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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

国連自由権規約『一般的意見34最終版』に「旗とシンボル」の例示

2011年10月03日 | 人権
  =国連自由権規約19条「表現の自由」=
 ◎ 『一般的意見34最終版』に「旗とシンボル」の例示追加


 自由権規約19条(意見と表現の自由)に関する「一般的意見34」の最終版が確定した(2011.7.21採択)。そのそのパラグラフ38には、「disrespect for flags and symbols(旗やシンボルに敬意を払わないこと)」の文言が加わっている。旗やシンボルに敬意を払わないからということを理由に、人権を制約することは許されないというのだ。
 「国旗国歌」への敬意表明は万国共通の問題とは言っても、今、世界中で敬意の強制が社会問題化している国は日本の他にあるだろうか。そう考えると、これはわが国の「日の丸・君が代」強制を念頭に置いた項目と言えるのではないか。そうでないとしても、橋下大阪府知事も最高裁判所裁判官も、この人権の世界標準に目を凝らして正確にその意味を受けとめ決まりに従うべきであろう。

(新)38. As noted earlier in paragraphs 13 and 20, concerning the content of political discourse, the Committee has observed that in circumstances of public debate concerning public figures in the political domain and public institutions, the value placed by the Covenant upon uninhibited expression is particularly high.
Thus, the mere fact that forms of expression are considered to be insulting to a public figure is not sufficient to justify the imposition of penalties, albeit public figures may also benefit from the provisions of the Covenant. Moreover, all public figures, including those exercising the highest political authority such as heads of state and government, are legitimately subject to criticism and political opposition. Accordingly, the Committee expresses concern regarding laws on such matters as, lese majeste, desacato, disrespect for authority, *disrespect for flags and symbols, defamation of the head of state and the protection of the honour of public officials, and laws should not provide for more severe penalties solely on the basis of the identity of the person that may have been impugned. States parties should not prohibit criticism of institutions, such as the army or the administration.
(新)38.上記パラ13および20で述べたように、政治的言説の内容に関して、委員会は、政治的領域および公的機関の公人に関する国民的議論においては、規約が自由な表現に対して特に高い価値を認めていることに留意してきた。 したがって、表現の形態がある公人に対して侮辱的とみなされるという事実だけで、刑罰を科すことが十分に正当化されるわけではない。たとえ、公人もまた、規約の規定から恩恵を受けることのできる存在であるとしても。 さらに、国家元首や政府の最高責任者等の最高政治権力の行使者をはじめ、すべての公人は、合法的に、批判および政治的反対の対象になる。 したがって、委員会は、不敬罪lese majeste、侮辱罪desacato、権威に対する無礼、*国旗やシンボルに対して敬意を払わないこと、国家元首に対する名誉毀損、 および公務員の名誉の保護等に関する法令に対して、懸念を表明する。また、法令は、非難の対象となったとされる人物が誰であるかということのみを根拠にして、より厳しい刑罰を与えるべきではない。締約国は軍隊や行政等の組織に対する批判を禁ずるべきではない。
(旧)40. As noted earlier in paragraph (paras. 14 and 21,), concerning the content of political discourse, the Committee has observed that in circumstances of public debate concerning public figures in the political domain, the value placed by the Covenant upon uninhibited expression is particularly high. Thus, the mere fact that forms of expression are considered to be insulting to a public figure is not sufficient to justify the imposition of penalties, albeit, public figures benefit from the provisions of the Covenant. Moreover, all public figures, including those exercising the highest political authority such as heads of state and government, are legitimately subject to criticism and political opposition. Accordingly, he Committee has expressed concern regarding laws on such matters as, lese majeste,desacato, disrespect for authority, (*)defamation of the head of state and the protection of the honour of public officials, and laws should not provide for more severe penalties solely on the basis of the identity of the person that may have been impugned.
State parties should not prohibit criticism of institutions, such as the army or the administration.
 (*)ここに「旗やシンボルに敬意を払わないこと(disrespect for flags and symbol)」の文言が新しく加わった。

 国連自由権規約委員会は、1983年に一度自由権規約19条(表現の自由)に対する「一般的意見10」を採択している。その後、27年の先例や審査の蓄積をもとに、2010年10月に54項目に及ぶ新たな「一般的意見34草案」を公開して全世界から意見を求め、全面改定を目指した。そして、2011年7月21日に「一般的意見34最終版」を確定した。これこそ最新の、自由権規約19条(表現の自由)の、詳細な条文の解釈と運用の指針である。
 全体が9つの章に分かれている。
 ①パラグラフ 1~ 8 一般見解(19条全体)
 ②パラグラフ 9~10 意見を持つ自由(19条1項)
 ③パラグラフ11~12 表現の自由(19条2項)
 ④パラグラフ13~17 表現の自由とメディア(19条2項の具体的課題)
 ⑤パラグラフ18~19 情報へのアクセス( 同上 )
 ⑥パラグラフ20     表現の自由と政治的権利( 同上 )
 ⑦パラグラフ21~36 19条3項の適用(19条3項)
 ⑧パラグラフ37~49 ある特定の分野における表現の自由に対する制限の限定的範囲(19条3項の具体的課題)
 ⑨パラグラフ50~52 19条と20条との関係

 上記の、新パラグラフ38は、19条3項に違反する=人権の制限が許されないケースの、具体的例示の一つとして示されているのである。
 ※International Covenant on Civil and Political Rights
 第19条(表現の自由)

 1 すべての者は、干渉されることなく意見を持つ権利を有する。
 2 すべての者は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。
 3 2の権利の行使には、特別の義務及び責任を伴う。したがって、この権利の行使については、一定の制限を課することができる。ただし、その制限は、法律によって定められ、かつ、次の目的のために必要とされるものに限る。
(a)他の者の権利又は信用の尊重
(b)国の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護

 第20条(戦争宣伝及び差別等の扇動の禁止)
 1 戦争のためのいかなる宣伝も、法律で禁止する。
 2 差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する。
 『 General Comment No. 34 on Article 19』(英文)
http://www2.ohchr.org/english/bodies/hrc/docs/GC34.pdf


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