《大阪弁護士会》
◎ 大阪府教育基本条例制定に関する会長声明
1 2011年6月3日、大阪府議会は、「大阪維新の会」の提案により、学校での儀式の際の国家の起立斉唱を教職員に義務付ける「大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国家の斉唱に関する条例」(以下「6月条例」という。)を可決成立させた。
2 橋下知事と大阪維新の会は、さらに大阪府教育基本条例を制定し、教職員の非違行為に対する懲戒処分基準を定めようとしている。そして、2011年8月22日に概要が公表された大阪府教育基本条例案は多岐にわたるものであるが、国歌起立斉唱に対する違反も念頭に置き、教職員が同一の職務命令に対する3回の違反を行ったときは免職とすることを定めている。
3 国歌斉唱時に教員などに起立斉唱を命ずる職務命令については、本年5月から6月にかけての一連の各最高裁小法廷の判決により、思想及び良心の自由を保障する憲法19条に違反するとはいえないとの判断がなされた。
しかし、式典における国歌起立斉唱行為の是非については、国民の中に議論があり、起立斉唱をよしとしない者にまで、これを強制することは、その者の思想及び良心の自由を直接に侵害するものではないかとの疑義があり、この点については、日本弁護士会も本年6月3日付の会長声明等で同様の批判をしているところである。また、これらの法廷意見に対しては、2名の裁判官が反対意見を述べているところでもある。
そして、上記の一連の最高裁判決の法廷意見に賛成した裁判官の補足意見において、こと懲戒等不利益処分を課すことについて、当該職務命令の必要性、違反の程度、代替措置の有無、課せられて非利益処分の程度など諸般の事情を考慮しなければならず、その結果、裁量権の逸脱・濫用となる場合があることが指摘されている。このように個人の思想および良心の自由に関係して懲戒処分を課すことは、慎重な考慮が必要であり、条例によって懲戒免職を含む処分を一律に課すことは、上記各最高裁判決からも外れるものである。
4 さらに、大阪府教育基本条例で形式的に懲戒の基準を定めることは、大阪府教育委員会の人事権と市町村各教育委員会の内申権を侵害し、地方教育行政組織法に反することとなる。
大阪府域の政令指定都市以外の府立学校・市町村立学校の教職員の人事権は大阪府教育委員会にあり(地方教育行政組織法23条3号)、政令指定都市以外の市町村教育委員会も、教職員の懲戒に関する内申権(同法38条1項)を有している。教職員の懲戒免職はもちろん、その他の懲戒処分を決定するのは、大阪府・大阪市・堺市の各教育委員会であり、その決定に際しては、職務命令の内容・必要性、違法行為の程度、代替措置の有無などが考慮されて、教育委員会が裁量権を行使するのであり、条例によって一律の処分基準を設けることは、教育委員会の裁量権をはく奪または制限することとなる。
教育行政が地方自治体の教育委員会にゆだねられているのは、明治憲法下で中央政府が教育行政を管轄し、国定教科書をはじめとして国家主義教育を中央集権的に進めたことに対する反省からきている。教育基本法16条は、旧教育法10条の「教育は、不当な支配に服することなく」という文言を引き継いでおり、府議会が教育行政に介入して、教育委員会を不当な支配のもとにおくこととなる。
大阪府教育基本条例は、このように地方教育行政組織法23条3号及び38条1項に違反しており、同条約の言う処分基準を設けることと、同法が予定する教育委員会が人事権の行使について裁量を有することは、矛盾抵触する関係にあり、同条例は「地方公共団体は、・・・法律の範囲内で条例を制定することができる」とする憲法94条から許されない。
5 当会は、憲法および地方教育行政組織法に違反する大阪教育基本条例の制定に反対するものである。
『今 言論・表現の自由があぶない!』(2011/9/18)
http://blogs.yahoo.co.jp/jrfs20040729/21422269.html
◎ 大阪府教育基本条例制定に関する会長声明
