『尾形修一の教員免許更新制反対日記』から
◆ 東京都の「小1クラス替え」問題
今年も残り少なくなってきて、今年書いておきたいと思った問題を書いておきたいと思う。まず、「東京の教育」をいろいろ書いているが、今年5月に東京の小学校でこんなことが起こった。
朝日新聞4.28付「5月 またクラス替え 「35人学級」法改正に対応遅れ」という記事が出た。都教委の発表は、5月2日付の「小学校1年生の35人学級編制の実施に伴う東京都公立小学校の対応について」で見ることができる。
4月15日付で「義務教育標準法」(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律)が改正され、小学校1年のみ「40人学級」から「35人学級」に上限を引き下げた。教育界長年の懸案が政権交代でようやく実現したのである。ただし、「ねじれ国会」と「東日本大震災」で成立が年度をまたいでしまった。4月に新入生が入ってくることは判っているのだから、国会の対応は全く困ったもんである。でもって、だから全国でクラス替えがあったというのならわかるのだが、実はクラス替えがあったのは東京都だけであった。
どうしてそういうことになるのか。小学1年生が学校に入ってようやく担任や同級生に慣れ始めたころに、クラス替えを行う。これが好ましいことではないと誰でもわかる。全国同じなら仕方ないが、なぜ東京の小学校だけそういうことが起こったのか。実は他の道府県では、法改正を見越してあらかじめ35人でクラス編成をしていたのである。その場合、もし法改正が実現しなかったら、クラスを多くした分の教員の人件費を都で全額負担することになる。しかし、全額負担すればいいだけではないか。オリンピックを誘致するとかいう金があるんだから出せないことはないだろう。
この問題は前史がある。義務教育教員の人件費を国庫負担する制度ができたきっかけは、「人間の壁」の佐教組事件であることは先に触れた。そのため、各都道府県で自由にクラス人数を決めては困るので、国で標準数を決めることになったわけである。当初の1958年には50人、64年に45人、80年に40人と少しずつ減ってきたが、そのまま30年間変わらなかった。しかし、2003年の法改正で地方が独自の標準を決めることが認められた。ただし、増員分は地方負担ということで。この措置を受けて、特に秋田、山形などから少人数学級が実現していった。そして、東京以外のすべての道府県で少人数学級を実施していたのである。一体、東京都の教育予算の付け方はどうなっているんだろうか。その後、2009年から東京でも少し少人数になり、今年度初めは38人だったという。
こういうう風に、もともと都教委は少人数教育に不熱心だったのだ。だから全国で35人への法改正を見越してクラス編成をしたのに、東京だけ金はあるのに「予算が」どうたらこうたら言って、小学1年生に犠牲を強いたのである。小学校は都全体で1309あるようだが、そのうち69校、75学級でクラス替えをした。また、111学級がクラス替えはしないで担任の複数配置などで対応した。(クラス増ではなく、そういう対応も可能な法改正になっている。)
実は昨年度も似たような問題が起こった。夜間定時制高校をつぶし過ぎて、行き場のない中卒者が大量に出てしまった(いずれそうなると皆思っていたのだが。)。
その時、都教委は定時制高校に臨時学級増を行い、臨時に追加募集をした。しかし、教員増は行わなかったので、現場で上級学年を合クラスしたりしたのである。とにかく、先を見越して対応を事前に練っておくということができない。それで問題が起きると、生徒と現場教員にしわ寄せする。そしてそのことを謝罪できない。
学年途中でクラス替えをしたのに、自分の問題と捉えられずに、「法律が改正されたので」の一言で済ませられると思ってる。なぜ、「生徒、保護者の皆様へ」という文章がないのだろうか。そういう都教委が「道徳教育」「奉仕」「こころの東京革命」とか語るのである。みんな、あほらし、と思うわけである。
この問題は教員の問題をシリーズで取り上げる際に書くつもりだったが、訃報を書いてたりすると越年しそうなので今日書いてしまう。なお、この「35人学級」は「学年進行」するべき問題である。つまり、来年からは小学校1、2年生が35人になるはずなのに、財政難を理由に法改正ではない対応を検討しているようだ。
それはおかしい。民主党政権の数少ない「実現した公約」の一つなんだから、きちんと対応して欲しい。なお、35人学級というと「クラスの生徒が35人」と誤解する人がいるが、そうではなく、「36人になるとクラスを分ける」という基準の数のことである。
『尾形修一の教員免許更新制反対日記』(2011年12月22日)
http://blog.goo.ne.jp/kurukuru2180/e/227a264648e31b9dca6c3fc09da97429
