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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

都立高入試の「男女別定員」廃止に反対するアピール

2021年12月24日 | 暴走する都教委
 ◎ 都立高校の「男女別定員」の拙速な廃止ではなく、多角的な検討を求めます
都教委は「廃止」方針を保留し、「緩和策」実施の検証に基づく結論を


 東京都教育委員会(都教委)は9月24日の定例会で、都立高校全日制普通科(単位制・コース制を除く)の男女別定員制について段階的に廃止していく方針を明らかにしました。
 第一段階として現在42校で行われている「緩和策」(定数の1割で「男女合同選抜」を実施)を全校に拡大し、その後第二段階(「緩和策」を定数の2割に拡大)、第三段階(男女別定員を廃止)と進むというものであり、第二段階以降の時期は未定とされています。
 報道や様々な運動では入試合格ラインの男女格差にスポットがあてられ、都教委の方針でもこの点について詳細なシミュレーションが行われ、「段階的廃止」の根拠とされました。
 「男女格差」は重要な問題であり、是正が検討されることは当然です。
 しかし「男女別定員」は、都立高校のあり方に関わる様々な問題を含んでおり、歴史的経緯を含めて多角的に検討されなければなりません。
 主な観点として
   ①入試結果に表れた「男女格差」の問題、
   ②中卒者の高校受け入れの問題、
   ③男女共学のあり方の問題の三点があり、
 ②③の観点が積み残され、事実上①のみで提案された今回の都教委方針は、あまりに拙速でありこれらの観点を踏まえた多角的な検討が、生徒も含めた中高、公私などの学校現場、都民、教育関係者によってなされなければなりません。
 ①入試結果に表れた「男女格差」の問題

 問題をかつての東京医大入試における文字通りの女子差別男子優遇のケースと同一視する議論がありますが、本質を大きく異にするものです。
 都立高校「男女別定員」は性差別を意図する制度ではなく、合格ラインの「格差」は、入試実施の結果として生じたものであり、かつては現在とは逆の「格差」が存在し、今日でも男子の合格ラインが高い学校も一定数存在しています。
 また、募集人数の男女比は都内公立中学校の男女在籍比に対応するものです。

 ②中卒者の高校受け入れの問題

 近年都内公立中学の三年生の数は男子が3000人程度多いのに対し、都立全日制普通科の受け入れは男子が500~700人程度多く、私立高校は年度によって変動しているというのが現状です。
 都教委のシミュレーションによれば、「合同選抜」完成時には都立全日制普通科の受け入れは女子が男子よりも800人多くなるとされており、私学との関係も含め、このまま移行すれば“男子が多く行き先を失う”事態となります。
 2022年度就学計画で計画進学率は95%から94%に引き下げられました。行き先を失う生徒をつくらないよう、都教委は公教育を預かる行政としての責務を果たさなければなりません。
 ③男女共学のあり方の問題

 戦後教育の理念の柱の一つであった「男女共学」を実態として保障するために、都立全日制普通科は男女定数を定め同数(都内公立中学の男女比で調整)化を進めてきました。
 男女が学校生活を通じて互いの理解を深め、個人の尊厳と両性の平等を尊重する教育のために、男女比が大きく隔たらない学習環境が必要という立場に立つものであり、ジェンダー平等の理念とも合致するものです。
 戦前からの旧制中学(男子校)旧制高女(女子校)から今日の男女共学の形にするのに50年以上かかりました。
 「男女共学」のあり方に関わる議論を欠いたまま、入試の仕組みの議論だけで元に戻すことがあってはなりません。
 「合同選抜移行」はクラス編成・施設・カリキュラム等々の当座の問題のみならず、「男女合同募集」でありながら「男子校」「女子校」を生み出してきた他県の例も踏まえ、慎重な検討が必要です。
 私たちはこれらの問題点を踏まえ、「はじめに廃止ありき」ではなく、「男女別定数廃止」「合同選抜移行」をいったん保留し、第一段階(第二段階)の緩和策拡大の実施結果を多角的に検証し、論議を広げて結論を得ることを強く求めます。
2021年ll月30日


 【呼びかけ人】
   青木茂雄(元都立高校教員)柿沼昌芳(東京都高等学校教育研究会顧問)
   河合美喜夫(元都立高校教員)菅晴子(元都立高校教員)児玉洋介(元東京都公立中学校教員)
   杉浦孝雄(元都立高校教員)鈴木敏夫(元都立高校教員)棚橋昌代(元都立高校教員)
   津田幸介(現都立高校教員)簗田陽子(元都立高校教員)山野井高男(元都立高校校長)
   綿貫公平(元東京都公立中学校教員)渡部謙一(元都立高校校長)
連絡先 杉浦孝雄(O9O-9800-0615 takao-sugi@jcom.home.ne.jp)

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