=都の情報公開制度= (東京新聞【日々論々】)
◆ 態勢強化で運用改善を
小池百合子都知事が「改革の一丁目一番地は情報公開」とスローガンを掲げる東京都で、昨年四月、情報公開の担当職員が二人減った。
定員は約二十人だから一割の戦力ダウン。情報公開請求は増加傾向なのに、だ。
都幹部からは、二〇二〇年東京五輪・パラリンピックの準備に職員を回すために減らされたのでは、との観測も聞こえる。
「五輪のような一過性のイベントより、情報公開の方が大事だと思うが…。五輪が終わるまで、職員を増やしてとは言いにくい」
人手は減って作業が減らないなら、効率をアップするしかない。
そこで昨年、都の情報公開担当者は弁護士や大学教授らでつくる「都情報公開審査会」に審査の簡賂化を提案した。
審査会は都の非開示決定などが妥当か調べ、議事録作成などは都の担当者の仕事になる。
その審査会で、都側が非開示理由などを口頭で説明する「意見陳述」を原則、なくそうとしたのだ。
これには先例があった。都の非開示決定などに不服のある情報公開の請求者が、審査会で口頭で意見を言う機会を、原則としてなくしていたのだ。
「自分の考えを長時間話す人がいる。審査を迅速化するため、なくしたらどうか」と都が数年前に提案、審査会が了承したという。
実際に〇九年度以降、請求者側の意見陳述は行われなくなった。
ところが、都はこのことを公表してこなかった。
そして、都側の意見陳述もなくそうという昨年の提案も非公表のまま行われ、審査会に了承されたという。
しかし、審査会の議事要旨にはその記述がない。
情報公開の担当部局が、事実上の制度変更を分かるようにしていないとは、何ともお粗末だ。
また都情報公開条例には、審査会が「口頭で意見を述べる機会を与えることが出来る」などと書かれたまま。現在の運用は条例に反しているようにも見える。
都は「意見陳述なしというのは原則だが、絶対にやらないわけではない。条例違反ではない」と分かったような分からないような説明をする。
何でも、都側の意見陳述は昨年、原則としてなくすと決めた後も数件やったらしい。
ただ、何件実施したかは、昨年も、それ以前も数えておらず、すぐに答えられないという。
件数が分からないなら、意見陳述をなくすことがどれくらい審査の効率アップにつながるのか、はっきりしないのではないか。
小池知事は二月八日の記者会見で「今後、口頭意見陳述ができることも含め、ホームページで分かりやすく案内するなど、丁寧に対応したい」と改善に前向きな姿勢を見せた。
意見陳述を省こうとした背景にある人員不足についても「改めて確認してみたい」と述べている。
この言葉どおり、小池知事には情報公開の現場をより深く知ってもらい、態勢強化につなげてほしい。二〇二〇年東京大会が終わるのを待つまでもなく。
『東京新聞』(2019年2月25日【視点】)
◆ 態勢強化で運用改善を
社会部・梅野光春
小池百合子都知事が「改革の一丁目一番地は情報公開」とスローガンを掲げる東京都で、昨年四月、情報公開の担当職員が二人減った。
定員は約二十人だから一割の戦力ダウン。情報公開請求は増加傾向なのに、だ。
都幹部からは、二〇二〇年東京五輪・パラリンピックの準備に職員を回すために減らされたのでは、との観測も聞こえる。
「五輪のような一過性のイベントより、情報公開の方が大事だと思うが…。五輪が終わるまで、職員を増やしてとは言いにくい」
人手は減って作業が減らないなら、効率をアップするしかない。
そこで昨年、都の情報公開担当者は弁護士や大学教授らでつくる「都情報公開審査会」に審査の簡賂化を提案した。
審査会は都の非開示決定などが妥当か調べ、議事録作成などは都の担当者の仕事になる。
その審査会で、都側が非開示理由などを口頭で説明する「意見陳述」を原則、なくそうとしたのだ。
これには先例があった。都の非開示決定などに不服のある情報公開の請求者が、審査会で口頭で意見を言う機会を、原則としてなくしていたのだ。
「自分の考えを長時間話す人がいる。審査を迅速化するため、なくしたらどうか」と都が数年前に提案、審査会が了承したという。
実際に〇九年度以降、請求者側の意見陳述は行われなくなった。
ところが、都はこのことを公表してこなかった。
そして、都側の意見陳述もなくそうという昨年の提案も非公表のまま行われ、審査会に了承されたという。
しかし、審査会の議事要旨にはその記述がない。
情報公開の担当部局が、事実上の制度変更を分かるようにしていないとは、何ともお粗末だ。
また都情報公開条例には、審査会が「口頭で意見を述べる機会を与えることが出来る」などと書かれたまま。現在の運用は条例に反しているようにも見える。
都は「意見陳述なしというのは原則だが、絶対にやらないわけではない。条例違反ではない」と分かったような分からないような説明をする。
何でも、都側の意見陳述は昨年、原則としてなくすと決めた後も数件やったらしい。
ただ、何件実施したかは、昨年も、それ以前も数えておらず、すぐに答えられないという。
件数が分からないなら、意見陳述をなくすことがどれくらい審査の効率アップにつながるのか、はっきりしないのではないか。
小池知事は二月八日の記者会見で「今後、口頭意見陳述ができることも含め、ホームページで分かりやすく案内するなど、丁寧に対応したい」と改善に前向きな姿勢を見せた。
意見陳述を省こうとした背景にある人員不足についても「改めて確認してみたい」と述べている。
この言葉どおり、小池知事には情報公開の現場をより深く知ってもらい、態勢強化につなげてほしい。二〇二〇年東京大会が終わるのを待つまでもなく。
『東京新聞』(2019年2月25日【視点】)
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