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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

「教員免許更新制」は愚の骨頂だが、本当に廃止できるのか

2021年07月16日 | こども危機
  《尾形修一の紫陽花(あじさい)通信から》
 ◆ 教員免許更新制、「廃止」報道をどう考えるか-更新制廃止へ向けて①

(教員免許更新制アンケートの自由意見)

 日曜日の毎日新聞(7月11日付)が1面左肩トップで「教員免許更新制廃止へ 文科省来夏にも法改正」と報じた。前日の夜にWEB版に掲載されて、それを受けて教員免許更新制の廃止が決まったかのように論じる人もいた。毎日のサイトには「スクープ」と出ているが、この報道をどう受け取ればいいのだろうか。
 その日は新聞休刊日に当たっていて、12日朝刊は発行されない。そこで13日付で他紙が報じるかどうか注目したが、朝日新聞は第3社会面で「文科省が廃止検討 教員免許の更新制」と報じた。「廃止へ」と「廃止検討」では微妙に内容が違う。
 僕の見たところ読売や東京には報道がなかったが、推測を交えて僕の考えを書いておきたい。
 毎日新聞の記事(大久保昂記者)では「文部科学省は(中略)「教員免許更新制」を廃止する方針を固めた。政府関係者への取材で判明した。今夏にも廃止案を中央教育審議会に示し、来年の通常国会で廃止に必要な法改正を目指す。」と書かれている。
 その後で教員免許更新制の問題点が書かれているが、このブログで今までに何度も書いてきたので省略する。この記事でちょっと不思議なのは、廃止案を中教審に示すという点である。
https://blog.goo.ne.jp/kurukuru2180/e/819742f49a8e82a9b2fed398a907af9f
 ここで既に書いたように(2021.3.16 中教審、「教員免許更新制」を抜本的見直し)、文科省は中教審に「教員免許更新制の抜本的見直し」を諮問しているところだ。その議論の説明を抜きに、夏に廃止案を中教審に示すという流れが今ひとつ納得できなかった。
 朝日新聞の記事(伊藤和行記者)では「中教審では廃止論が大勢で、8月にも廃止の結論を出す見通し。これを受け、文科省は廃止を表明し、来年の通常国会で必要な法改正を目指す方向だ。」
 この記事によれば、来年に法改正を目指すという点では毎日と同じだが、現在のところ中教審では「廃止論が大勢」という段階にあることになる。
(教員免許更新制の負担感)

 中教審には、「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会が置かれ、さらにその下に教員免許更新制小委員会が設置されている。
 小委員会は4.28、5.20、7.5と3回開催された。
 また特別部会は4.22、6.28と2回開催された。
 それぞれオンラインで開催され、傍聴することも出来るが、システムが整ってないので傍聴していない。議事録は次回開催時まで公開されないので、最新の会議がどのように進行したかは知らない。上記の2つの画像にあるアンケート結果は、7月5日の小委員会で示された「令和3年度免許更新制高度化のための調査研究事業(現職教員アンケート)調査結果」である。
 つまり、形式的に言えば正式な廃止決定はされていない。そもそも「廃止」を誰が決定するかと言えば、中教審に諮問しているのだからタテマエではその議論を待つということになる。
 しかし、日本の審議会というものは行政当局と相談なしに自由闊達に議論する場ではないだろう。というか、自由に議論してもいいだろうが、他の審議会を見ても、結局は行政当局の結論を追認することが多い。
 では教育行政のトップである萩生田文科相はこの問題でどう言っているのか。小委員会後の6日の記者会見では、「講義は面白いが役には立たないというミスマッチが浮き彫りになった結果」との認識を示したという。
 また、萩生田氏は「制度に負担や不満を感じる教師が相当数いる状況を反映している。スピード感をもち制度改革を進める」と述べたと伊藤記者が書いた記事がネットにある。
 これらを考えると、文科省としてもアンケート結果などに照らしても更新制継続は難しいと考えているのだと思われる。
 教員のなり手不足は深刻な課題である。もともと少子化の進行によって、教員を目指すべき大学生の数もどんどん減少していく。
 1960年生まれの教員は60歳で定年を迎えている。今後公務員の定年が延長されるとしても、70年前後の「第二次ベビーブーム」世代の教員が退職した後に教師不足がさらに深刻化するのは間違いない。
 そう考えると、大学生の教職課程受講意欲を失わせ、一端退職した教員を中途で講師などで復帰して貰えない「教員免許更新制」は愚の骨頂だ。
 だから「スピード感を持って」改善する方向で文科省の意向がまとまったのかと毎日、朝日の報道が推測させる。ただし、僕はそれが必ず実現出来るかはまだ不透明な部分が残っていると思う。
 中教審で廃止が諮問されるというのは、つまり法制審で夫婦別姓が諮問されたというのと同じである。それから20数年、諮問は自民党内で棚ざらしになっている。
 また私立大学等「更新講習」で利益を得ている関係者が今後反対することもありうる。この廃止案は自民党文教部会で認められるのだろうか。あるいは安倍政権で長く文科相を務めた下村博文自民党政調会長は了承しているのだろうか。
 自民党内でストップが掛かる可能性を書いたのは何故か、それは次回に。

『尾形修一の紫陽花(あじさい)通信』(2021年07月13日)
https://blog.goo.ne.jp/kurukuru2180/e/0b8f3a9aed7dd222c7b0173f28ae83c2
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