤務できず、経済的不安はもちろんだが、生き甲斐が奪われる辛さ、寂しさを感じている。
◆ 戒告処分で多額の賃金減額
都立特別支援学校田中聡史さん
「教員という仕事を通じ、差別のない、誰もが平和に生きられる社会を作りたい」と願う私にとって、10・23通達に基づく校長の職務命令は、耐えがたい。
“君が代”はかつての日本政府によるアジア侵略戦争や植民地支配のシンボル。日の丸に向かって起立し、“君が代”を斉唱、それらに敬意を表すという所作は私にとって、平和に生きる権利を否定し民族差別を肯定する行為だ。
私も原告となった「国歌斉唱義務不存在確認等請求訴訟(=予防訴訟)」で、「起立斉唱の職務命令は違憲・違法」と判じた06年9月の東京地裁判決を読み、起立斉唱の職務命令に従う必要はない、と確信した。
都教委は「教員が起立斉唱する姿を生徒に見せ、範を示せ」と言うが、起立斉唱し“日の君”に敬意を表す姿を生徒に見せることは、私の良心が痛む。
処分後、毎回受講させられる再発防止研修で、都教委側は不起立を“非違行為”と呼び、繰り返し“反省”を求めるのは、大変な苦痛だ。
また都教委は、処分発令前“事情聴取”と称し都庁に呼び出す。私は再発防止研修や事情聴取の際、毎回弁護士立ち合いを求めるが、認めない。
これは、66年のILO/UNESCO「教員の地位に関する勧告」に反する。
さらに都教委は現場教員の実情を顧みず、生徒の在校時間にこれらを設定するので、生徒指導に支障を来たす。
違法な減給処分取消し最高裁決定から2年弱後、昨年12月、都教委は戒告の再処分を2件発令。このため今年4月、4号昇給のはずの定期昇給を2号昇給に減らされた上、6月の勤勉手当は約17万円減額された。権力側が「懲戒処分中、最も軽い」と言う戒告処分の実態は、多額の賃金減額。減給処分と本質的な違いはない。
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2人の書、平松真二郎弁護士ば「君が代の時、不起立教員を教委が処分してよいとの最高裁判断」に、朝日新聞世論調査で「納得できない65%」が「で
きる31%」を大きく上回った事実を紹介。「真っ当な人権感覚を持った的確な審理」を求めた。
(教育ジャーナリスト 永野厚男)
『週刊新社会』(2021年9月7日)
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