◆ 東京都の「小1クラス替え」問題
今年も残り少なくなってきて、今年書いておきたいと思った問題を書いておきたいと思う。まず、「東京の教育」をいろいろ書いているが、今年5月に東京の小学校でこんなことが起こった。
朝日新聞4.28付「5月 またクラス替え 「35人学級」法改正に対応遅れ」という記事が出た。都教委の発表は、5月2日付の「小学校1年生の35人学級編制の実施に伴う東京都公立小学校の対応について」で見ることができる。
4月15日付で「義務教育標準法」(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律)が改正され、小学校1年のみ「40人学級」から「35人学級」に上限を引き下げた。教育界長年の懸案が政権交代でようやく実現したのである。ただし、「ねじれ国会」と「東日本大震災」で成立が年度をまたいでしまった。4月に新入生が入ってくることは判っているのだから、国会の対応は全く困ったもんである。でもって、だから全国でクラス替えがあったというのならわかるのだが、実はクラス替えがあったのは東京都だけであった。
どうしてそういうことになるのか。小学1年生が学校に入ってようやく担任や同級生に慣れ始めたころに、クラス替えを行う。これが好ましいことではないと誰でもわかる。全国同じなら仕方ないが、なぜ東京の小学校だけそういうことが起こったのか。実は他の道府県では、法改正を見越してあらかじめ35人でクラス編成をしていたのである。その場合、もし法改正が実現しなかったら、クラスを多くした分の教員の人件費を都で全額負担することになる。しかし、全額負担すればいいだけではないか。オリンピックを誘致するとかいう金があるんだから出せないことはないだろう。
この問題は前史がある。義務教育教員の人件費を国庫負担する制度ができたきっかけは、「人間の壁」の佐教組事件であることは先に触れた。そのため、各都道府県で自由にクラス人数を決めては困るので、国で標準数を決めることになったわけである。当初の1958年には50人、64年に45人、80年に40人と少しずつ減ってきたが、そのまま30年間変わらなかった。しかし、2003年の法改正で地方が独自の標準を決めることが認められた。ただし、増員分は地方負担ということで。この措置を受けて、特に秋田、山形などから少人数学級が実現していった。そして、東京以外のすべての道府県で少人数学級を実施していたのである。一体、東京都の教育予算の付け方はどうなっているんだろうか。その後、2009年から東京でも少し少人数になり、今年度初めは38人だったという。
こういうう風に、もともと都教委は少人数教育に不熱心だったのだ。だから全国で35人への法改正を見越してクラス編成をしたのに、東京だけ金はあるのに「予算が」どうたらこうたら言って、小学1年生に犠牲を強いたのである。小学校は都全体で1309あるようだが、そのうち69校、75学級でクラス替えをした。また、111学級がクラス替えはしないで担任の複数配置などで対応した。(クラス増ではなく、そういう対応も可能な法改正になっている。)
実は昨年度も似たような問題が起こった。夜間定時制高校をつぶし過ぎて、行き場のない中卒者が大量に出てしまった(いずれそうなると皆思っていたのだが。)。
その時、都教委は定時制高校に臨時学級増を行い、臨時に追加募集をした。しかし、教員増は行わなかったので、現場で上級学年を合クラスしたりしたのである。とにかく、先を見越して対応を事前に練っておくということができない。それで問題が起きると、生徒と現場教員にしわ寄せする。そしてそのことを謝罪できない。
学年途中でクラス替えをしたのに、自分の問題と捉えられずに、「法律が改正されたので」の一言で済ませられると思ってる。なぜ、「生徒、保護者の皆様へ」という文章がないのだろうか。そういう都教委が「道徳教育」「奉仕」「こころの東京革命」とか語るのである。みんな、あほらし、と思うわけである。
この問題は教員の問題をシリーズで取り上げる際に書くつもりだったが、訃報を書いてたりすると越年しそうなので今日書いてしまう。なお、この「35人学級」は「学年進行」するべき問題である。つまり、来年からは小学校1、2年生が35人になるはずなのに、財政難を理由に法改正ではない対応を検討しているようだ。
それはおかしい。民主党政権の数少ない「実現した公約」の一つなんだから、きちんと対応して欲しい。なお、35人学級というと「クラスの生徒が35人」と誤解する人がいるが、そうではなく、「36人になるとクラスを分ける」という基準の数のことである。
『尾形修一の教員免許更新制反対日記』(2011年12月22日)
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