「派遣法規制強化反対論」は、女性の「社会参加」と「子供を産む権利」を、踏みにじるものですね。少子化社会に拍車がかかる。
★ 労働者派遣法規制強化反対論に対する意見
第1 はじめに
民主・社民・国民新党の3党連立政権は「雇用対策の強化」を重点課題とし、その一環として、(略)『派遣業法』から『派遣労働者保護法』に改めることを内容とする「労働者派遣法の抜本改正」を政策合意として確認した(以下「3党案」<※注>という)。
しかし、労働者派遣事業の業界団体のみならず、厚生労働大臣の諮問機関である「今後の労働者派遣制度のあり方についての審議会」(労働政策審議会職業安定分科会)においても、3党案を批判し、派遣法の規制強化に反対する意見が述べられている(以下「反対論」という)。
さらに、こうした意見に無批判に同調するマスコミ報道もあり、ミスリードに拍車を掛けている。(略)
第2 規制強化に反対する意見の趣旨・内容
労働者派遣法の規制強化反対論の内容は概ね次のとおりである。
反対論① 「労働者派遣法の規制強化(特に登録型派遣の禁止)は就労機会の喪失につながり、失業をもたらす」。
反対論② 「派遣法の規制強化(特に製造業派遣の禁止)は、人件コストの安い海外への企業流出を招き、国際競争力を損なう」。
反対論③ 「派遣労働者が『派遣』という働き方を求めている。特に子育て中の女性は仕事と育児・家事の両立のため、(登録型)派遣がよいと考えている。」
反対論④ 「貧困の問題は社会保障制度の問題である。派遣法の規制強化は貧困の解決につながらない」。
第6「③ 派遣労働者が「派遣」という働き方を求めている」に対する反論
1、反対論は、労働者自ら「派遣」という働き方を求めているのであり、規制強化(特に登録型派遣の原則禁止)は、労働者のニーズに沿った多様な働き方を奪うものであると主張する。
しかし、派遣労働者の多くが正社員雇用を希望していること、やむを得ず「派遣」を選択せざるを得ない状況にあることは政府の統計資料から明らかである。
まず、「平成20年派遣労働者実態調査(厚労省)」によれば、将来の働き方の希望として、派遣労働者の23.3%が「派遣社員ではなく正社員として今の派遣先の事業所で働き続けたい」、17.5%が「派遣社員ではなく、正社員として今の派遣先以外の事業所で働き続けたい」と回答しており、合計40.8%が正社員として働くことを希望している。また、派遣労働者の23.3%が「常用雇用型の派遣社員として今の派遣先で働き続けたい」と回答し、雇用の安定を願っている。
一方、「登録型の派遣社員として自分の都合のよい時に働きたい」と回答したのは6.2%と極めて少数に留まる。
また、「平成19年就業形態の多様化に関する総合実態調査(厚生労働省)」によれば、現在の就業形態を選んだ理由について、派遣労働者の37.3%は「正社員として働ける会社がなかった」と回答し(契約社員は1.58%、パートタイム労働者は12.2%)、また派遣労働者の51.6%は「他の就業形態に変わりたい」と希望している。「他の就業形態に変わりたい」と希望している労働者の90.9%(前回84.6%)は正社員を希望している。
2、また、労働者派遣法は、常用代替防止の観点から、派遣可能期間を原則1年(最長3年)に制限しているが(労働者派遣法40条の2)、期間制限を越えた違法な状態で長期就労していた派遣労働者が、派遣先企業に直接雇用を求めたり、派遣元に損害賠償を求める裁判が各地で提起されている(日本労働弁護団「派遣酷書」)。
これら派遣労働者の多くは、派遣元および派遣先企業から「派遣でも更新が前提だから」、「長期間働いてもらいたい」などと告げられ、その言葉を信頼し、長期雇用を期待していたものである。
反対論者の主張は、派遣労働者の多くが正社員としての雇用を希望していること、やむを得ず「派遣」という働き方を選択せざるを得ない現状にあることを直視せず、あたかも労働者が自ら積極的に派遣労働を望んでいるかのような虚偽の事実を描き出し、巧妙に問題のすり替えを行っているにすぎない。そもそも、企業の都合によっていつでも職を失ってよい、長期間勤務しても低賃金のままでよいと望む労働者などいないのである。
3、また、反対論は、子育て中の女性は仕事と育児・家事の両立のため、(登録型)派遣がよいと考えていると主張する。
