◆ 批判に耳を貸さない都教委のやり方をただすのが、教育委員の仕事ではありませんか?
議案は、①来年度使用都立高校用教科書の採択について、②東京都幼保連携型認定こども園の学級の編成、職員、設備及び運営の基準に関する条例の制定に関する意見について。
報告事項は、③都立高校入学者選抜学力検査の採点の誤りに係る答案の点検結果について、④都立高校入試調査・改善委員会報告書についてでした。
①について。東京新聞の今日(28日)の夕刊トップ(写真下)は、「実教『日本史』来年度も都立高ゼロ」「教育内容へ介入懸念」「都教委方針 学校側従う」「自主規制拡大の恐れ」の見出しで、非常に的確にかつ分かりやすく①について報じています。
『東京新聞』(2014/8/28【夕刊】)
都教委の介入により、国旗掲揚・国歌斉唱をめぐり「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と記述した実教出版「高校日本史A」「高校日本史B」を選定した学校は昨年に続き今年も0校。したがって、採択もゼロ。
提案する都教委事務方も、教科書採択をする教育委員の面々も、この「0」に自信を持つかのように定例会では意見は述べず、形の上では全教科、各学校の選定を尊重し、「適正かつ公正に」教科書を採択したということになりました。
実教出版の当該教科書を高校生に使わせないために都教委が行ってきた不当介入を振り返ってみましょう。
学校選定に当たり、今年6月12日の定例会で木村委員長は各教育委員に次のように確認を求めました。「今年も、当該記述に変更がないことが確認できた場合は、都教委は各都立学校長宛に、昨年の『見解』を踏まえて教科書選定をするよう、教育長名の通知を出す」と。これに対し、教育委員の誰からも質問や異論はなく、これが確認され、「見解」通知が出されました。
昨年の高校教科書採択にあたり「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」との記述について、都教委は「都教育委員会の考え方と異なるものである」から「使用することは適切でないと考える」とした「見解」を各学校に通知しました。木村委員長が12日に言った「当該記述」とは、「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」との記述を指します。
「見解」は昨年6月27日の定例会において、木村委員長が「私が指示」して「見解」にさせたと凄み、「見解」案文を金子指導部長に読み上げさせただけで、議決としました。教育委員の誰一人、発言をしないのに、「委員総意の下」「見解」を「確認した」との「見解」案文でした。傍聴していた私たちには、木村委員長の議事運営が理解できませんでした。
その後の調査でわかったことは、「見解」を議決するに当たり、昨年6月13日の定例会の後に非公開の懇談会を持ち、そこで「見解」を事実上決定したということでした。公開が原則の教育委員会を実質非公開にして決めたことは、それ自体が大きな問題。教育委員自らが教育委員会制度を否定した行為です。この事態はまた、各教育委員が自身の考えを述べないという申し合せをしたのかと思わせます。
さらにさかのぼれば、一昨年は、この教科書を選定した学校には都教委が執拗に電話を入れ、別の教科書を選定させ直したという事実があります。都教委の介入はすさまじいものです。
今日のこの議案提案の中で、「見解」通知に対する請願が出されているとの報告がありました。しかし、請願の宛先は「委員長 木村孟殿」にもかかわらず、木村委員長は「事務方でやってもらう」の一言で片づけました。都教委に反対する意見には無視を決め込んでいる定例会の運営です。また、委員の誰からも、木村委員長の発言を諌める発言はありませんでした。腐りきっています。
請願の願意は、「『見解』通知は、実教出版歴史教科書の選定排除について、偽りの理由が書いてあり、かつ説明不足のため、各校長の誤解を誘導するものとなっているので、都教委においては真の理由を書いて訂正し、説明も加えた上で、改めて訂正した『見解』通知を各都立学校長宛、送付されたい」というもの。
請願の理由として挙げられていることは、請願者らが「見解」を違憲違法として「取消」訴訟にしたところ、都教委は今年5月29日付答弁書において、「使用することは適切でないと考える」理由を、「見解」通知に記したことと異なることを書いてきた。また、「見解」通知は当該教科書を「『使用してはならない』としたものではなく、行政処分でもない」と書いてきた。それらを訂正し、改めて訂正した「見解」を通知するべきだというものです。
まっとうな指摘をした請願です。選定ゼロの事実は、当該教科書を「使用してはならない」と各校長に通知し、圧力を加えた結果であることは明白です。
②は、国の認定こども園法の改正に伴い、都の条例を制定する。その条例案を知事が都議会定例会に提案するに当たり、教育委員会に意見照会され、それに対する回答を「異議なし」としたいがどうかというもの。