1 2011年6月3日、大阪府議会は、「大阪維新の会」の提案により、学校での儀式の際の国家の起立斉唱を教職員に義務付ける「大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国家の斉唱に関する条例」(以下「6月条例」という。)を可決成立させた。
2 橋下知事と大阪維新の会は、さらに大阪府教育基本条例を制定し、教職員の非違行為に対する懲戒処分基準を定めようとしている。そして、2011年8月22日に概要が公表された大阪府教育基本条例案は多岐にわたるものであるが、国歌起立斉唱に対する違反も念頭に置き、教職員が同一の職務命令に対する3回の違反を行ったときは免職とすることを定めている。
3 国歌斉唱時に教員などに起立斉唱を命ずる職務命令については、本年5月から6月にかけての一連の各最高裁小法廷の判決により、思想及び良心の自由を保障する憲法19条に違反するとはいえないとの判断がなされた。
しかし、式典における国歌起立斉唱行為の是非については、国民の中に議論があり、起立斉唱をよしとしない者にまで、これを強制することは、その者の思想及び良心の自由を直接に侵害するものではないかとの疑義があり、この点については、日本弁護士会も本年6月3日付の会長声明等で同様の批判をしているところである。また、これらの法廷意見に対しては、2名の裁判官が反対意見を述べているところでもある。
そして、上記の一連の最高裁判決の法廷意見に賛成した裁判官の補足意見において、こと懲戒等不利益処分を課すことについて、当該職務命令の必要性、違反の程度、代替措置の有無、課せられて非利益処分の程度など諸般の事情を考慮しなければならず、その結果、裁量権の逸脱・濫用となる場合があることが指摘されている。このように個人の思想および良心の自由に関係して懲戒処分を課すことは、慎重な考慮が必要であり、条例によって懲戒免職を含む処分を一律に課すことは、上記各最高裁判決からも外れるものである。
4 さらに、大阪府教育基本条例で形式的に懲戒の基準を定めることは、大阪府教育委員会の人事権と市町村各教育委員会の内申権を侵害し、地方教育行政組織法に反することとなる。
大阪府域の政令指定都市以外の府立学校・市町村立学校の教職員の人事権は大阪府教育委員会にあり(地方教育行政組織法23条3号)、政令指定都市以外の市町村教育委員会も、教職員の懲戒に関する内申権(同法38条1項)を有している。教職員の懲戒免職はもちろん、その他の懲戒処分を決定するのは、大阪府・大阪市・堺市の各教育委員会であり、その決定に際しては、職務命令の内容・必要性、違法行為の程度、代替措置の有無などが考慮されて、教育委員会が裁量権を行使するのであり、条例によって一律の処分基準を設けることは、教育委員会の裁量権をはく奪または制限することとなる。
教育行政が地方自治体の教育委員会にゆだねられているのは、明治憲法下で中央政府が教育行政を管轄し、国定教科書をはじめとして国家主義教育を中央集権的に進めたことに対する反省からきている。教育基本法16条は、旧教育法10条の「教育は、不当な支配に服することなく」という文言を引き継いでおり、府議会が教育行政に介入して、教育委員会を不当な支配のもとにおくこととなる。
大阪府教育基本条例は、このように地方教育行政組織法23条3号及び38条1項に違反しており、同条約の言う処分基準を設けることと、同法が予定する教育委員会が人事権の行使について裁量を有することは、矛盾抵触する関係にあり、同条例は「地方公共団体は、・・・法律の範囲内で条例を制定することができる」とする憲法94条から許されない。
5 当会は、憲法および地方教育行政組織法に違反する大阪教育基本条例の制定に反対するものである。
2011年9月15日
大阪弁護士会 会長 中本和洋
大阪弁護士会 会長 中本和洋
『今 言論・表現の自由があぶない!』(2011/9/18)
http://blogs.yahoo.co.jp/jrfs20040729/21422269.html
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