◆ 軽井沢バス転落事故
大惨事招いた自公政権の「規制緩和」 (日刊ゲンダイ)
長野・軽井沢町の碓氷バイパスで、スキー客を乗せたバスが崖下に転落し、運転手2人を含む14人が死亡、26人が重軽傷を負った事故。
長野県警は15日から、自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)容疑で捜査を開始。バスを運行した「イーエスピー」(東京・羽村市)と旅行会社「キースツアー」(東京・渋谷区)を家宅捜索した。事故原因の本格究明はこれからだが、今回の事故で、“最大のナゾ”は意味不明な「ルート変更」だろう。
行程表では、上信越道の松井田妙義ICから高速に乗り、佐久ICで降りて目的地まで行く予定だった。ところが、バスは高速を使わず、松井田妙義ICから約20キロ離れた一般道の碓氷バイパスで事故に遭った。バイパスはカーブが50カ所近くあり、片勾配の多い道路だ。スピードが出やすく、ほぼ直線で運転しやすい高速道と比べて危険度が高いのは言うまでもない。
「安全で早く到着」するには高速道を使うべきなのに、一般道を利用したワケが分からない。
「高速代をケチったのではないか」なんて声もあるが、ケチったところでせいぜい数千円程度。“浮いたカネ”が運転手の懐に入るはずもなく、わざわざリスクを冒して一般道を走る必要は常識的に見てあり得ない。
国交省によると、「イーエスピー」は多くの運転手に健康診断を受けさせておらず、死亡した運転手のひとりも健康診断は行われていなかった。
となると、考えられるのは、運転手が何らかの体調不良を理由に高速走行を避けたのではないか、ということだ。つまり、バス会社が運転手の健康管理を怠った“人災”の可能性だ。
もうひとつはブレーキが利かなくなるなどの整備不良だ。
いずれにしてもバス会社の責任は免れないが、背景には自公政権が2000年に貸し切りバスを免許制から許可制に切り替える改正道路運送法の「規制緩和」を行ったことも一因だろう。
これによって、貸し切りバス事業者数は改正前の約2300社から10年間で約4400社に倍増。価格競争の激化で人件費や車両コストの過度の削減が進み、その後は死亡事故が多発した。
最近では12年5月に関越道で7人が死亡した高速ツアーバス事故が記憶に新しい。この時のバス会社「陸援隊」は運転手を日雇いで使い、勤怠管理や健康チェックを怠るなど、ずさんな管理体制が問題になったが、今回も状況は似たり寄ったりだ。交通ジャーナリストの今井亮一氏がこう言う。
「今はネットなどで安い価格のツアーバスを簡単に探せる。業者からすれば、安い価格で儲けを出そうとすれば当然、毎日運行するなど、大量に売るしかない。そのため、運転手が足りなくなっているのが現状です。運転手の“質”を確保するため、運転席にドライブレコーダーを設置したり、外部から運転状況を確認できたりする仕組みが必要かもしれません」
死亡した運転手のひとりは03年に静岡・熱海市で乗客45人が乗った観光バスを運転中に転落事故を起こし、業務上過失傷害罪で有罪判決を受けていた。今回の事故と直接関係ないだろうが、何度、悲劇を繰り返せば事故はなくなるのか。
『日刊ゲンダイ』(2016年1月16日)
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/newsx/173524
大惨事招いた自公政権の「規制緩和」 (日刊ゲンダイ)
長野・軽井沢町の碓氷バイパスで、スキー客を乗せたバスが崖下に転落し、運転手2人を含む14人が死亡、26人が重軽傷を負った事故。
長野県警は15日から、自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)容疑で捜査を開始。バスを運行した「イーエスピー」(東京・羽村市)と旅行会社「キースツアー」(東京・渋谷区)を家宅捜索した。事故原因の本格究明はこれからだが、今回の事故で、“最大のナゾ”は意味不明な「ルート変更」だろう。
行程表では、上信越道の松井田妙義ICから高速に乗り、佐久ICで降りて目的地まで行く予定だった。ところが、バスは高速を使わず、松井田妙義ICから約20キロ離れた一般道の碓氷バイパスで事故に遭った。バイパスはカーブが50カ所近くあり、片勾配の多い道路だ。スピードが出やすく、ほぼ直線で運転しやすい高速道と比べて危険度が高いのは言うまでもない。
「安全で早く到着」するには高速道を使うべきなのに、一般道を利用したワケが分からない。
「高速代をケチったのではないか」なんて声もあるが、ケチったところでせいぜい数千円程度。“浮いたカネ”が運転手の懐に入るはずもなく、わざわざリスクを冒して一般道を走る必要は常識的に見てあり得ない。
国交省によると、「イーエスピー」は多くの運転手に健康診断を受けさせておらず、死亡した運転手のひとりも健康診断は行われていなかった。
となると、考えられるのは、運転手が何らかの体調不良を理由に高速走行を避けたのではないか、ということだ。つまり、バス会社が運転手の健康管理を怠った“人災”の可能性だ。
もうひとつはブレーキが利かなくなるなどの整備不良だ。
いずれにしてもバス会社の責任は免れないが、背景には自公政権が2000年に貸し切りバスを免許制から許可制に切り替える改正道路運送法の「規制緩和」を行ったことも一因だろう。
これによって、貸し切りバス事業者数は改正前の約2300社から10年間で約4400社に倍増。価格競争の激化で人件費や車両コストの過度の削減が進み、その後は死亡事故が多発した。
最近では12年5月に関越道で7人が死亡した高速ツアーバス事故が記憶に新しい。この時のバス会社「陸援隊」は運転手を日雇いで使い、勤怠管理や健康チェックを怠るなど、ずさんな管理体制が問題になったが、今回も状況は似たり寄ったりだ。交通ジャーナリストの今井亮一氏がこう言う。
「今はネットなどで安い価格のツアーバスを簡単に探せる。業者からすれば、安い価格で儲けを出そうとすれば当然、毎日運行するなど、大量に売るしかない。そのため、運転手が足りなくなっているのが現状です。運転手の“質”を確保するため、運転席にドライブレコーダーを設置したり、外部から運転状況を確認できたりする仕組みが必要かもしれません」
死亡した運転手のひとりは03年に静岡・熱海市で乗客45人が乗った観光バスを運転中に転落事故を起こし、業務上過失傷害罪で有罪判決を受けていた。今回の事故と直接関係ないだろうが、何度、悲劇を繰り返せば事故はなくなるのか。
『日刊ゲンダイ』(2016年1月16日)
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/newsx/173524
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