③④についても東京新聞の夕刊は、「都立高採点ミス 不合格さらに4人」「最終報告12~14年、165校3054件に」の見出しで大きく報じていました。
採点ミスの件数等については一般報道にゆだね、調査・改善委員会報告書について、報告します。
〈誤りの原因と課題の考察〉については採点時間が少ないこと、採点日も授業や行事が行われており、集中して行えない環境にあること、出題形式や配転の方法・解答用紙と正答表が異なっていること等が明らかにされています。
また、誤りはないという採点者の思い込みや時間的圧力からの3回点検の形骸化をあげていますが、こうした時間的圧力は、都教委の効率を求め続けた方針の結果であり、反省すべきは都教委の姿勢そのものではないでしょうか。
〈再発防止・改善の方向と具体的改善策〉では、
①採点・点検に専念できる十分な時間と環境を確保する。具体的には、
ア.学力検査日から合格発表に前日までの日数を3日間から4日間にする。
イ.学力検査翌日と翌々日の2日間については、原則、生徒は自宅学習とする。
ウ.連続作業による集中力等の減衰を避けるため、作業50分ごとに10分の休憩を設ける。
これらのことが、まず、打ち出されています。ほかに、
②マークシート方式を導入する。
③録音による読み上げ方式による採点・点検を、答案をコピーして2系統で行うなど、採点・点検方法を抜本的に見直す。
④採点誤りを起こしにくい出題形式や解答用紙にするなどの改善。
⑤採点・点検に対する意識を高める。
をあげます。
これをもとに、都教委としての改善策を9月11日の定例会で出すということです。
10年ほど前までは採点期間が長く、生徒は自宅学習でしたが、都教委はそれを変更させたのでした。しかし、事務方の報告や教育委員の発言からは、それに対する反省は聞かれません。その反省を公開し、現場の声を十分に聴く姿勢に改めない限り、抜本的な解決にはならないと思います。指示に従わせるばかりの、都教委の教育行政に対する根本姿勢が問われているのです。
通常定例会は10時開始とされているのですが、今日の定例会は理由も告げられずに、9時開始でした。次回9月11日の定例会も9時開始を告げられました。同じく理由は告げられずに。これも、傍聴者に対し、上から目線の対応です。
『レイバーネット日本』(2014-08-30)
http://www.labornetjp.org/news/2014/0828nezu
議案は、①来年度使用都立高校用教科書の採択について、②東京都幼保連携型認定こども園の学級の編成、職員、設備及び運営の基準に関する条例の制定に関する意見について。
報告事項は、③都立高校入学者選抜学力検査の採点の誤りに係る答案の点検結果について、④都立高校入試調査・改善委員会報告書についてでした。
①について。東京新聞の今日(28日)の夕刊トップ(写真下)は、「実教『日本史』来年度も都立高ゼロ」「教育内容へ介入懸念」「都教委方針 学校側従う」「自主規制拡大の恐れ」の見出しで、非常に的確にかつ分かりやすく①について報じています。
『東京新聞』(2014/8/28【夕刊】)
都教委の介入により、国旗掲揚・国歌斉唱をめぐり「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と記述した実教出版「高校日本史A」「高校日本史B」を選定した学校は昨年に続き今年も0校。したがって、採択もゼロ。
提案する都教委事務方も、教科書採択をする教育委員の面々も、この「0」に自信を持つかのように定例会では意見は述べず、形の上では全教科、各学校の選定を尊重し、「適正かつ公正に」教科書を採択したということになりました。
実教出版の当該教科書を高校生に使わせないために都教委が行ってきた不当介入を振り返ってみましょう。
学校選定に当たり、今年6月12日の定例会で木村委員長は各教育委員に次のように確認を求めました。「今年も、当該記述に変更がないことが確認できた場合は、都教委は各都立学校長宛に、昨年の『見解』を踏まえて教科書選定をするよう、教育長名の通知を出す」と。これに対し、教育委員の誰からも質問や異論はなく、これが確認され、「見解」通知が出されました。
昨年の高校教科書採択にあたり「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」との記述について、都教委は「都教育委員会の考え方と異なるものである」から「使用することは適切でないと考える」とした「見解」を各学校に通知しました。木村委員長が12日に言った「当該記述」とは、「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」との記述を指します。
「見解」は昨年6月27日の定例会において、木村委員長が「私が指示」して「見解」にさせたと凄み、「見解」案文を金子指導部長に読み上げさせただけで、議決としました。教育委員の誰一人、発言をしないのに、「委員総意の下」「見解」を「確認した」との「見解」案文でした。傍聴していた私たちには、木村委員長の議事運営が理解できませんでした。