こうした反対論は、女性労働者イコール家計補助者と見なし、低収入・不安定雇用の派遣労働者に留め置こうとするものであり、そこには、子を持つ女性が、正社員として就労し続ける社会を実現しようとする発想は皆無である。
女性労働者の7割は第一子出産後に離職している。
また、女性の育児休業取得率は9割に達している。
一方、男性労働者の約3割は育児休業を採りたいと考えているが、実際の取得率は1.56%であり、男性が子育て・家事に費やす時間は先進国中最低レベルである。
また、女性労働者の7割は非正規労働者であり、派遣労働者の6割は女性である。
母子家庭の平均年収は213万円と全世帯の平均収入(563.8万円)の37.8%しかない(「平成18年度全国母子世帯等調査結果報告(厚労省)」)。
派遣労働者の過半数が正社員雇用若しくは長期雇用を希望していることを考慮すると、これらの統計数値は、
(1)子育て中の女性が、
①労働時間や勤務日数との関係で、正社員として就労し続けることができないこと、
②短時間・短日数勤務を実現する手段として「(登録型)派遣」選択しているにすぎないこと、
(2)女性の派遣労働者の多くは、扶養家族を有する家計の中心的担い手でありながら、基本的な生活を営むことが難しい賃金水準や不安定な収入状態に留め置かれていることを示している。
労働時間の長短と労働契約期間の限定は別次元の問題であるし、また、正社員での短時間勤務や直雇用のパート就労によってワークライフバランスの実現は可能である。
子を持つ女性が正社員として就労を継続できる社会・労働政策の実現こそが喫緊の課題なのである。
※注:3党案
民主・社民・国民新党の連立内閣は、「連立政権樹立にあたっての政策合意」において、労働者派遣法の規制を強化し、派遣業法から派遣労働者保護法に改めることを確認した。
規制強化の内容は、「日雇い派遣」「スポット派遣」のみならず「登録型派遣」の原則禁止、製造業派遣の原則禁止、違法派遣の場合の派遣先との直接雇用みなし制度の創設、マージン率の情報公開などである。
『日本労働弁護団HP』
http://homepage1.nifty.com/rouben/teigen09/gen091028a.html
★ 労働者派遣法規制強化反対論に対する意見
2009年10月28日 日本労働弁護団 幹事長 小島 周一
第1 はじめに
民主・社民・国民新党の3党連立政権は「雇用対策の強化」を重点課題とし、その一環として、(略)『派遣業法』から『派遣労働者保護法』に改めることを内容とする「労働者派遣法の抜本改正」を政策合意として確認した(以下「3党案」<※注>という)。
しかし、労働者派遣事業の業界団体のみならず、厚生労働大臣の諮問機関である「今後の労働者派遣制度のあり方についての審議会」(労働政策審議会職業安定分科会)においても、3党案を批判し、派遣法の規制強化に反対する意見が述べられている(以下「反対論」という)。
さらに、こうした意見に無批判に同調するマスコミ報道もあり、ミスリードに拍車を掛けている。(略)
第2 規制強化に反対する意見の趣旨・内容
労働者派遣法の規制強化反対論の内容は概ね次のとおりである。
反対論① 「労働者派遣法の規制強化(特に登録型派遣の禁止)は就労機会の喪失につながり、失業をもたらす」。
反対論② 「派遣法の規制強化(特に製造業派遣の禁止)は、人件コストの安い海外への企業流出を招き、国際競争力を損なう」。
反対論③ 「派遣労働者が『派遣』という働き方を求めている。特に子育て中の女性は仕事と育児・家事の両立のため、(登録型)派遣がよいと考えている。」
反対論④ 「貧困の問題は社会保障制度の問題である。派遣法の規制強化は貧困の解決につながらない」。
第6「③ 派遣労働者が「派遣」という働き方を求めている」に対する反論
1、反対論は、労働者自ら「派遣」という働き方を求めているのであり、規制強化(特に登録型派遣の原則禁止)は、労働者のニーズに沿った多様な働き方を奪うものであると主張する。
しかし、派遣労働者の多くが正社員雇用を希望していること、やむを得ず「派遣」を選択せざるを得ない状況にあることは政府の統計資料から明らかである。
まず、「平成20年派遣労働者実態調査(厚労省)」によれば、将来の働き方の希望として、派遣労働者の23.3%が「派遣社員ではなく正社員として今の派遣先の事業所で働き続けたい」、17.5%が「派遣社員ではなく、正社員として今の派遣先以外の事業所で働き続けたい」と回答しており、合計40.8%が正社員として働くことを希望している。また、派遣労働者の23.3%が「常用雇用型の派遣社員として今の派遣先で働き続けたい」と回答し、雇用の安定を願っている。
