◎ 権限強化と評価で統制
公教育はそのまちに住む人々の考えに沿って行なうのが基本だ。これを「教育の地方自治」と言う。
ところが、文科省は公教育の最終的責任は国が負わなければならないと述べて、その責任に見合う権限を要求している。
その一つは、地方自治法では地方公共団体の公教育に関する是正指示権を例外的にしか認めていないが、改正案ではその権限を拡大し、教育委員会に対する文科省の管理統制を強化しようとしていることだ。
是正指示権が文科大臣に与えられただけで、教育委員会に対する文科省の無言の圧力は大きくなる。「われに伝家の宝刀を与えよ」と、文科大臣自ら要求しているのである。
もう一つは、学校法改正案で学校評価制度を導入するのと同様、教育委員会にも自己点検・評価と、議会への提出と公表を義務づけようとしていることだ。点検・評価の基準と方法は早晩文科省が作成し、各市町村に受け入れさせるだろう。
教育委員会がしっかりと働いているか否かは、そのまちの住民と教育委員会との間で問われるべき問題だ。文科省が割り込んで評価を押し付けたり、あれこれ指示したりするとなれば、横恋慕の揚げ句のストーキングと変わらないではないか。
さらに大学以外の私立学校に関しては、都道府県知事が学校法人の設立や私立学校設置を認可する権限をもつ。しかし、教育課程などに立ち人ることはなく、私立学校の自治に委ねられてきた。
ところが、改正案には、その領域にまで知事の権限がおよぶようにする意図も見られる。
未履修問題やいじめへの対応のまずさを捉えて、学校・教員への不信感を煽り、本来、国民の自主的・主体的な取り組みに委ねるべき教育の世界に、権力を笠に着て政治が介入しようとしているのである。
学校教育とその管理運営に関して、少なくとも公的には抑制されてきた利己的欲望を解禁して国民同士の排他的競争を制度化するとともに、それによって国民を自縄自縛に追い込み、政府による目標管理への同意と従属を確保する、これが教育三法案のねらいだろう。
これを許せば学校選択制の下で公教育への期待を表現するルートが狭められているように、国民の公教育への願いや期待が排他的競争制度にからめ取られ、主権者の権利や基本的人権が切り刻まれていくだろう。ここからは憲法改正で生み出される荒涼たる社会の姿さえ見えてくる。
なかじまてつひこ・名占屋大学大学院教授(教育行政学)。
『週刊金曜日』2007/5/18(654号)2007年子どもを救え
★(学校教育法・地方教育行政の組織及び運営に関する法律について)
★質問(12)学校教育法の改定の内容としてはどのようなものを考えているのですか。副校長、主幹、指導教諭を置くとなっていますが、副校長の権限強化や主幹制度まで考えているのですか。主幹制度による上意F達の学校システムは教育になじむものではありません。先行した東京では運用実態に大きな問題点が生じています。それらを十分精査したのですか。
▲答え(生方初等中等教育局?課係長) 中教審の答申を受けて、「副校長、主幹、指導教諭を置くことができる(=任意設置)」とする。それ故、各自治体の判断で教頭と副校長を置いてもよい。中教審初等中等教育分科会で検討し、その際東京都のケースも検討した。
★関連質問 そのような縦割りシステムがどうして必要なのか。教育現場には上意下達はなじまいとは考えないか。
▲答え 現存のままでいいところはいいが、必要なところは置けばよい。判断は各自治体に任せる。国の方がこうだと押しつけるのは今の時代に即さない。
★関連質問 教頭は必置である。副校長と教頭の関連はどうなるのか。
▲答え 併存配置も含めて自治体の判断による。
★関連質問教頭は教頭職として給与体系がります。副校長の給与体系はどうなるのか。
▲答え 各都道府県の判断で新たな俸給表をつくる。
★質問(13)地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改定の内容としてはどのようなものを考えているのですか。教育再生会議は教育委員会に対する国の監督権限の強化を提言していますが、戦後の教育の大前提である地方分権にも反し、改正教育基本法の趣旨にも反するものと考えられますが、どうですか。
▲答え(降旗初等中等教育局教育企画課係長) 3/10に中教審の答申が出て希求・必要とされる教育制度、すなわち地方教育行政法の改正を行う。たくさんあるが地方への国の関与については①是正要求できるよう指示すべき②一般的な行政ルールでできるが、一般的であるが故にできない。教育の場合のみ、しかも限定した条件の中で特化してできるようにするという意見が出されている。地方分権に配慮しながら考えたい。安倍首相から直接文科大臣に指示があったこともあり、今どういう法律にするか検討中である。
(3/13文部科学省交渉 都教委包囲首都圏ネットワーク)
