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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

ソウル第2回歴史NGO世界大会に参加して

2008年10月15日 | 増田の部屋
 ★ 分限免職取消裁判 10月30日(木)11時~午後5時、705号法廷
 証人尋問:酒井指導課長(千代田区教委)、分限免職起案者:橋爪・勝部(現国分寺校長)


 ◆ ソウル第2回歴史NGO世界大会に参加して

 こんにちは。犯罪都教委&3悪都議と断固、闘う増田です! 重複かつ超!? 長文ですが、ご容赦を。お時間がありましたら読んでいただきたいと思います。

 先月のハルビン「731部隊罪行研究国際セミナー」に引き続き、10月9・10日と、ソウルで行われた「第2回歴史NGO世界大会」に参加して貴重なご意見を聞きましたので、ぜひ、お知らせしたいと思います。また、ここで、アピールさせていただき、東京地裁に提出する「免職取り消し判決」要請署名も集めることができました。我孫子の近現代史講座に参加してくださっている古野恭代さんが同行してくださいましたので心強かったです。

 会場はソウル・オリンピックの時に作られたらしいオリンピック公園の真ん前にあるオリンピックパークホテルでした。会議場にはそれぞれ『アテネ』『ベルリン』『東京』などという名前が付けられていました。

 全体的に印象に残ったのは、「日本が二度と侵略戦争をしない」という国際公約の証としての第9条を放棄しようとしていることへの危惧の念を韓国の複数の方々が表明されたことです。天皇制を残しても侵略戦争をできないようにしてあった第9条の足かせを日本が外すことは、日本帝国主義に蹂躙された悪夢を被害国に思い起こさせるものであることを再確認しました。

 また「日本は国際社会で大国として認められようとしているが(たぶん、安保理事国になりたいと表明していることをおっしゃっているのでしょう)、過去を清算しないままでは、決して、真の大国として認められることはないだろう」と言われた方もいました。

以下、具体的に報告します。

9日(木)
 全体会の開会は午前中だったのですが、飛行機の関係で午後3時からのテーマ別シンポジウムに間に合いました。6つのシンポの内、私は、もちろん!? 「歴史的和解のための平和教育」に参加。ここは、民間の協力による日中韓の共通歴史教材(副教材)『未来を開く歴史』(高文研)を中心に論議されました。

●<印象的だった辛珠柏氏(ソウル大)教授の発言>

 最初の辛珠柏氏(ソウル大)教授の次の発言が印象に残りました。「日中韓の3国は『国際化』を掲げているが、過去の歴史をめぐって毎年恒例行事のように問題が生まれています。歴史認識問題は東アジア外交関係における最大の障害物になっているのです。
 1982年、日本における高校教科書検定問題によって、歴史認識の問題が初めて提起されましたが、それ以後、日本における歴史教科書の記述内容と日本人政治家の『妄言』をめぐって時折、問題が出ていました。しかし、21世紀に入って、東アジアの歴史認識問題は、教科書問題以外にも独島・北方4島、尖閣諸島などの領土問題、東海表記などの海にかかわる名称問題、日本の政治家による靖国参拝問題、日本軍による韓国人の徴用・徴兵・『慰安婦』などの強制動員問題、とさまざまな形で噴出しています。
 しかし、これらは別途の独立した事案ではありません。歴史認識問題は、長期的な接近を通して変化を試みていく長期的・総合的な接近が必要で、歴史教科書は、これらの問題を修練することのできる知的空間ではないでしょうか。歴史教科書は学問的成果と教育的価値を土台に記述され、人類の普遍的価値を盛り込むことができる最も大衆的な媒体物だからです。
 ヨーロッパではドイツ・フランス・ポーランドが国際教科書対話を行い共同の教科書の発行もできています。しかし、東アジアにおいては未だに、歴史が外交と分離されていないばかりか、外交によって統制されています。ヨーロッパと比較し、もうひとつ不利な点はヨーロッパでは各国のユネスコ委員会が大きな役割を担いましたが、東アジア3国では、ユネスコはまともな役割を果たすことができないでいます。
 そこで、この空白を埋めるために2002年から民間レベルの努力が始まりました」

 本当にその通りですね。「歴史認識問題は東アジア外交関係における最大の障害物」なのです。しかし、しかし・・・日本では、この『事実』がどれほど理解されているでしょうか? 「創氏改名は朝鮮人が望んだから、そうしてやったんだ」などと主張する人物を首相に選んで恥じない我が日本国の、どうにもしょうがない政治家たちをはじめとして、こういう政治家を選び続ける日本国民・・・そういう国民を育成してきた教育の悪循環・・・だからこそ、それを正そうとした教員である私を、都教委はなんとしてでもクビにするしかなかったんですけど。

●<過大評価のような・・・>
 さて、しかし、だからといって『未来を開く歴史』を、上海師範大学教授の蘇智良氏のように、あんまり過大に評価するのもどうかなぁ? と私は首を傾げました。彼は書評の紹介という形ですが「『未来・・・』は日本の右翼勢力に対する強力な反撃となった」!? と発言されたのです・・・んーーー・・・???
 「日本の右翼勢力による『歴史偽造』は誤っている」と理解できる人たちが、「事実」に立脚しないことを言っていいのでしょうか? それでは歴史偽造・右翼勢力との真の闘いの土台を作ることはできないのではないでしょうか?