一方、「登録型の派遣社員として自分の都合のよい時に働きたい」と回答したのは6.2%と極めて少数に留まる。
また、「平成19年就業形態の多様化に関する総合実態調査(厚生労働省)」によれば、現在の就業形態を選んだ理由について、派遣労働者の37.3%は「正社員として働ける会社がなかった」と回答し(契約社員は1.58%、パートタイム労働者は12.2%)、また派遣労働者の51.6%は「他の就業形態に変わりたい」と希望している。「他の就業形態に変わりたい」と希望している労働者の90.9%(前回84.6%)は正社員を希望している。
2、また、労働者派遣法は、常用代替防止の観点から、派遣可能期間を原則1年(最長3年)に制限しているが(労働者派遣法40条の2)、期間制限を越えた違法な状態で長期就労していた派遣労働者が、派遣先企業に直接雇用を求めたり、派遣元に損害賠償を求める裁判が各地で提起されている(日本労働弁護団「派遣酷書」)。
これら派遣労働者の多くは、派遣元および派遣先企業から「派遣でも更新が前提だから」、「長期間働いてもらいたい」などと告げられ、その言葉を信頼し、長期雇用を期待していたものである。
反対論者の主張は、派遣労働者の多くが正社員としての雇用を希望していること、やむを得ず「派遣」という働き方を選択せざるを得ない現状にあることを直視せず、あたかも労働者が自ら積極的に派遣労働を望んでいるかのような虚偽の事実を描き出し、巧妙に問題のすり替えを行っているにすぎない。そもそも、企業の都合によっていつでも職を失ってよい、長期間勤務しても低賃金のままでよいと望む労働者などいないのである。
3、また、反対論は、子育て中の女性は仕事と育児・家事の両立のため、(登録型)派遣がよいと考えていると主張する。
こうした反対論は、女性労働者イコール家計補助者と見なし、低収入・不安定雇用の派遣労働者に留め置こうとするものであり、そこには、子を持つ女性が、正社員として就労し続ける社会を実現しようとする発想は皆無である。
女性労働者の7割は第一子出産後に離職している。
また、女性の育児休業取得率は9割に達している。
一方、男性労働者の約3割は育児休業を採りたいと考えているが、実際の取得率は1.56%であり、男性が子育て・家事に費やす時間は先進国中最低レベルである。
また、女性労働者の7割は非正規労働者であり、派遣労働者の6割は女性である。
母子家庭の平均年収は213万円と全世帯の平均収入(563.8万円)の37.8%しかない(「平成18年度全国母子世帯等調査結果報告(厚労省)」)。
派遣労働者の過半数が正社員雇用若しくは長期雇用を希望していることを考慮すると、これらの統計数値は、
(1)子育て中の女性が、
①労働時間や勤務日数との関係で、正社員として就労し続けることができないこと、
②短時間・短日数勤務を実現する手段として「(登録型)派遣」選択しているにすぎないこと、
(2)女性の派遣労働者の多くは、扶養家族を有する家計の中心的担い手でありながら、基本的な生活を営むことが難しい賃金水準や不安定な収入状態に留め置かれていることを示している。
労働時間の長短と労働契約期間の限定は別次元の問題であるし、また、正社員での短時間勤務や直雇用のパート就労によってワークライフバランスの実現は可能である。
子を持つ女性が正社員として就労を継続できる社会・労働政策の実現こそが喫緊の課題なのである。
※注:3党案
民主・社民・国民新党の連立内閣は、「連立政権樹立にあたっての政策合意」において、労働者派遣法の規制を強化し、派遣業法から派遣労働者保護法に改めることを確認した。
規制強化の内容は、「日雇い派遣」「スポット派遣」のみならず「登録型派遣」の原則禁止、製造業派遣の原則禁止、違法派遣の場合の派遣先との直接雇用みなし制度の創設、マージン率の情報公開などである。
『日本労働弁護団HP』
http://homepage1.nifty.com/rouben/teigen09/gen091028a.html
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