公教育はそのまちに住む人々の考えに沿って行なうのが基本だ。これを「教育の地方自治」と言う。
ところが、文科省は公教育の最終的責任は国が負わなければならないと述べて、その責任に見合う権限を要求している。
その一つは、地方自治法では地方公共団体の公教育に関する是正指示権を例外的にしか認めていないが、改正案ではその権限を拡大し、教育委員会に対する文科省の管理統制を強化しようとしていることだ。
是正指示権が文科大臣に与えられただけで、教育委員会に対する文科省の無言の圧力は大きくなる。「われに伝家の宝刀を与えよ」と、文科大臣自ら要求しているのである。
もう一つは、学校法改正案で学校評価制度を導入するのと同様、教育委員会にも自己点検・評価と、議会への提出と公表を義務づけようとしていることだ。点検・評価の基準と方法は早晩文科省が作成し、各市町村に受け入れさせるだろう。
教育委員会がしっかりと働いているか否かは、そのまちの住民と教育委員会との間で問われるべき問題だ。文科省が割り込んで評価を押し付けたり、あれこれ指示したりするとなれば、横恋慕の揚げ句のストーキングと変わらないではないか。
さらに大学以外の私立学校に関しては、都道府県知事が学校法人の設立や私立学校設置を認可する権限をもつ。しかし、教育課程などに立ち人ることはなく、私立学校の自治に委ねられてきた。
ところが、改正案には、その領域にまで知事の権限がおよぶようにする意図も見られる。
未履修問題やいじめへの対応のまずさを捉えて、学校・教員への不信感を煽り、本来、国民の自主的・主体的な取り組みに委ねるべき教育の世界に、権力を笠に着て政治が介入しようとしているのである。
学校教育とその管理運営に関して、少なくとも公的には抑制されてきた利己的欲望を解禁して国民同士の排他的競争を制度化するとともに、それによって国民を自縄自縛に追い込み、政府による目標管理への同意と従属を確保する、これが教育三法案のねらいだろう。
これを許せば学校選択制の下で公教育への期待を表現するルートが狭められているように、国民の公教育への願いや期待が排他的競争制度にからめ取られ、主権者の権利や基本的人権が切り刻まれていくだろう。ここからは憲法改正で生み出される荒涼たる社会の姿さえ見えてくる。
なかじまてつひこ・名占屋大学大学院教授(教育行政学)。
『週刊金曜日』2007/5/18(654号)2007年子どもを救え
★(学校教育法・地方教育行政の組織及び運営に関する法律について)
★質問(12)学校教育法の改定の内容としてはどのようなものを考えているのですか。副校長、主幹、指導教諭を置くとなっていますが、副校長の権限強化や主幹制度まで考えているのですか。主幹制度による上意F達の学校システムは教育になじむものではありません。先行した東京では運用実態に大きな問題点が生じています。それらを十分精査したのですか。
▲答え(生方初等中等教育局?課係長) 中教審の答申を受けて、「副校長、主幹、指導教諭を置くことができる(=任意設置)」とする。それ故、各自治体の判断で教頭と副校長を置いてもよい。中教審初等中等教育分科会で検討し、その際東京都のケースも検討した。
★関連質問 そのような縦割りシステムがどうして必要なのか。教育現場には上意下達はなじまいとは考えないか。
▲答え 現存のままでいいところはいいが、必要なところは置けばよい。判断は各自治体に任せる。国の方がこうだと押しつけるのは今の時代に即さない。
★関連質問 教頭は必置である。副校長と教頭の関連はどうなるのか。
▲答え 併存配置も含めて自治体の判断による。
★関連質問教頭は教頭職として給与体系がります。副校長の給与体系はどうなるのか。
▲答え 各都道府県の判断で新たな俸給表をつくる。
★質問(13)地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改定の内容としてはどのようなものを考えているのですか。教育再生会議は教育委員会に対する国の監督権限の強化を提言していますが、戦後の教育の大前提である地方分権にも反し、改正教育基本法の趣旨にも反するものと考えられますが、どうですか。
▲答え(降旗初等中等教育局教育企画課係長) 3/10に中教審の答申が出て希求・必要とされる教育制度、すなわち地方教育行政法の改正を行う。たくさんあるが地方への国の関与については①是正要求できるよう指示すべき②一般的な行政ルールでできるが、一般的であるが故にできない。教育の場合のみ、しかも限定した条件の中で特化してできるようにするという意見が出されている。地方分権に配慮しながら考えたい。安倍首相から直接文科大臣に指示があったこともあり、今どういう法律にするか検討中である。
(3/13文部科学省交渉 都教委包囲首都圏ネットワーク)
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