 東大教授の松本武祝氏は、『未来・・・』を使った高校教科書として用いられた私立高校の事例一つ、中学校の教材として用いたのは一例のみで、それは東京の公立中学校の理解ある校長の下での選択教科の36人だったことを挙げられました。そして「中高校生にとっては内容が難解すぎたという難点があった。」という分析を披露されました。
 私は「内容が難解すぎ」というよりも、本質的問題として最後に発言された宮嶋氏の指摘のほうが当たっていると思います。私が中学校現場の社会科教師として、非常に使いにくいと思ったのは「内容が難解すぎ」るからではありません。値段が高すぎ(1600円)&厚すぎるという点は普通の公立中学校の副教材としてはもとから対象にはなりませんが、それはおきます。

●<宮嶋氏の非常に的確な指摘>
 討論者として参加された成均大学教授の宮嶋博史氏の『未来・・・』に対する問題点の指摘は、ズバリ明快でした。私が、中学生に対する副教材としては非常に使いにくいと感じていたことの本質は、これです。

 「本書は『日本はなぜ韓国、中国をはじめとするアジア諸国に対する侵略を行ったのか、韓国、中国はなぜそれを防ぐことができなかったのか』この最大の問題に関して十分に答えていないのではないでしょうか?・・・日本が何をしたのかについては詳しく記述されていますが、なぜ、どのような判断に基づいて行動したのか、については言及がありません
 たとえば韓国を保護国とするという重大な岐路が『余勢を駆って』という表現で処理されていることとか、『完全な植民地とした』という記述だけで、いつ、どういう判断に基づいて植民地化を決定したのか、それがいかに重大な決定であると認識されていたのか、等に関して全く記述がないのです。侵略行為の事実を知ることはもちろん重要ですが、それだけでなく、なぜ無謀な、結局は日本を破滅に追い込んだ侵略を始めたのか、に関して考えることが最も重要ではないでしょうか?
 また、日本人は関東大震災において朝鮮人大虐殺を行い、南京大虐殺を行いました。しかし、日本敗戦時、朝鮮や中国の人々による日本人大虐殺はなかったことなど、記述するべきではないでしょうか?」

●<増田の発言>
 会議が始まる前に司会の方に、自己紹介をし「ぜひ、アピールさせていただけないでしょうか」と頼みました。するとフロア発言の第一番に指名してくださいました。そこで、上の内容に加えて概略、以下のように発言しました。

 「私は明日の第7分科会の討論者となっております増田都子と申します。私は東京の中学校で33年間、社会科教員をしていました。しかし、2年前に扶桑社の歴史教科書と侵略否定の妄言議員を『国際的に恥をさらす歴史偽造の歴史認識ですよ』と批判して生徒に教えたために、東京都教育委員会によって免職されました。そこで、私の経験から申しまして、蘇智良先生が言われましたような『未来を開く歴史』の出版が『日本の右翼勢力に対する強力な反撃となった』という事実は存在しません、と断言します。
 扶桑社教科書と侵略否定妄言都議を批判して免職された私に対して韓国のマス・メディアは『日本の良心的女教師、扶桑社教科書批判で免職される』と報道してくれましたが、日本のマス・メディアは報道を拒否し、右翼勢力は勢いに乗っています。松本先生も私の闘いには無関心でいらっしゃったようですが、松本先生の発表のように、『未来を開く歴史』を教材として使用している子どもたちは、日本では、ほとんど『例外的』で数えるほどです。『未来を開く歴史』よりも扶桑社教科書を使っている子どもたちのほうが、よっぽど多いでしょう。
 とても『日本の右翼勢力に対する強力な反撃となった』といえるほどではありません。私は、東アジア共通の歴史教科書を作る、という運動はとても大切だと思いますが、事実を無視してはならないと思います。
 私は現場の教師として、宮嶋先生が指摘なさった本質的な問題が、『未来を開く歴史』にはあるので、とても使いにくいと考えていました。もちろん、東アジア共通の歴史教科書を作る、という試みはとても大切だと思いますので、これからこの点を踏まえて、もっと良いものに改善していってほしいと思います」

●<俵義文氏の発言>
 ここに参加しておられた俵氏は、宮嶋氏や私の発言を意識なさったのか・・・といって、他の発言者の中からも「この本(『未来・・・』)は三国史だ、つまり、内容がバラバラだ、という批判もある」と認める声が出てました・・・以下のように発言されました。

 「この本は、扶桑社教科書が採択される、という状況で、それに対抗するために急いで作ったものでした。『違い』よりも『共通点』を大切にしよう、ということを中心においたのです。
 『出版社は採算が取れない』と二の足を踏んだのを『絶対に大丈夫だから』と私が請合って出版できたんです。結果的に8万部も売れ私もホッとしました。地域でこの『未来・・・』を使った学習会も活発に行われています。」

  でも、さすがに「『未来・・・』が日本の右翼勢力に対する強力な反撃となった」事実がある、とはおっしゃいませんでしたが。

●<盛大な晩餐会で素敵な出会い>
 夜の食事場所は、大きな池(川か? と最初は思いました)に面したとても素敵な雰囲気の野外でした。200人ぐらいの大晩餐会・・・これでもか!? という感じのたくさんの美味しいお料理のバイキング。司会の方は「ミーティングはイーティングのあとに」と言われましたが、ミーティングはなかったような・・・

※長文につき、以下は『増田都子のHP』から
http://www.masudamiyako.org/

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