その後の調査でわかったことは、「見解」を議決するに当たり、昨年6月13日の定例会の後に非公開の懇談会を持ち、そこで「見解」を事実上決定したということでした。公開が原則の教育委員会を実質非公開にして決めたことは、それ自体が大きな問題。教育委員自らが教育委員会制度を否定した行為です。この事態はまた、各教育委員が自身の考えを述べないという申し合せをしたのかと思わせます。
さらにさかのぼれば、一昨年は、この教科書を選定した学校には都教委が執拗に電話を入れ、別の教科書を選定させ直したという事実があります。都教委の介入はすさまじいものです。
今日のこの議案提案の中で、「見解」通知に対する請願が出されているとの報告がありました。しかし、請願の宛先は「委員長 木村孟殿」にもかかわらず、木村委員長は「事務方でやってもらう」の一言で片づけました。都教委に反対する意見には無視を決め込んでいる定例会の運営です。また、委員の誰からも、木村委員長の発言を諌める発言はありませんでした。腐りきっています。
請願の願意は、「『見解』通知は、実教出版歴史教科書の選定排除について、偽りの理由が書いてあり、かつ説明不足のため、各校長の誤解を誘導するものとなっているので、都教委においては真の理由を書いて訂正し、説明も加えた上で、改めて訂正した『見解』通知を各都立学校長宛、送付されたい」というもの。
請願の理由として挙げられていることは、請願者らが「見解」を違憲違法として「取消」訴訟にしたところ、都教委は今年5月29日付答弁書において、「使用することは適切でないと考える」理由を、「見解」通知に記したことと異なることを書いてきた。また、「見解」通知は当該教科書を「『使用してはならない』としたものではなく、行政処分でもない」と書いてきた。それらを訂正し、改めて訂正した「見解」を通知するべきだというものです。
まっとうな指摘をした請願です。選定ゼロの事実は、当該教科書を「使用してはならない」と各校長に通知し、圧力を加えた結果であることは明白です。
②は、国の認定こども園法の改正に伴い、都の条例を制定する。その条例案を知事が都議会定例会に提案するに当たり、教育委員会に意見照会され、それに対する回答を「異議なし」としたいがどうかというもの。
③④についても東京新聞の夕刊は、「都立高採点ミス 不合格さらに4人」「最終報告12~14年、165校3054件に」の見出しで大きく報じていました。
採点ミスの件数等については一般報道にゆだね、調査・改善委員会報告書について、報告します。
〈誤りの原因と課題の考察〉については採点時間が少ないこと、採点日も授業や行事が行われており、集中して行えない環境にあること、出題形式や配転の方法・解答用紙と正答表が異なっていること等が明らかにされています。
また、誤りはないという採点者の思い込みや時間的圧力からの3回点検の形骸化をあげていますが、こうした時間的圧力は、都教委の効率を求め続けた方針の結果であり、反省すべきは都教委の姿勢そのものではないでしょうか。
〈再発防止・改善の方向と具体的改善策〉では、
①採点・点検に専念できる十分な時間と環境を確保する。具体的には、
ア.学力検査日から合格発表に前日までの日数を3日間から4日間にする。
イ.学力検査翌日と翌々日の2日間については、原則、生徒は自宅学習とする。
ウ.連続作業による集中力等の減衰を避けるため、作業50分ごとに10分の休憩を設ける。
これらのことが、まず、打ち出されています。ほかに、
②マークシート方式を導入する。
③録音による読み上げ方式による採点・点検を、答案をコピーして2系統で行うなど、採点・点検方法を抜本的に見直す。
④採点誤りを起こしにくい出題形式や解答用紙にするなどの改善。
⑤採点・点検に対する意識を高める。
をあげます。
これをもとに、都教委としての改善策を9月11日の定例会で出すということです。
10年ほど前までは採点期間が長く、生徒は自宅学習でしたが、都教委はそれを変更させたのでした。しかし、事務方の報告や教育委員の発言からは、それに対する反省は聞かれません。その反省を公開し、現場の声を十分に聴く姿勢に改めない限り、抜本的な解決にはならないと思います。指示に従わせるばかりの、都教委の教育行政に対する根本姿勢が問われているのです。
通常定例会は10時開始とされているのですが、今日の定例会は理由も告げられずに、9時開始でした。次回9月11日の定例会も9時開始を告げられました。同じく理由は告げられずに。これも、傍聴者に対し、上から目線の対応です。
『レイバーネット日本』(2014-08-30)
http://www.labornetjp.org/news/2014/0828nezu
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