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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

道徳教育が目指す方向の対極にある、特定の価値観を押し付けたりしない道徳とは

2018年01月09日 | こども危機
 ◆ 子どもの権利条約、憲法を基にした「道徳教育」であるべき (教科書ネット21ニュース)
   上林環奈(埼玉県小学校教員)


 私は、埼玉県で小学校の教員になり今年で8年目だ。1校目の職場は40代~50代が多く、ベテランから学ぶ機会が多くあった。
 しかし、3年目で異動となった。今の勤務校は2校目で、超がつくほどの小規模校だ。よって職員が補助員含め15人という少人数である。はじめの年は年下のほうだったのに、職場の平均年齢は年々若返り、20~30代が半数を占める職場になった。年が近いせいか、子ども達の話や世間話など話が弾む。ときには週末に飲みに行くこともある。
 赴任した5年前から「○○小スタンダード」があり、子ども達1人1冊のクリァファイルがあり、定期的に家庭に持ち帰っている。内容は、授業の準備(机のどこに教科書やノートを置くか)から、給食の時間(3角食べをする、10分は黙って食べる)など学校生活全般がだいぶ網羅されている。
 全国にだいぶ先駆けて作られたと思われるが、作った当時のメンバーはおらず、見直しがされていないのが現状である。
 「ジャージの着用は12月~3月」と書いてあるが、11月でも12月の気温の日もあるので、近年は守られていない
 子ども達から「なぜスタンダードにこう書いてあるんですか」という質問を受けたことがないし、「見直しましょう」という声も教員からも保護者からも出てこないことに少しもどかしさを感じつつ、形骸化している部分もあることにほっとしている自分がいる。
 私は3年前から道徳教育推進教師と道徳主任を任されている。希望はしているわけではない。ちなみに組合員であることは前校長も現校長も知っている。
 資料を使って、主人公の気持ちを追いながらねらいとする主題に迫る。初任者のときに、そのように習った。
 組合に入ってから2年が過ぎ、何度か扱ったことのある資料を読むと「おかしいな」と思うようになった。
 そこから、道徳の授業について考えるようになり、さいたま教育文化研究所の道徳部会に出席するようになった。そこで「楽しい道徳の授業をつくる会」が発足した。あまり参加できていないが、中心となっている方と連絡を取っている。
 道徳教育は、学校生活全般にわたっており、時にはある出来事や内容を取り上げて、子ども達に考えさせたり、あるいは、子ども達と一緒に考えたりするものであると私は考える。
 日々の生活の中では、様々なことがある。人と人が一緒に生活しているのだから、思いが伝わらないこともあるし、すれ違うこともある。
 どの先生もしていることだが、子ども達から出たトラブルを、子ども達に返す。また、一人の日記からクラスに向けての問題提起をすること、その子の思いを考えることもあるだろう。そこに育った環境も性格も違った子ども達一人ひとりがいて、その先生がいるからできることがあると思う。
 「子どもから出て、子どもに返す」。
 このことは、どの民間教育団体も大事にしてきたことであると思う。本当は100%、そうしたい。しかし、できないのが今の現状である。
 どうしても学習指導要領や年間指導計画などが避けて通れない壁として立ちはだかる。
 既存の資料をどうしても使わねばならない場合、どうするか。まずは、資料によりよいものを選び、差し替えることだ。
 よいものがなければ、「この資料のどこがおかしいか」という視点をもって子ども達と読んでいくことだ。
 中には、社会的な背景がおかしいものもある。必要な情報は提示して考えることも高学年ならできると思う。
 5年生に「手品師」の授業を昨年、今年と行った。本当に手品師はこれでいいのかという問いにしたところ、いいという子もいれば、よくないという子もいた。
 では、どうすればよかったと思うか考えさせた。(ここで、母が昼間子ども一人を家において働かねばならない状況のことは誰も疑問に思わなかった)
  ・置手紙をする
  ・大劇場に連れていく
  ・アシスタントを男の子にしてもらう
  ・約束の日をあさってにしてもらう
 など、子ども達なりに考えたことをそれぞれ発表した。
 出た意見は、内容項目に誘導しないでオープンエンドで終わらせた。
 「特別の教科道徳」の指導要領にも「特定の価値観を押し付けたり、主体性をもたず言われるままに行動したりすることは、道徳教育が目指す方向の対極にあるもの」と書かれている。
 資料がよくないものばかりのときは自作資料がいいが、そんな時間はない。自分が「これは」と思った絵本を題材にするといいと思う。
 『へいわってすてきだね』は小学校低学年の子ども達におすすめだ。
 平和や戦争は人権教育の中で扱えると私は思っている。なぜなら、戦争は人権を明らかに侵害しているのだからだ。子ども達は平和の明るい色彩と戦争の暗い色彩から「平和がいい」と思ったようだった。
 『わたしはひろがる』は5年生の副読本に載っていたが一部重要なところがカットされていたので、読み聞かせをした。
 多様性、人権、平和について考えることができる。

 行なってはいないが、『ともだち』『名前をうばわれたなかまたち』も素敵な絵本だ。
 『絵本で感じる憲法』という本が今年の10月に出版されている。ここにも授業づくりのヒントとなる絵本が紹介されているのではないかと思う。
 私が実践をしていく中でよりどころとしているのは日本国憲法であり、子どもの権利条約である。
 各学校で作成している道徳教育の教育計画の一番上のところには「日本国憲法」と書かれていると思う。
 その下に「教育基本法」や「学校教育法」、「学習指導要領」があるのだから、憲法をもとにした道徳教育は推進すべきであると考える。
 また、内容項目に代わる視点はさいたま教育文化研究所の提起している次の五点を大切にしたいと思う。
  ①自他の命と自由を尊ぶこと。
  ②学習と労働を大切にし、真理・真実を学ぶこと。
  ③主権者としての自覚と活動力を高めること。
  ④自然との共生をはかること。
  ⑤平和な世界を希求すること。

 ②の真理・真実を学ぶ
 例えば、偉人について学ぶとする。偉人の生き方から自分のこれからの生活に取り入れたいことを学ぶことがあるだろう。
 しかし、どんな偉人でも短所があり、そのような短所はクローズアップされにくい。個人的には番組が終わってしまったが、TV番組「しくじり先生」がよい内容だったと思う。
 ④は、自然愛護ではない。自然は美しいものだけではない。時に猛威をふるう
 自然災害。原子力発電所から出る使用済み核燃料の問題なども扱えるのではないかと思う。学習指導要領での「現代的な諸課題」になるだろう。
 「特別の教科道徳」が来年度から小学校では先行実施される。
 学校教育法34条には教科書の使用が書かれているが、その第2項には「その他の教材で有益適切なものは、これを使用できる」と書かれている。
 このあたりを手がかりに資料を差し替えてもいいのではないかと思う。
 ただ、校長や道徳推進教師の目もあるので、こっそり差し替える。

 「内容項目は」と言われたら、いくつか関連しそうな内容項目を挙げておけばよいのではないだろうか。評価もあるので、ある程度は教科書の資料を使わねばならないと予想はできる。
 教員は文科省、県、市教委から降りてくることを行なわなくてはいけない側面と子ども達の最後の砦である側面をもつ。
 自分の軸を持ってぶれることなく、したたかに実践を重ねていきたい。
 (うえばやしかんな)

『子どもと教科書全国ネット21ニュース 117号』(2017.12)

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