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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

君が代嘱託採用拒否裁判原告団・弁護団声明

2011年06月06日 | 日の丸・君が代関連ニュース
《君が代嘱託採用拒否裁判6・6最高裁第1小法廷判決に対する原告団・弁護団声明》

声 明

1 本日、最高裁第一小法廷(裁判長・白木勇裁判官)は、都立高校の教職員13名が卒業式等の国歌斉唱時に校長の職務命令に従わずに起立しなかったことのみを理由に、定年等退職後の再雇用職員としての採用を拒否された事件(東京都君が代嘱託採用拒否事件)について、教職員らの上告を棄却する不当判決を言い渡した。
 これに先立ち、5月23日には教職員らの上告受理申立てを不受理とする決定がなされており、教職員らの敗訴が確定してしまったことになる。
2 本件は、東京都教育委員会(都教委)が2003年10月23日付けで全都立学校の校長らに通達を発し(10.23通達)、卒業式等において国歌斉唱時に教職員らが国旗に向かって起立し、国歌を斉唱することを徹底するよう命じ、これに従わないものを処分するとして、「日の丸・君が代」の強制を進める中で起きた事件である。
 上告人らは、それぞれが個人としての歴史観・人生観や、長年の教師としての教育観に基づいて、過去に軍国主義思想の精神的支柱として用いられてきた歴史を背負う「日の丸・君が代」自体が受け入れがたいという思い、あるいは、学校行事における「日の丸・君が代」の強制は許されないという思いを強く持っており、そうした自らの思想・良心から、校長の職務命令には従うことができなかった。
 ところが、都教委は、定年等退職後に再雇用職員として引き続き教壇に立っことを希望した上告人らに対し、卒業式等で校長の職務命令に従わず、国歌斉唱時に起立しなかったことのみを理由に(この点は地裁・高裁判決で認められている)、「勤務成績不良」であるとして、再雇用を拒否したのである
3 2008年2月7日の*東京地裁判決は、本件再雇用拒否が、国歌斉唱時に起立斉唱しないという行為を極端に過大視しており、都教委の裁量権を逸脱・濫用した違法なものであるとして、東京都に対し約2750万円の損害賠償を命じた
 しかし、2010年1月28日の*東京高裁判決は、1審判決を取り消し、一審原告らの請求を棄却した
 そして、今回の最高裁判決は、東京高裁判決に対する上告人らの上告を棄却したものである。
4 今回の最高裁判決は、国歌斉唱時の起立斉唱を命じる校長の職務命令が憲法19条に違反するかという問題について、起立斉唱行為が国旗・国歌に対する敬意の表明の要素を含む行為であること、個人の思想良心の自由についての間接的な制約となることを認めた。
 この点は、ピアノ事件最高裁判決と比較して、より思想良心の自由の重要性に配慮した判断であるといえる。
 しかし、本判決は、本件職務命令が、卒業式における*「慣例上の儀礼的な所作」として起立斉唱を求めるものに過ぎない一方、公務員の地位の性質や職務の公共性を踏まえた上で、教育上の行事にふさわしい秩序の確保と式典の円滑な進行を図るものであり、制約を許容し得る程度の「必要性・合理性」が認められるとして、本件職務命令が憲法19条に違反しない、と判断してしまった。
 教師全員に一律に職務命令を発令し、従わない場合に懲戒処分や再雇用の拒否まで徹底して行うという都教委の行き過ぎた施策の異常性は、判決文からはうかがえない。
 最高裁は、かかる教育行政の暴走にあえて目をつぶり、問題を矮小化した上で、合憲との判断を導いたものと言わざるを得ない
5 わたしたちは、このような最高裁の不当な判決に対し、失望と憤りを禁じ得ない。
 2007年2月27日のピアノ事件最高裁判決が教職員に対する国歌斉唱時のピアノ伴奏命令について憲法19条違反としなかったことが、その後の下級審裁判所に与えた影響は非常に重かった。同判決や今回の判決において、最高裁が憲法の番人としての役割を放棄していることが、社会に与える影響の大きさには慄然とせざるを得ない
 大阪府では、橋下徹府知事と「大阪維新の会」府議団によって、卒業式等の国歌斉唱時に公立学校の教職員に起立・斉唱を義務付ける条例や教職員の処分基準を示す条例の制定が進められているが、このような動きも、最高裁が憲法の人権保障規定を「絵に描いた餅」にしてしまっていることと無関係ではない
6 ただ、本日の最高裁判決に付された反対意見においては、教育現場で行き過ぎた「日の丸・君が代」の強制が行われていることについて、強い警鐘が鳴らされている。
 宮川裁判官の反対意見は、1023通達の意図が、教職員の歴史観や教育者としての信念に対する否定的評価を背景に、不利益処分をもってその信念に反する行為を強制しようとするところにあると明確に認めた。その上で、同意見は、精神的自由権に関する問題を、多数者の視点のみから考えることは相当ではないとし、上告人らが起立斉唱しないという行動は、上告人らの思想良心の核心の表出であるか、少なくともこれと密接に関連しているとした。
 そして、本件職務命令の合憲性の判断に関しては、いわゆる「厳格な基準」によって審査するべきで、原判決を破棄・差し戻しするべきであるとした。
7 最高裁には、本件以外にも、多数の10.23通達関連の訴訟が係属している。
 2011年3月10日に、国歌斉唱時に職務命令に反して起立しなかったことを理由とする懲戒処分は裁量権の濫用であるとして、166名に対する戒告処分、1名に対する減給処分を取り消した東京高裁判決が言い渡されており、同事件も近く最高裁での審理が始まるところである。
 先の反対意見の存在等から、最高裁が、今後、都の教育行政の行き過ぎに対して歯止めをかける判断を示す可能性も十分あると思われ、わたしたちはなお諦めず、教育現場に自由を取り戻すべく、努力していきたいと考えている。
8 教師が教育行政からの命令で強制的に国旗に向かって立たされ、国歌を歌わされ、自らの思想良心も守れないとき、生徒たちにも国旗や国歌が強制される危険がある。
 本判決は、起立斉唱命令が思想良心の自由を間接的であっても制約することを認め、金築裁判官の補足意見が指摘するように、生徒に対して不利益処分をもって強制することは許されないという歯止めをしたものと言える。
 都下の教育現場で続いている異常事態に、皆様の関心を引き続きお寄せいただき、教育に自由の風を取り戻すための努力に、皆様のご支援をぜひともいただきたい。
 2011年6月6日
東京都君が代嘱託採用拒否事件原告団・弁護団

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